学び続ける力 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881883

感想・レビュー・書評

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  • システムに乗っかっていると、「なぜ自分はこれをしているのか」という疑問さえ生まれない、ある意味では平和な精神状態が揺蕩う。

    考えなくとも、責めなくとも、ただあるがままの事態に身体を委ね、思考を浸していることは、ラクだ。

    けれど、そのことに虚しさを感じる時があるのなら、こういう本を読んで勇気を持てば良いと思う。

    東日本大震災の際、原発に関する専門的知見が、一般大衆には分かりにくい、不安を拭えないものであったという指摘は、以前にも誰かの本に書いてあり、多くの人はそう感じていたことを知った。
    専門外の人に対しても、分かりやすく説明する使命を池上さんは感じたようだけど、受け取る側にも一定の姿勢が必要だと思う。

    それが、この本にもある、謙虚さや批判だ。
    この二つは真反対のことのようで、受け取り方と、受け取ってからの調理の仕方という一連の流れでもある。

    謙虚に受けとめたからといって、いつもそのまま吞み下す必要はない。
    また、的確な批判は、ていねいな聞き取りから始まるように思う。

    話をする立場の人間から感心させられたことは、学生にどう話すかのくだりだ。

    時代の空気感を伝えられるように。
    見えない感覚を言葉で表現できるように。
    その場の雰囲気から、話題を変えられるように。
    より具体的な内容の話を交わすことで、相手からも具体的な内容の返答を得られる。
    など。あ、これは考えに入れておきたいな、と感じるコツが幾つもあった。

    何のために学ぶか、という問いに真正面から向き合っている人はどのくらいいるのだろう。
    全ての国民が、義務としての教育を受けながら、学びのシステムの中で、満たされているのだろうか。
    空虚さを感じてはいないだろうか。

    システムとしての教育に満足出来るのであれば、その人にとって教養は意味を持たないものだと、私は思う。
    ならばなぜ学ぶのか、を自分の内側に当てた時に、世の中にある目もくれなかったものに、光が当たるのかもしれない。

  • 著者の本は様々な観点から物事を捉えて、それをわかりやすく丁寧な解説をしているので、これまでいろいろ読んできました。
    しかし、この本は具体的な方法論ではなく、学ぶことの意味を考えさせてくれるものでした。
    『すぐ役立つことは、すぐ役に立たなくなる。すぐ役に立たないことは、ずっと役に立つ。』
    社会に直結した専門的知識を養うのも勉強ですが、今後は様々な状況でも対応できる教養も身に付けたいと思います。

  • 学生時代に読みたかった一冊。
    ブックマークだけつけてここまで来てしまった…

    主に大学生に向けて講義する際に留意している点などが記載されているので、大学生には特におすすめ。
    学生じゃなくなっても学ぶ姿勢、学びとは何かを池上さんなりに説明しているので、とても参考になる。
    何よりテレビの解説と同じくらいわかりやすい。

    池上さんがショーペンハウエルの本から抜き出した、「読書は他人の思考を反復するだけ」、というのはなるほどと思い、学んでる気になってる身からすると、ぐさっと刺さりました。
    たしかに読み終えてからこの感想を書くまでにも、すでにぽろぽろと内容は抜け落ちてる。
    自分なりにインプット、アウトプットして定着させていこう。

  • 読むだけでなく考える
    机上の理論ではなく自己の見解、いろんな角度からものをみること
    すぐ役立つ知識はすぐに不要となる
    自己を深めることが知恵となる

  • 読書は役に立つのか以前から疑問があったが、読書はザルで水汲みのようなものと知ったいまは、すぐに役に立たない本も含めて、長期的な視点で読書を継続することも役に立つような気がした。

  • 著者の長年の疑問「教養とは何だろう」を、東工大教授としての経験を踏まえ、「学び続ける力」と絡めて著した本。「教養」や「大学で身に付けるべき力」について、著者の卓見がちりばめられている。
    ただ著者がいう、教養(culture)=リベラル・アーツ(Liberal Arts)には、若干疑問符が付く。しかし、リベラル・アーツが、自ら自由(Liberal)に問題を設定して新しい解を探していく技法(Arts)を意味し、その力を身につけて、市民自らの責任で積極的に社会に関わること(engagement)が、教養であると定義するならば、リベラルアーツと教養は不可分の関係にあると言える。ただ、本書は、いわゆる「教養論」をテーマにしたものではない(著者も認めている)。あくまでも読書を通して学び続けることの意味や楽しさを説いたものである。
    大切な点は、読書だけではだめだということで、「読んだことを後でさらに自分で考えてみなければ、(略)多くは失われてしまう」ということだろう。つまり、読書→自分で考える→行動すること。このプロセスが、社会の中で発揮できる力となり、「より良く生きること」に繋がれば、それこそが現代版「教養」であり、「学び続ける力」に繋がると著者は言う。示唆に富んだ著書である。

  • テレビでも有名な池上彰が、東工大の一般教養の授業で教鞭をとることで色々得たことを披露している一冊。

    そして、文字通り「学び続ける」ことが重要だということを認識した。

  • 学ぶことの大切さと楽しさを教えてくれる本。どのように学んでいくかを池上さんの経験も交えながら説いてくれている。大学時代に読んでいたら少し講義の受け方や課題のこなし方が変わっていたんじゃないかと思った。
    テレビで解説しているのと同じような調子で本が書かれているので、池上さんが目の前で話してくれているかのような印象で読みやすい。一方で難解なところがなく自分で考えたりしなくても読めてしまうため、記憶に強くは残りにくい。定期的に読み返して、都度学ぶことの意義を再認識したい。
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    印象に残った言葉
    批判力(38ページ)
    その本が言っていることはそもそも正しいのか。著名な学者が書いた本でも、おかしいことがあるかもしれない、と批判的に読む
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    伝える力(118ページ)
    聴いていて絵が思い浮かび、なおかつ論理が通っているとストンと腹に落ちる、それが本当の意味での伝える力(東工大教授 本川先生)

  • 池上さんがNHKの記者時代にどういう勉強をしていたとか、NHKを辞めてから大学の公開講座に通っていた話とか、どうして東工大の先生を引き受けることにしたのか等が話しているような感じで書かれていて、新書というよりは、プレジテントとかあの手の雑誌の記事みたいな軽さで読める。
    それはともかく、学び続けることに対する池上さんの考えや姿勢にはほぼ同意。ちょっと古いかな…って思ってしまうところもあったけど、そこは世代差として割り引いて考えて、いろいろと参考にさせていただこうと思った。

  • 勉強法や読書法を身につける一環として読んだ。

    ・歴史は追体験をしたり因果関係を知るために学ぶ。
    ・読むことと思索することのバランスが重要。
    ・辛くなったら本に逃げ込んでいい。

    歴史が苦手で、考えることがヘタで、絶望を抱えることが多いのでこのへんのことばが印象に残った。

著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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