マハン海上権力論集 (講談社学術文庫)

著者 :
制作 : 麻田 貞雄 
  • 講談社
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本棚登録 : 206
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920278

作品紹介・あらすじ

国家の繁栄をはかる独創的なシー・パワー理論
海を制する者が世界を制す
秋山真之に多大な影響を与えた近代海軍の父、その思想と生涯

国家の繁栄には貿易の拡大を必要とし、それにはシーレーン確保や海軍力増強が重要となる――。近代海軍の父・マハンの海上権力理論は、秋山真之をはじめとする旧日本海軍のみならず、同時代の列強、そして現代に到るまで諸国家の戦略に多大な影響を与えている。海の可能性が注目される今、大きな示唆を秘めた海洋戦略論を、代表作を通して紹介する。

海軍士官、海軍史家、大海軍主義(ネイヴアリズム)のイデオローグ、戦略家、世界政治の評論家。さらに彼は「帝国主義者」をもって自任し、海外進出のプロパガンティストとして筆を振るい、世紀転換期の膨張政策を正当化するために、一連の時代思潮を、ときには相矛盾する形で体現する思想家でもあった。本書では、このようなマハンの著作から代表的な文章を7編選んでみた。――<本書「解説」より>

※本書は1977年、研究社出版株式会社から刊行された「アメリカ古典文庫8 アルフレッド・T・マハン」をもとに、「解説」などの新規加筆を行ない、再編集を施しました。

感想・レビュー・書評

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  • マハンは近代海軍戦略の基礎を築いた戦略論の古典的泰斗で、彼の著作や論文は現代でも国家戦略、軍事戦略を考える上で決して外せない必読の書である。そのマハンの代表的な論文をいくつか取り上げ、紹介している本書は危機的な状況を迎えつつある日本の外交戦略を再考する上で、まず手にして欲しい重要な文献である。

  • 9月末に閉店してしまった「松丸本舗」で見かけて、気づいたらカゴに入っていた一冊。
    マハンは、海上からの戦略(シーパワー&シーレーン)についての研究者、になるのでしょうか。

    ん、司馬さんの『坂の上の雲』でも取り上げられていて、
    ドラマでも出てきていますので、聞き覚えのある方もおられるかもですね。

    こちらはそのマハンの出した論文の抜粋・ダイジェスト集になります。
    ポイントは丁寧に押さえられていて、マハンの提唱する理念について触れるには十分かと。

     ”国家の海上権力を左右する主要な条件として、次の諸要素を挙げることができよう。”

      1)地理的位置
      2)地勢的形態(これと関連して天然の産物と気候をも含む。)
      3)領土の規模
      4)人口
      5)国民性
      6)政府の性格(国家の諸制度を含む)

    ちょうどタイミング的に『自由と繁栄の弧』の再読と並行したので、いい相乗効果でした。
    というのも、その麻生さんの理念とも非常に合致する内容と感じたからです。

     ”野蛮状態とは、わが文明に内在する精神を吸収することなく、
      その物質的進歩のみを摂取するのに汲々たる人びとの文明のこと”

    そう見ると非常に理解しやすく、「日本」の行く先も見えてくると思います。
    ん、「弧」に日本の生存圏も乗ってくるのであれば、喜んで「伴走者」となりたいところです。

     ”三ヵ国(英・米・日)は、顕著な海洋国家”

    マハンの生きた19世紀当時、アジア圏で第一に西欧化したのは日本であって、
    次に来るのは「支那(china)」であろうとは、マハン自身の言でもあります。

    そして(支那が)真っ当な手段で西欧化してくればよいのだが、
    してこないのであれば、封じ込める必要があるとも、言及しています。

    ちなみにここで言う「支那」は、当時支配下に置いていた朝鮮半島も含んでいます。

     ”戦闘の状況は、武器の進歩につれて、その多くが時代とともに変わるけれども、
      歴史を学ぶことによって、一定不変の原理を見出しうる”

    ここで言う西欧化は、当時の国際水準での普遍的な価値、すなわち、
    民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済を、実現しているかとの視座になりますか。

    今の判断基準で見ればいろいろと至らない点も多いでしょうが、歴史の事象を判断するに、
    当時の状況を鑑みずに今の価値観だけで読み解くのは、かなり危険です。

    なお、世界で最初に人種種別撤廃を明確に主張したのは、日本が最初だったりします(1919年)。
    アメリカやイギリスの反対で潰されてしまいましたけども、、閑話休題。

     ”平和は、われわれの直面している状況を無視することによって達成されるものではない”

    けだし、真理をついている一言だと思います。

    特に、大陸国家である中共政府が、海洋権益への帝国主義的な野望を露わにしてきた昨今、
    海洋国家である日本が、他の「海洋国家」とどう連動していくべきかを読み解く一助ともできるかと。

    その「海洋国家」の候補としては、、アメリカ、オーストラリア、インド、台湾や、
    フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマーなどのASEAN諸国が、まずはあがりましょうか。

    ん、やはり『海上権力史論』の方も読んでみたいですね、、大学で借りてくるか、、
    それなりに高いですが「基本書」として購入してしまうか、非常に悩ましいところです。。

    19世紀位からのアメリカの国家戦略にも影響があるような、気がします。

  • 19世紀末に多くの論考を残したマハンの考えは、当時の帝国主義的な風潮を背景としたものである。アメリカは太平洋を隔てて東洋とぶつかるフロンティアである。したがって、国内産業に目を向けている場合ではないだろうというのがマハンの主張。キリスト教の精神で繋がっている共同体の一国であるアメリカがフロンティアにいるのだから、産業の利を活かし、植民地を見つけ、商業を円滑に進めるための海軍を整えよと説いた。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740719

  • 茂木誠氏の推薦コメント。
    「マハンの大著『海上権力史論』も翻訳があるが、読みにくいのでこちらをお勧めする。

  • 抄訳部分を読んでから序文に戻るのがいいかもしれない。マハンの論はかなり好戦的で「やられる前にやれ」「攻撃こそが最大の防御」と言わんばかりである。私は日本人なので台頭する日中に対する警戒心のこもったマハンの視点はなんとなく新鮮に映った。これまで「民衆⇔権力⇔戦争」の三者間に対する知識は蓄えてきたと思うけれど『権力⇔権力』の関係性にはいまいち関心が薄かったのだなと反省。中世までの戦史と地政学についてもっと勉強したいなと思った。当時の日本人の知への貪欲さを見習いたいが、捉われて現実を見失うことないようにしたい。

  • ものすごい本だった…
    表現が難解で、時折理解が追いつかないんだけど、言わんとしていることはぼんやり見てて、書いた時期を振り返ってはぞっとする。

    そして中国もこれを読みこんでいるということ。
    それを踏まえると、今の動きの意図が見えてくる。
    日本はこのままだとまずい気がする…。

  • マハンの海上権力論集。
    原論よりもむしろ解説の方が面白かった。とりわけ軍事的リアリストであったマハンが、次第にイデオロギーに固執する政治評論家へと転化するのは興味深い。

  • 国家の繁栄には貿易の拡大を必要とし、それにはシーレーン確保や海軍力増強が重要となる―。近代海軍の父・マハンの海上権力理論は、秋山真之をはじめとする旧日本海軍のみならず、同時代の列強、そして現代に到るまで諸国家の戦略に多大な影響を与えている。海の可能性が注目される今、大きな示唆を秘めた海洋戦略論を、代表作を通して紹介する。

    解説 歴史に及ぼしたマハンの影響――海上権力論と海外膨張論(麻田貞雄)
    ●海上権力の歴史に及ぼした影響(抜粋)
    ●合衆国海外に目を転ず
    ●ハワイとわが海上権力の将来
    ●20世紀への展望
    ●海戦軍備充実論
    ●アジアの問題(抜粋)
    ●アジア状況の国際政治に及ぼす影響(抜粋)

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