ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881005

感想・レビュー・書評

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  • キリスト教に対する嫌悪感が増してる立ち位置。

    ざっくり見れば結局、あまりにも不安定かつ不確実なキリスト教の成り立ちを後年というか現在に至っても引き摺っているということか。

    不安定故に理詰めにしなきゃいけなくて、それが様々な学問を発展させてきたと。けれど土台が明確でないから学問もまた不確実で結論は出ない。
    “文明は西から”というのは随分前から云われてきた事だし、それ自体は事実だし西欧の心の拠り所ではあるのだろう。けれど何層にも積み重ねた理詰めな社会が今はどうか。複雑にしたところで答えは出ていないのが現状だ。

    一神教の優位性を主張したいがためにdisられる多神教、他の文化や文明。それは優位性ではなく罪悪感から来てはいないのか? 他を断罪するのはキリスト教あるあるのようだけど、他が同じ方向を向いていないと本気で思っているのなら2000年間何をしてきた?と逆に問いたくなるほど愚かだ。

    西から来た文明。要するに他を強烈に排斥する強引さで突き進んできたからでしょ?
    宗教としての傲慢さも可視化してくれる良著でした。

  • 新書大賞2012.橋爪大三郎×大澤真幸対談集
    芸術、音楽、哲学に多大な影響を与えたカトリック。
    ペスト後のプロスタントによる自然科学、金融市場、資本主義の発展。
    そしてポストコロナの世界は何処へ。
    ざっくりキリスト教お勉強いいかもです。

  • 確かにキリスト教は不思議だ。

    ユダヤ教の成立から、歴史的事実を踏まえて、なんでこんな風になったのか考えて行く。
     面白い。
     一神教と多神教の違い。
     同じ一神教でも、なぜユダヤ教でなくイスラム教でなく、キリスト教が西洋文明を作ったのか。

     多分、いい加減だから。

     いい加減なものに帰依する自分を正当化するために、いろんな理屈を考えて来たんだろうね。

     面白い。

  • 分かりやすくてフラットでとてもよく出来ている。キリスト教の要素を学ぶことは現代日本を考える上で重要、というのを説明するのに私は下手だし、納得する説明が出来なかった。これなら、答えの一つになるだろう。

    あとがきにありますように、戦後日本という表札のある家族について「日本国憲法」「民主主義」「市場経済」「科学技術」「文化芸術」という子供がいるが全員養子ときた……、その当たり前を何故?と説明するのにも役に立つと思うし、他の家の養子お断りの姿勢も何となく理解するにも役に立つのかも知れない。

    でもやっぱり、宗教学概論はこれを切っ掛けに読んでほしい。

  • 予約者がそんなにいなかったのに、手元に届くまで半年以上もかかりました。
    厚くないし難しくもないのになぜでしょう?
    小説みたいに一気に読まないと気が済まない流れではないからかもしれません。

    自分はキリスト教関係の本をいろいろ読んできましたが、社会学の専門家、しかも二人で対談というのは初めてで、とても面白かったです。

    キリスト教には疑問がいっぱいです。
    この本でそのいくつかに納得できました。

    ひとつだけここに書き残します。まったく考えなかった知らなかったことなので。
    ユダの裏切りというテーマです。

    大澤「もし人類の歴史の中で最も影響力の大きかった出来事を一つ挙げろと言われたら、ぼくはイエスの処刑だと思うんです。たった一人の人間の死が、結果的には人類史に圧倒的な足跡を残し、いまでも大きな影響を及ぼしている。」

    たしかに。あそこでイエスが死ぬことなく、おじいさんになるまで平和に暮らしたら、キリスト教はなかったかもしれません。
    あの若さで。冤罪で。ローマ人のもとに。ユダヤ人のことばで。酷い死に方で。
    だからユダは大事な存在なんですね。

    橋爪「ユダは神の計画の一部で、ユダを動かしているのは神だ、とさえ考えられる。『ユダの福音書』という本があって、しばらく前に発見され、最近翻訳が出ました。そういう立場で書かれているんです。」
    「非常に短いもので、要点を言うと、ユダはイエスが最も信頼した弟子だった。イエスキリストが十字架で死ぬという計画を実現するために、どうしてもユダの協力が必要になった。そこでイエスは、ユダに言う。『ユダよ。お前は弟子たちのなかでいちばん信頼できる。私を銀貨で売り渡してほしい。これを頼めるのはお前だけだ』。でユダはそのように実行した。
    これは、ペテロが一番の弟子で天国の鍵を預かり、ペテロ以降代々、法王の座を受け継いでいまに至っているというカトリック教会にしてみると、絶対に認められない福音書なんですね。それでこの翻訳が出たら、バチカンが声明を出し、英米圏のメディアでは大きく扱われたけど、日本では一行もニュースにならなかった。」

    そうでしょうね。ユダは悪役で。このままでいいと思います。キリスト教はほんとうに素晴らしいけど、すべてが真実である必要はないのだと思っています。
    続編も読みます!

  • 一般人がキリスト教に持つ疑問、違和感が対話形式で専門家が解説している。ユダヤ教やキリスト教、イスラム教等の一神教は何故、発生したのかの考察は新鮮で興味深い。一言で言えばその民族が経験した過酷な運命が多神を捨てさせる結果になったと。

  • 唯一で全知全能の神は間違わないはずなのに、罪を犯すような不完全な人間を創造してしまう。そんな人間がはびこっているから、洪水で全滅させることにしたのに、義人ノアを見いだして彼らだけは救う。
    そういった不可解なことをいくつも取り上げては、どう考えるべきか解説される。

    第一部のまとめとして、意識レベルの信仰と、態度レベルの信仰という話があった。
    このくだりは、昔大学(ミッション系)できいたキリスト教関連の講義での話を思い出させる。
    講師は宗教学者、というより、神学者で、矛盾に満ちていることは承知の上で、そういうものだ、と受け入れるのが信徒だと言っていたことを思い出した。
    キリスト教は中世の魔女狩りのイメージもあって、科学に反するもののように思われるかもしれないけれど、近代科学が発展した動因は神の意志を明らかにしたいという意志だった、とも、その講義で聞いた。
    態度レベルに浸透したキリスト教的な発想が、世俗社会も含めた見えないシステムになっていくというのは、以前聞いた話とも符合するので受け入れやすかった。

    イエスは、ヨハネ福音書以外では「神の子」とはされていないという話が面白かった。
    その代わりに「人の子」と呼ばれているとのこと。
    「人の子」とは、一人の人間という意味に過ぎないという説がある一方で、メシアと解釈されてもいる。しかし、メシアとはユダヤ人を助け出す軍事的リーダーのことだった、とは。

    扱われる内容が多岐にわたっていて、とても全体を振り返ることができないけれど、そう言うことだったの?と思ったことも多々あった。

  • 2015/4/18読了。

  • 視点が2つあるのが良い。
    大澤真幸がキリスト教を外部から見る目。
    そして、橋爪大三郎が内在的に語ろうとする目。これこそ対話。しかし橋爪氏がほんとうのクリスチャンならばこうはいかない。ユダヤ教にもイスラム教にも距離をおき、三者を比較するだけでなく、橋爪氏は本書で語る間だけクリスチャンを演じているかのよう。この二重性、演技性が本書に厚みを与えている。
    宗教というのはそもそも「ふしぎ」なもので、キリスト教のみならず、ユダヤ教もイスラム教も仏教もヒンドゥー教も、みんなふしぎなことに変わりはないのだけれども。

  • ホントにそんなことつっこんじゃっていいの?という部分を一般の日本人の感覚で論じ合っててすごくおもしろいしわかりやすい。なによりこんなにもイスラム教やユダヤ教などの一神教にくらべて、キリスト教が矛盾をはらんだものであるのにここまで世界の支配的な価値観を形作っていることがまた興味深い。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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