- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062882330
作品紹介・あらすじ
ユーミンの歌とは女の業の肯定である--。ユーミンとともに駆け抜けた1973年からバブル崩壊まで、キラキラと輝いたあの時代、女性達の意識と世の中に与えた影響を検証する。ユーミンが我々に遺した「甘い傷痕」とは? 著者初の新書(単著)。
【目次】
1 開けられたパンドラの箱 「ひこうき雲」(1973年)
2 ダサいから泣かない 「MISSLIM」(1974年)
3 近過去への郷愁 「COBALT HOUR」(1975年)
4 女性の自立と助手席と 「14番目の月」(1976年)
5 恋愛と自己愛のあいだ 「流線型‘80」(1978年)
6 除湿機能とポップ 「OLIVE」(1979年)
7 外は革新、中は保守 「悲しいほどお天気」(1979年)
8 “つれてって文化”隆盛へ 「SURF&SNOW」(1980年)
9 祭の終わり 「昨晩お会いしましょう」(1981年)
10 ブスと嫉妬の調理法 「PEARL PIERCE」(1982年)
11 時を超越したい 「REINCARNATION」(1983年)
12 女に好かれる女 「VOYAGER」(1983年)
13 恋愛格差と上から目線 「NO SIDE」(1984年)
14 負け犬の源流 「DA・DI・DA」(1985年)
15 1980年代の“軽み” 「ALARM a la mode」(1986年)
16 結婚という最終目的 「ダイアモンドダストが消えぬまに」(1987年)
17 恋愛のゲーム化 「Delight Slight Light KISS」(1988年)
18 欲しいものは奪い取れ 「LOVE WARS」(1989年)
19 永遠と刹那、聖と俗 「天国のドア」(1990年)
20 終わりと始まり 「DAWN PURPLE」(1991年)
感想・レビュー・書評
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ユーミンは、私にとっては少し年上世代の音楽で、あまり好きではない。荒井由実はいいなって思う時もあるけど、松任谷由実はバブルの印象が強すぎるし・・・。っていうのが読む前の印象。
でも、読んでいてけっこうイメージ変わりました。彼女がいち早くスピリチュアル的なものに興味を持っていたこと、バブルという言葉が存在しなかったバブルのまっただ中に、消えてなくなるシャンパンの泡とゴージャスで儚い恋とをかけて「ダイヤモンドダストが消えぬまに」を歌い、バブルの終焉を予期していたこと。彼女はバブル的消費をリードしたというより、時代を先取るセンスがすごい人なのね。派手なライフスタイルを提案してきたのではなく、いち早くその時代の女性の欲しがるものを察し、提示してきただけなんだと。
しかも毎年1枚アルバムを出すって、すごいパワーだなあ。
私がユーミンを真面目に聞いてたのは、小学5,6年生の頃。毎週末のユーミンのラジオ番組を録音しては、「大人の聞く音楽とはこういうものなのか」と塾に行く途中にウォークマンで聴いてたけど、それほど好きにはなれなくて、結局は久保田利伸みたいなメロディー重視の曲が好きだった。DOWN TOWN BOYなんかはビートの刻み方がユニークだから好きだった方の部類。ノーサイドは退屈な歌だなー、でもちょっと心地よいかも、って思っていたけどまさかラグビー部の彼氏の歌だとは思いもよらなかった。「Valentine's RADIO」の歌詞「うでで目覚めた夜明け」も、小学生の頃には全く意味わかんなかったな。「流行っているから、少し研究してみよう」と思ったけど、歌詞を重視しない私には全くささらないのでした。
私がそうして、塾に通って中学受験の勉強に勤しんでいたころ、当時のオトナ文化は「アッシー、メッシー」「ジュリアナ」などが隆盛で、私も大学生くらいになればアッシーの一人や二人はゲットできるのだろう、とメガネのくせに思っていた。
その後、私は中学受験に半分失敗して大学附属のお金持ち校に進学。当時はティーン雑誌でも10万以上するブランドものを平然と紹介している時代で、私もそれに興味があったりはしたけれど、周りの金持ちが難なくそれらを手に入れているのを観て、目を覚ますことができた、というか覚まさざるを得なかった。金持ちの中にいると、こっちが少し頑張ってブランドものを持っても、全く意味がなく、むしろ愚かにさえ見えてくるわけです。そんなこともあって、私はそれまで以上に勉強するようになり、付属校の中で必要以上に勉強し、違う大学への進学を志す私はとても浮いた存在だった。
もし、わたしが金銭的に同じようなレベルの子が集まる学校に行っていたら、その中で目立つ為にブランドものに執着していたかもしれず、ユーミン的な価値観にも、もう少し浸かっていたのかもしれない。
酒井さんが語る「ユーミンは私達を肯定し、まるごと受け入れてくれた。そして、私達の婚期は遅れた」という言葉を聞くと、「もう少し遅く生まれて、バブルを冷めた目で見つめるこっち側世代にくればよかったのに!」と思います。
向こうからしたらよけいなお世話&いい迷惑でしょうが・・・。
そういえば、先日、「ヨガフェス」というものをのぞく機会があったんだけど、「どうせ冷えとり靴下と布ナプキン信者がたくさんいるのだろう」と思って冷やかしてみたところ、やっぱりどちらのブースも出てました!
オーガニック系はバブル消費とは真逆のベクトルとはいえ、あっさり冷えとり、布ナプ教にハマる人というのは、ひょっとしたらかつてバブル消費にどっぷりだった人なのでは・・・という意地悪い目で見てしまった私でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルの「ユーミンの罪」とは何か?あとがきまで読めば判明するが,松任谷由実さん本人はおそらく,「私,何か悪いことしたかしら?」と苦笑するだろう。
著者のように,ユーミンに「救われてきた」人も,そこまでとは言わずとも,多少なりユーミンの曲を知っている人にも,読みやすい新書である。著者自身は,1970年代の荒井由実時代からユーミンソングを聴き続けてきただけに,歌詞の解釈には40年の熟成感を味わえる。
その的を射た表現として,「助手席性」という言葉がある。著者によると,それは「ある行為を主体的にする人がいる時,「その行為に参加はしないが,賛同し,共にいる」という姿勢」(64頁)だという。「ロッヂで待つクリスマス」のほか,「中央フリーウェイ」や「ノーサイド」など,80年代の発売曲に登場する女性は,こうした「助手席性」を備えている。ユーミンソングのいま一つのキーワードは「つれてって」(103頁)である。そして,その最高峰が「恋人はサンタクロース」にある点は,人口に膾炙するところである。こうした外見的には受身の姿勢を見せながら,内面的にはオトコとのリードを駆け引きしている女性像は,その結末が幸福であれ,不幸であれ,『逆演歌』(237頁)なのだという。
著者は1991年に会社を辞め,無所属となる転機を迎えると,1990年代には「ユーミンのアルバムを以前のように追わなくなった」。このため,本書の解説は,同年発売の「DAWN PURPLE」をもって終了する。その理由として,「ユーミンの歌というのは所属している女」のための歌」であり,「何らかの集団に所属し,守られている女性が聴くべき歌」(270頁)であるからこそ区切りをつけたかったというニュアンスを残す。ただ,ユーミンの90年代はメディアとのタイアップを強化し,J-POPに組み込まれていく時代でもあった。そういう点では,ユーミンソング自体も,バブル崩壊後の時代に適応した「何らかの集団への所属」を求めていたのかもしれない。 -
一番の収穫は…ってこともないか、一番驚いたのは、
酒井さんが中高とユーミンの後輩にあたるということ。
酒井さんの通っていたのは女子中高で、
それこそ“遠吠え”する人が多いという話がよくエッセーで出てくるのだけれど、
早婚のユーミンがその女子中高出身!
酒井さんとほぼ同世代の私ももちろんユーミンに親しんで生きてきたのだけれど、
酒井さんほど全部を聴いていたわけじゃないんだな~ってわかった。
そして私はどちらかというとオフコース方面へ走ったんだったよなあと懐かしく思い返したりして。
この酒井さんの本ではユーミンの歌詞と時代背景などを重ね合わせて、詩の意味、歌の存在意義を紐解いていく感じが面白かったけど、もっと私がユーミンの曲を知っていたら、
もっともっと楽しかったに違いない。どんなジットリした内容もユーミンはさらっと仕上げる除湿機能を持っている…というような解説にナルホドと思う。
ということで、同じ感じでオフコース版も酒井さん出してくれないかなあ。
絶対(世代的に)聴いていたと思うのよね。 -
この本が主張する「ユーミンの罪」とは、
時代に求められたユーミンの楽曲がバブル期の時代と重なり、
当時の20代~30代女性の恋愛観に、
良くも悪くも多大な影響を及ぼしたということ。
自分は著書にも書かれているような松任谷時代よりも
荒井時代が好きなタイプの一人。
荒井時代のもっと彼女の内省的な音楽観が好き。
松任谷時代に入ると、現在でのAKBやEXILEのような
ユーミンのプロジェクト化が進行して、
その時代の世相に沿った作品を年末にリリースするようになった。
これはユーミンに限らずサザンもそうなんだけど、
彼らはリスナーの想いを引き受けることを選んだ。
自分の出したいオリジナリティや
自分の趣味嗜好のプライオリティを下げて、
みんなが共有できる、みんなが好きなものを歌うこと。
個の追求よりも王道を求められたこと。
それを任務として責務として担がされてしまったことが
彼女にとっては不幸だったと思うんだよな。
次回は「ドリカムの罪」をぜひ読んでみたい。面白そうだ。 -
初めのうちはすごく面白く、感心して読んでいました。
長く活躍し続けているユーミンと時代性との解説。
さすが鋭いなぁとふむふむ頷いていたのですが、中盤あたりからリタイアです。
最後まで読みきれませんでした。
なんだかおなかいっぱいになってしまいまして…。
微妙に飽きがくるというか、一度に読むと食傷気味です。
1週間に1章ずつ、酒の肴のようにして読むのが良いのかもしれません。
ユーミンの歌詞を読み解いている作者の視点や目線が絶えず掲げられ、もういいやと思った。こんなこと書いてひんしゅく買いそうです。
自分ひとりでユーミンの曲や当時の空気を回想したくなりました。 -
題名からユーミンが悪そうですが、韻を踏むことが目的だったのでしょう。
酒井順子さんはユーミンの熱烈なファンだったのです。
ユーミンは順子さんの母校の大先輩でもあります。(13学年違い)
この本では「社会」「ユーミン自身のこと」「ユーミンの詩」「順子さん」の四つが絡まりながら描かれています。
すごく面白かった。ユーミンの歌を全然知らなくても楽しめます。
「卒業写真のあの人」については、ユーミンの後輩ならでは。笑った。
あ、ひとつ、自分特有の感想を書いておこう。
「ラグビー選手の彼女」というシチュエーションに憧れた、1984年当時ユーミンを聴いていた女性たち。
順子さん曰く
>「私だけがあなたを待っている」って何て気持ち良さそう…と18の私はよだれをたらしたものです。
時代の違いなのか、あるいは彼女たちが女子高出身だからか?
ここを読んだ共学出身の私にとってラガーの思い出とは。
私は高校のとき水泳部だったのですが、ある時、雨後のグランドで練習を終えたラグビー部の連中が「プール入らせてください」とやってきました。
もちろんお断りしました。
そしたら奴ら、私たちが帰った後、勝手にプールに入ったんですよ!ひどすぎる!
女子高に行ったらそんな彼らも素敵に見えたのかもしれません。
そういえば自分が短大のとき、そういう雰囲気あったかも…。 -
酒井順子さんなので、一応エッセイと分類してみた。
辛辣で切り口鋭い酒井さんに、私の大好きなユーミンがどう味付けされるのか、はたまた褒め殺し?もしくはメッタ斬り・・・様々な予感にうち震え、手に取った新書。感想はふつう。
ふつうに時代を追った、アルバムに沿った解説書。
ユーミン大好き、酒井さん大好きなのにその融合はふつう。
期待が大きかっただけにもう読み直そうとは思わない。
ユーミンの音楽は繰り返しくりかえし聴けるのに。 -
大学先輩、一つ上に辺ります。冒頭からユーミンに対しての愛情が唆ります。
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