明日なき身 (講談社文芸文庫)

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著者 : 岡田睦
  • 講談社 (2017年3月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062903394

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明日なき身 (講談社文芸文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「私小説」系の小説、5編。図書館本。 203

  • 「ムスカリ」
    生活保護を受けて暮らす後期高齢者
    前立腺がんの疑いあり
    妻に去られて一人暮らし
    自炊できないので、主にコンビニのおにぎりを買う
    あと外食
    もちろん経済は苦しい
    しかしあるとき、街の花屋の店頭で
    青い花(280円)に心を奪われてしまう

    「ぼくの日常」
    生活保護を受けるようになった少し前の話
    週刊誌ライターをやりながら、おんぼろの一戸建て団地に住む筆者は
    便所のつまりを直すお金もままならず
    きわめて不潔な環境での生活を余儀なくされている
    脚本家で、文学仲間の田波靖男に援助を受けつつ
    長編小説を書き始めるが
    どうも濡れ場に自信が持てない

    「明日なき身」
    たとえどんなに貧乏な老人で
    生活保護を受ける暮らしなどしていても
    民主主義の国家では、人権が尊重されるべきのはずだ
    しかしこの複雑に入り組んだ現代社会には
    人権を盾にとるようなヤカラもいるし
    わざわざ他人の痛みや悲しみを想像するのが多数派とは言えないもんで
    法の影では、暴力の嵐が吹き荒れることになる
    そこで選択肢はふたつにひとつ、孤高を気取るか?卑屈になるか?だが
    これもいずれにせよ、貧乏な老人であることに変わりあるまい

    「火」
    不眠症で朦朧としており
    また、貧乏ゆえに暖房が不十分で、寒い正月だった
    それで
    室内に火をおこすことを思いついたのだけど

    「灯」
    火災ですべてを失いはしたものの
    各地の養護施設を転々として、彼は生きていた
    心配した旧友たちの訪問を受け、中華料理をおごってもらい
    再会を約束して別れるのだが
    2010年、この作品を最後に岡田睦は失踪
    以後、消息不明であるらしい

  • 私小説といえば西村賢太、と言いたくなるくらいもうイメージが定着してしまったわけだけれども(あの人はああ見えてやはりかなり賢くイメージ戦略をしている人だと思う)、あの濃厚な文体、文学臭みたいなものは、この人の筆致からは全く感じられない。
    しかし、その淡白すぎて文学的でないとさえ感じられる文体で、書かれる内容は壮絶だ。
    妻にヤクザを雇われて家を追い出され、生活保護を受け生活する。そんな日々が淡々と書かれるが、徐々に日常が破綻していく。しかしあくまで主人公=作者は動じないのだ。それは依存症になっている薬物故なのか。
    その動じなさ、そんな絶望的な環境にいる自分を客観的に描き出す筆致は、まさしく「私小説」なのだろう。
    作者は消息を絶ったらしい。一体今どこで何をしているのか。

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明日なき身 (講談社文芸文庫)の作品紹介

離婚を繰り返し、生活に困窮した作家、生活保護と年金で生きる老人の日常の壮絶。高齢化社会を迎えた今、貧困のなかで私小説作家は、いかに生きるべきか・・・。下流老人の世界を赤裸々に描きつつも、不思議に、悲愴感は感じられず自分勝手を貫く、二十一世紀の老人文学。

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