愛と狂瀾のメリークリスマス なぜ異教徒の祭典が日本化したのか (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884013

作品紹介・あらすじ

あなたは、ふしぎに思ったことがないだろうか?

 「なぜ日本人は、キリスト教信者でもないのに、クリスマスを特別行事と見なして、毎年毎年、あんなに大騒ぎするんだろう?」


 本書は、「日本におけるクリスマス祝祭の歴史」を丹念に追いながら、この謎に迫ってゆくスリリングな教養書である。1549年のキリスト教伝来から始まる「降誕祭」の様子を、史料から細かく辿っていった。

 実際に辿ってみると、「クリスマスにおける狂瀾」は、明治時代から始まったことがわかる。現在の、「恋人たちのクリスマス」は、明治の馬鹿騒ぎの流れの末にある、と考えられるのだ。そしてその、恋人たちのクリスマスのルーツは、実は、日露戦争の勝利にあることにも気づくだろう。

 本書を読み進めるとやがて、「日本のクリスマス大騒ぎ」というものが、力で押してくるキリスト教文化の厄介な侵入を――彼らを怒らせることなく――防ぎ、やり過ごしていくための、「日本人ならではの知恵」だったのか! と納得するであろう。「恋人たちのクリスマス」という逸脱も、その「知恵」の延長線上にあったのである。

 さあ、キリスト教伝来500年史を辿り、クリスマスをめぐる極上の「日本史ミステリー」を味わってみましょう。


<目次>
序  火あぶりにされたサンタクロース
1章 なぜ12月25日になったのか
2章 戦国日本のまじめなクリスマス
3章 隠れた人と流された人の江戸クリスマス
4章 明治新政府はキリスト教を許さない
5章  「他者の物珍しい祭り」だった明治前期
6章 クリスマス馬鹿騒ぎは1906年から始まった
7章 どんどん華やかになってゆく大正年間
8章 クリスマスイブを踊り抜く昭和初期
9章 戦時下の日本人はクリスマスをどう過ごしたか
10章 敗戦国日本は、狂瀾する
11章 戦前の騒ぎを語らぬふしぎ
12章 高度成長期の男たちは、家に帰っていった
13章 1970年代、鎮まる男、跳ねる女
14章 恋する男は「ロマンチック」を強いられる
15章 ロマンチック戦線から離脱する若者たち
終章 日本とキリスト教はそれぞれを侵さない

感想・レビュー・書評

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  • なかなか興味深かった。何だ、昨今のハロウィーンの渋谷でのバカ騒ぎが巷間批判・揶揄されているが、1930年頃、また1950年頃に、当時の若者たちもクリスマスをネタに乱痴気騒ぎをしていたのか!というのは初めて知った。日本におけるクリスマスの大衆化は思っていたよりもずっと歴史が長いことや、時代により雰囲気の変遷を経てきたことも。(ちなみに私の世代はバブルの頃の、「クリスマスイブは恋人と過ごす特別な日」というイメージが強いと思う)

    しかし、このテーマ(=日本人とクリスマス)で1冊の本を書くのであれば、なぜに「アメリカには無い、クリスマスケーキというものが日本ではここまで定着したのか?」について全く触れられていないのは片手落ちだ。あるいは著者もクリスマスケーキが日本特殊なものだとは知らないのだろうか?あまりに浸透し過ぎていて…。(かく言う私もつい最近知った訳だが…(苦笑))

    ぜひ、日本人はなぜクリスマスにチキンとケーキを食べるようになったのか?も盛り込んで考察して欲しかった!

  • 「キリスト教徒でもないのにクリスマスを祝う(クリスマスで騒いで楽しむ)のはおかしい!」という意見を耳にすることは多いです。
    特に昨今では、恋人のいない人がいわゆる「リア充」をねたんでこのような発言をすることをSNSなどで目にするように思います。
    「恋人たちの日」として認知され、さまざまな市場が沸き立つこの「クリスマス」というイベントがどのように日本に受け入れられ、そして今のような形になったのか。
    戦国時代のキリスト教伝来から江戸・明治初期のキリスト禁教の時代、日清日露戦争後の「一等国」として西欧文化を消化した時代に、太平洋戦争中の中断、そして講和条約後の騒擾。

    当時の新聞記事などをたどりながら「クリスマス」がどのように祝われて(クリスマスを理由にしてどのような騒ぎ方がなされて)いたのかが簡潔にまとめられています。

    根本にあるものとして、キリスト教を(その宗教として)受け入れることはできないが、国際情勢のなかでキリスト教を表立って拒絶することはできないから表象の文化(日曜日を休日としたり、教会で結婚式を挙げたり、クリスマスをお祭りとして取り入れたり)のみを受け入れる、という視点はとてもわかりやすく納得のできるものでした。

    真正面から取り組む(考える)と、日本の伝統的な風習と反発し、キリスト教を拒絶せざるを得ない、という理由から、「外国人の変わった年末行事」→「年末・新年のひとつの「お祭り」」→「羽目を外して遊んでよい日」→「(大正天皇の命日と重なったことから)大人が遊ぶのではなく子どものためのお祝の日」→「大人がバカ騒ぎする日」→「恋人の日」とその時々の社会を反映しながら位置づけの変わってゆく様子も非常に印象的でした。

  • 正直、私の中でこの本に対する評価は低い。様々な資料を掘り起こしながら書かれた労作であるとは感じるが、何せ視点が少ない。根底にある著者のキリスト教嫌悪ばかりが先に立ち考察の次元は低い。所々に入るキリスト教嫌悪やら民主党批判やら本題から逸れる小ネタ、むしろこちらが書きたかったのでは無いかと邪推させられる。
    新書だし眉に唾しながら眺めるのが丁度良いか。

  • 日本人がクリスマスをどのように取り扱ってきたのか、その歴史をつぶさに見ていくことで、日本人がキリスト教(西洋)とどのように対峙してきたのかが浮かび上がってくる。
    一神教のキリスト教と、多神教で天皇を中心とする日本のシステムは相容れない。クリスマスを無意味に大騒ぎすることは、西洋を形だけでは受け入れたポーズをとりながら、その実はキリスト教の教えを受け入れないと言う宣言でもある。

    もし秀吉や家康が鎖国をせずに、キリスト教の布教を受け入れてしまっていたら、今頃、日本という国は存在しなかった可能性だってある。

    クリスマスという1点に着目するところから、日本の歴史や日本人の根本的な気質みたいなものが見えてくるのがとても面白い本だった。

  • 2023/12/14
    日本とキリスト教の関わり方の歴史から、日本におけるクリスマスの形の変遷について考察した本で、内容がとても興味深く面白いと思いました。
    安土桃山時代のキリスト教宣教師による布教に対する日本のスタンスや、その先の時代における為政者とキリスト教との関わり方の変化の理由、クリスマスが現代のように「恋人と過ごす日」のような雰囲気に形作られるまでの変化が、とてもわかりやすくまとめられていてとても歴史の考察本だけどそれほど硬くもなく読みやすかったです。
    所々に入る著者のツッコミのような部分も、確かにそう思うよなーと言う気持ちととても重なるものが多く、端的ですが的を射た表現で各章が構成されているように感じます。
    クリスマスについて考察してみたい人にはとてもおすすめですし、これまでの時代の変化も読み取れる面白い一冊です。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1261507

  • とても面白かった。
    キリスト教と日本の歴史的な考証が素晴らしい。

    前半、現在のクリスマスと、戦国時代に日本で行われていたキリシタンの生誕祭には断絶があるということが考証される。この頃のキリスト教は、めちゃくちゃ怖い。キリスト教徒でなければ人にあらず、キリスト教の文化でなければ全て邪教の文化、破壊して、キリスト教式に塗り替えるべきということが書簡などから透けて見える。
    一神教だから、日本の大らかな多神教では無理な感覚。日本なら、キリスト教も、いくつもある宗教の一つ。そんな神様もいるんだって感じだが、キリスト教を信じるってことは、それ以外の神様を一切否定する、また、それにまつわる習俗にも迎合しないってことだから、日本の風土と合わない。

    結局はキリスト教の世界征服計画だから、看破した日本では布教自体をNoと言い続けてたけど、明治になって、あからさまにNoを言い続けるのも難しくなった。そこで、キリスト教?うん、一応受け入れてるよ、だってほら、うちの国でもクリスマスやってるから、という感じにするために異郷のお祭り(日本的軟化ver)として受け入れ始めた。毎年、新聞に、横浜なんかの居留地、もしくは元居留地での楽しげなクリスマスの状況を報道していた。クリスマスの成立自体が、ローマ帝国でキリスト教を受け入れるにあたり、これまでやってた他のお祭りに被せる形で、行われた。そのうえ、そのクリスマス(イエスの誕生日)もサンタクロースが贈り物をする日に取って代わられつつある。キリスト教の目立ったイベントでありながら、そのありようは、全くキリスト教的でないので、元々の意味を離れて、とにかく馬鹿騒ぎをする日として受け入れるのに都合がよかった。…というようなことが、歴史的な検証を踏まえ、考察される。

    後半は、昭和、戦争を経て後の、恋人たちのクリスマスに至るまで。

  • まあまあ。戦前からクリスマスの騒ぎがあまたことが分かった。当時の新聞記事などは面白かった。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50077119

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著者プロフィール

1958年生まれ。京都市出身。コラムニスト。
著書に『かつて誰も調べなかった100の謎 ホリイのずんずん調査』(文藝春秋)、『青い空、白い雲、しゅーっという落語』(双葉社)、『東京ディズニーリゾート便利帖 空前絶後の大調査!』(新潮社)、『ねじれの国、日本』(新潮新書)、『ディズニーから勝手に学んだ51の教訓』(新潮文庫)、『深夜食堂の勝手口』(小学館)、『いますぐ書け、の文章法』(ちくま新書)、『若者殺しの時代』『落語論』『落語の国からのぞいてみれば』『江戸の気分』『いつだって大変な時代』(以上、講談社現代新書)などがある。

「2013年 『桂米朝と上方落語の奇蹟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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