〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)

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著者 : 小林英夫
  • 講談社 (2008年11月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879668

〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

  • 満洲の人口比を全く知らなかった。
    日本からの入植者が開墾したような印象を持っていたが、大間違い。
    日本民族は人口比で1%強、公務員・自由業では5.8%。つまり、日本民族の大部分は農業に従事していない。

    それでも、農業を試みた日本民族は、水田以外の農業知識を持たず、現地の農法を模倣して既存農家との競争関係に入って敗れる。
    北海道の農業知識を導入するまでにも時間がかかっているが、牛馬を使いこなせない入植民には高級過ぎた。
    相当に無茶で、ほとんど失敗。

    一方、検閲に遭って届かなかった手紙」がたくさん出てくる。それがなぜ入手できたのかわからない。
    現代の日本の政府と違い、文書を記録に残す意識はあったか?
    そして、本土のように、敗戦時に書類を焼却する余裕がなかった??


    金日成と全斗煥がそれぞれ出てくる。
    小澤開作の名前が出て来る。民意の汲み上げを企図する側だが、溥儀の対立勢力として出てきたので驚いた。
    表の職業は、歯科医だった! そうだった。

  • いろいろなものが絡みあり、うねり、今も続いている、それが満洲。
    一面からではとても捉える事が出来ないという難しさを知るための、分かりやすい本だと思う。

  • 清朝時代から太平洋戦争後までの満州地域の歴史史。特に、張作霖による奉天軍閥の時代→張学良との権力併存時代→満州国時代の説明が濃い。満州に漢民族が住み着き始めたのは、露清の国境紛争後の戦力増強からで、日本が日露戦争後に関東庁を置いた時はまだ一種の拓殖民に近い自治組織が多い状況だった。それを馬賊の張作霖がまとめあげ奉天軍閥を築き、日本軍のバックアップのもと中央への進出を伺う状況になる。張作霖と蒋介石の対立後、日本は張作霖爆殺を行い、張学良に近い幹部は中華民国側へ、土着が強い勢力は関東軍に接近。ここに日本が満州に権力を築く土壌があった。満州国の正統性を精神的に支えたのは、旧清朝幹部による清朝復興の願い、満州馬賊の中華民国からの距離感などがあり、そこに陸軍がつけこんで成立していた。五族協和を唱えた満州も、実質的には日本人は1%強ながら支配民族として君臨。形式的な満州国には企画官僚はおらず、それは満鉄調査部が代替していた。満洲事変後、日本は満州と一体での経済5カ年計画をつくり、戦争を支える鉱工業の中心を満州においていったことが統計からわかる。戦後、日資は中国に徴収され中華人民共和国初期の鉱工業を支えたが、改革開放後に経済の中心は南方及び沿岸部に移り、近年に大連などに外資が集まる前は、東北は経済低迷地域になっていた。

  • 中国東北地区、満州国の通史、満州国における政策、満州国に住む人々の生活文化等々、満州についての概観を学ぶことができる良書。

    「満州国」を単純に失政と評価するのは容易いが、満州国における産業育成政策、経済政策を立案した官僚等が戦後日本の高度成長時代に政策立案面を担っていたことを考えるとそこに歴史の面白さが見えてくる。

    「五族協和」の理想は脆く失敗に終わるのだが、当時の理念は現在でも学ぶべきところがあるのではないか。
    北朝鮮が何らかの形(崩壊後?)で国際社会に組み込まれれば、中国東北地区が経済圏としも重要度を増し、日本にとっても戦略的な地域になっていくのでないだろうか。

    以下引用~
    ・戦前の満州での五カ年計画は、戦中そして戦後の高度成長政策に人的に連動していく。満州で五カ年計画を担当したのは総務庁次長の岸信介であり、その部下の産業部の椎名悦三郎らであった。
    ・この官僚主導で金融、物流、生産を重点部門に集中し、経済を活性化させる「日本型生産システム」というべきものは、1957年に岸が総理大臣に、60年に椎名が池田内閣の通産大臣に就任するに及んで高度経済成長政策として本格的に開化する。

  • 13/08/28 モヤモヤしたものが残った。何だろう?

  •  1930年代(昭和初期)の日本の歴史には興味があったが、「満州国」についての本の中では本書が一番ではないだろうか。とにかく、詳細でありながら、読みやすく、わかり易い。
     明治の日本と現在の日本とのあいだには大きな断絶があると思っていた。その移行のポイントが1930年代から1945年の敗戦の時代にあることは分かるのだが、今の日本に、その時代認識の広い社会的合意があるとは思えない。本書はその時代への理解を深めることができる良書だと思えた。
     本書での「満州」の歴史的背景と、「満鉄」の成立への過程はもとより、当時の「激動の東アジア情勢」は単なる歴史的事実の羅列にとどまらず、その後の日本が中国へ進出していった背景をわかりやすく語っている。
     1928年の「張作霖爆殺事件」はよく知られているが、本書での「奉天軍閥」の詳細な実態にはその巨大な存在に驚く思いを持った。当時の関東軍の「石原莞爾」の思想は有名だが、当時の「関東軍」と「奉天軍閥」等の妥協によって当時の満州国政府の統治機構が成立していた詳細は、興味深く思えた。
     当時の満州国の「経済政策」の詳細も興味深かった。その社会主義のような「計画経済」政策はよく知られているが、「満州農業移民政策」の詳細には、これは政策モデルとしては、敗戦前にすでに失敗していたのではないかと思えた。
     国家の政策として満州に移民した多くの人々が敗戦で大きな被害を出したことはよく知られているが、まともな農業モデルを構築しないままに移民政策を大々的に実行した当時の日本政府の無責任さを痛感する思いを持った。
     「五族協和の内実」を読むと、当時の満州国の人口構成や民族別の階級構造がよくわかる。「日本人は一等国民、朝鮮人は二等国民、中国人は三等国民と差別され」る当時の実態には、現在の視点からはなんとも違和感を感じたし、やはり時代をつくるだけの普遍性のある体制ではなかったのだろうと思えた
     それぞれの時代には、その時代特有の「空気」があり、時代が転換するとその「空気」はなくなってしまうため、その時代の常識は、あとの時代になるとよく理解できなくなると言ったたのは、司馬遼太郎だったか。
     本書は、満州国の歴史的事実を知れるのみではなく、その時代の空気を知ることもできる良書であるとおもう。本書は面白かった。

  • 19世紀以前から現代の引揚者の回顧録まで、日本人から見た満洲(「満洲国」に限らない)の総合的通史。個人的には、出てくる地名の多くに行ったことがあるだけに風景が目に浮かぶ。堅い話のみならず、売春婦の存在や一般人の手紙、文化面も取り上げており、生活ぶりが分かる。末路を知っているだけに読んで楽しい気分にはならないが、唯一ほのぼの(と言っていいのか)したのが、愛新覚羅溥傑と嵯峨浩が政略結婚にもかかわらずお見合いの席で「双方とも一目ぼれ」(by溥傑)だったことか。

  • [ 内容 ]
    17世紀以降の変遷、20世紀・傀儡国家の壮大な実験と挫折を、第一人者が解く。
    日本人のためのまったく新しい中国東北史。

    [ 目次 ]
    第1章 一九世紀初頭までの満洲―封禁の地の変容
    第2章 東アジア激動の中の満洲―日露戦争から第一次世界大戦まで
    第3章 奉天軍閥と対立する日本―第一次世界大戦から満洲事変まで
    第4章 「満洲国」の時代―満洲事変から第二次世界大戦終結まで
    第5章 「満洲国」は何を目指したのか―「満洲産業開発五ヵ年計画」と満洲移民計画
    第6章 満洲に生きた人たちの生活と文化―「五族協和」の理想と現実
    第7章 消滅した「満洲国」が遺したもの―引揚げと受け入れ、そして戦後の中国東北
    第8章 満洲の記憶とその変容―引揚者たちの回想録をめぐって

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • はっきり言って読みづらい。張政権の目指した近代政策と日本の目指した近代政策との軋轢を、植民・工業・政治といった複視眼的にとらえたかったのだろうが、ごちゃごちゃしていて何が何だか判然としない。最後の満州の職業人たちについて描かれた部分は良かった。

  • 満洲(中国東北地方)について、満洲国の政策などを中心に記述した一書。もう少し前史が描かれるとうれしかったが、参考文献目録も詳しく、記述は至って平易です。

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17世紀以降の変遷、20世紀・傀儡国家の壮大な実験と挫折を、第一人者が解く。日本人のためのまったく新しい中国東北史。

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