感性の限界――不合理性・不自由性・不条理性 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881531

作品紹介・あらすじ

人間はなぜ生きるのか?行動経済学、認知科学、進化生物学、実存哲学まで――愛と自由と死とは何か?

人間の愛は「不合理」なもの?自由だと勝手に信じている人間が実際には「不自由」なのではないか?なぜ人間は生まれて死ななければならないという「不条理」に遭遇しているのか?そもそも、人間とは何か……?

――「行為」「意志」「存在」の限界をテーマに、行動経済学者や認知科学者、進化論者、実存主義者など多様な分野の学者からカント主義者や急進的フェミニスト、会社員、運動選手、大学生も加わり、楽しく深く広い議論を繰り広げる。そこから見えてくる人間の姿とは――。

限界シリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • カーネマンにドーキンス、現代ビジネスマンなら知っているであろう二人のエピソードが扱われる本書は「限界」シリーズのなかで一番とっつきやすいかもしれない。

    エルサレムのアイヒマン、核抑止力、あとがきで言及される震災。
    「感性」が極端に振れてしまうテーマにも踏み込んで扱う本書は、「なるほど」と関心する対象であったこれまでの限界シリーズとは趣が異なり、まさに感性に訴えかけてくる場面が多かった。

    哲学的思索にふけりつつ、道徳的探訪へ想いが至る本書からは学ぶところが多い。

  • 限界シリーズ3作目。
    3作目にもなると、これまで司会者に話を切られてきていたカント主義者や急進的フェミニストがしっかり発言できるようになってきている。
    仮想シンポジウムが続いていく中で運動選手と大学生Aの関係が少しづつ進展していくのも気になっていた。
    この限界シリーズは俳優に演じてもらって映像教材にしたらとても面白そうだ。
    本書の主題とは違うことばかり言っていると司会者に「そのお話は、また別の機会にお願いします。」言われてしまいそうだ。
    限界という越えがたい壁に挑戦し続ける人間の探究心に勇気をもらえる。

  • シリーズ三部作の最後をいきなり手に取ってしまいました。
    順番に行くべきなのでしょうが、興味を持ったのがこちらからだったので。

    できるだけわかりやすく、そしてトライしやすいようにシンポジウム形式で書かれているのでしょうね。
    話の種的な、知的な考察についてのいろんな引き出しを増やすための本のように感じました。
    これを読んで何かを深く理解したり納得したりというよりは、こちらを取っ掛かりにして深めていくためのきっかけ本なのでしょう。
    内容は難しいですが、すごく工夫をしてできるだけ噛み砕いてという意図で書かれたことが伝わってきます。

    「実存は本質に優先する」という言葉。初めて自分は知りましたが、ここに書かれたガリレオの例がとてもわかりやすい。そういうことかと納得。
    そして生きている以上は何らかの生きてる証を残したいと考えるのが人の常なのではないかと常々思っていましたが、「人間にとって最も崇高なのはむしろ自分を捨てる『無私の行為』なのではないか」という言葉と、その言葉と共に書かれた史実に衝撃を受けました。
    コルベ神父のお名前は耳にしたことはありますが、きちんと史実の内容を記憶していませんでした。

    生きてる証を残すことばかりが崇高であるわけではないのですね。確かに、無私の行為はなかなかできることではないです。
    難しく感じる内容もそれについての事例や説明がたくさんなされていて(そして時々脱線もしていますがそれもまた面白い)読み応えがあります。

    あとがきの内容にも考えさせられました。
    誰にでも薦められる本ではないですが、多くの人に読んで欲しい内容です。

  • 理性、知性に続く限界ディベートの3作目。行動経済学、ドーキンスの利己的な遺伝子論、意識、無意識と意識の関係に始まる存在の議論などについて。特に難解なテーマを扱っているわけではないので、少し物足りない。個人的には、それらの分野の本を何冊かまとめて寄せ集めたもの、という印象を受ける。『理性の限界』では、数学的には難しい不完全性定理などを扱い、多くの入門書は数式を用いるところ、簡単に数式なしで説明するところが魅力的であった。ただ、2作目以降は、自分でその分野の本を読めばいい、と思うような内容になってしまっていて残念。軽い入門書だという風に考えて読めばそこそこ面白いかも。

  • 愛と自由と死とは何か? 「行為」「意志」「存在」の限界をテーマに、行動経済学者や認知科学者、進化論者から、カント主義者、会社員、運動選手まで、多様な人物が登場するシンポジウム形式で、楽しく深い議論を繰り広げる。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40163577

  • 中身はともかく、話をうまく回すこの司会者になりたい

  • 二重過程理論:自律システムの働きで目先のタダというアンカリングに踊らされてギャンブルする。失敗した場合、今度は分析的システムが尻拭いの正当化を行って、自分の精神を安定させてくれる
    イシ:目標を達成するために理性的あるいは知性的に施行することが主体になる場合には「意思」、それよりも感性的な自発性を主体とする場合には「意志」

  • シンポジウム「感性の限界」開幕─結婚披露宴会場より
    結婚の選択
    人生の決断
    愛と別離
    シンポジウム再開

    行為の限界:
    1 愛とは何か
    知覚の因果説
    感情と脳
    条件反射
    リトル・アルバート実験
    恐怖心とアドレナリン
    愛と化学物質
    2 カーネマンの行動経済学
    心理学と広告
    国連実験
    マクドナルド訴訟
    アンカリング効果
    3 二重過程理論と不合理性
    ブーメラン効果
    刷り込み
    ヒューリスティック処理システム
    二重過程モデル
    4 人間行為の限界と可能性
    認知的不協和
    フレーミング効果
    合理性障害

    意志の限界:
    1 自由とは何か
    意志と意思
    欲求と環境決定論
    2 ドーキンスの生存機械論
    ミルグラムの実験
    服従実験の結果
    服従と遺伝的傾向
    利己的遺伝子と二重過程理論
    3 進化と不自由性
    複製子と自己増殖
    設計と複製
    ロボットの叛逆
    進化する自由意志
    4 人間意志の限界と可能性
    古典力学と決定論
    不完全性と不確定性と非決定論
    決定論と非決定論の絶妙なバランス

    存在の限界:
    1 死とは何か
    宇宙のスケールと進化
    ミーム
    死とミーム
    死と遺伝子
    2 カミュの形而上学的反抗
    究極の選択
    加害者と被害者
    自殺と真理
    不条理の意味
    形而上学的反抗
    3 意識と不条理性
    異邦人と不条理
    カミュとサルトルの論争
    テロリズムの意味
    科学の脅威
    4 人間存在の限界と可能性
    意識と無意識
    「私」の責任能力
    軍拡競争
    スターウォーズ計画
    宇宙・肉体・悪魔
    すべては幻想?

  •  水槽の中の脳やん。

     限界シリーズ三冊目。行為の限界、意志の限界、存在の限界。
     前二冊に比べて一番章題と内容の関連がよく分からなかった気がする。たぶん一番内容に関心がなかったから、理解しようって気持ちがなかったからだと思うけど。
     行為の限界っていうタイトルでなんでいきなり愛の話になってんのかなあっていう。まあ本のタイトルが感性の限界だから、分からんでもないけど。行為というか心って感じ。まあその行為の前提としての感情があるからってことかな?
     アンカリング、ヒューリスティック処理システムあたり、面白そうな話。行動経済学も面白そうだなぁ。
     意志の限界は自由意志と決定論。ただ切り込み口が遺伝子とかそういう系統だったのは面白かったかな。遺伝子レベルで決定されてるのかっていう。ミクロであるほど、複雑であるほど不確定になっていくっていう考えが紹介されてたけど、なるほどなって思いました。
     存在の限界は死について。カミュっていう哲学者もいたのかぁって思ってたら、普通に「異邦人」の作者だったね。無学がばれる。「異邦人」は好きだよ。あの主人公の考え方は共感できるところが多い。バナールの複合脳とかあたりはめっちゃSFでいいね。水槽の中の脳やん。あとそういう脳みそ、ラブクラフトにも出てこなかったっけね。クトゥルフ的な話で。いあいあ。

  • 限界シリーズの最終作。
    行為、意志、存在の限界から、人間がどのように選択し、行動して生きているのか3作品の中でも最も人間の内面の問題に迫る。
    具体例も多く、日々の生活に直結した問題を取り上げているのでシリーズの中で最も親しみやすく興味深く読めた。自分の頭で考えて判断して行動しているつもりでも、その根幹が揺らいでくる。
    科学の脅威や責任について語る場面で衝撃的だったのは、2002年、イギリスの雑誌にて「2020年までに100万人規模の死者を出すバイオテロが起こる」という予測について賭けが行われたという。コロナウイルスが人工かはさておき、これからの世界は武力テロだけでなく、バイオテロの脅威にもさらされているのである。ワクチンのないウイルスが突然出現したときに、生活に与える影響を私たちは身をもって経験している。高橋昌一郎さん、また新しいシンポジウム開いてくれないかな。

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著者プロフィール

國學院大學教授。1959年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。専門は論理学、科学哲学。著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』など、多数。

「2022年 『実践・哲学ディベート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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