日本経済入門 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884167

作品紹介・あらすじ

本書はリアルな日本経済の入門書である。単に日本経済の現状がどうなっているかを説明するだけではなく、現状の認識の上に立って、どこにどのような問題があるかを明らかにし、問題の処方箋を呈示している。
日本経済は様々の困難な問題を抱えている。とりわけ問題なのは、1990年代の中ごろをピークとして、さまざまな経済指標が減少傾向を示している点だ。背景には、人口構造が高齢化しつつあるという問題があるが、それだからこそ、経済の生産性を向上させる必要に迫られている。
しかし、日本では、この3年間、金融緩和政策に大きな関心が集まり、日本経済の抱える問題が金融緩和によって解決されるような錯覚に陥ってきた。しかしながら、結局のところ、未曾有の量的緩和政策は、株価を一時的に上昇させただけで、実態経済は依然として低迷している。日本経済の抱える問題は、金融緩和だけで解決できるものでないのだ。
日本はこの3年間という貴重な時間を無為に過ごし、無駄にした。しかし今からでも遅くはない。日本経済の発展のためになすべきことはたくさんある。それを明らかにするのが本書の目的だ。

感想・レビュー・書評

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  • 著者としての野口悠紀雄氏は非常に魅力的だ。物事・事象の持つ色々な側面と、それらの解釈を読者に提示してくれる。

    ただ「日本経済入門」という題から推測される内容と、この本を手に取る読者の期待値とが必ずしも一致するとは限らないかもしれない。

  • 日本経済の現状の問題点とその解決方法についての考察です。経済学について学ぼうと思っている人は他の本(たとえば『マンキューの入門経済学』などを読むべきでしょう)本書は本格的な経済学の知識がなくても理解はできるように書かれてはいますが、経済学の基礎知識はないとちょっときびしいかもしれない。経済の本はわりといいかげんな本が跋扈していますが、本書はちゃんとしたデータに基づいて考察されている。(だからといって考察がすべて正しいとは限らない。それはノーベル経済学者でも同じ)本書の結論は生産性を上げろ!ということなのですが、ここについての具体策などがもう少し書かれているとよいと感じた。まぁ新書ですし、そこは著者の他の本に譲るといった感じでしょうか。日本経済の現状をつかみたいひとにおすすめします

  • 筆者の考えで一つの筋が通った入門書。
    データの証左を得ながら簡潔に現状を説明。各論の是非は要検討だが、構造理解に役立つ。

    ・デフレではなく産業構造の不適合による経済の停滞

    ・雇用情勢の好転ではなく人手不足による有効求人倍率の上昇

    ・物価は相対価格の変化に着目
    工業製品価格は外生的に決まる側面が強く、国内の需要変化の与える影響は小さい
    サービスに相対価格の上昇
    為替の有利不利

    ・人口減少よりも年齢構成の変化が問題
    →雇用の確保から人手の確保へ

    ・国民医療費の対GDP比の増加
    医療、年金の潜在的負債の増大と改革障害となる世代間闘争

    ・請求書等保存方式からインボイス方式への消費税構造の変更必要性

    ・企業競争力に影響を与えるのは法人税ではなく社会保険料
    ※因果関係ではなく相関関係による説明では?

  • タイトルには「今更聞けない~」というフレーズは冠されていませんが、内容的には「いまさら聞けない日本経済」というタイトルがピッタリと思われる本です、先月、本屋さんの親書コーナーで偶然ン見つけました。

    入門書ではありますが、データは最新のものを使って、日本経済の真実が描かれています。この本の著者である、野口氏は私が社会人になったばかりの平成元年からお世話になっていて、当時から経済エコノミストとして多くの本を書かれていました。まだ現役を続けているのは素晴らしいですね。

    日本が最も輝いていた時代を知る人が書く、日本経済の真実、解説していて落胆した点もあったかもしれませんが、改善するための対策を考えるためにも、まず現状を真摯に把握する姿勢が大切です。

    何冊と、これだけ溜まった日本国債の残高、問題ないかと思って読んできましたが、この本の解説が一番理解できました。まず、金利上昇となる心配がありましたが、日銀が買い取って「日銀当座預金」となっているので今の処大丈夫、しかしこれは潜在的な貨幣なので、支払い要求があれば紙幣を刷って払う(インフレになる)ことになる、でも今の日本ではその需要がないので、当面は大丈夫、と理解しました。私のような普通の人はお金はまだまだ必要ですが、本当にお金を持っている人達(年配の方、お金持ちの方)は十分に満たされていてあまりお金を必要としていないみたいですからね。

    日本の将来、そして私の残りが限られてきた社会人生活をどのように送るべきかを考えるうえでも良い時期に出会えたと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本経済の大きな問題、1)世界経済の大きな構造変化に、日本の産業構造が対応できていない、2)人口構造が高齢化しつつあるのに、社会保障制度をはじめとする公的制度が対応していない(p5)

    ・経済の活動水準を測るのに売上高を合計するのは適切な指標ではない、ある企業の売上は他の企業に購入されて原材料となることが多く、重複計算となる。原材料購入を控除した額=付加価値を合計したもの=GDPを指標とすべき(p19)

    ・生産された付加価値の合計は、分配面(雇用者報酬・営業余剰・固定資本減耗)、支出面(民間最終支出:56%・民間住宅・民間企業投資・政府最終消費・公的固定資本形成・純輸出:10.4-10.2=0.2%)と同額となる。支出面からの統計は早く公表される(p21、24)

    ・仮に物価が変化しなったとすれば、GDPはいくらになるかが実質GDP、物価が上昇すれば経済活動の実態が変わらなくとも名目GDPは上昇するから(p25)

    ・GDPの「G」は、グロスの意味、これは資本摩耗を含むということ。1960年においては固定資本形成4.96に対して、1.84兆円であったが、2015年においては、123兆円に対して120兆円、ほぼ同じ=減耗する資本ストックを補填しているだけ(p33)

    ・製造業が世界の先進国で停滞・縮小にある理由は、新興国の工業化と、IT革命にある(p42)

    ・中国は、エネルギー・通信・重工業・金融などの基幹企業の大企業は国家保有の上で株式会社化、それ以外は民営化をした(p43)

    ・IT革命とは、情報処理コストと通信コストの劇的な低下、大型コンピュータや専用回線が不要になったことで、情報処理の点で、大企業・中小企業・個人が同じ条件で仕事可能となった(p45)

    ・製造業の就業者のピークは1992年の1603万人がピーク、2001年には1200万人=1965年の水準へ、それに代わって、卸売・小売・飲食店の就業者が1995年に逆転した(p91)

    ・1997年までは全産業で賃金指数が上昇、それ以降、全産業データは2015年まで下がり続けるが、製造業は2009年リーマンショック以外は上昇(p67)

    ・日本では、労働所得と資本所得の比率はほぼ一定であり、ピケティの主張の1つ(労働所得にしめる資本所得の比率は時系列的に上昇)が成り立たない、理由は貯蓄率が顕著に低下している。ピケティの前提は貯蓄率一定(p84、92)

    ・日本において貯蓄率は1970年には30%を超えていたが、現在では5%を切る状態。この理由として、1)人口高齢化、2)政府の財政赤字の拡大、主に社会保障支出の増大(p89)

    ・2011年のジニ係数は、当初所得の0.55から、税・社会保障による再分配政策で0.38へ改善、格差拡大を改善している。(p92)

    ・日本の消費者物価指数は、ほとんど輸入物価(円安)によって決定されて、国内の需給関係が影響を与えることは殆ど無い(p98、108)

    ・1970年と比較すると、2008年までに工業製品価格は10分の1になった(労働力の増加、ITの進歩が原因)のに対して、サービス価格は5倍程度になった、相対価格は50倍変化した(p102、103)

    ・GDP統計における日本の輸入総額は15年7-9期の年率で95兆、原油価格が17.5%低下したことで、16.6(95x0.175)兆円の輸入額減少効果がある、それまで輸入にかけられていた税がその分、減税されたのと同じ、これは最終家計消費支出の5.8%にあたる(p116)

    ・円安により輸出企業の利益は増大し株価は上がったが、輸出数量が増加しないので、実体経済には影響を与えなかった。消費者物価を上げて、実質賃金を下落させ、実質経済成長率を低下させる(p131)

    ・資金需要がない経済では、貸出が増えることがなく、したがってマネーストックは増えない、実際に13年からの3年間で、マネタリーベースは228兆円増えたが、マネーストックは89兆円しか増えなかった(p133)

    ・医療費の総額40.8兆円のうち、公費38.8、保険料19.9、患者の自己負担が11.7%(4.8兆円)である、自己負担率は70歳未満が3割(就学前児童は2割)、70-75歳は所得に応じて2-3割、75歳以上は1-3割(p157)

    ・シミュレーションによれば、厚生年金の積立金は2031年頃にゼロになる、その場合、年度毎に保険料収入と国庫負担額の合計が年金給付額と同一になるように、保険料引き上げ・国庫負担額引き上げ・給付の切り下げが必要(p186)

    ・国債残高が税収の16年以上になっていて、金利が高騰するはずが、実際にはなっていない。それは日本銀行が買い上げているから。このため、政府プラス日本銀行が民間セクターに対して保有する負債は、国債から「日銀当座預金」に変わっている。償還期限が来たとき、政府は償還する必要がない。(p204)

    ・日銀当座預金は支払い要求があれば支払う(紙幣を刷る)しかない、いまは国債の紙幣化に至っていないが、潜在的には貨幣になっていない(p207)

    2017年5月4日作成

  • 330||No

  • 2017/3/26

  • 平易で驚くほど無駄のない文章で極めて容易に理解できるのに、1文読む事に新しい発見がある。文章のプロだと思う。

  • 2023/08/18

  • 日本経済の問題点を知れた。

  • 日本経済入門 (講談社現代新書) 新書 – 2017/3/15

    「日本の中国化」を回避するには、産業構造を変えるしかありません
    2017年7月23日記述

    野口悠紀雄氏による新書。
    2017年3月20日第一刷。

    日本経済入門とあるように難しい数式などは登場しない。
    分かり易いグラフと解説が続く感じ。
    これまでの野口悠紀雄氏が主張されていることを
    わかりやすく網羅している。

    印象の残った点を列挙していくと

    1990年代の中頃をピークとして、賃金をはじめとする日本経済のさまざまな経済指標が、減少・低下傾向を示していること、そうなっているのは、日本経済がさまざまの困難な問題を抱えながらそれを解決できずにいるからです。

    日本と中国の1人当たりGDPの差は、急速に縮小しつつあります。
    2010年には中国の1人当たりGDPは日本のそれのほぼ10分の1でしたが、2015年にはほぼ4分の1になりました。
    そして2020年には3分の1になると予測されます。
    こうなるのは、日本と中国の産業構造が基本的に同一のものだからです。
    「日本の中国化」を回避するには、産業構造を変えるしかありません。

    中国メーカーは巨額の研究開発費を投じ、世界各国に研究拠点を設けて技術開発を進めており、技術的にも日本企業を凌ぎつつあるのです。

    製造業が垂直統合から水平分業へ
    アップルのような製品の開発と設計、販売、広報という入口と出口の作業を行うだけの企業が増えた。製造、組立はEMSのフォックスコンが中国で組み立てる。
    得意分野に特化した企業は急速に規模を拡大し、垂直統合型の企業を圧倒していくようになります。水平分業方式が製造業の新しいビジネスモデルになったのです。

    日本の製造業が中国メーカーと製造過程でのコストダウン競争を行っても消耗するだけで、勝ち目はありません。時代は大きく変わったのです。
    このような環境変化の中で先進国が目指すべき道は、
    アップルが実践しているように、開発・研究や販売という付加価値の高い分野に特化し、中国の製造業と棲み分けてゆくこと。

    生産拠点の海外移転は経済条件の変化に対応する企業行動の結果なのですからそれを食い止めることは出来ません。それに移転はすでにかなりの程度進行しておりこれを逆戻りさせることはできません。
    それに、生産のための資本ストックが国内になるか海外にあるかは一般に言われるほど重大な問題ではありません。
    海外生産の利益を国内に還流させればよいからです。
    日本は、生産拠点を国内に残したままで輸出を増やし、貿易黒字を拡大しようとするのではなく、海外で生産を行ない、その利益を還流させて経常収支の黒字を維持することに努めるべきです。

    物価が下落することが問題だったのではなく、日本の産業構造や経済体制が時代の新しい条件に適合しなかったことが、日本経済の不調の基本的な原因なのです。
    日本経済の不調がこのように構造的な問題であるのなら、それに対応し、産業構造を変えていくことによってしか、問題は解決できません。

    政府が春闘に介入しても春闘の対象は労働者の一部でしなないので、仮にここで賃金が上がっても、経済全体の賃金が上がることにはならない。

    円安は、日本の労働者の立場から言えば、決して歓迎できるものではありません。
    それにもかかわらず、日本では、円安を阻止しようとする政治勢力が存在しないのです。
    これは、日本の政治の悲劇だと言わざるをえません。

    異次元金融緩和政策の効果であるように見えたものは、円安による効果にすぎなかったのです。そして、既に述べたように、円安は日本の金融緩和によって実現したのではなく、ヨーロッパにおけるユーロ危機が収束したために起こったことです。

    「糸は引けるが、押せない」
    →金融を引き締めて加熱した経済活動を抑制することは出来る。
     しかし金融を緩和しても停滞した経済を活性化することはできない。

    労働力人口は2030年頃には現在より1000万人減少する。
    医療・介護部門の就業者が総就業者中に占める比率が、
    25%程度まで膨れ上がる可能性があります。
    これは、これまでの日本社会とは全く異質の社会で、とても維持することができない異常な構造です。

    労働者減少社会においては生産拠点の海外移転はむしろ望ましいものと評価されるでしょう。
    それによって国内の労働力逼迫が緩和されるからです。

    日本は深刻な労働人口減少に直面するにも関わらず、外国人労働者の受け入れが極端に少ないのです。
    どう考えても合理的な選択とは言えません。
    それにも関わらず、これについての日本政府の対応は及び腰であり、技能実習制度の拡充などで済まそうとしています。
    しかし、これだけの労働力不足が予測されているにも関わらず移民を拒否し続けるのは、およそ現実的な政策とは考えられません。
    根本的な発送転換が必要です。

    公的年金・・保険料納付者が減ることは保険料引き上げでは解決できません。
    現在の財政検証は、それを高い実質賃金上昇率や高い運用利回りで糊塗しているにすぎません。
    日本の人口構造の変化を考えれば支給開始年齢が65歳というのは見直しの余地があります。
    公的年金の本来の機能は「長生きしすぎることに対する保険」です。
    (つまり生命保険と逆の機能です)
    高齢化社会の政策の基本を、高齢者の就労を促進する方向に向けて切り替えねばなりません。

    日本の財政状況は先進国で最悪レベルの財政。
    EU加盟条件を満たすには、消費税率27%が必要。
    日本の消費税は欠陥がある。それを是正することとインボイス(金券のようなもの)が必要不可欠。

    日銀当座預金は、支払い要求があれば支払う必要があります。
    それに対処するのに日銀は紙幣を刷るしかありません。
    つまり、国債の貨幣化にはまだ至っていないが、潜在的には貨幣になっているのです。
    この道が行き着く先がインフレであることは、歴史が示すところです。
    昔と違うのは外国への資本逃避によって、これが加速される危険があることです。
    「日銀が国債を買い上げたので、日本の財政赤字の問題は解決された」と言われることがあるのですが、とんでもないことです。
    問題は「隠された」だけなのです。

    財政法第5条は、日銀引き受けでの国債発行を禁じているのです。
    日本はいま、財政法第5条の脱法行為によって、財政ファイナンスに突き進みつつあります。
    本当に必要なのは、社会保障制度の見直しによって歳出の増加をコントロールすること、他方で生産性の高い産業を作って経済力を高め、それによって税収を上げることです。
    日本が抱えている問題を解決する手段は、この2つしかありません。

    法人税引き下げが企業競争力を向上させることはない。
    法人税引き下げが企業の競争力を向上させるという考えは、法人税が企業活動のコストだという誤解に基いています。
    法人税は利益にかかる税なので、企業活動のコストにはなりません。
    (コストとは利益を算出するまでに収入から差し引く経費のことです)
    したがって法人税率を変更しても企業活動には影響しません。
    現実のデータを見ても明らかです。
    日本の法人税率は1980年代には40%を越えていましたが
    80年代の後半から税率の引き下げが行われました。
    2012年にはそれまでの30%から25.5%に引き下げられました。
    しかしこうした引き下げが日本企業の競争力を高めることにはなりませんでした。

    企業の競争力に影響するのは社会保険料
    社会保険料はほぼ賃金に比例してかかるので、企業にとっては賃金が上昇するのと同じことになります。
    企業負担軽減のために本当に必要なのは法人税の引き下げではなく、社会保障制度の合理化です。

    アメリカ、シリコンバレーにはGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)などが登場し新しい技術進歩をリードする企業が現れた。しかし日本ではこうした企業が登場しなかったことが失われた20年の基本的な原因です。
    日本でこれらの企業と類似のものは、楽天、ソフトバンク程度しかありません。
    先進国の命運を決めたのは、このような流れに対応して産業構造を情報分野中心に切り替えられたか、それとも製造業に執着したかです。
    切り替えられたのがアメリカ、イギリス、アイルランドなどであり切り替えられなかったのが、日本とヨーロッパ大陸の諸国です。

    ユニコーン企業(未公開で時価総額が10億ドルを超える企業)
    Uber、Airbnb、PayPal・・・ユニコーン企業も日本にない。
    フォーチューンが作成するリストによるとユニコーン企業は
    アメリカ100社、中国36社、インド7社、イギリス7社
    ドイツ5社、シンガポール3社、韓国2社、フランス1社などとなっています。
    しかし日本はゼロです。
    ユニコーンによる技術革新はGAFAによるのとほぼ同じ方向である
    つまり将来に向かって引き続き重要なのは、日本が弱い分野なのです。

    ユニコーン企業が日本に生まれない大きな原因は規制緩和が進んでいないことです。
    政府が打ち出す成長戦略には、決まり文句のように「規制緩和」が明記されています。
    しかし、規制緩和と言われるものの多くは表面的なものであり、
    既得権者の利益を覆すようなものではありません。
    社会を変えるためには、新しいサービスや新しい事業主体が必要だということを国民が認識しなければなりません。そうでなければ、規制の仕組みは、いつまで経っても今のままで変わりません。
    逆に言えばこれらが変われば、日本経済は大きく変わる可能性を秘めています。

    新しい産業は市場における競争を通じて誕生することに注意しましょう。
    さまざまな試みがなされ、生き残ったものが日本経済の主力産業になるのです。
    政府は産業構造再編の過程に介入すべきではありません。
    政府がなすべきは、規制緩和を通じて、市場の競争メカニズムを発揮させることです。

    地方活性化とは中央政府が行うことではありません。地方が行うことです。
    地方振興とは国が何かやってくれるのを待つことではありません。
    地方の人々が工夫し、努力することです。
    これを実現するために必要なのは、地域のやる気と何をやるかというアイデアです。
    日本経済を再活性化する原動力も、政府の成長戦略ではなく、地方の創意工夫であるべきです。
    1990年代にアメリカ経済を再活性化したIT革命は、連邦政府があるワシントンからは遠く離れたカリフォルニアで起こりました。
    それは政府の支援で実現したことではありません。
    ベンチャー企業が、ガレージで新しい事業を立ち上げて実現したのです。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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