未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)
- 講談社 (2017年6月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062884310
感想・レビュー・書評
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河合雅司(1963年~)氏は、中大卒、産経新聞に入社し、同社政治部、論説委員、また、内閣官房有識者会議等の委員を務めた。大正大学客員教授。
本書は、少子高齢化が進む日本が、今後どのような社会になっていくのかを、年表(カレンダー)のように年次毎に示し、更に、次世代のために今取り組むべき10の処方箋を提言したものである。2017年に出版され、ベストセラーとなった。
私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である。
現代日本には、言うまでもなく様々な社会問題があるのだが、我々はまず、少子高齢化の問題の決定的な特徴を理解する必要がある。それは、人口減少の原因と言われる低出生率が、仮に改善したとしても、出産適齢の女性の数が急減している現在、出生数は絶対に増えないということであり、それを含めて、人口動態予測というのは、(戦争や大規模なパンデミックでも起きない限り)極めて高い精度で当たるということである。
まず前半の年表の部分では、近年メディアでも取り上げられる「2025年問題」(「団塊の世代」が全員75歳以上になる)、「2042年問題」(「団塊ジュニアの世代」が全員75歳以上になる)のほか、2020年(既に過去のことだが)に女性の2人に1人が50歳以上になること、2033年に全国の住宅の3戸に1戸が空き家になること、2045年に東京都民の3人に1人が高齢者になること等、なかなか衝撃的な予想が示されている。
そして、それらを踏まえて、「戦略的に縮む」、「豊かさを維持する」、「脱・東京一極集中」、「少子化対策」の4つをキーワードに、以下の10の処方箋が提示されている。
1.「高齢者」を削減・・・高齢者の線引きを65歳から70~75歳に引き上げる。労働者不足も社会保障の財源問題も大きく改善する。
2.24時間社会からの脱却・・・意識を変えて、「便利過ぎる社会」から脱却する。
3.非居住エリアを明確化・・・国土を人が住む地域とそうではない地域に分け、居住エリアにコンパクトな街を作る。
4.都道府県を飛び地合併・・・自治体の線引きを見直し、補完し合えるような遠隔の自治体同士の結びつきを強める。
5.国際分業の徹底・・・限られた人材や資本を、日本が得意とする分野に集中投入する。
6.「匠の技」を活用・・・少人数で、上質、高付加価値な製品を作るビジネスモデルに転換する。
7.国費学生制度で人材育成・・・国が教育費を負担し、イノベーションを起こせるような人材を育成する。
8.中高年の地方移住推進・・・日本版CCRC(Continuing Care Retirement Community)の普及を進める。
9.セカンド市民制度を創設・・・都会の住民が各人の「第二の居住地」が持てるような制度を作る。
10.第3子以降に1000万円給付・・・地道に出生数を増やす取り組みをする。
処方箋の中には、既によく聞かれるものもあれば、そうでないものもあるし、本書出版後の国際情勢の変化やコロナ禍により、現在では必ずしも有効ではないものも見られるが、重要なことは、この問題が、著者の言う通り「静かなる有事」だと認識し、自分事として考え、対策に協力することであろう。(私はアラ還の一人だが、処方箋の1にも2にも賛成である)
前半は少々くどい印象は残るが、少子(高齢)化の問題を考えるに当たり、藻谷浩介『デフレの正体』(2010年)、増田寛也『地方消滅』(2014年)に加えて、読んでおいてもいい一冊かも知れない。
(2023年2月了)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかなか恐ろしい内容でしたが、これも事実。
「これからどうするか」が書いてあったのが良かった。 -
人口動態はほぼ決まってる。その事実をどう解釈し、自身の環境改善に活かすか、です。その戦略は今の年齢にものすごく影響受けますね。
あなたはあと何年生きるつもりですか、と… -
序盤からネガティブで危機感を感じさせる内容だけど、本当に今後どうなるか心配です。
3人目の子供に、1000万円交付の案は極端で笑ってしまったけど、このくらい思い切ったことをしないといけないのかなとも思う。 -
少子高齢化が叫ばれて久しいが、出生率低下と社会を支える担い手の不足で、かなり急速に人口が減少していくのは避けられなそうだ。「人口減少カレンダー」がこわい。
【今後起こること】
国立大学倒産、IT技術者不足で技術による人口減対策も厳しい、介護離職多発、軽度認知症老人の増大、輸血の血液不足、老人ホームすら減る、空き家だらけ、未婚大国、自治体の崩壊や消滅、農業先細りで世界的な食料争奪戦に巻き込まれ、外人が国土占拠。
課題だらけなのをあらためて認識した。
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前半のデータは参考になるが、後半の提案は産経新聞論説委員だけあって保守的な傾向が見えたり、分析も昭和を生きた人の視点が抜けきれない。
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人口減少は悪という前提で書かれている。
人口減少によりどんな暗い日本になっていくか、そしてもはやどうしようもないということを突きつけてくる。
対策として第三子出生を出生しろ、と結局人口を増やすことを挙げているし、AIを否定している。
飛び地で町村合併をすることを提案しているが、そこには少なからずAIの技術が活用されると思うのは私だけだろうか。
アナログに紙媒体の資料を車で運ぶとでもいうのか。
第三子に一千万円を!と豪語しているが、そんかお金どこからでるのか。
この現実を踏まえたうえで、うまく付き合っていくためのビジネス、サービスを創造することこそが、明るい明るい未来を想像させるのではないか。
暗い現実と妄想、現実味のない解決策だけ挙げられて、読後、暗い気持ちにさせられる。
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①読んだ目的
このまま少子高齢化が進んで、起こりうることを年表イベントで触れられるのが面白いと思った。
自社のようなオールドカンパニーにも当てはまることなので、知見として身につけ何が出来るか考えるきっかけにしたかった
②感想
10の処方箋、効果や実現性はさておき、問題が如何に深刻か、火がついている状況なのに特に何にも動けてないのはゾッとする。
選択と集中、痛みを伴う改革が必要だというのはまさにそう思う。
戦略的に縮小する(農産特区、経済特区、居住特区)
こと、こうした俯瞰したグランドデザインをしていくべきだとは常々思っていた。
でも日本ってこういう議論出来ないよね。。。
亡国に備えて如何に自分で生きていくか?っていう観点も必要かな。
③アウトプット
高齢者は今後も増え続け、出生率が現水準で推移し、生産人口が減り続けると、団塊ジュニア世代が65歳を超える2042年には、福祉面、経済面、仕事面で大打撃を受ける。
世界人口は増え続けていく反面、日本は競争力を失っていくだけでなく、国体の保持すら怪しくなっていく(居住地の20%が非居住地帯、都内で介護福祉対応して出来ない、食糧や水の確保すらままらなない)
戦略的に縮んでいく
→高齢者65歳以上の再定義化
→グランドデザインでコンパクトな土地計画
→都道府県の飛地合併
豊かさを維持する
→イタリアモデル
→国費人材育成
東京一極集中をやめる
→中高年50代の地方移住推進(大学連携型CCRC)
→セカンド市民制度
少子化対策
→第一子対策 結婚支援と雇用安定
→第三子対策 産むメリットを明確に差別化
1000万円や児童手当の大幅上増し
特殊出生率を上げるには、三人以上を当たり前の世の中にしないといけない
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前半は現状問題を数値を元にぐだぐだ言ってるが、怪しいもんだ。将来の労働力確保の解決策と言われているのは4つ。どれも否定はしないが、決定力には欠ける。
・外国人労働者
・AI
・高齢者
・女性
将来、戦略的に縮むための10提言
【戦略的に縮む】
1 高齢者を削減する
高齢者の定義を75歳からとし、労働者人口を確保
2 24時間社会からの脱却
3 非居住エリアを明確化
コンパクトシティの実現
4 都道府県を飛地合併
5 国際分業の徹底
産業構造の見直し。不得意、非効率な産業は切り捨て。
【豊かさを維持する】
6 匠の技を活用
イタリアモデル
7 国費学生制度で人材育成
【脱東京一極集中】
8 中高年の地方移住推進
もう一度大学生プラン
9 セカンド市民制度を創設
【少子化対策】
10 第三子以降に1000万円給付
財源は社会保障費循環モデル
10の提言は、かなり無茶な内容に思える。社会主義に傾向し、自由意思が軽んじている。現状の延長では、賛同を得るのは難しい。
文化を大変換する事になるので、日本民族のマインド変化なしには難しい。このままでは破綻する事は薄々気付いているので、何か大イベントを発端にドラスティックに変えるしかない。明治維新みたく。
日本人は変化を嫌うが、変化してしまったら早々に馴染むこともできると思う。
死ぬまでにドラスティックな変化があるか?美緒の時代にはあるか?