大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち (講談社現代新書)
- 講談社 (2014年10月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062882866
作品紹介・あらすじ
40歳以上のひきこもり+潜在群は推定100万人もいる。
このままでは、老後の蓄えがなく頼りの年金さえ受け取ることができず、
いずれ「老後破産」せざるをえない人が激増する可能性が高い。
どうすれば、日本に潜むこの大問題を解決できるのか。
答えのない問題が山積する時代。その答えをみんなが求めている。
しかし、専門家任せ、他人任せでは、なかなか解決できない。
支援の仕組みも、ミスマッチが起きている。
その答えを持っているのは、当事者たちである。
周囲の人たちは「上から目線」をやめて、
当事者たちの「声なき声」に、そっと耳を傾けるしかない。
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親も子も、どうすればいいのか、誰に相談すればいいのかわからず、
気持ちばかりが焦ってしまう。
ハローワークを訪ねてみても、同じ求人がグルグル回る「カラ求人」や、
非現実的な「神様スペック」を求める企業が少なくない。
そうこうしているうちに、時間だけが過ぎていき、
やがて家族ごと地域の中に埋没してしまう――。
ひきこもりが「長期化」「潜在化」する背景と、
外に出るための新たな取り組みを探った。
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【おもな内容】
第1章 ひきこもりにまつわる誤解と偏見を解く
1 データが物語る「高齢化」
2 ひきこもりの「潜在化」
3 ひきこもる女性たち「それぞれの理由」
第2章 ひきこもりの背景を探る
1 「立ち直り」を阻害するもの
2 「迷惑をかけたくない」という美徳
3 「家の恥」という意識
4 医学的見地からの原因分析
第3章 ひきこもる人々は「外に出る理由」を探している
1 訪問治療と「藤里方式」という新たな模索
2 親子の相互不信を解消させたフューチャーセッション
3 ひきこもり大学の開校
4 外に出るための第一歩――経済問題
感想・レビュー・書評
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「体裁は整っているように見えるのに、何か大事なものが欠けている」
この新書は、この一文から始まります。
私は何か日本社会の本質を描き出した一文だと思います。
ひきこもってしまう原因は、十人十色です。社会や組織から理不尽な仕打ちを受けて、
自分に存在価値を見つけられず、ひきこもってしまう。体調や精神に不調をきたして、
ひきこもってしまう。一概に、これが、ひきこもりになる原因とはいえません。
また引用すると、「周りの空気を読みすぎてしまうくらい心やさしい感性の持ち主だからこそ、ひきこもってしまうのだ」。
やさしい人が、ひきこもってしまうなんて、なんだか矛盾しています。
やさしい人だからこそ、社会で活躍してほしい。
しかし、本当にやさしい人は、今の社会では、この凄く生きにくい、これは真実だと思います。
少なくない人が日本社会や組織に違和感を感じていると思います。
異常な社会と言った方がいいかもしれません。
何が異常かは、うまく表現できませんが、冒頭の一文を考慮して表現すると、
日本社会は、ものすごく便利な社会ですが、人が生活をする上で極めて困難になっている。
普通は便利になると生活が快適になるはずですが、それは表面的な
便利さで、人が元気に幸福でいられる要素を奪っていっているように思えます。
ここ十数年でしょうか、もの凄い勢いで、社会が変化して、大事な何かを失ったのかもしれません。
その失ったものは、おそらく人が生きていく上で絶対に必要な
何かだと思います。共感、優しさ、助け合い、、、なかなか表現できません。
日本社会はどんどん便利な社会になっていますが、心に余裕がなく、競争が激烈で、
何でも成果を求められ、人と人が、助け合うことが、なかなか難しい社会になっています。
経済成長が明らかに行き詰って、労働人口が絶対的に減っているのに、
GDPを増やせと言っている時代です。1人当たりの労働生産性を上げれば、大丈夫!
個人にもっと付加価値をつけろ!、、、社会からの要請は、いつも現実とかけ離れています。
そのしわ寄せは、あらゆる所に及んでいます。
私は今は、組織人として働いていますが、いつクビになり、放り出されるかわかりません。
日本社会は一度、社会との結びつきが途切れると、復活するのが困難な社会です。
間違いなく、私は「大人のひきこもり予備軍」です。私の周囲には、ひきこもっている友人は、
結構います。どの友人も、優しくいい奴です。みんな一生懸命、働きたい、でも、ひきこもってしまう。
自分に、できる事といえば、相手の話に耳を傾けることぐらいです。
今は、利益を出せる人間とそうではない人間とに、社会が振り分けているような感じがします。
誰も好き好んで、ひきこもりになったりしません。
そうせざるを得ない理由があったからです(本書にも、具体的な事例が書かれています)。
その理由をしっかり受け止めてくれる機関や人は、なかなか存在しません。人は自信’がなくなると、
行動することが億劫になりますし、今の自分を客観的に振り返り、再度、行動するのは、かなり困難です。
嘆いても仕方ないですが、嘆かずにはいられない状況です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
活動的だった母親の突然のひきこもり。そして、自分自身も精神的身体的弱さからこれからの人生に不安があり、無視できない問題と思い、手に取った。
そもそも、人生100年というのは、私にはとても長く感じる。100年のうち1年もひきこもらずに、毎日仕事をしたり外出したりできる人は、ほとんどいないのではないだろうか。ひきこもりは甘えだ、という意見を目にすることがよくあるが、そういう人だって、仕事で突然大きなストレスを抱えたり、環境の変化に適応できずにひきこもる可能性は大いにある。この長い人生の中で、ひきこもりは当たり前に起こりうるという認識が、まず必要であると感じる。
女性より男性の方が3倍もひきこもりが多いという事実に驚いた。現代社会では、男女平等が謳われるようになったとはいえ、まだまだ男社会だと感じる。男性の方が、仕事で成功しなければならないと考えている人が多く、プレッシャーを日々感じているのではないだろうか。
また、ひきこもりの事例をいくつか見て、いずれもプライドの高さが根底にある気がした。就職できなくても、リストラされても、教育費をたくさんかけた子供が受験や就職に失敗しても、その人の価値は変わらないと私は思う。ただ偶然、何かがうまく行かなかったというだけで、その人の本質的な価値は変わらない。何かにつまづいただけで人間の価値を見失うなどという、薄っぺらい人間にはなりたくないものだ。 -
生活保護受給、障害年金受給者に対して若干攻撃性のある記載がされているように感じる。
242ページで、実家を出ないと世帯分離はできないと書いてあるが、実家を出なくても住民票の世帯分離はできる(生保受給家庭で子どもが大学に進学する場合は、世帯分離をして親のみ生保受給、子どもはアルバイトをしながら自分で全額学費と生活費を稼ぎ大学に通うということは可能)。「対象は世帯主に限られる」のが要件であれば、同居していても世帯分離をすれば貸付制度は受けられることになる(ただ実際のところ、社会福祉協議会がどのような裁量の元で実際の事務をしているかは知らない)。
「世帯分離は実家を出なければならない」という誤った記載が世の中に拡散され、それで「自分は条件に当てはまらないからできないんだ」と思ってしまう人たち、実際同居しながら世帯分離をしている人たちに対して「不正だ!」という目で見る人たちが潜在的に増えてしまうのであれば、それは大いに問題があることだと思う。 -
タイトルはキャッチーだが、「引きこもり」というカテゴリーにあらゆる社会問題をぶち込んでいる印象。ちょっと乱暴な気がする。
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社会
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ひきこもる理由をしごとのせいにしている。
ほんとはちがう。 -
新卒就職で非正規。成果主義やブラック企業、うつやいじめではじき出される。生保や福祉からは相手にされず。介護離職。発達障害、不安症、不登校。これ以上傷つけられたくないし、傷つけたくない、他人に迷惑をかけたくない人たち。
仕事・学校、買い物など、生活のための最低限の外出、それ以外に行く場所を持っている人って実は幸運なのかも。 -
職も金も無ければ引きこもるしかねえだろ!
自己責任という日本人の大好きな思想と年齢差別が引きこもりを助長している気がする。 -
S493.7-ゲン-2286 300386760
(講談社現代新書 2286) -
いま元気に働いていても、ちょっとしたことで働けなくなる。全く他人事でないことを痛感させられる。
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働きたくないのがニート。働きたくても働けないのが引きこもり。引きこもりの推定数は全国で325万人。うち40代以上が100万人。ただし、国の定義では40歳以上は引きこもりにカウントされないので支援もない。病気で働けない人もいるが、仕事は年齢的にシャットアウトされるので、40代以上は益々苦しくなり、今後スライドするに従って数も増えていく。最大の問題は生活費欠乏による貧困。親が面倒見ている場合が多いが、高齢で限界に近い。等々様々な問題提起はあるが、解決策としては草の根的な事例紹介のみで非常に弱い。政策・政治面での解決が必要なんだろうけど、非常に難しい問題である。結局は親が背負い込むしかないのかな?という気はするが、問題はその親が死んだ時で、そのうち問題が爆発する懸念もある。引きこもりかそうでないかは紙一重で、ちょっとした弾みで誰もが直面する問題だと思う。
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ひきこもりの高年齢化という事態に対して、縦割り式の硬直した日本の社会保障はなんら対応しきれていない。
最近ではひきこもりの当事者からの自発的行動により、新たな活動が模索されつつある。 -
四十歳以上の、公的支援を受けられないひきこもりは推定100万人以上、という衝撃的な予測で始められた本書は、高齢化していくひきこもりの現状について、その分析と、いま現在取られている対策とを広く紹介したものである。
最新の内容を含んだ新書であり、この本は早く読んだ方がいい。情報は古くなればなっただけ価値を失う。これだけの内容が古びてしまうのは、それだけで大変惜しいものだ。
個別事例も多く含まれているため、古びてからも読む価値がない内容ではないのだが、ひきこもり対策の現状について現場の動きが読めるのは、大変価値ある内容である。
個人的には、大変心を揺り動かされた一冊だった。現状の苦しさ、難しさを改めて見せつけられ、解決されない問題について、考えさせられる。
新書とはこうしたものであるべきだろう。なんの衒いもなく、星五つである。 -
2014年10月発行。
自分のことだと思い読みました。苦笑。
先日読んだ「反貧困」にも通じる内容でした。
少し違う視点としてこの本は40代や50代のひきこもりが相当数いることを強調している点です。
後半からは、ひきこもりの人たちが、社会の輪に入りやすいコミュニティーや施設、大学の話が出てきます。
僕自身、仕事柄ひきこもりみたいなものなので人ごとではなく読めました。
自己責任という言葉。他人に迷惑をかけないという美徳。こういう考え方が当事者にとって社会に出る際に大きな足かせとなっているのは間違いないなと感じます。
自分の仕事を考えてみると、
ここ最近は、もっと社会に役立つ仕事をしたいなぁと思うようになってます。 -
2015年1月新着
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そこまで核心に迫った本! という感じはしなかったですかねぇ…まあ、大人にも色々な理由があり、引きこもるんだナー、みたいな感慨は持ちましたが…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
まあ、でも、なんつーかこうして本になるくらいだから、世の中にはこうしたヒキコモリと呼ばれる方たちがたくさんいるんだな、と…まあ、僕もどちらかと言えばヒキコモリ側の人間と言いますか、彼らの言い分も決して分からないわけではないのですけれども…
ま、なんとかして社会に出てこられるよう努力してほしいですねっ! ←え?? 社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー -
ニートとひきこもりは違う。
働きたくても働けない人がとても増えているようです。 -
前作から間をおかず、数多くの取材レポートを掲載。スピードすごいですね。もはやひきこもりとは「不登校の延長」だけではないし「個人の問題」でもない、どころかその要因は多様化を極めている……。後半には未来志向で行われる取り組みも紹介されており、フューチャーセッションは私も見たことがあって医療系の取り組みともどもユニークかつ有効だと思うのですが、何分負の部分が大きすぎて、まだまだそこに抗えないという暗い気持ちに至るのも事実です。それでも、できることを少しでも進めるしかない。歯がゆいですが。
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他人事では済まされない危機感と他者への優しさを再認識させる本である。
ヒキコモリは他人事ではない。調査はあてにならない。40代以上が把握の対象になっていないからである。社会との関係を絶ってしまっているし、光も当たっていないようだ。それ故根深い。
原因の言及もあるが、銀の弾は無い。風邪をひいたからといって薬を飲むが特効薬ははいのと一緒である。唯一のカギは、身の廻りの人と関係を続けていくこと。配偶者や子供だけでなく、同じ志の同年代、世代を超えた関係を常に持ち続けることが大事である。
当事者がイチバン辛いのだろうが、自らの殻を破る事が大事である。ある医者は「歩くとこ」が大事だと言っていた。もともと動物は動き続けること=生きることであり、カラダとココロに負荷がかかり続けることで、成り立っている。ヒキコモリはそういう意味でのバランスを崩している。
具合悪いから動けない、動かないから具合が悪くなる。悪魔のサイクルから抜け出すキッカケは大事である。 -
ひきこもりも自己責任では解決できない。
40代のひきこもりがいちばん立ち直りにくくて、ハロワからも阻害されるのはつらいなあ、、
元気がない人が侮辱的な探りを入れられたら、もうそれだけで死を招くのに
承認欲求を満たしてくれる、自分を肯定できる仕掛けをもっと作れると、ひきこもり予備軍も幸せになれるよねぇ。
助けて、を言える世の中に。
助けて、を受け止められる世の中にしよう。
情けは人のためならず。
この場合の情けは同情とかかわいそうとかじゃないことはお忘れなきよう -
大人の引きこもり、理解できる。
私もしごとがなかったら、引きこもっている。
外との接点なんて仕事だけだから。しかも私の仕事は社会、国家に大きな影響を与えるけど、自分の小ささとそのギャップに時々悩み、ひきこもりたくなる。引きこもりの大人のみなさんとは本当に紙一重。決して他人事ではない。