新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)

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著者 : 松尾匡
  • 講談社 (2012年7月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881678

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

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  •  新左翼入門,ではなくて,それ以前の,明治から戦後までの日本の左翼について。エリートが理論を掲げて主導する道と,大衆の中から立ちあがる道の対立が,日本の社会主義運動には一貫してあった。
     大逆事件までの,キリスト教社会主義対アナルコ・サンジカリズム。大正期のアナ・ボル論争。昭和戦前の日本資本主義論争。戦後の共産党対社会党左派・総評。本書では,マル経教員の著者が,時代に沿って「二つの道」の相克を辿り,そしてそれをいかにして乗り越えるかを論じる。
     ただ,戦後が戦後まもなくで終わっていて,そのあと今後の話になるのは唐突な感じだ。
     あとがきにあった,右翼と左翼の定義には納得。右翼は世界をウチとソトに分けて,自分はウチに味方する。左翼は世界を上と下に分けて,自分は下に味方する。で,お互い相手を「ソトに味方しやがって!」「上に味方しやがって!」と罵るというのがすれ違いの元凶だという。世界の切り取り方が違っているので,出発地点から不毛。

  • 幸徳秋水から丸山真男まで、社会運動の歴史を「上から目線」と「民衆からの目線」という2つのアプローチの対立としてたどった一冊。タイトルからして、革マルや中核派の歴史かと思って買ってしまったが、そこにはほとんど立ち入っておらず、ちょっと物足りなさも。。終わり2章ではこれら2つのアプローチの欠点ではなく長所を総合する方法について考察しているが、やや抽象的で具体性が見えにくいように感じた。とはいえ、平易な語り口で日本の社会主義思想史がまとめられており、一読の価値はあるだろう。

  •  左翼、というより日本の社会運動における「上からの啓発」と「下からの革命」の相克をわかりやすく描き出した一冊。文体が平易なうえ、フローチャート付きで状況を整理してくれるため、流れがつかみやすいです。これに目を通しておくだけで、社会主義思想の見通しがとてもよくなりそう。

    「個人的にはこっちに肩入れするけどそれはそれとしてこんな問題点があったしこういうところは対立派の方が優れている」な記述が多いのは著者の誠実さを感じさせます。こういう論調は本当に大事なのですよね。

  • 1年ほど前に読んだ一冊です。

    内容は面白いですがタイトルが悪いですね。著者自身が付けた訳ではないのですが、失敗だと思います。著者自身も、出版社側のネーミングには不満がある様でしたが、譲歩したそうな。

    内容は、「日本左翼史」とでも言いましょうか、なかなか独特の分析で面白かったです。ただ、「労働運動史」でも「共産主義思想史」でも、「社会民主主義思想史」でもなく、あくまで左翼史ですので、深く思想史に入り込んで描かれることもなく、出てくる人物にも当然偏りがあり、出てくる論争も古き左翼独特の偏狭な論争なので、イマイチ物足りない気もします。あと、安保闘争について触れないのは、ページの都合とはいえあまりにも中途半端ではないかなと感じました。

    その分、幸徳秋水や山川均、丸山眞男、大塚久雄などお馴染みの人物が登場するので、詳しく知りたい人にはオススメです。また、アナ・ボル論争や労農派vs講座派論争などについても詳しく知ることができます。今読むと、左翼って狭い視野、狭い世界で闘っていたのだなぁと思わされます。また一方で、当時の政府による思想弾圧も酷いものがあるなとも。
    昔の左翼について知りたい人は読んでみてはいかがでしょう。

  • 新書文庫

  • 近代日本の左翼の運動史を、簡潔に解説している本です。

    著者は、NHKの大河ドラマ『獅子の時代』の主人公である苅谷嘉顕と平沼銑次について、嘉顕が理想や理念を抱いてそれに合わない現状を変えようとする道を選んだのに対し、銑次は抑圧された大衆の中に身を置いて戦う道を選んだと述べています。その上で、日本の左翼運動史を、「嘉顕の道」と「銑次の道」の相克として描き出しています。もちろん中心になるのは山川・福本論争から講座派と労農派の対立を経て、戦後の共産党と社会党の二つの流れが生まれるまでの流れで、もちろんこの一冊で左翼運動史の全貌を知ることはできませんが、大きな流れを把握できるようになっています。

    「左翼」の人気が凋落して久しいのですが、ナショナリストでありながらマルクスを高く評価する佐藤優の本などを通して、改めて日本の近現代史における左翼思想に関心を抱く若い読者もいることだろうと思います。しかしそうした読者の多くが、それぞれの時代における一流の知性が結集して議論を積み重ねてきた左翼思想史を前にして、たじろいでしまうのではないでしょうか。そうした意味でも、左翼の歴史をとにもかくにも新書一冊で概観することができる本書は貴重だと思います。

  • 「左翼入門」という名前がついているけれど、左翼の「入門書」というわけではまったくない。社会主義・共産主義に影響を受けた日本の社会運動や政治運動の歴史を、(1)理論的で理想的な、でも一方で上から目線になりがちな「嘉顕の道」と、(2)虐げられる人々の中に入り込んで、でも一方で排他的になりやすい「銑次の道」という二つの「道」に類型化して整理している。ちなみに、「嘉顕」「銑次」は、 NHKの大河ドラマ『獅子の時代』に出てきた登場人物からきている。

    非常にクリアな整理で、わかりやすい。戦後の日本の社会党・共産党の動向のところは、二つの道の「ダメなところ」が当てはまって退潮していったという見方。言葉遣いも明瞭で痛快。理論に偏りすぎると現実の人々の生活を切り落としてしまうし(共産党はこれ)、実践に偏りすぎると大衆の気分に流されたり、グループが閉鎖的になって排他的になる(社会党、とくに左派)。

    それから印象として持ったのは、本書が「普遍的な価値」をわりと信じているんじゃないかと思えるところ。一番よくあらわれているのは、文化相対主義に対して、「自分は人権を守られた先進国にいて、安楽椅子に座りながら「…その国にはその国のやり方がある」などと言って抑圧の犠牲者を見て見ぬ振りする姿勢は、当の犠牲者から見たら極めて身勝手な姿勢と映ることでしょう」 (p.207)と批判している箇所。むろん、真理の存在を前提にしているわけではないけれど、相対主義よりは普遍主義のほうが良いと考えているように読めた。

    とはいえ、戦後日本の社会運動の歴史をこの「二つの道」に整理してしまうと、どうも歴史の豊かさを切り縮めてしまうんじゃないかという気がしなくもない。著者は経済学が専門なのでそうなってしまうのかもしれないけれど、社会運動のもつ懐の深さというか、多様性が失われて、一種のマネジメント論的になっているような印象も少しあった。とはいえ、タイトル以上に面白い本。

  • 読了。

  • 日本の政治思想(アナ・ボル論争)を始め
    政治思想の流れを実力武闘派と広く浅くする流れの
    二つに大別する。

  • 明治維新以降の左翼運動を解説した本。話し言葉で読みやすい。

    前半は明治~第二次世界大戦までで、『日本近代史』(http://booklog.jp/item/1/448006642X)で描かれた時代とほぼ一致する。しかし登場する人物は全く異なり、『日本近代史』では描かれなかった面を知ることが出来る。
    後半は大戦以降からソ連崩壊あたりまでについて解説されている。

    この本の柱は「理論に基づいて人を動かそうとする立場」と「集団の一部として人を動かそうとする立場」との対立構造にある。

    本書の終盤では、その2つの欠点を補い合う形での組織発展を提唱していて、リーダー論や組織論としても読める。

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新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)の作品紹介

なぜ理想は対立するのか。荒畑寒村、山川均、大杉栄、丸山眞男等思想史を代表する知識人が、マルクス、レーニン等の影響下、どのように社会活動を議論したのか-。社会を変革しようとした男たちを全く斬新なアプローチでヴィヴィッドに描く痛快社会学。

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