変身のためのオピウム/球形時間 (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062903615

感想・レビュー・書評

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  • 「球形時間」下ネタ多めで、これ多和田作品らしくないと思ったのも束の間、文章の端々にナイフの刃のようにきらりと光る鋭い言葉があって、読んでいて刺さってくるように感じた。

  • 『球形時間』は単行本で既読なので(http://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/410436102X)初読の『変身~』のほうの感想だけ。

    22人の神話の女神の名前を冠した女性たちと「わたし」の物語。女神たちの名前の元ネタはオウィディウスの『変身物語』。ギリシャ神話は大好物だし『変身物語』も既読なのでメジャーな女神のことは大体覚えていたけれど、さすがに「誰だっけ?」と思う名前も3分の1くらい。

    とはいえ、その女神の伝説と本書の女性たちのキャラクターは、レダ=白鳥、イオ=牛、ディオニソスの母ゼメレ(セメレ)、両性具有になるサルマシス(サルマキス)、女性から男性になったイフィス(イピス)などのようにわかりやすく関連している場合もあれば、もう一度「変身物語」を読み直さないとよくわからなさそうなものもあり。しかしあまり突き詰めて考えるほどでもないような気もする。

    女性たちの職業は劇作家、詩人、ダンサーなど様々だけど表現者であることが多く、自分の体からオピウム=麻薬が内部に分泌されているのではないかと考えている「わたし」は、彼女たちのの陶酔から同じくそのオピウムを嗅ぎつけようとしているのかもしれない。

    本筋とは全く関係ないのだけど「毛髪税」の挿話が面白かった。毛の生えた面積にだけ税金がかかる法律ができて、金持ちは毛むくじゃら、貧乏人はつるつるになるっていう。ちなみに頭髪だけは免税です。そういう妄想的挿話や詩的・散文的なセンテンスが多く、系統だった物語ではないので最初はとっつきにくいのだけど、そのリズムに慣れてくるとなかなか楽しい。

    ちなみに引用されている女神たちの名前
    レダ/ガランティス/ダフネ/ラトナ/スキラ/サルマシス/コロニス/クリメネ/イオ/テティス/リムナエア/ニオベ/イフィス/ゼメレ/セレス/ポモナ/エコー/ティスベ/ユノー/アリアドネ/オーキュロエ/ディアナ

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。小説家、詩人、戯曲家。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。91年『かかとを失くして』で「群像新人文学賞」、93年『犬婿入り』で「芥川賞」を受賞する。ドイツでゲーテ・メダルや、日本人初となるクライスト賞を受賞する。主な著書に、『容疑者の夜行列車』『雪の練習生』『献灯使』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』等がある。

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