マハン海上権力論集 (講談社学術文庫)

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制作 : 麻田 貞雄 
  • 講談社 (2010年12月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920278

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マハン海上権力論集 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

  • マハンは近代海軍戦略の基礎を築いた戦略論の古典的泰斗で、彼の著作や論文は現代でも国家戦略、軍事戦略を考える上で決して外せない必読の書である。そのマハンの代表的な論文をいくつか取り上げ、紹介している本書は危機的な状況を迎えつつある日本の外交戦略を再考する上で、まず手にして欲しい重要な文献である。

  • 9月末に閉店してしまった「松丸本舗」で見かけて、気づいたらカゴに入っていた一冊。
    マハンは、海上からの戦略(シーパワー&シーレーン)についての研究者、になるのでしょうか。

    ん、司馬さんの『坂の上の雲』でも取り上げられていて、
    ドラマでも出てきていますので、聞き覚えのある方もおられるかもですね。

    こちらはそのマハンの出した論文の抜粋・ダイジェスト集になります。
    ポイントは丁寧に押さえられていて、マハンの提唱する理念について触れるには十分かと。

     ”国家の海上権力を左右する主要な条件として、次の諸要素を挙げることができよう。”

      1)地理的位置
      2)地勢的形態(これと関連して天然の産物と気候をも含む。)
      3)領土の規模
      4)人口
      5)国民性
      6)政府の性格(国家の諸制度を含む)

    ちょうどタイミング的に『自由と繁栄の弧』の再読と並行したので、いい相乗効果でした。
    というのも、その麻生さんの理念とも非常に合致する内容と感じたからです。

     ”野蛮状態とは、わが文明に内在する精神を吸収することなく、
      その物質的進歩のみを摂取するのに汲々たる人びとの文明のこと”

    そう見ると非常に理解しやすく、「日本」の行く先も見えてくると思います。
    ん、「弧」に日本の生存圏も乗ってくるのであれば、喜んで「伴走者」となりたいところです。

     ”三ヵ国(英・米・日)は、顕著な海洋国家”

    マハンの生きた19世紀当時、アジア圏で第一に西欧化したのは日本であって、
    次に来るのは「支那(china)」であろうとは、マハン自身の言でもあります。

    そして(支那が)真っ当な手段で西欧化してくればよいのだが、
    してこないのであれば、封じ込める必要があるとも、言及しています。

    ちなみにここで言う「支那」は、当時支配下に置いていた朝鮮半島も含んでいます。

     ”戦闘の状況は、武器の進歩につれて、その多くが時代とともに変わるけれども、
      歴史を学ぶことによって、一定不変の原理を見出しうる”

    ここで言う西欧化は、当時の国際水準での普遍的な価値、すなわち、
    民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済を、実現しているかとの視座になりますか。

    今の判断基準で見ればいろいろと至らない点も多いでしょうが、歴史の事象を判断するに、
    当時の状況を鑑みずに今の価値観だけで読み解くのは、かなり危険です。

    なお、世界で最初に人種種別撤廃を明確に主張したのは、日本が最初だったりします(1919年)。
    アメリカやイギリスの反対で潰されてしまいましたけども、、閑話休題。

     ”平和は、われわれの直面している状況を無視することによって達成されるものではない”

    けだし、真理をついている一言だと思います。

    特に、大陸国家である中共政府が、海洋権益への帝国主義的な野望を露わにしてきた昨今、
    海洋国家である日本が、他の「海洋国家」とどう連動していくべきかを読み解く一助ともできるかと。

    その「海洋国家」の候補としては、、アメリカ、オーストラリア、インド、台湾や、
    フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマーなどのASEAN諸国が、まずはあがりましょうか。

    ん、やはり『海上権力史論』の方も読んでみたいですね、、大学で借りてくるか、、
    それなりに高いですが「基本書」として購入してしまうか、非常に悩ましいところです。。

    19世紀位からのアメリカの国家戦略にも影響があるような、気がします。

  • 抄訳部分を読んでから序文に戻るのがいいかもしれない。マハンの論はかなり好戦的で「やられる前にやれ」「攻撃こそが最大の防御」と言わんばかりである。私は日本人なので台頭する日中に対する警戒心のこもったマハンの視点はなんとなく新鮮に映った。これまで「民衆⇔権力⇔戦争」の三者間に対する知識は蓄えてきたと思うけれど『権力⇔権力』の関係性にはいまいち関心が薄かったのだなと反省。中世までの戦史と地政学についてもっと勉強したいなと思った。当時の日本人の知への貪欲さを見習いたいが、捉われて現実を見失うことないようにしたい。

  • ものすごい本だった…
    表現が難解で、時折理解が追いつかないんだけど、言わんとしていることはぼんやり見てて、書いた時期を振り返ってはぞっとする。

    そして中国もこれを読みこんでいるということ。
    それを踏まえると、今の動きの意図が見えてくる。
    日本はこのままだとまずい気がする…。

  • マハンの海上権力論集。
    原論よりもむしろ解説の方が面白かった。とりわけ軍事的リアリストであったマハンが、次第にイデオロギーに固執する政治評論家へと転化するのは興味深い。

  • 国家の繁栄には貿易の拡大を必要とし、それにはシーレーン確保や海軍力増強が重要となる―。近代海軍の父・マハンの海上権力理論は、秋山真之をはじめとする旧日本海軍のみならず、同時代の列強、そして現代に到るまで諸国家の戦略に多大な影響を与えている。海の可能性が注目される今、大きな示唆を秘めた海洋戦略論を、代表作を通して紹介する。

    解説 歴史に及ぼしたマハンの影響――海上権力論と海外膨張論(麻田貞雄)
    ●海上権力の歴史に及ぼした影響(抜粋)
    ●合衆国海外に目を転ず
    ●ハワイとわが海上権力の将来
    ●20世紀への展望
    ●海戦軍備充実論
    ●アジアの問題(抜粋)
    ●アジア状況の国際政治に及ぼす影響(抜粋)

  • マハンの理論が日本に与えた影響や、海上権力を握るのに重要な箇所を分かりやすく訳しているので、マハンの入門に良い本です。西洋の海軍史を複雑に記す事の多いマハンの文章を、日本人向けに分かりやすく抄訳しているのは、講談社学術文庫のなせる技だと思います。

  • 同書の真価を認めたのはイギリスであった。
    1893年にマハンがイギリスを訪れたとき、ビクトリア女王がバッキンガム宮殿の晩餐会に彼を主賓として招いた。
    ドイツは、皇帝ウイルヘルㇺ2世が「これは第一級の古典的研究である」と称賛した。
    日本は、金子堅太郎がアメリカに居て読了し、1892年日本で出版した。
    * 驚いたことにマハンは1867年蒸気スループ艦で副長として日本に1年以上も停泊していた。であるからマハンは『街角に大小を差した侍』を見ている。
    当時27歳のマハンは神戸付近の山岳を探勝し、「目の覚めるほど美しい」と称賛している。それはそれ、マハンが親日家と言うわけではない。日本を知る、日本の自然を称える外人を、親日家と称して喜ぶがそれは大きな錯覚だ。知日家が正しい。
    40年後マハンは既に対日戦争の計画の立案に参画していた。
    アメリカ海軍が日本を敵国と想定したのは1875年と言うから、明治維新から間もなくの事であり、日清戦争の遥か前である。
        『日本は、西洋の物質文明を吸収、享受する半面、西洋の「宗教的理念」を受け入れようとしないので、両者は衝突する運命にある』、とマハンは説いた。
        マハンはアジア人を「劣等民族」とみなしていた。マハンはカルフォルニアの日本人移民問題には極端な排日論者であった。
    アメリカ海軍が日本を仮想敵国として「オレンジ計画」に着手したのは1906年である。
      ○ 仮想敵国とはと定義する。「その国の親疎に論なく最大勢力を持って我に対しえる一国をとり、仮にこれを想定敵中目標とする」




                                           2
    加藤寛治は、(1870~1939)海軍兵学校主席 最終履歴、海軍大将
    1893年2月、マハンが、「ハワイと我海上権力の将来」を執筆しているとき、加藤寛治は巡洋艦浪速でホノルルに向かった。後年加藤は回顧して、「当時の微々たる米国海軍力に対し、わが最新鋭艦を背景にすれば、アメリカのハワイ領有は未然に防ぐことが出来た」と臍をかむ思いであったと言う。(当時、日本はイギリスに次ぐ太平洋上の海軍国であった)
       * 日本人なら勇ましい話と思うがこれは錯覚である。
    日清戦争の直前であり、ましてそのあとの日露戦争時でも英・米に後押しをしてもらわなければどうなったかはわからない国力の日本である。一時的にその地域で海軍力がほんの少し勝っていると言って行動に出るのは愚かである。
    1941年、太平洋ではわが方が有利であると言って、「1~2年は暴れてご覧に入れる」と山本五十六は大見えを切ったが、その後は見るも無残、悲惨であった。
    1942年6月5日、(口ほどにもなく)1~2年どころか開戦して僅か半年で、ミッドウエー海戦で敵に質量とも優る戦力を持っていながらも大惨敗。この時点で太平洋戦争は事実上終了した。
    遡る1893年に山本五十六のような考えの持ち主が先輩の加藤寛治がいたという事は驚きであり悲しい。日本人の習性かも知れない。しかもこの二人は無責任な大衆と違って海軍兵学校の首席と二位の秀才であつた。
     日本海軍は、マハンよりもマハン的な教条に凝り固まっていた。日本の戦略は、戦艦中心主義、主力艦隊決戦、船団護衛の軽視などどの点を取ってみてもマハン理論を一段と硬直させたドグマであった。マハンの影響は日本においては破壊的、破滅的であった。それはマハンの影響というより、マハンの理論の選択的・恣意的・意図的な曲解、誤解、歪曲の結果と言うべきであると訳者は解説している。日本海軍の指導者を真珠湾攻撃に導き、東京湾上での無条件降伏をもたらしたのはマハンの亡霊であった。
         一方ルーズベルトはマハンの弟子として、マハンの戦略ドクトリンを適... 続きを読む

  • 近現代の国家戦略における古典的な名著の抜粋版として、購入。
    このような古典にありがちな、現代に置換えて理解する作業は、論文本文には当然必要であり、サクッとは読めない。
    但し、序説に解説が詳しく著述されており、その部分だけを読むこととし買う価値あり。
    当時のアメリカ合衆国の利益追求の為に軍人である著者の論文であるが、著述が、現代のアメリカ合衆国にも影響しているのが確実と思われるのは、1隻何千億円もする豪華な原子力空母を世界一保有している現代のアメリカ合衆国を理解に通ずる古典でありかつ名著。
    もしかするとアメリカ合衆国の外交政策にとっての聖書・経典なのかも知れない。

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