ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)
- 講談社 (2016年8月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062883849
作品紹介・あらすじ
いま、グーグルやアマゾンといった世界的なハイテクIT企業が、
その巨大なビジネス・ポテンシャルに魅かれ、
巨額の投資をしている超先端技術をご存じだろうか。
「ゲノム編集」である。
この史上空前の技術、そしてそれが私たちの人生や暮らし、
さらには社会に与えるインパクトなどをわかりやすく解説するとともに、
熾烈な特許争いの舞台裏や
科学者に群がる巨大企業の実態にも迫った、必読書!
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みなさんは、これまでに「自分を変えたい」と思ったことがあるだろうか?
たとえば自分の顔、身長、体型、性格、知能、
運動能力、さらにはアレルギーなどの各種体質……
これらすべてに満足している人など、ほとんどいないのではないだろうか?
にわかには信じられないかもしれないが、
(少なくとも技術的には)それが可能になる時代が迫っている。
なぜなら、先に列挙した特質のすべてに遺伝子が強く関与しており、
これを操作する遺伝子工学や生命科学の分野でいま、過去に例を見ない
驚異的な技術革新が起こっていて、それこそがこの「ゲノム編集」だからだ。
世界中の科学者たちは、この技術によって、
すでに「肉量を大幅に増やした家畜や魚」「腐りづらい野菜」などの
開発に成功している。
今後、この「ゲノム編集」は「iPS細胞」などの異なる技術を
組み合わせることで、がんや糖尿病、あるいはアルツハイマー病など、
現代社会に多く見られる病気の治療にも応用されると見られている。
グーグルやアマゾンなどはすでに
「生命科学とITの融合」に取り組み始めている。
さまざまな病院や研究機関などと連携して、ゲノム(DNA)データを
クラウド上に集積、AI(人工知能)でパターン解析することにより、
やがて複雑な病気の原因遺伝子や発症メカニズムを解明していくというのだ。
高い知力と強靭な肉体、そして端麗な容姿を兼ね備えた
「デザイナー・ベビー」の誕生を可能とする「ゲノム編集」について、
倫理的な問題をもまじえながら、わかりやすく説いた入門書。
感想・レビュー・書評
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crispr cas9によるゲノム編集と、
従来の遺伝子組換えの違いがよく分かった。
ノーベル賞を受賞するのも良く分かるし、
『衝撃』という言葉にも納得。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遺伝子組換えが危険と言われるのは何故か?
ゲノム編集は遺伝子組換えとは異なるのか?
ゲノム編集の仕組みは?
最近、食の遺伝子組み換えに興味があったので、手に取ってみた。
ゲノム編集について、大まかに知ることのできる良書。
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2016年時点での本。
ゲノムの歴史から、2016時点での技術進歩の過程が理解できる。 -
第一章 「人間の寿命は500歳まで延びる」は本当か──ゲノム編集「クリスパー」の衝撃
DNAのメス
遺伝子組み換えの限界
生命科学とITの融合
第二章 解明されてきた人間の「病気」「能力」「特徴」──パーソナル・ゲノムの時代
SNP
行動遺伝学
エピジェネティックス
第三章 ゲノム編集の歴史と熾烈な特許争いの舞台裏──誰が「世紀の発明」を成し遂げたのか
ノマド科学者
神頼みの手法からの転換
ゲノム編集の歴史
第四章 私たち人類は神になる準備ができているか──グーグルとアマゾンの戦略
不老長寿の夢
どこまでが許容範囲か -
ゲノム編集について書いた一冊。
ゲノム編集の最前線について知ることができた。 -
人類は“神の領域”に足を踏み入れつつある?人間や動植物のDNAを思うままに操作できる「ゲノム編集」。その技術の実態を、最新鋭の「クリスパー」に焦点を当て、解説する書籍。
ゲノム編集とは、ワープロで文章を編集するように、DNAを自由自在に書き換える技術のこと。中でも、クリスパーと呼ばれる最新鋭のゲノム編集技術は、汎用性に富んでいる。
・漁業、農業:クリスパーを使い、肉量が従来の1.5倍の真鯛が作られた。収穫量の多い小麦などの開発も進んでいる。
・医療:従来の医療は対症療法だが、クリスパーには根本的な原因、「遺伝子の変異」を直接治療できる可能性がある。
現在、科学者らは、皮膚や臓器などの「体細胞」をクリスパーで治療することは問題ないとしているが、「生殖細胞」のゲノム編集については抵抗感を示す。生殖細胞の遺伝的変化は子孫へ受け継がれるからだ。さらに、親が子供の容姿や知能を出生前に決める「デザイナー・ベビー」に使われる懸念もある。
人類にとって都合の悪い遺伝子を人為的に駆逐し、都合のいい遺伝子を繁殖させる技術を「遺伝子ドライブ」という。
近年、この技術がクリスパーの力で実現したが、実際に生物を改造すれば、生態系や環境に予想外のダメージを与えかねない。
ゲノム編集の先を見越した研究も進んでいる。
例えば、ヒトのDNAを完全に化学合成するプロジェクトがある。原理的には、人工的に作ったDNAで人造人間を誕生させることは可能だ。
ゲノム編集の「医療目的」と「それ以外の目的」の境界線は曖昧だ。最初は、重度の知的障害の治療が目的でも、徐々に条件が緩和され、赤ちゃんの知的能力に関する遺伝子を改良することは親の義務である、という時代になるかもしれない。 -
「CRISPR-Cas9」を用いたゲノム編集技術誕生の歴史と社会にもたらす影響について解説した本。
分子生物学の基礎的な知識や遺伝子組み換えとの違いを踏まえて、ゲノム編集の凄さが解説されていて分かりやすかったですが、ゲノム編集の原理についての解説が少ない点が気になりました。
ゲノム編集技術は誰でも簡単に遺伝子操作ができるため、基礎研究に革命をもたらし、今後の医療分野への応用や食料問題の解決が期待されますが、人類の遺伝子操作がどこまで許されるのかを早急に考える必要があることを理解しました。 -
ゲノム編集「クリスパー」に関する入門的な解説本。クリスパーを理解するための必要な分子生物学知識や従来の遺伝子組み換え技術、GMOを巡る規制等も対比として解説されており、非常に分かりやすい。また、特許権争い、Googleの動向などにも言及しており、この一冊でクリスパーとその周辺事項は一通り知ることができる。著者である小林雅一氏は過去に人工知能に関する良書も書かれており、そちらも一読をオススメする。現代のフロンティアの一端を知ることができる。
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「クリスパー・キャス9」を中心にゲノム編集技術とその歴史、この技術が社会と未来に与える影響力を説明する。やっぱりブルーバックスより分かりやすい。やっと遺伝子組換えと遺伝子編集の違いが分かったよ。
技術の進歩には驚くばかりだけど、それ以上にこの技術の使い方にはもっと慎重であって欲しい。そのためには多くの人間が関心を寄せることが必要だし、できれば経済のシステムから切り離したところで開発を進められないかな。