大人のひきこもり 本当は「外に出る理由」を探している人たち (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882866

作品紹介・あらすじ

40歳以上のひきこもり+潜在群は推定100万人もいる。

このままでは、老後の蓄えがなく頼りの年金さえ受け取ることができず、

いずれ「老後破産」せざるをえない人が激増する可能性が高い。

どうすれば、日本に潜むこの大問題を解決できるのか。

答えのない問題が山積する時代。その答えをみんなが求めている。

しかし、専門家任せ、他人任せでは、なかなか解決できない。

支援の仕組みも、ミスマッチが起きている。

その答えを持っているのは、当事者たちである。

周囲の人たちは「上から目線」をやめて、

当事者たちの「声なき声」に、そっと耳を傾けるしかない。

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親も子も、どうすればいいのか、誰に相談すればいいのかわからず、

気持ちばかりが焦ってしまう。

ハローワークを訪ねてみても、同じ求人がグルグル回る「カラ求人」や、

非現実的な「神様スペック」を求める企業が少なくない。

そうこうしているうちに、時間だけが過ぎていき、

やがて家族ごと地域の中に埋没してしまう――。

ひきこもりが「長期化」「潜在化」する背景と、

外に出るための新たな取り組みを探った。

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【おもな内容】
第1章 ひきこもりにまつわる誤解と偏見を解く
 1 データが物語る「高齢化」
 2 ひきこもりの「潜在化」
 3 ひきこもる女性たち「それぞれの理由」
第2章 ひきこもりの背景を探る
 1 「立ち直り」を阻害するもの
 2 「迷惑をかけたくない」という美徳
 3 「家の恥」という意識
 4 医学的見地からの原因分析
第3章 ひきこもる人々は「外に出る理由」を探している
 1 訪問治療と「藤里方式」という新たな模索
 2 親子の相互不信を解消させたフューチャーセッション
 3 ひきこもり大学の開校
 4 外に出るための第一歩――経済問題

感想・レビュー・書評

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  • 「体裁は整っているように見えるのに、何か大事なものが欠けている」
    この新書は、この一文から始まります。
    私は何か日本社会の本質を描き出した一文だと思います。

    ひきこもってしまう原因は、十人十色です。社会や組織から理不尽な仕打ちを受けて、
    自分に存在価値を見つけられず、ひきこもってしまう。体調や精神に不調をきたして、
    ひきこもってしまう。一概に、これが、ひきこもりになる原因とはいえません。

    また引用すると、「周りの空気を読みすぎてしまうくらい心やさしい感性の持ち主だからこそ、ひきこもってしまうのだ」。
    やさしい人が、ひきこもってしまうなんて、なんだか矛盾しています。
    やさしい人だからこそ、社会で活躍してほしい。
    しかし、本当にやさしい人は、今の社会では、この凄く生きにくい、これは真実だと思います。

    少なくない人が日本社会や組織に違和感を感じていると思います。
    異常な社会と言った方がいいかもしれません。
    何が異常かは、うまく表現できませんが、冒頭の一文を考慮して表現すると、
    日本社会は、ものすごく便利な社会ですが、人が生活をする上で極めて困難になっている。
    普通は便利になると生活が快適になるはずですが、それは表面的な
    便利さで、人が元気に幸福でいられる要素を奪っていっているように思えます。
    ここ十数年でしょうか、もの凄い勢いで、社会が変化して、大事な何かを失ったのかもしれません。
    その失ったものは、おそらく人が生きていく上で絶対に必要な
    何かだと思います。共感、優しさ、助け合い、、、なかなか表現できません。

    日本社会はどんどん便利な社会になっていますが、心に余裕がなく、競争が激烈で、
    何でも成果を求められ、人と人が、助け合うことが、なかなか難しい社会になっています。

    経済成長が明らかに行き詰って、労働人口が絶対的に減っているのに、
    GDPを増やせと言っている時代です。1人当たりの労働生産性を上げれば、大丈夫!
    個人にもっと付加価値をつけろ!、、、社会からの要請は、いつも現実とかけ離れています。
    そのしわ寄せは、あらゆる所に及んでいます。

    私は今は、組織人として働いていますが、いつクビになり、放り出されるかわかりません。
    日本社会は一度、社会との結びつきが途切れると、復活するのが困難な社会です。
    間違いなく、私は「大人のひきこもり予備軍」です。私の周囲には、ひきこもっている友人は、
    結構います。どの友人も、優しくいい奴です。みんな一生懸命、働きたい、でも、ひきこもってしまう。
    自分に、できる事といえば、相手の話に耳を傾けることぐらいです。

    今は、利益を出せる人間とそうではない人間とに、社会が振り分けているような感じがします。
    誰も好き好んで、ひきこもりになったりしません。
    そうせざるを得ない理由があったからです(本書にも、具体的な事例が書かれています)。
    その理由をしっかり受け止めてくれる機関や人は、なかなか存在しません。人は自信’がなくなると、
    行動することが億劫になりますし、今の自分を客観的に振り返り、再度、行動するのは、かなり困難です。

    嘆いても仕方ないですが、嘆かずにはいられない状況です。

  • ひきこもりは簡単なきっかけで起こり得るということ、ひきこもりが発達障害から来ている場合もあること、逆にひきこもりが新たな障害や病気を作っている場合もあること、対人関係・就職問題・貧困など様々な社会上の問題をたくさん抱えざるを得ない状況に置かれてしまうこと、などわかりきっていることから意外と知らなかったり、見落としがちだったりすることまで網羅されていると思います。

    ハローワークの話はちょっと衝撃でした。
    「ハローワークは何度も行くと大抵『こいつ前にここで会ってる』ってヤツに出くわす。何年経っても何回も出くわしてお互いに心の中で『ああ、こいつもまた仕事だめだったんだな』って思いあってるのがわかる。職員も同じヤツがいて行くと覚えられてて、言われなくても『こいつまた来た』と思われてるのがわかる。だからハローワークになんか行きたくない」と当事者から聞いたことがあり、その時はそんなこと言っている場合かと思いましたが、今になると心が折れるんだろうなと思います。ただでさえ対人関係が苦手な人が多いだろうと思われますし。

    後半、医療の話がかなりでてきますが、自閉症に関わる治療についての話がちょっとひきこもりの本質の話からそれているのではと思いました。そういう場合もあるのでしょうがそこで具体的な薬の名前を出して語るほどひきこもり全体に関わっている病態とは思えませんし、ひきこもりと自閉症は一緒には語れないと思います。
    字面から同じようなものと世間では思っている人もまだかなり多く、ここで一緒に語ってしまえば余計に誤解が増すだけなのでは、と懸念しました。
    ひきこもりとの関わりで語るとしたら、広汎性発達障害までではないかな、と思いました。

    しかし緘黙という言葉を知らなかったので、「アレはそういう状態なのか」と今まで疑問に思っていた状態に名前がついたのは収穫でした。名前がつくことで出来る対策や打開策が出る場合もあります。

    解決に向けての現在の活動の状況などが最後のほうに書かれています。正直「現実的だろうか」と思うことも多々でてきますが、それでも出来るのならば一つのきっかけですから、やらないよりはやったほうがいいのかもしれない、と思いました。
    私からすると都会の話であり、地方ではまだひきこもりは「掘り起こされていない」と最終章を読むと実感させられます。

  • 活動的だった母親の突然のひきこもり。そして、自分自身も精神的身体的弱さからこれからの人生に不安があり、無視できない問題と思い、手に取った。

    そもそも、人生100年というのは、私にはとても長く感じる。100年のうち1年もひきこもらずに、毎日仕事をしたり外出したりできる人は、ほとんどいないのではないだろうか。ひきこもりは甘えだ、という意見を目にすることがよくあるが、そういう人だって、仕事で突然大きなストレスを抱えたり、環境の変化に適応できずにひきこもる可能性は大いにある。この長い人生の中で、ひきこもりは当たり前に起こりうるという認識が、まず必要であると感じる。

    女性より男性の方が3倍もひきこもりが多いという事実に驚いた。現代社会では、男女平等が謳われるようになったとはいえ、まだまだ男社会だと感じる。男性の方が、仕事で成功しなければならないと考えている人が多く、プレッシャーを日々感じているのではないだろうか。

    また、ひきこもりの事例をいくつか見て、いずれもプライドの高さが根底にある気がした。就職できなくても、リストラされても、教育費をたくさんかけた子供が受験や就職に失敗しても、その人の価値は変わらないと私は思う。ただ偶然、何かがうまく行かなかったというだけで、その人の本質的な価値は変わらない。何かにつまづいただけで人間の価値を見失うなどという、薄っぺらい人間にはなりたくないものだ。

  • 生活保護受給、障害年金受給者に対して若干攻撃性のある記載がされているように感じる。

    242ページで、実家を出ないと世帯分離はできないと書いてあるが、実家を出なくても住民票の世帯分離はできる(生保受給家庭で子どもが大学に進学する場合は、世帯分離をして親のみ生保受給、子どもはアルバイトをしながら自分で全額学費と生活費を稼ぎ大学に通うということは可能)。「対象は世帯主に限られる」のが要件であれば、同居していても世帯分離をすれば貸付制度は受けられることになる(ただ実際のところ、社会福祉協議会がどのような裁量の元で実際の事務をしているかは知らない)。

    「世帯分離は実家を出なければならない」という誤った記載が世の中に拡散され、それで「自分は条件に当てはまらないからできないんだ」と思ってしまう人たち、実際同居しながら世帯分離をしている人たちに対して「不正だ!」という目で見る人たちが潜在的に増えてしまうのであれば、それは大いに問題があることだと思う。

  • タイトルはキャッチーだが、「引きこもり」というカテゴリーにあらゆる社会問題をぶち込んでいる印象。ちょっと乱暴な気がする。

  • 社会

  • ひきこもる理由をしごとのせいにしている。
    ほんとはちがう。

  • 新卒就職で非正規。成果主義やブラック企業、うつやいじめではじき出される。生保や福祉からは相手にされず。介護離職。発達障害、不安症、不登校。これ以上傷つけられたくないし、傷つけたくない、他人に迷惑をかけたくない人たち。

    仕事・学校、買い物など、生活のための最低限の外出、それ以外に行く場所を持っている人って実は幸運なのかも。

  • 職も金も無ければ引きこもるしかねえだろ!
    自己責任という日本人の大好きな思想と年齢差別が引きこもりを助長している気がする。

  • 引きこもりとニートは違う

    ブラックお金のカラクリ
    通常 売り上げ-経費(給料)=利益
    ブラ 売り上げ-利益=経費

    つまり利益先に決められていて、経費は二の次
    内部留保に関係してくる

    役所のの流れ
    自助⇒共助⇒公助になる

    迷惑をかけるなという日本の家意識、根幹にあるもの
    恥の文化からも起因しておる


    内閣府が出した2010の実態調査
    引きこもり70万人潜在群155万人
    *あくまで39歳までの踏査結果

    都道府県の割合でみると40歳以上の中年の人数が多い

    FSの考え方は面白い(北欧生まれのフューチャーセッション)

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著者プロフィール

1962年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。ひきこもり問題、東日本大震災、築地市場移転などのテーマを追う。NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事。

「2019年 『ルポ「8050問題」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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