福島第一原発事故 7つの謎 (講談社現代新書)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882958

作品紹介・あらすじ

東京電力 吉田昌郎・福島第一原発所長は、食道がんで亡くなる直前、周囲の人間に「自分は、1号機のベントが本当に成功したかどうか、確信が持てない」と繰り返し述べていたという。成功したとされている1号機のベント。吉田氏はなぜこのような謎めいた言葉を遺していたのか? 福島第一原発事故から3年が経ったにもかかわらず、いまなお多くの謎が残され、事故の検証作業はまだ途上にある。
 福島第一原発事故の検証報道で独走するNHKメルトダウン取材班が、500人以上の関係者取材、政府事故調・吉田調書や東電内部の極秘メモなど超一級資料などを駆使して、未解明の7つの謎に迫るミステリー・ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 福島第一原発事故を追求。ベントはできていなかった。1番危険だったのは2号機だった。消防車の注水は十分な効果が無かった。自衛隊・機動隊の放水も効果が無かった。これらの事実をデータをもとに解説。ヒューマンドラマ的要素は全く無し。

  • あれから10年の年月が過ぎ、なんとなく
    忘れてしまっているかもしれないですが
    あの程度で済んだのは、本当に幸運だっ
    たのです。

    特に2号機が爆発しなかったのは、今で
    も謎の部分があるらしいです。

    今でも現場に簡単に立ち入ることができ
    ないのですから当然かもしれないですが、
    全ての日本人は忘れてはいけないです。

    あの事故は、多くの不幸と多くの幸運が
    招いた結果であることを、です。

    そしてまだ何も決着していないことを、
    です。日本人必読の一冊です。

  • NHKスペシャル『メルトダウン』の取材範囲よる、同番組を本にしたものだが、活字というものは中断、読み返し、先読みが出来るのでありがたかった。
    過剰な表現は避けて、徹底的な取材と検証を心がけている。
    これはNHKでしかできなかったのだろうなあ。
    タイトルには『7つの謎』とあるが、読み進めば、まだまだ分ってないことが多いことが解る。事故の検証はまだまだ、これからなのだ。というよりも、検証可能なのだろうか。
    そんな状況なのに原発を再稼働するとかを言う人間はどうかしていると言わざるを得ない。

    福島原発事故(事件)検証本としては第一級のものであることは間違い無いが、これを超えるものが生まれなければならない。

  • 食いつくように取材を続け、ジャーナリズム魂のこもった労作です。ドキュメンタリータッチで書かれていますが、複雑で専門的な話のため、映像の助けが欲しくなりました。東日本壊滅という事態にならなかったのは幸運だったのですか。ますます、更なる検証がなくてはならないのですね。現場での調査が困難なことに加え、隠蔽や思惑が阻むでしょうが、ジャーナリズム魂を持って、世界に恥じない検証のスピリットを見せて欲しいと思いました。

  • 2022/09/14必要に応じて再読

  • 2015.06―読了

  • 『福島第一原発事故 7つの謎』 NHKスペシャル『メルトダウン』取材班

    ハゲタカ5『シンドローム』を先日読み終わったが、『シンドローム』では、ハゲタカ・鷲津が首都電力(モデルは勿論、東京電力)を買収するという壮大な物語の陰で、もう一つのテーマとして福島第一原発事故と首都電力、そして内閣の危機対応のまずさを突いていた。さすがにフィクションであろうと考えつつも、著者の真山さんが参考文献として挙げていた本書を手に取った。読後の感想としては、想像以上に『シンドローム』の描写は現実に基づいており、悲しいかな、東電や当時の菅内閣の危機対応に関しては、大いに反省の余地があると感じた。確かに、当時の東電や菅内閣の対応のまずさはさておき、日本の歴史、いや原子力発電という人智を越えたエネルギーを持った人類にとって、糧にせねばならない問題である。
     今般の事故において、問題となったのは如何にメルトダウンを防ぐか、そして放射性物質の放出を防ぐかということであった。地震が起きた際に、福島原発は停止したが、問題はその後であった、通常、発電が停止した際には高温状態の炉心を冷却するICが発動し、炉心を冷却することで原発を完全に停止することが出来るのであるが、福島第一原発ではICが発動していなかった。その結果、炉心の周囲にある水が炉心の熱で蒸発し、空焚き状態となった。空焚き状態のまま、炉心を冷却するものがなくなると、炉心は溶融し、メルトダウンを起こす。炉心の冷却が出来ない場合、格納容器内の圧力を外に逃がすベントをいう措置が取られるが、今回の事故では史上初のベントが行われた。実際、ベントは格納容器が内部の圧力に耐えられなくなり、爆発するという最悪の事態を避ける為に、一定の放射性物質を含む空気を外部に出すという苦肉の策である。さらに、今回の事故では不発となったICに替わり、炉心を冷却する冷却水の注入が行われた。これも、マニュアルにはない急場の措置であり、何とかこれら緊迫した場面と、その時々の対応により、福島原発は最悪の事態を免れた。
     問題点は様々あるが、個人的に、やや陳腐な言い方になるがタテ・ヨコの連携不足というところであろうか。そもそも、福島第一、第二原発はGE製、第三が東芝で第四が日立製と、そもそも原発のメーカーが異なり、それぞれの仕様が若干異なること、これがヨコの問題。タテの問題でいえば、40年以上続く福島原発において、情報や知識の伝承がなされたのかという問題。これは、ICが作動しているか否かと判断する「ブタの鼻」の蒸気の状態を誰も認知していなかったこと等が挙げられる。これらのタテヨコの知識や仕様の一貫性が乏しかったことや、緊急事態に官邸と東電、そして現場の連携や意思決定に問題があったと言える。

  • 吉田所長が本店からの指示を無視してベント継続したことを英雄視する向きがあるが、この本を読むとだいぶ印象が変わる。最悪の事態を避けられたのはあくまでたまたま運が良かったとしか言いようがない。

  • 今年の3月11日が来ると、東日本大震災と福島第一原発の事故の
    発生から4年目となる。民放は3月11日が近くなると特番を組む
    が、あの原発事故を長期に渡って丹念に追っているのはNKH
    くらいだろうか。

    NHKスペシャルは時間が許せば見ているが、見逃している回数
    の方が多い。なので、本書のような書籍版はなるべく購入して
    読むようにしている。

    本書は未だ多くの謎に包まれている福島第一原発事故について、
    関係者や研究者に取材し、7つの謎について解明しようとしている。

    1.1号機の非常用冷却装置が津波直後から動いていないことに
      なぜ、気が付かなかったのか。
    2.メルトダウンした1号機のベントが遅れたのはなぜか。
    3.「ベントが成功したのか、今でもわからない」。政府事
      故調での吉田元所長の発言から1号機のベントを徹底
      検証する。
    4.水素爆発しなかった2号機が、なぜ、大量の放射性物質を
      放出するに至ったのか。
    5.3号機では消防車での注水が行われたのに、なぜ、メルト
      ダウンが起こったのか。
    6.2号機のSR弁と呼ばれる減圧装置はなぜ、動かなかった
      のか。
    7.ロボットカメラ等によって調査が始まった原発内部の
      調査結果から、事故原因を検証する。

    それぞれの章が独立しているので、興味のある部分だけを読む
    のもありかもしれない。個人的に興味深かったのは2章と3章。

    福島第一原発は建設直後を除けば、ベントを行ったことがない。
    本書ではアメリカの原子力発電所で点検の為にベントが行われ
    ていることを例に取り、ベントが行われるとどのような状況に
    なるのかを解説してる。

    1号機のベントに関しては官邸が大騒ぎしてたのが記憶に鮮明に
    焼き付いている。あ、官邸が大騒ぎしていたのはベントだけじゃ
    ないけど。

    いざ、ベントを行うとなっても実際に行った際の状況って
    ベテランの運転員や東電社員も観たことがなかったんだね。
    これにはびっくりした。そりゃ、本店にも声を荒げる吉田
    元所長だって「成功した」とは言えないはずだわ。

    そして、謎をひも解く7章のほかに、事故当時、東京電力の
    原子力部門の最高責任者であり副社長であった武藤栄氏へ
    行ったインタビューからまとめられた「特別篇」がある。

    菅直人が周りの止めるのも聞かずに福島第一原発を視察した
    際に現地で出迎え、散々、罵声を浴びせられたお気の毒な人
    くらいの認識しかなかった。

    この武藤氏が原子炉の冷却の為、吉田元所長に電源復旧を
    急ぐよう助言していた。だが、それも当時の海江田経産相
    の「警視庁、自衛隊、消防で注水する」という横やりで
    延び延びになったなんて初めて知ったよ。

    素人目にも効果があるのか疑問だった自衛隊の空からの
    散水。経産相の横やり。事故の被害を食い止める為の
    ものではなく、海外に対する単なるデモンストレーション
    じゃねぇか。

    この「特別篇」を読むだけでも価値あり。というか、これを
    書きたかったんじゃないかと思わせる。

    番組で使用された原子炉のCGなども掲載されており、非常に
    分かり易く書かれている。どうして、あの事故は起こったのか。
    その検証も大事だが、未来に活かすための提言でもある。

  • ブログに掲載しました。
    http://boketen.seesaa.net/article/422940747.html
    「東日本壊滅」を覚悟した吉田所長。そうならなかったのはなぜか、いまだ不明。
    2011年12月から2014年12月までに放送されたNHKスペシャル・メルトダウンシリーズ。5本の番組で取材した500人以上の関係者への取材や、新たに公開された政府事故調の吉田昌郎元所長らの聴取記録をもとに書き下ろされた新書。
    「人間は核を制御できるのか」という問いをたて、徹底して現場の状況を再現している。
    なんといっても白眉は、3月14日午後、2号機の格納容器が高圧破損しかねない危機にたたされた吉田所長のことばだ。
    「燃料が溶けて1200度になりますと(中略)チャイナシンドロームになってしまうわけですよ。」「放射性物質が全部出てまき散らしてしまうわけですから、我々のイメージは東日本壊滅ですよ。」
    吉田の「東日本壊滅」のイメージとはリアルにはなにを意味するのか。
    170キロ圏内、福島・宮城・栃木・茨城の全域と山形県のほとんどがが、現在の双葉町・大熊町の全戸避難と同じ居住不能・強制避難の対象となる。250キロ圏内、北は岩手県盛岡市、南は神奈川県横浜市までが含まれ、3600万人の首都圏住民の避難が必要になる。
    この危機が目前にあったと、吉田所長は証言している。
    2号機からは大量の放射性物質が溢れだした。いまも原発周辺の10数万の人びとが避難を余儀なくされている。これらの人々にとっては、最悪の事態は現に起きたのだ。
    しかし、吉田がイメージした「東日本壊滅」という事態にはいたらなかった。
    「2号機の格納容器の封じ込め機能は、東日本壊滅をもたらすほど決定的には壊れなかったのである。しかし、なぜ決定的に壊れずにすんだのかは、いまだによくわかっていない。」
    このもっとも重大な問題だけではない。
    タイトルになった「7つの謎」のすべてが、いまだ未解明だったり、検討中なのだ。
    国民の多くが原発再開に反対し、エネルギー政策の転換を求めている。
    日本の官僚と政権を握った政治家たちだけが、「もっと徹底的な壊滅をみるまでは絶対にやめない」と突き進む、その不思議さ。
    官僚と政治家たちが暴走する破滅への道を、止める方途はないのだろうか。

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