第一次世界大戦 忘れられた戦争 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062919760

作品紹介・あらすじ

一九一四年夏、「戦争と革命の世紀」が幕を開けた。交錯する列強各国の野望、暴発するナショナリズム、ボリシェヴィズムの脅威とアメリカの台頭…。ヴィルヘルム一世、ロイド・ジョージ、クレマンソー、レーニン、ウィルソンら指導者たちは何を考え、どう行動したのか。日本の進路に何をもたらしたか。「現代世界の起点」たる世界戦争を鮮やかに描く。

感想・レビュー・書評

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  • 第一次世界大戦の国際政治・外交を記述している。
    期間としては戦後も含めて10年程ではあるが、ボリュームのある内容であると思う。
    読前は第一次世界大戦は連合国が順当に勝利した、という印象を持っていたが、想像以上に紙一重だったことがわかった。
    タイトルにあるように、第二次世界大戦と比較して第一次世界大戦は「忘れられた戦争」と呼ばれる。特に日本は第二次世界大戦の衝撃が大きすぎたこと、第一次世界大戦では直接の被害を被っていないことから、その傾向が強い。しかし、100年前のこの戦争が今後の世界に与えた影響は大きい。さなかに生まれたソビエト連邦、ヴェルサイユ体制等々、は第二次世界大戦、冷戦に密接に関係してくる。
    これだけに限らないが、歴史は過去からの連続性である。歴史を学ぶことは現在、未来にも活きてくる。そういった意味でも日常から意識する必要まではないが、知っていることは必要ではないかと感じた。

  • ウクライナ戦争関連で、東ヨーロッパからトルコ辺りの歴史的な変遷に興味が出て、学び直しのつもりで読みました。
    ドラマ仕立てで、純粋に読み物として面白かったです。
    個人的に、主役はドイツではなく、ソ連でした。

  • 第一次世界大戦にまつわる諸相を、国際政治の観点からわかりやすく解説。それぞれの国の指導者苦悩や決断が鮮やかに描かれる。イギリスのロイド・ジョージ、フランスのクレマンソー、アメリカのウィルソン。そしてドイツのヴィルヘルム2世、ロシアのニコライ2世・・・。この未曽有の大戦により、ヨーロッパ中心の歴史から、アメリカが国際政治の表舞台に登場し、またボリシェヴィズムの台頭を招く。近代史の基本的な知識を収めるのに格好の1冊。

  •  この本の初版は1985年に発刊されたものが、2010年に文庫化されたものであるが、あまり古さは感じなかった。分量も250ページなのでテンポもいいし、一気に読める良本である。
     ただし少し残念だったのが、スペイン風邪について全く触れていないことだ。実はこの本を手に取ったのは、感染症が世界大戦にどのような影響を与えたのか具体的に知りたかったのだ。全く触れていないなんて思わないので、いつ出てくるのかと思っていたが、読み終えるまで出てこないのだ。
     やはり特別にそういう目で見ることをしないと、真実は語れないのか。

  •  電気通信大学名誉教授である山上さんの手からなる歴史本。

     第一次世界大戦に関する歴史本は様々な著書が出版されていますが、どれも作者の力点や焦点が異なっているので、読むたびに新鮮な感覚を覚えます。
     山上さんのそれは、大戦前夜、そして戦中戦後の期間を、主に政治家たちの活躍に焦点を当てて描かれています。そのため、戦闘推移における劇的なイベントについてもサラッと流されています。例えばトルコが同盟側(独墺陣営)に加わり参戦した経緯については以下のように描かれています。

    「そのうち1914年10月末、ドイツ艦隊とその指揮下に入っていたトルコ艦隊は、黒海北岸のロシア領を砲撃した。
    ここに英仏露とトルコとの国交は立たれ、11月初め、トルコに対する三国の宣戦布告となった。」

     ここで言及されている「ドイツ艦隊」とはゲーベン号を旗艦とする艦隊を指すが、スーションを指揮官とするこの艦隊は戦前から地中海を遊弋。しかしイギリスもこの艦隊に目をつけており、大戦前夜から追跡劇繰り広げます。
     大戦勃発後は圧倒的な戦力を誇るイギリス艦隊の追跡を逃れてトルコ領に入る。その際の口実として艦隊は「トルコに売却された」体裁をとるのですが、トルコがこの口実を採用した背景にはイギリスに対するある怨恨があった・・・。
     その後スーションはダーダネルス・ボスポラス海峡を通過して黒海に入り、独断でロシア領を砲撃する。これが参戦の契機になったわけですが、まったくドラマのようなストーリーです(詳細は『8月の砲声』(バーバラ・タックマン)を参照)。
     歴史書の著者としては脱線の誘惑は大きかったでしょう。しかし本書は政治家たちの活躍を追う、という目的に徹しています。

     政治家の活躍について、大戦前夜についてバーバラ・タックマンの『八月の砲声』からの引用が多いように感じました。
     戦中については英仏露独墺の主要な政治家たちの動きが描かれています。ただ、ドイツにおいてはルーデンドルフの行動が政治の柔軟性を制限したはずですが、その点の説明は希薄です。しかしアメリカの政治動向に関してと、この間の日本の動きについては細かく描かれています。
     戦後については講和条約の内幕についての記述が詳細に及んでいて面白い。ここでもウィルソンを通してのアメリカの政治動向が詳しく描かれており、参考になります。

     全体を通して、本書では欧州の社会主義者たちの活躍と、革命期の混沌としたロシアの状況が克明に描かれています(それに伴ってニコライ二世の退位から処刑に至るまでの経緯も詳しい)。
     特にレーニンがロシアの地に戻り革命を主導し、最終的にはソヴィエト独裁体制を築くまでの奮闘の記述は詳細に及んでおり一見の価値があると思います(著者の専門領域なのかな?)。

     この本は3度ほど読み返しました。というのも、政治家たちの行動の背景・動機が個人的に少しわかりづらかったからです。これは私個人の要素が大きいのでしょう。
     本書は大戦の戦闘推移に関する記述はほとんどありません。しかし戦争の状況は政治家たちの行動を左右したはずです。その辺の関係性が少しわかりづらかったというのが正直なところ。

  • 国益といい、自衛という論理
    「勝利なき平和」における現実
    古き良きヨーロッパのゆくえ
    可能なことと、不可能なこと

    著者:山上正太郎(1919-2010、岡山市、西洋史)
    解説:池上彰(1950-、松本市、ジャーナリスト)

  • e

  • 第一次世界大戦について知っていること・・・

    ボスニアのサラエボでオーストリーのフェルディナンド大公夫妻がセルビアの青年に暗殺されたことが第一次世界大戦の引き金になった

    ・・・ということは誰でも知っていますがナゼそんなマイナーな(?)地域での事件が世界を巻き込む大戦争のきっかけになったのか、正確に答えられる人はごく少数でしょ?

    例えばこういう簡単な質問に答えられないことについて疑問を持つ人に対して、この本は実に的確に回答を与えてくれる。

    歴史は必ず原因があって結果がある。

    歴史とは因果関係が必ずあるという前提がなければ成り立たない学問である。

    何故いまのロシアがあるのか、中国があるのか、バルカン諸国があるのか、ヨーロッパがあるのか、アメリカがあるのか、アラブ諸国があるのか、そして日本があるのか・・・・

    今を知るためには、オリエンテーリングのように必ずチェックポイントを通過しなければならないのである。

    第二次世界大戦を知るためには、第一次世界大戦を知る必要があるのである。

    ・・・・・・

    第一次世界大戦の入門書としては実に上手くまとまっている。

    毒ガスとか、塹壕戦とか、西部戦線異常なしとか、WarよりBattleに目が向きがちだけれど、本書は一切省いている。

    それよりも、この大戦が帝国主義国から共和国への過渡期と捉え、各国の(未熟な?)政治家たちの判断に焦点を絞っている。

    しかも、少ない字数の制限にも係わらず、係わった人たちを出来るだけ血の通った人間として描こうとしている。

    ウウゥ~~ン、こういう描きかた好きです。

    無機質になりがちの歴史なんだけど、歴史って結局人間が作るものなんですよね。

    日本(アジア)からの視点も多くの字数を割いていることも好感が持てる。

  • (要チラ見!) 第一次世界大戦/文庫

  • 薄い本だが、これ一冊で第一次大戦の流れをつかめる。そして、いかにこの「忘れられた戦争」が現在に至るまでの世界情勢を決定づけたかがよくわかる。特にロシア革命(最も重要なターニングポイント)をめぐる各陣営の右往左往と暗躍ぶりは面白すぎる。

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