越境者的ニッポン (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879873

感想・レビュー・書評

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  • 現代日本の問題点、閉塞感を非常に分かりやすくかつ痛快に批判してみせる。日本のしがらみも、収入の不安も全く無縁に見える方だからこその見識であり真っ当な批判だが、国内で既得権を得ている人には響かないだろうなぁ。文体に特徴があるので好き嫌いは分かれるかも。私はもう少し著作を読んでみたいと思った。

  • 中卒と著者は書いている。しかし、この作品を読むかぎり知性に溢れている。本当だとしたら学校教育よりも人生経験の方が教育には良いのかもしれない。昔、教養小説というジャンルがあった。主人公は旅に出て人生を経験するという小説だ。その主人公にでもなりそうな人物だ。

  • ・欲望は欲望を欲望する・常識は多数者が持つ偏見・日本=明示的強制なき同調強要社会・文化=交,間,多,越・生きるのは健康に良くない・異物の創造により虚像の結束が生じる・資本主義はバクチ・no risk, no glory

  • 筆者は、国家や国民性というのはつくられたものであり、自然発生的なものではないと断ずる。そしてそれらを維持するための日本の仕組みに鋭く批判を加える。筆者自身の言葉で言うなら、「素朴な疑問を発する」のである。
    ナショナリズム批判というと、「地球市民」という言葉などがあるように、純粋で穢れのない、実際には存在しない個人の姿を理想とするものも多く閉口しがちである。しかし筆者は、世界を旅し、その後も賭博で生計をたてている自身の経験に基づいて、人間の本質というのは国や国境に規定されるものではない、としているので、説得力がある。
    残念なのは、筆者の考える「人間の本質」については、本書の中ではほとんど語られていない点である。勝手な想像になるが、それはきっと明るかったり暗かったり、真面目だったりずるかったりするが、自分のおかれた環境の中で精一杯生きている人のような気がする。
    逆に現代日本に見られるような無気力で自分では何も考えられないような人々、それでいて全体主義の情報にすぐ反応する人々に、恐怖を覚えるのであろう。

    以下、印象的な内容の抜粋;


    【第1章 世界に1つの神の国?】
    ・西南戦争(1877)以降に日本国家ができたから日本人は立ち上げられた。(P26)
    ・不変で固有で永遠な倫理、文化、伝統、価値は無い(P29)
    ・国境によって切り取られる人間の価値観や性質は無い(P30)
    ・ナショナルアイデンティティはパスポートの違い(所属の違い)で、すべては個人に帰結する(P33)
    ・由らしむべし、知らしむべからず、が現在の政府の国民掌握手段(P36)
    ・「投影された他者」を創造・捏造することで「われわれ日本人」という集合主体を立ち上げる(P44)

    【第2章 ろくでなしの教育論】
    ・放っておくと全体主義になる子供を強制し、多元主義にするのが教育。社会は異質なものの集合体なので、互いに認知し、共生すべき。(P60-61)
    ・希望が絶望に変わるのは、諦めた時(P70)
    ・人間は個人の思想信条に従って行動すべし、と教えるのが本来の学校(P72)

  • 第1週 1/11(水)~1/18(火)
    テーマ「日本・日本人・日本語」

    ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00172948

  • 「左翼は難解、右翼はやっかい」など小気味よく世の中の出来事にコメント。新聞などが取り上げない視点での問題提起は参考になる。

  • 『日本を滅ぼす〈世間の常識〉』 を読んで面白かったので、これも読んでみましたが、これもよかったです。

    本を読んでいて、私も「疑問を発せられない」無知な人間だったのだなと、身に沁みました。

    「日本は法治国家なのか?」との著者の問い。
    法治国家とは言えない日本。その事例や理由をあげていますが、
    一般庶民がやれば「犯罪」、公務員や大企業の職員がやれば「不祥事」
    これが、そのことをよく表しているのではないでしょうか。


    権力を監視しなければならないジャーナリズムが権力ともたれ合い、権力のただのマウスピースとなりさがってしまった。

    そんな現状で、真実を知ることは難しいのかもしれませんが、「なんか、これっておかしい」って思ったら、素朴な疑問でもいいから、声をあげていくことを止めてはいけない。
    でないと、日本はますます権力者たちの好き勝手にされてしまうのではないでしょうか。

    http://glorytogod.blog136.fc2.com/blog-entry-1041.html

  • クーリエ・ジャポンで毎月連載されている「越境者的ニッポン」。
    この雑誌の中で一番好きなコンテンツです。

    これを読んでると、自分がいかに何も考えずに生きているか気づかされます。
    まぁこの森巣さんの言ってることが正しいかはわからないけど、
    ぶっ飛んでいるようなこと言っているようで、かなり的を得ているようにも思える。

    文中にあるように「無知とは、質問できない状態」のことをいう。
    当たり前だと思っていることが当たり前ではないのもちろん、
    当たり前だと思っていることのほとんどが、実は無知だったりする。
    とにかく、良くも悪くもいろいろ考える本です。

    それから、森巣さんは海外在住の賭博で生計をたてているライター(この辺りからすでにぶっとんでいるが…)なんだけど、
    こういうものの見方・考え方をするには、海外に出る必要があるのかなとも思う。
    やっぱそうじゃないと相対化できないし。

  • 面白かった。博打で食ってる人っているんだな。
    憧れはしないけど。

    講談社なかなかいい本出すな。

  • 哲学を持て、ということ。

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著者プロフィール

1948年生まれ。オーストラリア在住の博奕打ち、兼業作家。著書に『越境者的ニッポン』(講談社現代新書)、『無境界家族』『無境界の人』『越境者たち(上・下)』(以上、集英社文庫)、『神はダイスを遊ばない』(新潮文庫)、『二度と戻らぬ』『非国民(上・下)』『蜂起』(以上、幻冬社文庫)、共著に『ナショナリズムの克服』(姜尚中氏との対談)、『ご臨終メディア』(森達也氏との対談、ともに集英社新書)などがある。

「2011年 『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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