老残/死に近く 川崎長太郎老境小説集 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 33
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902168

作品紹介・あらすじ

60歳を過ぎての結婚から、83歳の死まで、自らの「老い」と「病」を見つめた、晩年20年にわたる珠玉の短篇をの集成。30歳年下の女性との結婚に至る葛藤と顛末を描いた「彼」「老残」。その後の結婚生活の波乱を記す「老坂」。病と向き合う「海浜病院にて」「七十歳」。死を身近に感じる「夕映え」、そして絶筆「死に近く」――最期まで文学への情念の炎を燃やし続けた「私小説家」川崎長太郎の神髄に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 晩年の作品が集められている文庫。

    川崎長太郎の若いころの作品は、自分の価値のなさ、なんで生きてるんだろうって自問自答しながら世の中の隅の方で細々暮らしている感じなんだけども、晩年は、死に抗っている感じがしている。
    年老いて、体が動かなくなっていく中、そして年の離れた奥さんを思い、…「老残」で、何物にも拘束されない人間が一番幸いだと叫びたい、という一文が、長太郎の正直なところなのだろう。

    私は中年以降の長太郎の作品が好き。
    性格的な問題もあるし(笑)やはり年を取った分だけ味わい深くなっているというか。
    難しい言葉もないし、表現もないし、相変わらずの私小説なんだけれども、読んでいて心にすっと染みこんでくる。若い頃のは、「もう、だらしない!」って思っちゃったりするんだけど(笑)

    つげ義春の本を読まなかったら、知らないままだったろう本。
    こういう出会いがあるから、読書が楽しい。

  • 初めて読んだ著者ですけれども、非常に良い作品でしたね…! これぞ私小説といった感じでして…。

    つげ義春先生がこの著者を推していたので読んでみた次第なんですけれども…まるで日記のような小説でして、いたずらに読者を面白がらせようとしないところが逆に良くて…ともかく昨今のエンタメ小説に慣れてしまった方なら退屈かもしれませんけれども、僕は昨今のエンタメ小説は楽しめないタチですので、逆にこうした、私小説というものが新鮮に感ぜられましたねぇ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    著者は還暦を越して30歳も年下の女性と結婚したそうですが…その後の人生について小説として成り立たせていますねぇ…。

    もうすぐ来るだろう死を見つめつつ…何を想うのか? とかまあ、こんなこと書くとあらすじの二の舞というのか、重複というのか…そういうのになりそうなので止めておきます…ともかく著者の別の作品にも興味が出ましたよ!

    さようなら…。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 2016/2/14購入
    2023/1/13読了

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著者プロフィール

川崎長太郎(1901.11.26~1985.11.6) 小説家。神奈川県生まれ。小田原中学を中退して、家業の魚商につく傍ら、同郷の民衆詩人福田正夫に師事、左翼的作品を発表。1920年頃より上京、帰郷を繰り返す。繰り返す。23年、萩原恭次郎、、岡本潤らと「赤と黒」創刊。震災後アナーキズム運動から離れ、25年、徳田秋声の推挽で「無題」を発表、文壇デビュー作となる。私小説家を目指すが、不遇な時代が続く。38年、永住の覚悟で帰郷、実家の物置小屋に棲み、創作に専念。54年、娼婦たちとの関わりを描いた『抹香町』で長太郎ブームが起きる。62年、結婚。私小説一筋の生涯を貫いた。著書に『裸木』『浮草』『女のいる自画像』『女のいる暦』『忍び草』『幾歳月』『淡雪』『夕映え』『老残/死に近く 川崎長太郎老境小説集』『泡/裸木 川崎長太郎花街小説集』など多数。

「2015年 『ひかげの宿/山桜 川崎長太郎「抹香町」小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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