戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊 (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062915069

作品紹介・あらすじ

20年間に40回以上も中国奥地の農村を訪れ、合計300日にも及ぶリサーチを行った著者の結論――9割が中国沿海部に滞在している日本人の「上海メガネ」からは、彼の国の一片の真実も見えない! 
 「韜光養晦」は、トウ小平が打ち出した「才能を隠して内に力を蓄える」中国の外交・安全保障の方針。しかし習近平はこれを破り、アメリカに挑戦を始めた……まだ機は熟していないにもかかわらず。これが中国3000年の歴史の中で最大の失敗だった。
 カネも知識もない9億人の貧農を、競争力の落ちた4億人の都市住民が支えるのは絶対に不可能! いわんや中華思想的なメンツから「輸送船」レベルの空母3隻に莫大なカネを浪費すれば、その途端、中国経済は呼吸を止める!
 中国3000年の裏面史も辿り、近未来の中国社会に投影する意欲作!!

感想・レビュー・書評

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  • すげ〜な中国、あからさまに国民の中に差別を設定してるのかよ。しかしこれは小麦文化のせい、科挙のせい、は根拠がわからんなあ鵜呑みにしづらい。人口ピラミッドの例みたいにちゃんと数字を見せて欲しい。数多くの根拠薄めの著者の意見が多くて、それぞれそれなりに説得力はあるんだけど、読者としては捉え方に困るかな。これ読んでたら中国株とか買う気失せたんだけど、2017年の本なのだけど全く中国のテック企業について触れてないのでそこもなんとなくアンバランスな気もした。警部補ダイマジン読んでたら中国の農村戸籍と都市戸籍の事が出てきたので全く知らなかったので読んだみた。

  • タイトルに釣られた・・。(次作も既に買っちゃった)
    著者が東大の准教授とのことだったので買ってしまった訳だが、まあ謂わゆる中国ディスの本であった。何かのイシューにシングルアンサーで答えるモノが多く、そんなに単純ではなかろう。ニコラス・クリストフが「新中国人」の中で、外国人が中国に来て、自分たちの国の問題は棚に上げて、中国ばかりを非難するジャーナリストと中国人に非難されるというような表現があったが、それを思い出した。

    それでも所々面白い発言があったが、裏付けが乏しいので、著者の個人的な感想といったレベルを出ていない気がする。

    確かに国策として、都市と農村の戸口を分けては来たが、実際に中国に住んでみた時の肌感覚では、都市部の人間も農村部の人間もあまりに当たり前のものとして捉え、都市部の人は平気で差別的な目で見るし、農村部の人等もそこに対して何かアクションを取るという様子も見えなかった。この辺りの意識の中に普通に階層の違いが存在してしまっていることが、今後もすぐに解消されていくとは到底思えない。。

    P.67
    中国の都市は、城壁で守られています。国という感じは、旧字(國)では、囲いの中に戈があることを示しています。囲いのなかで兵士が守りを固めている、という姿です。(中略)囲いの外にいる人々は、敵が攻めて来たときにまもられることはありません。自分で逃げる必要があります。そして、その多くは農民・・・支配者が農民を守ることはありませんでした。

    P.111
    近年の尖閣諸島や南シナ海への進出、そして歴史認識に関する中国政府の言動には、朱子学の影響を強く受けているとおもうところがあります。そう、現状認識が主観的なのです。そして一度、自分が正しいと思うと、周囲の状況を見てその考えを改めることはありません。負け犬の遠吠えではありませんが、かなりヒステリック。聞く耳など持ちません。

    P.114
    中国人が最も恐れるのは、呉三桂のような行動をする中国人です。中国は、内部に敵に内通する者が現れたときにほろびるからです。そして、そのような人物を漢奸(中国を裏切った中国人)と呼び、毛嫌いします。

    P.172
    一九世紀のイギリス外交をリードしたヘンリー・パーマストン子爵は、「イギリスには永遠の友人も永遠の敵もいない。あるのは『永遠の国益』だけだ」という趣旨の発言をしています。これは国家戦略の基本を述べてたモノで、不朽の真理だと思いますが、「永遠の国益」を判断することは、かなり難しい作業になります。
    何が国益か、それを冷静に判断することは難しい。なぜなら多くの場合、国益は国民感情の沿線上にはありません。そのため未熟な政治家が国民感情に迎合し、激情のおもむくままに突っ走り、失敗するケースが後を絶たないのです。

    P.180
    なぜ中国の対外戦略は稚拙なのでしょうか?その最大の原因は、海外に関する情報の不足にあります。なぜ中国は、海外の情報を収集しないのでしょうか?それは、海外に興味がないからです。小さな島国に住みながら世界を制覇したイギリス人は、他国の文化に対し、大いに興味を持ちます。その好奇心が大英博物館を作り出しました。しかし中国には、大英博物館に相当するものはありません。

  • 中国13億のうち農民戸籍9億、残り4億が都市戸籍の中国人。都市に移り住んでいる農民が3億人。
    中国名物「鬼城」住む人のいないマンション
    黄河は小麦、長江は米。米には灌漑が必要。民族性が違う。
    軍人は社会的地位が低い、多くは農民出身。国家に尽くそうとする意識は希薄。
    人民解放軍は国軍ではなく共産党の軍隊だから、民間のようにホテルや飲食店などの営利事業も行っている。
    海外に興味がないから情報を集めない。中国が一番優れていて他の国は野蛮だという考え方。だから外交がお粗末。
    毛沢東は師範学校校長を務め、鄧小平はフランスで学んだ。習近平は…
    なぜ一人当たりのGDPが1万ドル程度になると成長が鈍化するのか?それは経済成長の意味するところが、インフラの整備から格差の是正などへと、質的な成長に変わるから。メキシコ、ブラジル、トルコなど。
    民主主義が根付いているインドが、人口増加をもって今後中国を追い抜く可能性がある。

  • 東2法経図・6F指定 302.22A/Ka97k/Nakai

  • 長らく中国に駐在していた知人が、上海戸籍を持っている人と地方戸籍の人との差別が激しい、とは言っていたが、この事だったんだな。
    私もあまり中国を好きではないが、この著者がハナから中国を見下しているスタンスが気になる。

  • 都市と農村で戸籍が違う、と言うのは聞いたことがあるが、大きな格差が存在しているのは知らなかったので、衝撃的だった。
    中国は12億人では無く、4億人の国家と捉えるべき、という筆者の意見は、本書を読めばとても説得力のある考えだ。
    また、コメか小麦のどちらかを主食にするかにより、国民性が変わるという話はとても面白くて、これも説得力があった。農業に精通し、かつ、中国現地に赴いて知見を得た筆者ならではの見方だと思う。

    また第二次世界大戦後の中国共産党による為政や、現在の政権構造、中枢や幹部に関する記載も、見聞きすることが無かったので、新鮮で面白かった。

    しかし、筆者のこれまでやこれからの中国の見方は厳しいと思う。
    ある程度豊かになり、成長が鈍化した国の政治家・官僚の腐敗や対外膨張政策、貧困層の不満増大などは全世界共通の問題であり、中国に限った話では無い。
    また、時に歴史に学ばない行動もしてしまうのも同様。どのような政治体制でも、大勢の民衆が支持すれば、間違ったことでも実行してしまう、これは民族国家の弱点だ。

    翻って、国民が多すぎて団結が困難、しかし、辺境地域を除いては分離独立の気運が無い中国は、為政者にとってコントロールしやすく、これからも大きな影響力を行使する国として存在し続けると思う。

    あと、帯に「9億人の農民奴隷は2020年に蜂起する」とあるが、2020年と断定する根拠は読み取れなかった。恐らく、筆者では無く出版社による誇張だと思いますが。

  • 中国情勢の平易な解説書。本書が中国の特徴をよく捉えていて面白いと思ったのは、以下の点。

    ・中国は、四億人の農民工を含む九億人の農民戸籍者を踏み台にして、四億人の都市住民が繁栄する歪な社会。

    ・その背景は、北部の小麦文明(独立心が強く、個人主義的?)が南部のコメ文明(温和で協調的)を支配してきた国の基本構造にある。

    ・科挙による官僚統治の仕組みが、汚職をよしとする一方で農民や弱者に対しては極めて差別的な気質を醸成した。

    ・また、科挙による文官統治は、武人が社会で枢要な地位につくことを許さず、武士道や騎士道等の倫理が発達しなかった。

    ・中国政府が唯一恐れるのは漢奸(中国を裏切った中国人)。このため、中国には外交戦略がなく、外交も国内向けのパフォーマンスに終始する。

    ・繁栄のための踏み台としての農民は未来永劫必要なのであり、結局、鄧小平の「先富論」はただのきれいごとに過ぎない。

    著者は、中国は遅かれ早かれ崩壊する、と見ているが、果たして…。

  • 戸籍アパルトヘイト、というフレーズは過激のように思いますが、中国には戸籍という厳然とした区別制度があることは知っていました。

    私が中国語の勉強を始めてから、何人かの中国の方を知り合いになりましたが、殆どの方が都市戸籍をお持ちの方のようです、デリケートな内容になるので話題にすることもありませんが。

    私が思うに、中国はいままでこの制度を上手に利用して、国民に「やる気」を与え続けてきたとも言えます。会社の同僚含めて、皆さん勤勉ですし、起業精神にあふれる人が多いです。

    どの制度にも良い点と悪い点があると思いますが、簡単には調査することができない話題について、詳細なレポートを読める、ある種の贅沢さを感じながら読んだ本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・担当した地域を発展させること、最も分かりやすい指標がGDPである。それを知れば、集客が見込めない観光地に空港を造ること、冬で閑散としている時期でも照明で煌々と照らすことも納得できる(p19)

    ・住宅開発は基本的には民間業者が行うが、土地関連事業は地方政府の指導下で行われるので、その資金繰りには市政府が関与している(p26)

    ・都市戸籍と農民戸籍の制度は、中華人民共和国が成立したのち、共産党によって作られたもの、農民戸籍を有する人が9.3億人、都市戸籍は3.8億人、7割が農民戸籍、2010年に中国政府が行った調査で公式な数字、農民戸籍のうち、農村から移り住んだ3億人が都市に住んでいる(p28、30)

    ・駐豪政府の悉皆調査によれば、総人口13.4億人中、学歴が判明したのは11.9億人、都市人口が4.0、鎮:2.6、農村:6.5億人となっている、都市に住人の26%は、農民戸籍、鎮では62%、農村では96%が農民戸籍(p34)

    ・中国の職場の定年は日本より5年ほど早く、55歳前後に設定されている、人口ピラミッドでひときわ高いピークである1963年生まれは、2018年に55歳となる、これは日本の2007年の状況に似ている(p45)

    ・日本への爆買い旅行に来ている人の多くは、都市に住む最上位20%に所属する、彼らの人工は1億を超えていているが、全体の1割に過ぎない(p52)

    ・小麦だけ食べていると、体に不調をきたすので、たいてい同時に牛、羊を飼っている、小麦に不足している必須アミノ酸を補う(p59)

    ・改革開放政策が始まった後、最も工業が発展したのは、長江流域と、広東省を流れる珠江の下流地域だが、どちらもコメ作地帯(p63)

    ・中国とは、北部の小麦文明が南部のコメ文明を支配する国である、南部に首都を置いた政権は、短期間で滅んでいる、国民とは都市の城壁のなかに住む人だけ、これが農民を二流国民と考える意識を生んでいる(p67)

    ・中国人は約1000年間、科挙の試験のシステムで暮らしてきたので、心のどこかで勉強ができないから、あるいは商売をする才覚がないから、そうした人が農業をしているのだと考えるようになった(p72)

    ・中世欧州で国境があいまいだったのは、しゃべる言葉はあいまいでも、教会の公式用語であるラテン語が存在したから。中世のインテリはラテン語の読み書きができたので、どこに行っても困らなかった。しかし16世紀、マルチン・ルターが聖書をドイツ語に訳したころから、書物は各国の言葉で書かれるようになり、言葉の違いが国境となった(p75)

    ・中国は、漢字という表意文字を使っていたからこそ、巨大な人口が分裂することなく一つの国であり続けた、表音文字が使われていたら、欧州やインドのように小国が分立していただろう(p76)

    ・要人の警護に抜擢されて任期を全うすることができれば、特に条件の良い天下り先が用意される。北京勤務の武装警察において、要人警護は最高位のあこがれのポストである。(p88)

    ・科挙合格者は実際の業務を行うことはなかった、実務は科挙に合格しなかった下級官僚が行った。日本では、明治システムがこのシステムを導入し、第二次世界大戦が終わるまで、官選の知事を置いた時代があったが、例外中の例外である(p92)

    ・本気で万里の長城を突破しようとすれば簡単にできる、一部に集中して1か所を破壊すればよいので、防衛線として有効であったのは、相手が小部隊であったから(p105)

    ・農業生産が順調に増加すると、農民は貧しくなる。戦後の日本で生じたことが現在の中国でも進行している、その結果、農民は戸籍アパルトヘイトで身分を固定されて、どんどん貧しくなる(p130)

    ・人類は長い間、飢餓との闘いであったが、20世紀になって空気中の窒素を工業的に固定して化学肥料を作る技術が開発されると、収穫量が急増して食料不足は解消した(p132)

    ・中国の現状は日本の何年くらいに似ているのか、4億人の都市部と見た時には、バブル(1990)や、一人当たりGDP(1970)という議論があるが、都市と農村の人口比でみると、1950年頃に似ている(p133)

    ・農民は反乱を起こしても武装警官で鎮圧できるが、都市の中産階級は情報発信能力があるので、共産党は都市の中産階級が不満を持つことを恐れている。だからコメの価格を上げない、農民工の最低賃金も上昇を抑えている。都市部のサービス価格が上昇するので(p140)

    ・中国では土地は売れないが、使用権は販売できる、使用権は宅地は70年、工業用地は50年と決められている(p150)

    ・土地開発公社をコントロールしている会社は地方政府、中国企業は簡単に資金を集められるのは、土地を媒介に作られている。この土地収用システムは、日本企業が中国企業に負けた原因の一つになっている(p151)

    ・中国が共産党独裁をやめて民主主義を導入したらどうなるか、その答えは既に、タイにある。農村部を基盤とした、タクシン政権が作られたが、クーデターが起きて、選挙をしても勝てないので、都市のエリートは力によって政権を奪取、現在も未だ軍政下にある(p164)

    ・習近平は、和諧社会(格差の是正に取り組む)を取り下げて、中国の夢、を国家目標にした。国内問題解決よりも、対外膨張政策や国威発揚に舵を切った(p184)

    ・20世紀になって実力がないにもかかわらず国威発揚を図り、覇権国に挑戦して敗れた国が3つある、ドイツ・日本・ソ連である(p191)

    ・次の30年程はインド経済は順調に発展する、現在の一人当たり2000ドルから、10,000ドルあたりまで。中国は中進国の罠にはまり、10,000ドル当たりで低迷するだろう。すると将来的にインドの人口は中国を上回るので、GDPもインドが抜く可能性があるだろう(p219)

    2018年1月14日作成

  • 20180105〜0110

  • 米と小麦の文化、なるほど!

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著者プロフィール

川島博之(かわしま・ひろゆき)
ベトナム・ビングループ主席経済顧問、Martial Research & Management Co. Ltd., Chief Economic Advisor。1953 年生まれ。1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得退学。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授を経て現職。工学博士。専門は開発経済学。著書に『日本人が誤解している東南アジア近現代史』(扶桑社新書)、『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』『習近平のデジタル文化大革命』(いずれも講談社+α新書)、『「食糧危機」をあおってはいけない』(文藝春秋)、『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版社)等多数。

「2021年 『中国、朝鮮、ベトナム、日本――極東アジアの地政学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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