明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)

  • 講談社
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880312

作品紹介・あらすじ

西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、板垣退助-途上国を一等国に導いた指導者を分析する。

感想・レビュー・書評

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  • 共著の二人はどちらも大学教授であることから少し堅苦しさを感じるものの、とても面白い内容だった。一貫して明治維新の柔構造について触れており、随所にその考え方への知的興奮が見て取れる。明治維新への新たな視点を生むものとしておすすめの書籍。

  • 非常にエキサイティングであった。
    柔構造、翻訳的適応など面白い概念多数

  • 途上国の開発政策についての海外からの研究依頼で、政治史学者と経済学者がタッグを組んでみたら、日本は他のアジア諸国とは異なり、開発独裁国ではなく、柔構造を持った国であったというオチ。ある種の日本特殊論というか、日本素晴らしい論になっていて、「明るい明治」が好きな人はそれなりに気持ちよくなれるのかも。じゃあ、それがなんで「暗い昭和」になってしまったのか?という疑問も沸くのだが、江戸の遺産を明治が受け継いだように、明治の遺産を大正・昭和が受け継いだとも言えるわけで、どこでどう間違えたのか?という探究は尽きる事がないのかもしれない。

  • 固い文章でサラサラ読める感じではない。テキストのような構成。

  • 歴史

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    明治維新といえば「富国強兵」のために指導者たちが一致団結し、危機を乗り越えていったというイメージが強かった。
    しかし、この本にかかれている内容は明治政府には「富国」、「強兵」、「憲法」、「議会」といった政策目標が存在し、指導者たちにはそれぞれが支持している政策目標があり、時には対立し、また、ある時には連携することを繰り返していたということだった。
    そのような状況でも完全に対立することはなく、ゆるく繋がる「柔構造」だったということが新鮮で印象に残る内容だった。
    第二章では明治維新の中心となった幕末の諸藩についての比較を行い、第三章では明治維新による近代化の原動力となった江戸時代に生まれた諸条件についてが書かれている。
    他では余り読んだことのない内容では会ったが、色々と面白い内容だった。

  • 維新150年だし「西郷どん」だしで再読。
    明治維新を実現した薩長土肥等雄藩の「柔構造」分析が面白い。
    「グローバル化した世界の中で異なる民族、宗教、思想が何とか共存して生きうる世界を築くためには、いい加減な生き方もまったく役に立たないとはいえまい(p179)」
    日本人の特性である「翻訳的適応」を今こそ発揮すべきだと感じた。

  • 共著ゆえか、執筆の主体がわからず読みにくい。柔構造がキーワードだが、この本の構造の方が柔構造。わかりにくい。

  • 明治維新を柔構造という視点で見つめなおし、新たな評価をするという内容。視点は非常に面白いのだが、歴史を題材にしているという点では、あまりその背景には深く入っていないため、正直、良く分からなかった。おそらくある程度の知識を持っている前提で読むと面白いのだろうが。。。
    何よりも「なぜ、そのような構造になったか」という点に対しての深堀りができていなかったことが、期待値から外れていたというのもあるかもしれない
    正直、これらの事象は「偶然が積み重なった結果」ではないだろうか。事実、この柔構造は国家の目的や成し遂げるスコープが明確になった時点で、硬化してしまっている。
    また、この著書では漱石の嘆きを悲観的とし、困難を乗り越えた偉業としている。この点がどうにも違和感がある。なぜか。漱石は「未来に対して悲観」しているが、著者らは「過去を評価」している。見ているものが異なるのだ。この点は漫画の「坊ちゃんの時代」で読み解けよう。漫画では新たな価値観の象徴である幸徳秋水を政府が抹消してしまう。そこに柔構造は影も形もない。
    結局のところ、明治維新は育った土地、留学先等で得た様々な価値観を持ちながらも、日本を立て直すという共通の目的を持った人々が絶妙なパワーバランスのもと成し遂げた奇跡なのかもしれない。だが、その後に待ち受けられたのは柔構造を捨てた硬化構造?だ。そして、その、明治に作られた構造のまま現在に至っている、という事実。
    著書らの掲げる「柔構造」は非常に面白い視点だ
    これを現在においてどう実現していくかは、重要なキーに思える

  • 日本近代政治史の専門家と開発経済学の専門家が、明治維新という世界史上稀な革命を可能とした、幕末維新期の構造的特徴ついて考察している。
    明治維新は、個々の人物や事件を追っていくと極めて分りにくい時代である。登場人物が多く、彼らの間に政策論争や政治闘争が延々と展開されるし、国家目標なるものが複数個あり、それらが合体したり変容したり逆転したり、更には、各グループの目標がどんどん変わっていくように見えるからである。しかし、著者達はこのわかりにくさを「柔構造」と名付け、これこそが明治維新を可能にした、世界に類を見ない長所だったと言う。
    「柔構造」の第一の側面は国家目標で、幕末期には、「公議輿論」が政治的な、「富国強兵」が経済軍事的な改革指針であったが、その後維新を経て、「公議輿論」は木戸孝允の掲げる「憲法制定」と板垣退助の掲げる「議会設立」に、「富国強兵」は大久保利通の掲げる「殖産興業」と西郷隆盛の掲げる「外征」に変容・発展していったということである。
    第二の側面は、上記の4派が単独では政策実施能力を欠いていたものの、各派は、幕末期から醸成されてきた基本的な相互信頼や、ナショナリズム・尊王思想の共有により、極端な政治闘争となることはなく、柔軟な合従連衡が継続したということである。
    第三の側面は、指導者自身が複数の目標の重要性を基本的には分かち合っており、ときに相互乗り入れや乗り換えが行われることすらあったということである。よって、カリスマ的リーダーは生まれず、指導者の不慮の死や失脚でも、スムーズに指導者の交替が行われ、その派が途絶えることはなかった。
    そして、こうした幕末維新期の独特の政治構造に加えて、それまでに日本が近代化のための諸条件を備えていたことが、植民地主義が吹き荒れていた時代に、日本だけが列強に屈することなく、欧米に並ぶ「一等国」に駆け上がることを可能にしたという。諸条件とは、1.政治的統一と安定、2.耕作面積と生産性両面における農業の発展、3.物流システムの発展と全国統一市場の形成、4.商業・金融の発展及びそれに伴う富裕な商人層の台頭、5.手工業の発展、6.地方政府(藩)による産業振興、7.教育の普及である。
    そして、ペリー来航以来の、対外的な軍事的無力、通商条約手続きの不備、開港がもたらした急激なインフレと産業の盛衰などにより、徳川政権に対する政治的遠心力が増す一方で、主要階層で広く共有された民間ナショナリズムにより社会的求心力は維持され、藩益や特定階級の利益が国家利益よりも優先されて日本が長期の内乱に突入したり、その隙に乗じて外国勢力の介入や支配を招く事態は生じなかったのだという。
    明治維新に関しては、活躍したそれぞれの志士や藩・勢力を取り上げた伝記、歴史小説、歴史ドラマは多数あるが、その全体を俯瞰し、かつ構造的に捉えたものとして、本書は意義あるものとなっている。
    (2010年12月了)

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著者プロフィール

一九三七年神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学社会科学研究所教授、千葉大学法経学部教授を経て、現在は東京大学名誉教授。専攻は日本近代政治史。主な著書に、『明治憲法体制の確立』『日本憲政史』(以上、東京大学出版会)、『帝国と立憲』(筑摩書房)、『昭和史の決定的瞬間』『未完の明治維新』『日本近代史』(以上、ちくま新書)、『近代日本の国家構想』(岩波現代文庫)、『〈階級〉の日本近代史』(講談社選書メチエ)、講談社現代新書に『明治維新1858-1881』(共著)、『西郷隆盛と明治維新』などがある。

「2018年 『近代日本の構造 同盟と格差』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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