昭和の戦争 日記で読む戦前日本 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 110
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883764

作品紹介・あらすじ

戦争の本質は日記の細部に宿る!
田中義一首相への天皇の不信感、日米開戦時の組織利益対立、大東亜共栄圏構想を冷笑する帝大生、井伏鱒二や高見順のアジアへの思い、古川ロッパの戦時下の食卓、8月15日の反乱軍の皇居乱入……。
張作霖爆殺事件から敗戦まで、七つの「分岐点」での指導者の「選択」に迫る!

感想・レビュー・書評

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  • 別著で論じられている「昭和デモクラシー」からファシズムへの流れを追いかけようと思ったのだが、政治史と民衆史が混在しており、かつ日記を史料としているため断片的で少々読みにくいし、説明不足な所もあって流れを追うには物足りない。ただし、当時の「生の声」を元に叙述されてはいるので、時代の雰囲気を感じるにはよいのかもしれない。とはいっても、著者のストーリーに合うように日記の編集がされているので、総じて不平不満というかグチが多い内容にはなっている。

  • その日の出来事と感想が書かれた日記は、時代の空気を閉じ込めたタイムカプセル。開戦の熱気、原爆の噂、突然の敗戦…その時、政治家は、作家は、何を書いたのでしょうか。昭和の戦争を日記で追った歯ごたえのある本。

  • この季節になると、戦争モノが読みたくなります。太平洋戦争について、日本全体として、総括が足りなかったと考えています。常に歴史の検証は必要です。

    http://naokis.doorblog.jp/archives/diaries_are_evidence.html【書評】『昭和の戦争 日記で読む戦前日本』〜当時の日記から戦争原因が見えてくる。

    ブログ記事の要約
    ・「日記」は生き証人
    ・当時の「日記」は残されていて読むことができる
    ・当時の日記から分かったこと
     ・戦前昭和の政治劣化が戦争をもたらした。
     ・大東亜共栄圏樹立のために戦争をしたというのはウソ
    ・現代的意義

    <目次>
    はじめに
    第?章 張作霖爆殺事件
    第?章 満州事変
    第?章 日中全面戦争
    第?章 第二次欧州大戦
    第?章 日米戦争
    第?章 アジア太平洋戦争
    第?章 敗戦

    2016.07.17 新書巡回にて
    2016.07.18 読書開始
    2016.07.29 読了

  • 張作霖爆殺事件から太平洋戦争までを、いろいろな日記の記述から読み解くもの。
    生々しいけど、日記なので当然主観的だし一方的な記述の採択が多い。もちろん誰の日記のどの部分を紹介するかが筆者の企てということになる。ちょっと何だかなぁ。あんまり納得できなかったな。

  •  本書が語る歴史に突飛な内容があるとは思わない一方、本書を通じて日記の引用形式なので各個人がその時々に感じた断片的な内容が多く、基本的な歴史の流れが頭に入っていないと読みにくい。
     それでも筆者は、昭和の戦争から戦前昭和について、以下の3点を総括している。
     1)立憲君主制の危機。軍部の台頭による危機という単純な話ではなく、軍対外務省、軍内部、政党間といった様々な対立により立憲君主制が機能不全に陥り、最後は立憲君主たる天皇が「聖断」を下さざるを得なかったということである。
     2)「ファシズム」と民主主義は紙一重、同床異夢。前者が国民を総動員しようとし、後者は戦争の下での平等を求めたこと。
     3)日本が初めて経験する全体戦争。本書で引用される日記が示す政府外(喜劇役者、作家、学生)の様子は、戦争の時代でも人々の暮らしがあったことを教えてくれる。徴用され南方に送られた作家たちの、戸惑いも入った現地への感情。東京の高級住宅街で国会議員の大邸宅が空襲で燃えていた時、周囲の人々は積極的に助けようとしなかったこと(筆者は「極限の下方平準化による社会の平等化に対する暗い情念」と呼んでいる)にはうすら寒さを覚えるが、当時の正直な感情だったのだろう。

  • エッセイ程度の読み物なら成り立つだろうが、歴史家が日記のつまみ食いで好きなように論旨を展開するのは反則だ。第一章の張作霖爆殺事件だけでも読む気が失せた。
    人為的な事件を事故か天災のように記述し、事後の対処にのみ焦点を絞れば自ずと権力中枢の献身性が印象に残ることになる。その視点からは陸軍という権力機構そのものが事件を引き起こしたという大前提がこぼれ落ちる。

  • 張作霖爆殺事件から敗戦までを、関係者の日記を参照しながら綴った書。
    著者は、戦前昭和は立憲君主制の危機の時代だったという。政治家が選択を誤り、軍部の台頭を招いた(或いは抑えられなかった)、ということなのだろう。
    「大東亜共栄圏」構想は、戦況が悪化するなかで、軍事的劣勢を政治工作で挽回しようとした苦肉の策であったが、諸民族の結束を得られずに軍事的・政治的な効果をあげられなかった。そして、戦争目的は「自存自衛」へと回帰し、「大東亜共栄圏」は幻と消えた、とのこと。

  • <目次>
    第1章  張作霖爆殺事件
    第2章  満州事変
    第3章  日中全面戦争
    第4章  第二次欧州大戦
    第5章  日米戦争
    第6章  アジア太平洋戦争
    第7章  敗戦

    <内容>
    政治家、軍人、官僚、作家などの日記を駆使して、歴史的事実の裏側の各人の想いを描きながら、また歴史を浮き彫りにさせる内容。当然本来の歴史的事実を知らないとわからない。新書いう関係上(もともとは日本経済新聞の連載)、その読み込みは浅いが、見えてくるものはある。

  • 永井荷風が井伏鱒二を嫌っていたことをどこかで読んだ気がするのですが、それは、荷風が井伏の『昭南日記』を読んでいて、日本軍のシンガポール空襲から避難するときにある現地人が身の回りの金品を寺院の僧侶に預け、にもかかわらず僧侶が持ち逃げしたことに対して井伏が「何の応援をしてやろうというつもりもない」という日記の記述に、永井が失望したのかと想像してみました。

  • 210.7||In

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著者プロフィール

井上寿一
1956年(昭和31)東京都生まれ。86年一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得。法学博士。同助手を経て、89年より学習院大学法学部助教授。93年より学習院大学法学部政治学科教授。2014~20年学習院大学学長。専攻・日本政治外交史、歴史政策論。
著書に『危機のなかの協調外交』(山川出版社、1994年。第25回吉田茂賞受賞)、『戦前日本の「グローバリズム」』(新潮選書、2011年)、『戦前昭和の国家構想』(講談社選書メチエ、2012年)、『政友会と民政党』(中公新書、2012年)、『戦争調査会』(講談社現代新書、2017年)、『機密費外交』(講談社現代新書、2018年)、『日中戦争』(『日中戦争下の日本』改訂版、講談社学術文庫、2018年)、『広田弘毅』(ミネルヴァ書房、2021年)他多数

「2022年 『矢部貞治 知識人と政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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