貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883580

作品紹介・あらすじ

「貧困世代(プア・ジェネレーション)」は下流老人よりも悲惨だ!

「現在の若者たちはもはや、ロスト・ジェネレーションのような一時的な就職難や一過性の困難に置かれているのではない。雇用環境の激変を一因とする、一生涯の貧困が宿命づけられている。

 若者たちは何らかの政策や支援環境の再編がない限り、ワーキングプアから抜け出せないことも増えてきている。

 ここでわたしは、現代の若者たちは一過性の困難に直面しているばかりではなく、その後も続く生活の様々な困難さや貧困を抱え続けてしまっている世代であると指摘したい。彼らは自力ではもはや避けようがない、日本社会から強いられた貧困に直面している。日本史上でも類を見ない、特異な世代である。

 だからこそわたしは、彼らの世代を、『貧困世代(プア・ジェネレーション)』と総称することにした」(「はじめに」より)
 
 
 大多数の若者たちは、現代日本の社会構造のおかげで、夢や希望を叶える活力を持ちながらも、それを生かせずにもがいている。しかも悪いことに、若者たちは支援が必要な存在だと認識されておらず、社会福祉の対象としては扱われてこなかった。
 貧困世代約3600万人はまるで、日本社会がつくった監獄に閉じ込められている囚人のようである。
 若者は働けば収入を得られる、若者は家族が助けてくれる、若者は元気で健康である、昔の若者のほうが大変だった、若者の苦労は一時的なものだ・・・・・・こうした「大人の言説」はすべて間違っている。

 本書では、所持金13円で野宿していた栄養失調状態の20代男性、生活保護を受けながら生きる30代女性、ブラック企業でうつ病を患った20代男性、脱法ハウスで暮らさざるを得ない20代男性の事例などの、筆者自らが聞き取った体験談を分析し、いかに若者が社会からこき使われ、疲れ果て、貧困に至っているのかを書き尽くす。
 貧困世代のつらさを全国民が深く理解し、いびつな社会構造を変えなければ、下流老人も含めた日本固有の貧困問題は絶対に解決しない。

感想・レビュー・書評

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  • いつぞや古本屋かどこかで買ったものの長らく積んでいました。2016年出版ですね。本日読了です。
    ちなみに、この本が刊行された後、2017年に共和党のトランプがアメリカ大統領になりました。日本は未だに安倍晋三が首相です。そう思うと、後半の内容はどこか妙な感慨深さをも感じますが、それはそれ。

    内容としては、共感出来ないことはほとんど書かれていませんでした。
    失礼にあたることも承知の上で言いますが、1989年生まれの私の前後10年辺りの友人で、どこか「貧乏」より「貧困」を感じる人はやはり圧倒的に多い。これは偽りのない実感です。
    というかそもそも私自身、大学時代に就職戦線で負け、卒業後に東京でハロワ行きつつ脱法ハウスに住み、職が見つかるより先にそこすら住めなくなって田舎に帰郷し、田舎は田舎で牢獄のような実家に苦労させられてます(残念ながら現在進行形です)。この本で言う所の典型的な「貧困世代」の人生を地で行くような辛酸を舐めてもいるので、とても他人事とは思えませんでした。そういう人生を歩んでしまったせいで、良くも悪くも「貧困世代」として日々貧困に苛まれている人がごく身近な存在だったということもあるでしょう。
    この本の中では第2章「大人が貧困をわからない悲劇」が秀逸で、私自身の「わかってもらえない体験」を思い起こしながら、自分が言葉にしたくても出来てなかったモヤモヤをスッキリ言葉にしてくれた感があります。
    政策提言もだいたい真っ当と感じます。特に住宅政策。東京にいた時に特に痛切に感じましたが、諸々の事情で仕事が無い人、所得が低い人にも安い家賃で安心して住めてかつ孤立しない住環境は、私だって喉から手が出るほど欲しいし、必要。

    その上で言いますが、こういう括りにはやや反発を覚えます。まず「貧困世代」と括られたくないのが一つ。もう一つは社会構造だけが問題だとは感じないからです。
    まず、お金がない時や仕事がない時だからこそ「手元に在るものを有効活用しよう」という発想を大事にしたいところですが、「貧困世代」と括られるとそういう発想は出てきません。加えて、「“正社員になることが大事”信仰」「“親とは別居して家庭持って一人前”信仰」をもどこかこの本から感じます。そういう信仰に苛まれる事自体が貧困を貧困たらしめていると私は思っているのです。だから、いかにそういった信仰から訣別しつつ、それとは別の豊かさでいかに「貧困」から脱却するかの方法を私は考えたい方なんですが、貧困世代という風に「世代」で括られてしまうと「あら可哀想」が先に立つ。私が「貧困世代」という括りに反発する理由です。
    あと、社会全体の構造に注目するのもとっても大事ですし国の政策のあり方ももっと批判されていいと思いますが、それ以上に日本の会社経営のあり方そのものにダイレクトに向き合った方がいいように思います。
    貧困世代に豊かさが無いのは何故なのか? 著者は「若者は決して怠けているわけではない」という事を繰り返し強調し、「彼らが生活のしにくさや将来への絶望を抱えたり、貧困に至るのは、日本社会がなかば無意識に、そしてなかば悪気なくつくった監獄に閉じ込められているからである。彼らのせいではない。」(p.175)とまで言います。私もそこはある程度同意します。
    だったら、問題は「日本の経営力の無さ」でしょう。真面目に働いてなお貧困なお監獄で、別に悪い事をしてこの境遇に甘んじているのでも無いのなら、疑うべきは自分たち日本人がいかに「人を扱うのが下手」かという事です。「人に投資をしない国」じゃなく「人への投資のやり方がわかってない国」だということを認めて、じゃあ上手に人に投資をするってどういうことかをもっと真面目に議論した方がいいように思います。仕組みなんて一朝一夕で変わらないならなおのこと。労働市場、労働環境が劣化している今だからこそ、ブラック企業を叩くだけで終わりにしない。賃金が低いままで希望が持てないだとか従業員が心を病んだとかを「経営の失敗事例」として捉え、向き合い、建設的に克服する方向で考えることが、それこそ自分たちの世代に求められているように思いました。

  • 2017.06.04

    私も貧困世代ど真ん中です。
    読んで暗〜い気持ちになりました。
    いわゆる『持たざる人』が立ち直れる、行きていくための術や助けがあまりにも少なすぎます。
    仕事、住宅、家族、教育…。何にも頼れない。
    八方塞がり。もう日本は終わりですね…。

  • 若者たちの貧困を克服するためには社会構造を変えることが必要です。そのために何をすべきかを本書は語ってくれます。

  • 本書で取り上げられるような若者は、見たことがないという人が多いでしょう。とくに、大人になり社会的なグループで固まるようになるとなおさら。しかし、そうしたイベント、集会などに行けばまさにこの本にある状況にさらされる人々が数多くいることに驚きます。ブラックバイトというのも見てきてるしね。そして、世帯を持つ難しさというのを痛感している若者は多いと思う。見なさい、婚活アプリの多さを。お見合いじゃない、ってところが実はミソだと思うんだけど、それはまた別途。どこでだ。現代の福祉社会における最低限抑えるべきイシューをまとめているので、ライトに振り返るときによい。

  • 重大かつ深刻な問題について新しい労働組合の設立や個別性の対応など社会的な構造の変化の必要性とツイッターでも良いので思い考えを表出する事の重要性を説く。
    それにしても労働万能説、家族扶養説、青年健康説、時代比較説、努力至上主義説と大人たちの無知と思いやりの無さは嘆かわしい。
    闘技的民主主義と言う言葉を初めて知ったが、建設的な意見だと思う。

  • 社会福祉は若者を対象にしていない。奨学金を返せない、返すのに年月がかかり結婚、家庭を持てない。賃金が低すぎて実家から出られない、独立できない、イコール家庭を持てない、子供を産めない。親からの負の連鎖…「一億貧困社会」は否めないのか。真剣、政治を変えないと。

  • これまで高齢者や子どもの支援ばかりに目を向けられていた社会福祉について(もちろんそれも大切なことですが)、若者の環境についても整えるべく様々な具体的ケースや提言がわかりやすくまとめられていました。
    そういう私も、貧困世代ど真ん中。思い当たる節がありすぎでした。
    福祉といえば高齢者や障がい者のためにあるものという固定観念があったので、海外の事例は目からウロコでした。特に、住宅関係。

    「辞めたいなら辞めればいい」とか、「根性が足りない」とか、「生活保護は甘え」とか、とにかく精神論で語りたがる日本社会ですが、メンタルではカバーしきれないハードモードすぎる現実があるわけで……。まずはその認識の格差から是正していかないといけないという、長い長い道のりでさありますが、特に教育という未来への投資がもっと充実することを願って止みません。

  • 学生はブラックバイトでこき使われ、社会人は非正規雇用や奨学金返済に苦しむ−。社会から強いられた貧困に直面している、日本史上でも類を見ない、特異な世代の若者たち。追いつめられている若者の現実を伝える。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40238360

  • 高齢者や障害者に対する社会保障は高いが健常な若者世帯には明確なセーフティネットが不足している。若いから頑張れるというのは経済成長が止まった現代では通用しないだろう。
    しかし若者の貧困は本当に困っているかサボっているのかの線引きが難しそうだ。

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著者プロフィール

1982 年茨城県生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。ソーシャルワーカーとして活動する一方で、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関し提言を行う。著書に『下流老人』(朝日新書)、『貧困クライシス』(毎日新聞出版)など。

「2018年 『未来の再建』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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