<軍>の中国史 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884099

作品紹介・あらすじ

「よい鉄は釘にならず、よい人は兵にはならない」、中国で古来、そう言い習わされてきました。儒教の教えを国是とする「文の国」では、大昔から軍隊は軽蔑の対象でしかなかったのです。

 とは言え、島国日本とは違って常に北方の遊牧民族の脅威にさらされていた中国は、軍隊を蔑ろにするわけにも行きません。軍が弱くなれば、あっという間に異民族に征服されてしまうからです。この脅威に、近代における日本の侵略に至るまで、中国は長い間さらされ続けていました。という「必要悪」といかにうまく付き合うか、このジレンマが、じつは中国史を背後から動かす、もっとも重要なファクターだったのです。

 現在、中国の示威的な行動が、国際社会との軋轢を生み出しています。なぜ中国がこのような理不尽な行動に出るのか、われわれには不可解なばかりですが、著者の見立てでは、これは習近平をトップとする現在の中国の基盤の脆弱さの表れだということです。戦前の関東軍ではありませんが、軍部の暴走を指導部が押さえることができず、追認している可能性さえもあるのです。仮に指導部が軍に対して強硬手段に出ると、暴力の刃は逆に自分たちに向けられるかも知れない。前近代の皇帝たちと同じジレンマに、じつは現代中国も悩まされており、指導部は、非常に危ういバランスの上に立った舵取りを強いられているのです。

<軍>をキーワードに、古代から現代にいたる長い中国の歴史を繙くことによって、中国の知られざる「本質」が解き明かされてゆきます。

感想・レビュー・書評

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  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689729

  • 歴代中国の国家の「国軍」はあくまでも実力者の私兵にすぎない。それが兵を食わせなければならないという軛が古代から天下統一・権力争いに影を落としている。このことから中華民国時代の「軍閥」の抗争についてかんがえ、中華人民共和国の人民解放軍に引き継がれていることに思い至るべきである。

  • 中国史における軍・兵の扱いがいかなるものだったのかを古代から中華人民共和国建国までの流れの中で解説。
    まともな人間は兵にならないと言われるように敬遠される中国の軍人。兵農分離と兵農一致の狭間で揺れ動く各王朝の政策。それと清が倒れてからの中国史を知るのはこの本が初めてで、例えば張作霖だとかがどういう人物なのかとか、そういう意味でも勉強になった。

  • 歴代王朝の軍のあり方から中国の変遷をみる。
    あれだけ大きな国で、かつ多民族国家だと国軍の維持が難しい。必ず経済的に破綻する。経済性を考慮すれば、地域ごとに自立性のある武力集団を認めざるを得ず、これが軍閥になっちまう。
    抗日期に誕生した人民解放軍は、共産党の軍隊であって中国の国軍ではない。だから「人民解放軍」というネーミングがモノを言ったわけだ。でもこれからはどうなんだろう。

  •  古代から始まるが、筆者の専門の近現代史は特に生き生き描かれている。前漢までは、王朝が直接農耕民を徴兵して軍を組織する「兵農一致」だったが、この制度に無理が生じる。以降の王朝では時期により差異はあるものの、やはり王朝による軍の完全な一元管理はできなかったようだ。清朝の八旗・緑営は組織化されており、平時ではよかったのかもしれないが、白蓮教徒の乱・太平天国の乱という有事になると、結局のところ中心兵力は郷勇・団練の類であった。筆者曰く、日清戦争期の北洋艦隊及び陸軍も事実上は李鴻章の私兵だったとのことである。
     この流れの上に軍閥が登場してくる、ということなのだろう。筆者は軍閥が国民党・共産党側から一方的に悪者扱いされることに批判的で、「軍閥」とかぎかっこ付きで書いている。袁世凱については、康有為も光緒帝も、革命後の孫文にも実行力がなかった以上彼が登板せざるを得なかったという旨を述べている。また、段祺瑞・張作霖・馮玉祥の「軍閥」連合(特に馮玉祥)は、孫文を大総統に迎えようとし、孫文の側にも「軍閥」同盟に期待していた節があったようだ。孫文は死ぬまで国共合作と「軍閥」連合をはかりにかけていた、とまで筆者は書いている。「北伐」の対象、または自らの利益のために日本と結んだ、という軍閥の悪者イメージは、結局のところ勝者からの歴史観だということなのだろうか。
     なお、なぜか平易な単語まで数多くひらがな表記されており、却って読みにくかった。

  • 中華民国建国あたりの軍閥抗争事情が分かるのと、前半の中国における軍のあり方通史ともに面白かった。
    著者略歴が現職「帝京大学教授」より「京都大学博士卒」に重点がおかれているのも、またおかし。

  • こういう特定のジャンルを切り口にした通史は好きなのでよかった
    中国が興亡を繰り返してきたのは知っていたが、軍の変遷も大きかったことが分かる。
    農民兵や専業兵士、ならず者を使ったり時代や状況に応じていろんな形態があった。
    現代でも軍隊を掌握できていないというのは意外だった。
    そのせいで反日アピールしなくてはならないらしい。

    あとすごく気になるのが変なところでひらがなが多い点。著者の作風なのか?

  • ちょっと読みづらい.前半は面白かったけど,近現代の部分は単なる中国の近現代史になってしまってる.編集者がもう少し近現代の部分について書き直しを促せばよかったんじゃないかな,,,,,

  • ちょっと読みづらい.前半は面白かったけど,近現代の部分は単なる中国の近現代史になってしまってる.編集者がもう少し近現代の部分について書き直しを促せばよかったんじゃないかな,,,,,

  • 392.22||Sh

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著者プロフィール

1968年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。富山大学人文学部教授を経て、帝京大学文学部教授。専門は中国近現代史。著書に『「漢奸」と英雄の満洲』『〈軍〉の中国史』などがある。

「2017年 『馬賊の「満洲」 張作霖と近代中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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