不屈の棋士 (講談社現代新書)

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著者 : 大川慎太郎
  • 講談社 (2016年7月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883788

不屈の棋士 (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

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  • 人工知能、AI、Iot、などとやたら耳慣れない言葉が急速に存在感を示し始めた2015年、その後の技術進歩とともに「20年後失われる職業」などというリストが並び、私の務める“銀行融資担当者”も堂々のその仲間入りを果たした。

    先月、たまたま登壇した地元大学でのシンポジウムで学生から、「あなたの仕事はそのうち人工知能が全て行う様になると聞きました。今から僕たちが銀行員になる意味はあるのでしょうか?あなた自身の20年後の存在価値はどこにあると思いますか?」と、なんの悪意もなく聞かれその答えに窮した。

    そんな矢先に出会った本。単なるサラリーマンですらその存在意義を問われ腹を立てた。いわんやプロ棋士をや。である。

    これまで、100手先を読む天才同士の戦いを神聖な気持ちで見守っていた最中、突如現れた1000手先までをも労なく読み取る人工知能。これまでの常識が通じない破天荒な盤面。表情なく、感情なく指される有効手に翻弄される思考の達人たちの心情に迫る。

    11名の孤高の天才集団が感じている覚悟と矜持。現役最強棋士の自負と憂鬱、コンピュータに敗れた棋士、人工知能との対決を恐れない棋士、将棋ソフトに背を向ける棋士、そのスタンスは三者三様ではあれどすべての棋士が「今、将棋と棋士の未来が劇的に変化している。」と唱える。危機感とともに。

    これはもはや、サラリーマンが共感出来る次元の話しではないのではないか。好奇心と先述の学生に対する自分なりの答えを求めて本書を手にしたものの、棋士が抱える危機感は、私の持つそれとは比較にならないものだった。そのリアルを紡いだ本書、当然の良書である。

    良書なのではあるが、本書にはキラーセンテンスが見当たらない。即ち、‘このワードを座右の銘として繰り返そう’と思える箇所が一つも無いのだ。再読したいと思える箇所が無い。何故か。

    そう、著者も棋士もガチ暗中模索なのだ。

    初めて、“プロ棋士の価値とは何か”に外部から疑問符が投げかけられているのだ。綺麗な言葉や上手い言い回しで整理できるほど穏やかな話では無い。思考の達人が戸惑う自己の存在価値に対する問い。フェイスブックでリア充アピールの過ぎるサラリーマンが上っ面の言葉で回答できるものではでは無いのだ。良かった一安心。

    いやいや、一安心では終われない。

    これは、これからの全ての人にとっての問い。これまでの哲学的思想とは少し異なり、現実問題としての存在価値の定義探索に、これから日々の少しの時間を注ぎたいと思う。


    そうそうなにより本書は、棋士の名を「羽生善治」しか知らない私にプラス10名もの魅力的な天才の存在を教えてくれた。そして彼らが矜持を掛けて戦い抜くこれからの将棋界へ、敬意と好奇心とをもたらせてくれた。

    今年12月、第二回電王戦の挑戦権は誰が獲得するのか…ここに新たなファンが誕生していることを、細々と宣言したい。

    http://www.eiou.jp

  • AIを用いた将棋ソフトに対する考え方について現役11人の棋士にインタビューした内容をまとめた本。インタビューの対象はソフト利用に肯定的な棋士、ソフト利用に否定的な棋士、実際にソフトと対戦した棋士、そして現時点で棋士の最高峰と目される羽生氏、渡辺氏の2人という多岐にわたります。
    著者がインタビューで投げかける質問が非常に鋭く、対象となっている棋士の考え方をうまく引き出している印象です。
    どの棋士の考え方にも納得させられるものがあり、まず感じるのは棋士というのは自分の考えを非常に分かりやすく表現されるなあ、という点です。これは棋士という職業が論理的な思考を常に求められているからかもしれません。
    ちょうどソフトの力量が人間に並びかけている微妙なタイミングである今だからこそ、棋士のソフト(AI)に対する姿勢は様々なスタンスがあり、これは将棋界に限らず今後AIが進出してくる領域と関りを持つ私たち一般の人間が体験し、考えさせられる事なのかもしれないと感じました。
    棋士という職業がどんなものかという点でも理解を深めることができる1冊です。

  • 現役棋士にコンピュータとの対戦について聞くインタビュー集。個人的には山崎さんと糸谷さんのインタビューに興味を惹かれた。将棋のことはよくわからないけど、インタビューを受けたほぼすべての棋士が、「コンピューターに頼り過ぎると自分の頭で考えなくなるから危険」と話していたのが印象的。プロ棋士でも20分考えないと答えが出ないようなことも、コンピューターなら1秒で解答がわかる時、ポチッとクリックして答えを得るのではなく、あえて自分の頭で考えることを選択できるか――これって、棋士だけでなく自分の日常にも言えると思った。

  • 11月17日 将棋の日

  • ’’人工知能はもはや人間を超えたのか’’’’棋士(棋士のつくる棋譜)という職業の存在価値はそのときどこにあるのか’’’’人工知能とどう向き合うか(戦うのか戦わないのか)’’
     2016年6月という非常に絶妙の時期に、現役最強棋士・人工知能に特に詳しい棋士・実際に人工知能と公開対局して敗れた棋士・人工知能と闘う気はないと公表する棋士、同じ質問を11名の棋士にぶつけることで、いろんな考え方をあぶりだしてくれた、名著と呼べるインタビュー集です。
     タイトルがその切り口を彷彿させないだけに勿体ない。登場してる棋士が豪華絢爛。将棋指しでない人でも、人工知能に凌駕されつつある時点での人類最高頭脳集団の苦悩や覚悟や決意を体感できる名著です。千田翔太プロの完敗と宣言した上での若い人ゆえの割り切りと、既に上り詰めた立場にいる佐藤康光永世棋聖や渡辺明永世竜王のいらだちが印象的でした。羽生善治永世6冠はやっぱ飄々としてる不思議な人です

  • わたしが愛してやまない将棋。下手くそだけれど、小学生の頃はプロになるのが夢だった。コンピューター将棋も好き。ただ現在のようなレベルになるとは思わなかった時代の話だが。

    この時代に、11人の棋士へのインタビューを読んで考えさせられたし、悔しくて、また、崇高さに涙も流れた。棋士の存在意義を通して、人間の存在意義を考えざるを得なかったからだ。

    インタビュアーの大川慎太郎さんの文章は素晴らしかった。将棋が分からない人にもお勧めしたい。

  • AI(コンピュータソフト)の在り方について名を馳せるプロ棋士11名にインタビューし、その内容が書かれている本。

    抵抗を示す棋士、強さに惹かれ積極的に取り入れようとする棋士、まだ負けたわけではないと矜持を保つ棋士等々、考え方が十人十色で大変面白い。

    多くの棋士が述べているように、私も人間の指す手や解説に魅力を感じているのだけど、正直「羽生マジック」がマジックじゃなくなる日、は秒読みに入っていると思うと怖い。(既にそうなっているかもしれない)
    己の思考で苦悩の上に閃いた手を指し、「その手はソフト検討から編み出したものですか」と言われたらさぞかし不愉快だろう。

    強さこそ正義、のプロの世界に圧倒的強さの人工知能が現れてもなお、プロ棋士を尊敬していたいと思う。人間は人間、コンピュータはコンピュータで共存していってほしい。

  • ソフトが棋士の実力を上回ったと言われる現在、どちらが強いかという議論は過去のものとなり、焦点はソフトが現役棋士に及ぼす影響度に移っている。将棋研究にソフト活用は欠かせなくなり、ソフトの「手」が棋士たちの盤上に色濃くあらわれる。そして今後もその潮流は続き、後戻りすることはない。この状況をどう捉えるか、と様々な立場の棋士にインタビューしたのが本書。各人わりとバラエティに富んだ反応(=人物選定が上手くいってる)で、且つ皆さすがに論理的な語り口。ソフトが浸透してしまった現状、もはや肯定も否定も楽観も悲観もないというのが、総じて受けた印象だったが、将棋の人気(将来)は結局、本当のスポンサーであるファンが棋士に何を求めていくかに尽き、棋士たちはその推移を半ば見守るしか無い状況のようにも感じられた。またAIが人々の職を奪う未来が盛んに論じられる昨今、「最強」の専売特許を脅かすソフトを彼らがどう考えているかは、将棋を知らなくとも興味が湧くもので、その点からも時期を得たテーマとも思った。

  • 棋士がコンピュータに負ける時代になった。その歴史が書かれている。なぜコンピューターに負けるようになったかの分析もしている。

  • 将棋関連の本は数多く読んでいるが、一、二位を争うほどの面白さだった。
    著者が観戦記者であるため将棋への造詣が深く、独自の人間関係を築いており、だからこそ誤解を恐れずに繊細な部分もインタビューできている。大川氏以外の誰にも真似できない非常に価値ある一冊。

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不屈の棋士 (講談社現代新書)の作品紹介

羽生善治は将棋ソフトより強いのか。

渡辺明はなぜ叡王戦に出ないのか。

最強集団・将棋連盟を揺るがせた「衝撃」の出来事、
電王戦でポナンザに屈した棋士の「告白」とは。

気鋭の観戦記者が、
「将棋指し」11人にロングインタビューを敢行。

ここまで棋士たちが本音を明かしたことはなかった!

由緒ある誇り高き天才集団は、はたしてこのまま、
将棋ソフトという新参者に屈してしまうのか。

劣勢に立たされ、窮地に追い込まれた彼らはいま、
何を考え、どう対処し、どんな未来を描いているのか。

プロとしての覚悟と意地、将来の不安と葛藤……。

現状に強い危機感を抱き、未来を真剣に模索する
棋士たちの「実像」に迫った、渾身の証言集。

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◆本書のおもな内容◆

序章 窮地に立たされた誇り高き天才集団

第1章 現役最強棋士の自負と憂鬱
◆羽生善治 : 何の将棋ソフトを使っているかは言いません
◆渡辺 明 : コンピュータと指すためにプロになったのではない

第2章 先駆者としての棋士の視点
◆勝又清和 : 羽生さんがいきなり負けるのは見たくない
◆西尾 明 : チェス界の現状から読み解く将棋の近未来
◆千田翔太 : 試行錯誤の末に見出した「棋力向上」の道

第3章 コンピュータに敗れた棋士の告白
◆山崎隆之 : 勝負の平等性が薄れた将棋界に感じる寂しさ
◆村山慈明 : 効率を優先させた先にあるものへの不安

第4章 人工知能との対決を恐れない棋士
◆森内俊之 : 得られるものと失うものの狭間で
◆糸谷哲郎 : ソフトの「ハチャメチャ」な序盤にどう慣れるか

第5章 将棋ソフトに背を向ける棋士
◆佐藤康光 : 将棋はそれほど簡単ではない
◆行方尚史 : 自分が描いている理想の棋士像とのズレ

不屈の棋士 (講談社現代新書)のKindle版

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