世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書)

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著者 : 臼杵陽
  • 講談社 (2013年1月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881890

世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

  • 著者の臼杵陽氏は、東京外語大アラビア語学科卒の、在ヨルダン日本大使館専門調査員、エルサレム・ヘブライ大学トルーマン平和研究所客員研究員などの経験を持つ、現代中東政治・中東地域研究を専門とする政治学者。
    本書は、過去一世紀に亘り、中東問題、更には世界政治問題の中心の一つであり続け(ここ数年でこそ、中東の焦点はISに当たってはいるものの)、かつ、未だに解決の糸口さえ見いだせない「パレスチナ問題」を、世界史という長期的・広域的な観点から位置付け、問題の根源がどこにあり、それがどのように展開し、現状はどうなっているのかを詳細に考察したものである。
    内容は、大きく3部に分かれ、第1部では、3つの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の相互関係から始まり、十字軍、東方問題まで、第2部では、帝国主義時代から第一次世界大戦後の英仏支配、第二次世界大戦後の米ソ冷戦期におけるアラブ・イスラエル紛争のうち第三次中東戦争に至るまで、第3部では、パレスチナ・イスラエル紛争への変質(アラブ・イスラエル紛争のパレスチナ化)から、湾岸戦争後のアメリカ単独一極支配とそのアメリカの覇権の終焉、アラブ革命の勃発までを扱っている。
    私は、本年1月にエルサレムとパレスチナを1週間ほど一人で旅をするにあたり、①3宗教の聖地としてのエルサレム、②パレスチナ問題、③ホロコーストを経験したユダヤ人という、相互に関連しながらも異なる3つのテーマを自ら設定した上で、それら(特に②)に関する自分の知識を整理し、深めるために本書を購入した(旅にも持参した)のだが、新書ながら400頁を超える中身は非常に濃く、大変役に立った。特に、前近代における「ユダヤ教徒という信徒集団」が、近代に入って社会進化論・人種論あるいは優生学などの疑似科学的な議論の広まりの中で「ユダヤ人という人種」とみなされるようになっていったこと、第1次中東戦争の裏側には、イスラエルとトランスヨルダン(現ヨルダン)とそれ以外のアラブ諸国の三者にそれぞれの思惑があり、全体としては事前の秘密合意に従った軍事作戦を展開していたことなどの詳しい記述は、大いに興味を惹くものだった。
    著者は最後に、「私自身、かつてパレスチナ問題を語ることは人類の解放を語ることにつながるのだという確信をもち、差別や抑圧のない社会を作るための一助になりたいという理想に燃えていたことがありました。・・・このような新書を著すことによって問題の所在を明らかにして解決の方向性を見出そうと試みたのですが、いっそう深い森に迷い込んだ感じで、むしろ将来的な展望が見出せなくなってしまったというのが本音といったところです」と記しているのだが、実際に現地を歩いてみると、宗教と民族とナショナリティが多次元的に複雑に絡み合っていることを実感し、自分としても著者と同様に混乱の度合いが深まったような気がする一方で、エルサレムや、パレスチナの中でもベツレヘムやラーマッラーにおいては、ただただ穏やかで平和な時が流れているということも強く印象に残ったのである。
    宗教・歴史・政治あらゆる面からの現代世界の縮図ともいえる「パレスチナ問題」を深く理解し、更に世界の将来を考えるために有用な一冊と思う。
    (2017年1月了)

  • 文体はですます調で、なるべく分かりやすく伝えて下さろうとしているのでしょうが、主語の煩雑さが、私には一読では理解しにくいと感じました。それでも新たな視点を与えてくれる内容が多く、後日改めて読んでみようと思います。

  • おすすめ。キリスト教とかユダヤ教とかイスラム教とか、自分がいかに無知かがわかりました。

  • 人類が同胞であるという普遍性 バヌー・アダームであるという意識

    第一次世界大戦後のイギリスの三昧舌外交におけるバルフォア宣言1917年11月
    イギリスシオニストに対するユダヤ人のためのナショナルホームの設立への賛意表明
    →言語を軸とする民族集団であったアラブ人から、ユダヤ教徒が除外される→ユダヤ人対非ユダヤ人=アラブ人という民族的対立が創出されることに!

    多文化主義的な緩やかなイスラーム的統治↔︎一民族一国家という近代国民国家政治システム

  • (2014/07/20購入)

  • パレスチナ問題というのは永遠に解けないパズルで、もし解決するとしたら、外からの強大な力によって一旦粉々にならないと無理なのでは、というほどの絶望感だ。

    400ページを超える力作で、多くの発見をもたらしてくれる好著だと思う。

  • イギリスには17世紀半ばのピューリタン革命以来、ユダヤ教徒の復興への支援の流れがあった。16世紀初頭の宗教改革を境として、聖書解釈においてカトリックの反ユダヤ的姿勢からプロテスタント、とりわけピューリタンの親ユダヤ的姿勢への転換が起こった。
    ナチスとユダヤ機関は移送協定を結んで、ドイツのユダヤ人資本をパレスチナに輸入する工夫をした。まずユダヤ人は移民前に資産を売却し、その売却資金で農機具などの製品を購入してドイツからの輸出品というかたちでパレスチナに移送し、そして移民ユダヤ人はパレスチナで売却された輸入品の代金を受け取るという世界恐慌経済の中で、ドイツにとっても迫害をうけるユダヤ人にとっても利益のある協定をつくった。
    キリスト教に内在化されたユダヤ教排除の思想とその政治体制は反ユダヤ主義という病根を受け継いだ。

  • イスラエル/パレスチナ問題を、聖書の時代から現代に至るまで、懇切丁寧に解説してくれる本著。「どうしてこうなったの?」と思う方々は、ぜひ、手にとってもらいたい。

  • ざっとしか読んでないのだけど、借りて来た中でパレスチナについて一番詳細に書かれた本。
    まずパレスチナの場所や民族、宗教、歴史が書かれ、ユダヤ教から見たキリスト教と反ユダヤ、イスラムから見たユダヤ教とキリスト教というふうに比較した書かれ方をしていてわかりやすい。
    そしてユダヤ人とアラブ人の歴史、紛争について書かれ、最後に日本がパレスチナに絡んだ話が紹介されている。
    日本赤軍が絡んでいたことはこの本で初めて知ったのでびっくりした。

  • パレスチナを含む、中東の泥沼事情を知るために読了。

    「イエス・キリスト殺し」「十字軍」「レコンキスタ」「大航海時代」「オスマン帝国の東方問題」などなど、重要な世界史の事件を時代ごとに切り抜いて現代のパレスチナ問題を巨視的に捉えている良書。

    かなり専門用語も多く、複雑な問題が折り重なっているので
    「読んでだいたい分かった?」と聞かれると、うーんと唸ってしまう。
    歯切れの悪い答えしかできない。

    ただ、国際政治の登場人物が誰なのか、いつぐらいに何をきっかけにして登場してきたのかというのは、読む前に比べるとだいぶ理解が深まった気がする。頭の中の中東地図がだいぶクリアになってきた。

    <引用>
    パレスチナ問題がいまだに解決を見ないのは
    国際政治と地域政治と国内政治の三層構造の中で、相互にがんじがらめになっているからです。

  • 大変わかりやすい構成で、歴史的背景がとてもよく分かる本。
    これ一冊で大体のパレスチナ問題の大筋は分かる読みごたえのある本。

    紛争当事者たちも解決を求めている。
    イスラエル人のシャローム(平和)とパレスチナ人のサラーム(平和)がそんなにもかけ離れてるとも思えない。
    にもかかわらず、和平交渉は難航し、解決の糸口さえも見つからない。
    言うは易しやるは難し

    【どうすれば解決できるかよりも、なぜこれまで解決できなかったのかという視点を持たなければならない。】

    このアプローチの仕方は大変遠回りではあるけれど、大変興味深い問題だ。
    会社組織においても小手先の解決策や、企画をうったところで何も変わらない。やった気になってるだけの奴が多い。
    歴史を学び、擦り合わせることをしなければ、新たな視点も見えてこない。そう感じた。

    パレスチナ問題を学ぶことは、
    人/物/金/情報
    が国境を飛び越え瞬時に分かるこのグローバル化した社会で、当事者も第3者も平和を求めているにも関わらず、現在進行系で戦争が行われている

    「世界規模の矛盾」

    だと思った。


    僕たちは一個一個の小さな矛盾から解決していかなくてはならない。

    自分の利益のために、自分が招いたある1つの矛盾は、その矛盾を上塗りするがごとく「嘘」で塗り固められる。

    その「嘘」は「噂」により真実になり、「当事者の矛盾」は「第3者の真実」になりうる。

    それは巡り巡って、糸が解けなくなり、
    当事者は「そんなつもりじゃなかった。」と思っても、SNSがはびこる世の中は許さない。

    僕らが出来る事は矛盾をできるだけ無くすこと。大きな問題にしないこと。そして、小さな矛盾を解決してあげること。

    そのぐらいだと思った。

  • 「鋼の錬金術士」のイメージやパレスチナに行った外傷外科の先生のコメントで、イスラエルというのは陰湿でとんでもない人たちだという先入観があったが、そこに至るまでのやむにやまれぬ事情が少しは理解出来た。特に、現在、中東に深く介入しているのはアメリカだが、そもそも大英帝国の政策に問題の根源があるということを改めて確認できた。

    ボリュームのある本だが、半期の講義のような感じで非常に読みやすい。力作である。

  • 『まんがパレスチナ問題』、『アラブとイスラエル』と講談社現代新書の2冊を読み終わってからの読了。
    で、正解だったと思った。
    いきなりこのタイトルを読み始めてたらその情報量的にもきつかったろうなーと思う。
    割と淡々と書かれていて、力作、良書では。

  • 請求記号:228.5/Usu
    資料ID:50069296
    配架場所:図書館1階東館 め・く~る

  • 中東問題、とりわけパレスチナについての歴史をまとめた本。扱う地域はごく限定されているが、扱う時期が長いのに加え、複雑な事情が絡み合っているために読み応えがある。パレスチナ問題を知りたい人にとってはいいかも。

  • パレスチナ問題が詳しく書かれてあってわかりやすい。世界史では習わなかったことがたくさん述べられているから、大学での授業に役立つ

  • 非常に整理されていて読みやすい
    もう少しだけイスラム教の中の話を突っ込んでくれたら良かった

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