私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

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著者 : 平野啓一郎
  • 講談社 (2012年9月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881722

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

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  • 唯一無二の「本当の自分」なんてない。
    自分探しで苦悩している若者、対人関係で生きづらさを感じている人に、特にお勧めな1冊です。

    高校時代、友人の未知の一面を目の当たりにしてショックを受けたことがあります。私の知っている彼女は、偽りの彼女だったのか、と。
    当時は森絵都さんの「カラフル」を読んで救われ、人には多面性があることを受け入れることができました。

    ところが成長するにつれ、「本当の自分」と「様々な一面(ペルソナ)を持つ自分」という解釈だけでは生きづらさを抱えるようになります。
    そもそも「本当の自分」なんてものはなく、「本当の自分」=「思い描く理想の自分」に過ぎず、掴まえようとしても指先からすり抜けていく幻のようなものだとやがて割り切るようになりました。
    なのでずっと思い悩むことはなかったものの、釈然としないモヤモヤ感が残っていましたが、この「分人」という概念は非常にしっくりと腑に落ちるものでした。

    本書でも書かれていますが、複数の分人を生きることは、精神のバランスを取るために必要なことかもしれませんね。自分が自然体でいれる場所、自分の好きな分人でいれる相手との繋がりは大切ですね。

    恋愛についての「愛とは、「その人といるときの自分の分人がすき」という状態のこと」という説明も、非常にしっくり。
    人間が他者との相互関係の中で生きていることを考えれば、この「分人」の概念を持っていることで随分と生きやすくなるように思います。

    さらっと流してしまいがちな観念について、小説を書きながらこんな風に丁寧に向き合う著者が素敵だなと感じました。小説も読んでみたい。

  • 「本当の自分は何か?」「自分には個性がない」自分は何者なのか?その問いに人々は頭を悩ませる。自分を探して旅に出たりする。
    確固とした唯一無二の「本当の自分」なんてものは存在しない。
    誰といるか、どこにいるかによっていくつもの自分の姿は現れる。分割不可能な個人ではなく、分割可能な〝分人〟であると、著者は言う。


    それで思い出したのが、自分の高校生の頃。

    私は、教室では、明るくノリよくみんなみたいにおしゃべりできない、いけてない人。一年間で一言も話したことがない人がクラスにいて自分が話しかけたら、迷惑だろうと、思っている。通学路で一緒に帰るなんて、会話が持たないのが怖いからできない。

    教室から出て、職員室や図書館の司書室にいる先生たちのが愉しく話せる。美術室には、自分の教室での顔を知らない人たちがいる。
    さらに高校の外の、絵の先生や近所の児童書専門店の店長とは愉しく話せる。

    教室にいることは心地よくない。
    それなのに、外の人とは話せる自分って何だろう?と、思っていた。自分は根暗なのか?それなのに、年上の大人とは話せるのはどうしてか?
    親に向けた自分の姿があり、高校での自分の顔を知られたくないとも思っていた。

    今思えば、教室での分人をうまくつくれなかっただけのこと。つくるためのそこにいる人たちとの共通言語や関わりの作法(みんなが手を叩いて笑うことを同じように笑えるようなこと)を持てなかったということ。

    他の分人で心地よいところを選び、それがあったからバランス取れていたのだと思う。

    分人、自分の様々な側面は相手との相互作用、関係性から自然に引き出される。
    分人が複数あるからアンバランスではなく、だからこそバランスを保っていると、著者は言う。

    学校だけとか、家庭だけ、仕事だけでは生まれない。場と自分の硬直した関係ではなく、個人のしなやかさと、出入り自由な場所、環境が必要ってことですね。

    そもそも人は多面的で変わりゆく存在なら、「こんな人だとは思わなかった!」とか、「昔はこんな人ではなかった」と言うことは、ナンセンス。
    それは、あなたが見ていた、その人の分人でしかない。

    分かり合えない部分があるのが人間。
    これを読んだ人は、「分かり合えないことから」平田オリザも読むとよいかも。

    分人とゆう著者なりの定義付けに目からウロコ。

    とってもよい本でした。

  • これまで生きてきてどこへいってもつきまとってきた、「この今の自分は、この人に見せて大丈夫なやつだっけ?」の怯え。「こんな一面があるんだね」と思われる恥ずかしさ。
    こういった自分の欠点と思ってきたことを『分人』という言葉で理路整然と説明してくれた!
    『分人』という概念を持っているだけで、色々なことに説明がつく。腑に落ちる。

    以下、本書より得たこと。忘れないように。

    ・あることで悩みを抱えていたとしても、それは自分の中にいくつもある分人のうちの一つであって、居心地の良いと感じる分人の割合を大きくして足場にしていけばいいのだ。

    ・この人のこと本当に好きなのか?と思ったならば、この人といるときの自分は好きかどうかを問うたらいいのだ。

    ・どんな犯罪者であっても、それは社会でそれまでに経験して培われてきた分人が成した犯罪であって、そのプロセスをトリミングしてその人間のみを悪人だと決めつけてはいけない。トリミングの外側を見ること。想像力を持つことを忘れないこと。

  • ブクログの談話室でこの本を知り読みたくなりました。
    考えることが不得手なので「私とはなにか」とかぶっちゃけ考えたことないのですが、この本の、人は「個人」ではなく「分人」で生きている、という考え方は人間関係を楽にするような気がします。日々暮らしていく中で出会う「他人」も
    「分人」で私と交流してるんだ!と解釈できれば、「あの人は私とAさんとで態度が違う...」と悩まずに済みますね。お互いたくさんの「分人」を使い分け、影響しあってるんですねー。
    自分も「分人」だととらえると「会社にいるときと、恋人といるときとどっちが自分の本性?(妄)」と思わずに「全部自分の「分人」なんだ...。」と思うと、なんていうか、観念します(笑)
    興味深いのは本や芸術やペットに対しても「分人」で対応しているといっていること。そうか、谷崎潤一郎にハマった自分も「変態エロ魔神」が本性ではなく(笑)谷崎の「分人」によって影響されて出てきた私の「分人」のひとつなんだ、と思うと面白いです。
    著者は芥川賞作家の平野啓一郎さん。
    彼が「分人」の問題に絡め、過去作の解説もしている記述もあり読んでみたくなる。

  • 作者 平野啓一郎 初めて読んだ。他に小説は読んだことはない。
    「本当の自分」など存在しない。
    対人関係ごとに見せる複数の顔がすべて「本当の自分」
    パリでの語学学校の話、高校・大学時代が一緒にした友人の話、
    個人は分けられない、しかし他者とは明確に分けられる。
    複数のコミュニティへの多重参加→大事
    内部の分人には融合の可能性がある。
    また、好きな人嫌いな人というより、誰といる時の自分が好きか嫌いかで、相手の好き嫌いができてしまうというところがわかった。
    相手のことよりも、むしろ、そこにいる自分のことをどう思うか。

  • 著者と似たような年代だからなのか、話にものすごく共感できた。
    「個性を持ちなさい」といわれ教育されて来た世代で、インターネットなどによるコミュニティの普及で「分人化」が急速に進んだ世代。
    だからこそ共感できたのかもしれないが、もっといろんな世代のヒトに読んでもらいたい、大切な一冊になった。

    自分自身の中でも、「あっちに対する性格」「こっちに対する性格」に違和感を感じたり、苦しみを感じたり、人間関係がうまくいかない人とのやり取りで苦しんだり…。
    しかし著者の「分人」という考え方で、すんなりと、「これでいいのかもしれない」と思えるようになりました。

    なんか新興宗教とか新手の自己啓発本読んだあとのような感想になってしまいますが、こんなにストンと納得できた本も珍しいです。

    著者の本は「決壊」しか読んでいなくて、しかもここの感想はさっぱりしたもの程度だったので読み直してみたいです。感想が変わりそうで楽しみ。「ドーン」「空白を満たしなさい」や作中で出てきた古典を読んでみようと思います。持ち歩きたいくらいいい本。

  • 自己の個性とは如何に形成されるかということを「分人」という概念で分析される本書はすぐれた哲学書に感じられた。筆者は小説家なので煩雑な専門用語がちりばめられることなく読みやすい。何度か再読したい」本の一つだ。

  • 自分というものを考えるとき、ふと感じていたことがこの本でしっかり整理されてて、納得しまくった一冊。

  • 本当の自分とは何だろうというのは、誰もが通る疑問なんだろう。学校で友達と会っている自分や会社で叱られる自分は、本当の自分ではなく、もっと素晴らしい自分が他にいるんだ。それを探さなくては、なんてことを考えている。
    その疑問は、分人という概念を取り入れる。分人は学校の自分も、会社にいる自分も、家庭にいる自分も全て本当の自分とする。その考えで救われることがある。自分探しに焦る必要もないし、会社、学校でうまくいかなくても、家庭にいる自分にウェイトを置けば楽になる。
    複数の自分を生きられるのも実に魅力的だ。

  • ーーーーー山下2017/8/29ーーーーー
    【概要】
    人間は決して唯一無二の「(分割不可能な)個人 individual」ではない。複数の「(分割可能な)dividual」である。
    【評価】
     90点
    【共有したい内容】
    人間には、いくつもの顔がある。—私たちは、このことをまず肯定しよう。相手次第で、自然とさまざまな自分になる。それは少しも後ろめたいことではない。どこに行ってもオレはオレでは、面倒くさがられるだけで、コミュニケーションは成立しない。だからこそ、人間は決して唯一無二の「(分割不可能な)個人 individual」ではない。複数の「(分割可能な)dividual」である。

    1人の人間には複数の分人が存在している。両親との分人、恋人との分人、親友との分人、職場での分人、…あなたという人間は、これらの分人の集合体である。

    集合体の中には、ポジティブな分人もあれば、ネガティヴな分人もある。分人が他者との相互作用によって生じる人格である以上、ネガティヴな分人は、半分は相手のせいである。裏返せば、ポジティブな分人もまた、半分は他者のお陰なのである。私たちの人格そのものが、半分は他者のお陰なのである。

    私たちは、日常生活の中で、複数の分人を生きているからこそ、精神のバランスを保っていられる。会社の分人が不調をきたしても、家族との分人が快調であるならストレスを軽減される。

    自分に対して否定的になっている人に、まず自分を愛しなさい、自分を大事にしなさいと言ってもあまり意味がないのではないか?
    しかし、分人単位で考えて見るとどうだろうか。
    人はなかなか、自分の全部を好きだとは言えない。しかし、誰それといるときの自分は好きだとは言えるのではないだろうか。そうして、もし、好きな分人が1つでも2つでもあれば、そこを足場に生きていけばいい。
    誰かといるときの分人が好き、という考え方は、必ず一度他者を経由している。自分を愛するためには、他者の存在が不可欠だという、その逆説こそが、分人主義の自己肯定の最も重要な点である。


    なぜ人を殺してはならないか
    1人を殺すことは、その人の周辺、さらにその周辺へと無限に広がる分人同士のリンクを破壊することになる。
    1人の人間が死ぬことで、無数の人間が自己変革の機会や成長のきっかけを失う。好きな自分になり得たかもしれない分人化の可能性を失う。

    【読んだ方がいい人】
    人間関係に悩んでいる人
    【自由記述】
    分人という新しい考え方に驚いたが、納得できるものだった。

    テレビで芸能人の犯罪報道が流れれば、普段のイメージから一転して「本当は」こういう人だったのか、と認識してしまったり、知人友人が、自分以外の第三者に自分に見せない顔で接していたりすると不満や不快な感情を抱くことがある。
    この本は、それぞれの別の分人があるから当たり前のことである。と説明している。
    そして、その分人は自分と相手のコミュニケーションの中で形成されるため、分人の半分は自分に責任がある、としている点で少し厳しい意見でもある。

    人は1人では生きられない、他人に感謝する気持ちを持て、という話はよくあるが、その理由を分人を用いて、半分は自分の責任だが半分は他者のお陰だからと説明している点で納得がいった。
    【合わせて読みたい】
    一瞬で人間関係を作る技術 エマジェネティクス




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私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)の作品紹介

小説と格闘する中で生まれたまったく新しい人間観!嫌いな自分を肯定するには?自分らしさはどう生まれるのか?他者と自分の距離の取り方-。恋愛・職場・家族…人間関係に悩むすべての人へ。

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)のKindle版

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