お供え (講談社文芸文庫)

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著者 : 吉田知子
  • 講談社 (2015年4月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902670

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お供え (講談社文芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 少しずつ、確かに、踏
              み
               外
                す
    気にも留めない程度のわずかな違和感の蓄積が閾値を超えたときに非日常が現れるのだろうか。そうではない。日常なんてどこもかしこも穴だらけなのだ。悪意にみちた笑みをたたえる黒い口に飲み込まれてしまった人びとは円環する悪夢の底へ置き去りにされ、永遠にさまよい続ける。焦りと苛立ちは募るのに、流れにも似た何かの強大な力に抗うことが不可能なことを頭の片隅では理解して諦めている。
    どうしてこんなことに… 

    一作目の【祇樹院】からすこぶる怖かった。終始、不穏な空気がからみつく。私はあなたを知らないし、私は私の知らない人。それなら「私」はもうどこにも存在しないのだ。
    《2015.06.19》

  • いくつかのアンソロジーで「お供え」と「大広間」を読んでいたく気に入ってから、ちゃんとまとめて読みたかった吉田知子。しかしほとんど絶版で、苦し紛れに文芸文庫のアンケートはがきに吉田知子が読みたいと書いて出したことがあったので、この文庫みつけたときはとても嬉しかった!期待通り、どの短編も好みで満足。

    基本的にアウトラインはどれも類似していて、主人公がどこかへ赴く→初めて行く場所のはずなのにどうもよく知っている→そのうち死んだはずの人が当然のように現れたりして、過去と現在、死者と生者の境界が曖昧に混濁していく。悪夢系不条理、とでも呼びましょうか。

    過去や死者の世界にふわっと移行してしまうあたりは百閒などにも通じるけれど、方向音痴を自認する著者の言葉を読むと、どちらかというと「猫町」なのかもと思ったりもする。猫町の前半で朔太郎が書いている、いつもと違う方向から歩いただけで知らない町に来たように感じてしまうあれ、あの感覚にとても近い。夢の展開のように理不尽なのに、風景(植物)や家の中の描写などが細々とリアルで、しかしそのその細部ばかりクローズアップされる感じがまた怖い。

    お気に入りは何度も読んでる表題作の「お供え」のほかは、伯母の香典を届けに行ったのに当の伯母は生きていて別の死者が顕れる「海梯」、唯一男性主人公、しかも逃亡する殺人鬼の「艮」は、同じ時空間を永遠にループしてる感じでとても怖かった。

    ※収録作品
    「祇樹院」「迷蕨」「門」「海梯」「お供え」「逆旅」「艮」

  • どれも不穏な作品。どれも設定が似てるように思うのは同じ頃に書かれたものだからか。気に入ったのは『迷蕨』『門』『お供え』。『迷蕨』と『門』はどちらも死者と生者が同じ場所にいて時間と空間が歪められ閉じる。どこへも逃れられない。こうやって百年歩いている。階段はもう決してみつからないだろうということだけだった。この文章でふたつの物語は閉じられる。伯母や祖母がいる。死者として。平穏ではない世界に主人公たちは絡めとられ、諦めてしまう。なんとも奇妙な読後感だ。『お供え』いつの間にか神にされてしまう初老の女性。女性のせいなのか、それとも土地のせいなのか。石を投げられる神様になんかなりたくないと思う。

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お供え (講談社文芸文庫)の作品紹介

毎朝、何者かに家の前の「カド」にお供えを置かれ、身に覚えのないまま神様に祀り上げられていく平凡な未亡人。
山菜摘みで迷い込んだ死者たちの宴から帰れない女。
平穏な日常生活が、ある一線を境にこの世ならぬ異界と交錯し、社会の規範も自我の輪郭さえも溶融した、人間存在の奥底に潜む極限の姿が浮かび上がる七作品。
川端康成文学賞受賞。

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