超解読! はじめてのフッサール『現象学の理念』 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881692

作品紹介・あらすじ

現象学とは、「確信成立の条件」を解明する方法である-近代哲学の重要な原理を読み解く。大好評シリーズ第三弾。

感想・レビュー・書評

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  • 2016.6.23
    原典と比べたらわかりやすいことこの上ないが、故の分かりにくさというものもあるなと思う。最初に「現象学の理念」の原典を読むのはハードルが高すぎるので、まずこれを読んで大枠をつかみ、さらに何冊か入門書を読み、そして原典とともにこの本を手引きとして読めば、より現象学への理解は深まると思う。現象学批判に対する竹田さんの反批判は納得はできるけど、納得してる自分に不安を感じてしまうことも否めない。あと、竹田さんは現象学を確信成立の条件の解明学と読もう、と言ってるけど、その根拠はどこにあるだろうか。そう考えたほうがフッサールの言わんとしている意味を一番汲める、というけど、そんな説明のされ方ではそれはあなたの主観では?と思ってしまう。ただやはり、フッサール現象学のいち解釈としてはそのような猜疑心を持ってしまうが、竹田現象学という別物として理解するなら、やはりすごい考え方だとは思う。

  • 「はじめての」と題されるだけあって、難解なフッサールの『理念』が誰にも分かると言って差し支えのない平易な言葉で説明されていると思う。(とはいえ、雑に読んでさくっと理解できるほど甘くもない)
    さらに一般読者及び初学者に向けた入門的説明であるだけではなく、フッサールの現象学における核心について、その後の正統派現象学や実存主義やポストモダン思想(相対主義、構造主義)が誤った咀嚼の元に批判を展開してきたという、竹田青嗣氏の力強い主張が展開されているところに本書の大きな特色があると感じた。
    この「フッサールは誤解されているので見直すべき」という主張が竹田青嗣氏の独自的なものなのか、それとも現在の思想界でムーヴメントとして湧き起こっているものなのかどうか(類書があるのかも含めて)を、初学者である僕はまだ知らない。けれど、これから僕がフッサールを読み進めていく上で、氏の視点を心にしかと留め置きつつ本書を随時参照することになると思う。

  • 2016.3.13
    完全解読フッサール「現象学の理念」の姉妹版であり、そこでの竹田さんの解釈をさらに推し進め、もっとわかりやすくなっている。内在と超越、実的内在から構成的内在へ、構成的内在と超越の違いなど、現象学理解に必須の概念がよりわかりやすくなっている。しかしそれと同時に、これはあくまで竹田氏のフッサール現象学に対するひとつの解釈であり、また本著で述べられている通り非常に未だに誤解の多いものであるということも踏まえるべきものである。が、それを見てなお、やはりこの考え方は、非常に確信的で、今後の哲学の可能性を期待できるものである気がする。主観と客観は原理的に一致しえない、しかし我々はそれでも一致した世界を生きている。現実と幻想、実物と想像の違いがわからず生きている人はいない。一方に認識は不可能といい、しかし一方にはちゃんと認識して生きている現実がある。これをどう考えるか。フッサールはここで、方法的独我論、つまり一切は主観であるという方法をとる。これにより、一切は内在、つまり意識の中で現れた現象であり、そこから対象認識を構成している、と考える。そして、様々な認識の違い、概念や事物、現実と夢も含め、それらの違いが認識できるのは、それらの意識への現れ方が違うからだと考える。つまり対象がどのように意識に現れるかを内省することにより、その構造を把握することによって、我々の認識を本質的に捉えることができるとする。本著の中での現象学批判を見てても思うが、我々は想像以上に主客という認識の仕方にとらわれている。よって、客観存在をエポケーするということは、言われている以上に困難なことである。またフッサールの著作そのものの難しさもある。それらを乗り越え、確信の構造と条件を把握するのがこの学の本義だという結論に至った著者はすごいと思う。仮にこれがフッサール現象学の理解としては解釈によりすぎて、フッサールの言わんとしていることとは違うことを言っているとしても、それでもこの考え方自体に十分な価値があると思う。完全解読と、この超解読を読めば、フッサールの現象学的還元と本質観取の考え方は、大体把握できるように思う。あとは実際にやってみることだ。難解な哲学書であるフッサールの現象学の理念をわかりやすく解釈し、かつ現象学への誤解を解きながら、これこそが現代における認識の謎、信念対立を克服するものだと教える良書。個人的に今年は英語の勉強を頑張りたくて、英単語たくさん覚えなきゃだから、その機会を利用して、暗記という思考作用について現象学的還元をやってみる、暗記の構造を考えてみるのも面白いかも、と思った。あとこれは本質観取ではないけど、実的内在によって事物の要素を観取し、それが時間的枠組みの中で構成されつつ意味を構成し、構成的内在になるわけだが、この構成的内在こそ学習の賜物ではないか。構成的内在とは、我々が受けてきた教育、文化による、世界の受け取り方ではないか。よって人によっては棒切れが、どのような意味になるか構成的内在になるかは違う。でも実的内在から構成的になるという構造はみな等しいのか。そうか。んーやはり理解と実践は違うなー。あと、コップをまじまじと見つめながら、その意識作用を内省するのは、当たり前に支配されて中々その構造を取り出すのは難しいけど、例えば勘違いとか、錯視とか、夢と現実の違いとかを考えてみると、より現象学的内省がしやすいかもなと思った。意識を見てとるわけだけど、見たそこから何を見出すかは各々のセンスとかによるし、少なくとも私は実的から構成的への構造とな、射映とかは見て取れないと思う。言われればその通りだけど。現象学理解の難しさというより、現象学という方法そのものの難しさもここにはある。

  • 『人間科学におけるエヴィデンスとは何か』に入っていた竹田さんのフッサール解説に感動してもっと読みたくなり購入。『現象学の理念』を極めて容易に読み下しつつ、それでもわかりにくい箇所の解説も丁寧。主客一致問題という哲学の大きなテーマに対するフッサールのアプローチは非常にわかりやすいし、看護などの対人支援分野に取り入れられているのも納得する。社会的インパクト評価の文脈が下手な社会調査に荒らされる前にみんなでもっと現象学の勉強をしたい。

  • ■著者が扱っているメインテーマ
    認識問題とは何で、それと解く現象学的還元とは何か?

    ■筆者が最も伝えたかったメッセージ
    内在意識から出発し、他人のそれと同じ構造を持つか
    疑いえない意志内で反省された事象同士の一致である。

    ■学んだことは何か
    客観という考え方ではなく、内在意識の構造の一致の働きがあるということ。
    つまり、主観から生まれた思いを前提に他社の考え(客観)を規定する。

  • 榊原哲也先生の本を読み終わってから、現象学について学びを深めようと考えて手に取った本。2周したけど、分かったような、分からないような。でも、おそらくこれが一番平易に書いてあると思われる本。

  • 時間意識の問題についての解説がけっこう楽しく読めた。
    意識と知覚などなど現象学における認知の扱いは難しいけどおもしろい。

  • 現象学は、「世界確信」の一般理論として認識問題を解明する。このことの理解が可能となるとき、現象学は「普遍的思想の可能性」といsての「本質学」の展望を切り拓く、という理念もまたはじめて可能となるだろう。
    「本質学」は、人間と社会の「意味」と「価値」の関係性の理論である。そして「内在」の領域こそは、人間の「意味」と「価値」がたえず生成されているその現場にほかならない。哲学の新しい領域としての「本質学」の展開は、フッサール自身においてはほとんどなされなかった。この課題は現象学的方法の核心を受け取りなおす次の世代によって、新しく再始発されるに違いない。(竹田)

  • 2017.07.10 現象学はなかなか難しい。輪郭は掴めたかもしれないが、十分な理解には程遠い。難しいが面白い。

  • 『完全解読フッサール『現象学の理念』』(講談社選書メチエ)と同じく、フッサールの『現象学の理念』を著者がやさしく読み解いた本です。

    『完全解読』よりもいっそう大胆にフッサールの議論をパラフレーズしており、読みやすくなっているように思います。また『完全解読』と同様、フッサール現象学のキモは「確信成立の条件」を明らかにすることにあるという著者自身の現象学理解が示され、その立場からフッサール自身の議論の流れにそくして解説するという構成になっており、著者の解釈の成否をある程度読者自身が確かめることでができるようになっています。

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著者プロフィール

1947年生まれ。哲学者、文芸評論家。著書に『「自分」を生きるための思想入門』(ちくま文庫)、『人間的自由の条件ーヘーゲルとポストモダン思想』(講談社)など。

「2007年 『自由は人間を幸福にするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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