韓国は一個の哲学である 〈理〉と〈気〉の社会システム (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920520

作品紹介・あらすじ

「韓国に関する認識は最終的に解決された」。韓国人が垣間見せる理の顔と感情の顔、その乖離は何に由来するのか。儒教(朱子学)に基づく"理"と"気"の世界観を軸に、著者独自の「統一理論」で韓国人の思考や行動原理、そして韓国社会のメカニズムをあざやかに読み解いてゆく。思想史や歴史的経緯までも踏まえた、正しい韓国理解のための必読の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 「ハン」=恨みと漢字をあてはめて単純理解していたのは間違いで、「ペパーミント・キャンディ」がハンの映画と聞いてなんとなく分かった気になっています。人は生涯をかけて理の体現者であるニムになろうとしてあこがれ、様々な障害によりニムになれない自分の悲しみ、無念、痛み、わだかまり、つらみの思いがハンであると。映画ドラマを観ていてもヒョン、オッパ、ナヌ、オンニと血の繋がりのない年長男女に兄姉と呼びかけることを不思議に思っていますが、年長者を理を体現する尊敬すべきニムと扱っていると言う意味合いなのかと思いました。

  • 1998年版

    ・韓国 道徳「志向」的な国
    ・人間関係の仕組み(図参照)
    ・<理>と<気>のしくみ
     -理は道徳性、気は物質性
     -理は垂直構造(上昇と下降のしくみ)、気は水平構造(癒し)
    ・二分法では韓国社会をとらえることは決してできない
     -理と気は「不相雑かつ不相離」(分離しつつくっついている、混入しつつ離反している)
     -日本人の韓国誤解はこのどちらかしか見ていないゆえ
    ・あこがれ/悲しみとしての<ハン(恨)>
    ・欧米が批判する「アジア的価値」=<偽理>の体系(理が利を掌握するための装置になっている:教師が父母から「寸志」を毎月巻き上げる)
    ・<理の歴史>=<あるべき歴史>=<ホントの歴史>=<仮想の道徳的歴史>
     -法律論よりも「間違った歴史は正さねばならぬ」という<理の歴史の立て直し>の側面のほう方が国民により強く訴える
     -連続性ではなく断絶性を強調する点が重要
    ・日本は<ノム(奴)>
     -韓国は日本よりも上位者<ニム(主)>であるから、上位者の役目として、下位者=<ノム>の日本を教育してやらねばならない。
     -理不尽な尊大ではなく、<理>の果たすべき使命を行使しているだけ
    ・日本人の韓国人に対する誤解の多くが、韓国人の<理気>的性格を知らないために生じるのと同じように、韓国人の日本人に対する誤解は、韓国人の<理気>的な視線によって他の文化を一方的に自文化中心的に眺めるところから生ずる
    ・「日本人は権威に弱い」「日本人には主体性がない」という認識は「日本人は<理>の担い手ではない=日本人は<ニム>ではなく<ノム>である」というドグマから直接に導き出される誤った命題である
    ・「日本人には情がない」のではなく、韓国型の社会構造によってつくられる韓国型の情がない。これを韓国人は理解しない。


    ・「反日感情」は<理>である。憎日・嫌日は<感情=気>だが、反日・蔑日は<理屈=理>である。
     -「日本人に対して反抗心がないなんて、韓国人ではない」という理
     -この究極の<理>が<ひとつの韓国><一枚岩のウリ>をかろうじてつくりあげてきた
     -この<理>が<韓国人>という幻想共同体をつくり、その<理>に疑問をさしはさもうとする人間は「韓国人」という共同体から排除される


    ・日本の歴史観と韓国の歴史観
     -日本は歴史を大切にしない国である。韓国人の多くはそう考えている
     -なぜなら、日本は、過去を道徳志向的に再解釈し、それに基づき未来を当為的に創造しようという意志に欠けるから
     -韓国は儒教的な意味で歴史を大切にしているにすぎない(過去を完膚なきまで道徳志向的に再構築し、春秋の筆法により毀誉褒貶に終始する)
     -「植民地近代化論」に対する拒絶:「よしんばそれらがわが国の近代化を推進したとしても、それは日本が朝鮮のためにしたことではなく、あくまでも日本の利益のためにしたことだ」と反論する
     -ここで歴史的事実はないがしろにされ、動機と道徳のみが問題にされている
     -韓国から見れば日本人は歴史を大切にしないが、日本から見れば韓国人もまた歴史を大切にしない
    ・日本人が韓国人を理解することは困難
     -韓国の<理>を解した瞬間、日本人はその<理>によって一瞬に崩壊してしまう。なぜならそれは、日本人を否定する<理>であるから

  • 解説:上垣外憲一

  • 韓国の朱子学について『論理哲学論考』スタイルで書き連ねた本。

    【目次】
    目次 [003-011]

    0 韓国・道徳志向的な国 015
     0・1 道徳志向的な人びと 016
     0・2 道徳を叫ぶ人、叫ばない人 017
     0・3 日本と韓国における道徳のイメージ 018
     0・4 〈儒教=形式主義〉は誤りである 019
     0・5 W杯招致合戦で見せた道徳志向性 020
     0・6 道徳志向的な世界の中での日本の個性 021
     0・7 日本は明治以降に儒教国家化の完成を目指す 022
     0・8 韓国はひとつの哲学である 023
     0・9 道徳・権力・富 024
     0・10 道徳奪取闘争 025
     0・11 哲学はめしの根 026
     0・12 〈理〉への信仰 027
     0・13 危機意識と〈理〉志向性 028
     0・14 〈理〉の変遷 029
     0・15 日韓の〈理〉のかたち 030
     0・16 メタフィジカル・コリアへいよいよ出発! 031
     0・17 若干の凡例  032

    1 上昇への切望――〈理〉志向性のしくみ 033
    1・1 〈理〉と〈気〉のしくみ 034
     1・1・1 〈理〉とは道徳性である
     1・1・2 〈気〉とは物質性である
     1・1・3 性善説と〈理気〉
     1・1・4 善と悪
     1・1・5 善への克己
    1・2 人間関係のしくみ 039
     1・2・1 日常空間の人間関係
     1・2・2 〈ナ=我〉と〈ノ=汝〉
     1・2・3 〈ニム=主〉
     1・2・4 〈ノム=奴〉
     1・2・5 〈ウリ=われら〉
     1・2・6 〈ナム=他人〉
     1・2・7 〈ウリ〉共同体と礼儀
     1・2・8 〈マル=言葉〉と〈ソリ=音・声〉と〈マルムス=御言葉〉
    1・3 上昇志向のしくみ 047
     1・3・1 上昇志向
     1・3・2 科挙
     1・3・3 壮元
     1・3・4 壮元と日本一
     1・3・5 あこがれ/悲しみとしての〈ハン〉
     1・3・6 〈ハン〉を解くとは、あこがれを解くこと
     1・3・7 〈ハン〉と怨恨
     1・3・8 〈理側〉の〈ハン〉と〈気側〉の〈ハン〉

    2 〈理〉と〈気〉の生活空間 055
    2・1 〈理の世界〉と〈気の世界〉 056
     2・1・1 〈理〉はひどく疲れる
     2・1・2 〈理〉の疲れを癒す〈気〉
     2・1・3 〈理の世界〉と〈気の世界〉
     2・1・4 〈理の空間〉と〈気の空間〉
     2・1・5 つねに動く空間
     2・1・6 〈理気のスイッチ〉
     2・1・7 〈理の世界〉は他者攻撃
     2・1・8 〈気〉に封じ込められたもの
     2・1・9 〈気の舞台〉=〈理〉から排除された人びとの棲息地
     2・1・10 〈理〉と人欲
    2・2 〈理気〉の生活学 066
     2・2・1 いるべき場所
     2・2・2 〈理〉の威光/〈理〉のグッズ
     2・2・3 目と〈理気〉
     2・2・4 顔と〈理気〉
     2・2・5 手と〈理気〉
     2・2・6 〈理の世界での年齢〉と〈気の世界での年齢〉
     2・2・7 日本人の韓国誤解
     2・2・8 誤謬のしくみ
     2・2・9 〈韓国人〉というアイデンティティの根拠としての〈理〉
     2・2・10 一個の哲学性
    2・3 〈理〉と〈気〉の方法論 076
     2・3・1 ダイコトミーの克服
     2・3・2 〈理〉と〈気〉の相互関係
     2・3・3 〈気〉の秩序
     2・3・4 なぜ〈理〉が垂直で〈気〉が水平なのか
     2・3・5 〈理〉と〈気〉を記述するレベルの問題

    3 〈理〉と〈気〉の文化体系 083
    3・1 コスモス信仰の民族性 084
     3・1・1 コスモスの志向性
     3・1・2 危機とコスモス
     3・1・3 最強のコスモスは〈マル〉
     3・1・4 コスモスの文法と語彙が乱舞する国
     3・1・5 〈モム=体〉のコスモスに対するあくなき信仰
     3・1・6 四象医学とモミズム(momism)
     3・1・7 民族正気
     3・1・8 日帝断脈説
     3・1・9 風水地理という名の〈理〉
     3・1・10 ソウルの〈理気〉的しくみ
     3・1・11 江北と江南の〈理気〉的二極構造
     3・1・12 数理信仰
     3・1・13 ハン哲学とハヌル哲学
     3・1・14 天符経
     3・1・15 理理無礙法界と華厳一乗法界図
     3・1・16 〈理〉信仰者は〈理の眼鏡〉を装着する
    3・2 〈理気〉の文化表徴 103
     3・2・1 ハングルの〈理気〉的歴史
     3・2・2 ハングルの〈理気〉的しくみ
     3・2・3 国旗の〈理〉
     3・2・4 〈理のアリラン〉と〈気のアリラン〉
     3・2・5 料理の〈理気〉的しくみ
    3・3 〈理気〉の精神性 110
     3・3・1 〈モッ=粋〉の〈理気〉的構造
     3・3・2 〈モッ〉は〈理〉のまわりを巡る
     3・3・3 天才の生まれる国
     3・3・4 スポーツの天才
     3・3・5 天才――〈理〉と合一する境地
     3・3・6 〈理のスポーツ〉と〈気のスポーツ〉
     3・3・7 〈ケンチャンタ〉
     3・3・8 〈タジダ〉
     3・3・9 物づくりと〈ハン〉
     3・3・10 物づくりの歴史
     3・3・11 物づくりと〈ケンチャンタ〉
     3・3・12 〈理気〉の想像力
     3・3・13 宗教と現実
     3・3・14 〈理の僧〉と〈気の僧〉
     3・3・15 〈理のキリスト教〉と〈気のキリスト教〉
     3・3・16 北朝鮮の〈理気〉的イデオロギー

    4 〈理〉と〈気〉の社会構造 127
    4・1 道徳志向性と知識人 128
     4・1・1 朝鮮の儒教は空理空論ではない
     4・1・2 韓国のインテリはおおしく、日本のインテリはめめしい
     4・1・3 朝鮮知識人の類型と役割
     4・1・4 イメージとしての類型
     4・1・5 両班=道徳+権力+富
     4・1・6 士大夫=道徳+権力
     4・1・7 ゾンビ=道徳
     4・1・8 両班・士大夫・ゾンビの闘争の道徳奪取闘争
     4・1・9 両班・士大夫・ゾンビの闘争のしくみ
     4・1・10 士林の〈理〉が勲旧派を攻撃
     4・1・11 〈理〉の危機と朝鮮化
     4・1・12 党争の時代へ
     4・1・13 知識人の類型とソウルの居住地
     4・1・14 広義の〈両班志向〉と狭義の〈両班志向〉を区別する
     4・1・15 〈両班志向〉〈士大夫志向〉〈ゾンビ志向〉
     4・1・16 三つの志向と韓国の近代化
     4・1・17 無謬志向
     4・1・18 下降志向性
    4・2 〈理気〉の血縁共同体 147
     4・2・1 生者と死者がともに住む社会
     4・2・2 鬼神との豊かな交流
     4・2・3 ともに生きることの容易さと困難
     4・2・4 〈モム〉の文化社会的秩序
     4・2・5 族譜
     4・2・6 死者の意志・死者の欲望
     4・2・7 〈理の孝〉と〈気の孝〉
     4・2・8 〈チプ=家〉というシステム
     4・2・9 〈父〉
     4・2・10 〈母〉
     4・2・11 〈兄〉
     4・2・12 〈姉〉
     4・2・13 家族の外の家族
     4・2・14 〈理の家族〉と〈気の家族〉

    5 〈理気〉の経済・政治・歴史 161
    5・1 経済――〈理〉と〈利〉の角逐と妥協 162
     5・1・1 〈理〉による序列
     5・1・2 〈理〉の逆転
     5・1・3 〈利〉の上昇の登場
     5・1・4 〈理〉と貨幣の角逐
     5・1・5 〈理〉と〈利〉の角逐
     5・1・6 〈理〉の付与により財閥をつくる
     5・1・7 裏の経済――〈気〉の世界
    5・2 政治――〈理〉はコスモスという名のカオス 170
     5・2・1 〈権力志向性〉
     5・2・2 渦巻型中央志向の政治社会
     5・2・3 普遍運動としての儒教
     5・2・4 労心者と労力者
     5・2・5 排除の構造
     5・2・6 〈理のやさしさ〉と〈気のやさしさ〉
     5・2・7 〈理〉の階層構造
     5・2・8 〈ニム〉の声、〈ノム〉の顔
     5・2・9 〈偽理〉と〈利〉
     5・2・10 〈ハン〉とルサンチマンは異なる
     5・2・11 ルサンチマンに吸収される〈ハン〉
    5・3 歴史――〈理〉の力と仮想道徳歴史 181
     5・3・1 〈ノム〉が〈ニム〉になってゆく歴史
     5・3・2 〈現実の歴史〉と〈あるべき歴史〉
     5・3・3 〈仮想道徳歴史〉
     5・3・4 〈仮想道徳歴史〉と法
     5・3・5 〈変革〉と〈改革〉
     5・3・6 〈変革〉が可能なわけ
     5・3・7 韓国史の発展
     5・3・8 西洋の衝撃
     5・3・9 東学
     5・3・10 衛正斥邪
     5・3・11 開化派/5・3・12 日本による植民地化(一九一〇~四五)
     5・3・13 〈日本=ニム〉をめぐる葛藤
     5・3・14 〈アメリカ=ニム〉の時代(一九四五~)
     5・3・15 〈理〉の死と再生の韓国史
     5・3・16 〈理〉の民衆と〈気〉の民衆
     5・3・17 〈理〉の民衆と〈気〉の大衆
     5・3・18 民衆の時代から大衆の時代へ
    5・4 九〇年代の変化 199
     5・4・1 九〇年代の意味
     5・4・2 〈理〉の統合と細分化の時代
     5・4・3 民主主義の時代は〈ニム〉のインフレに沸く
     5・4・4 新しい主体たちの登場
     5・4・5 新世代――新しい主体I
     5・4・6 女性――新しい主体II
     5・4・7 異端者たち――新しい主体III
     5・4・8 〈ウリ〉の縮小のベクトル
     5・4・9 〈ウリ〉の拡大のベクトル
     5・4・10 〈ウリ〉の拡大と韓国的近代の完成

    6 〈理気〉と世界・日本 209
     6・1 国際関係のしくみ 210
     6・1・1 朝鮮時代の国際関係の構造
     6・1・2 解放後の国際関係の構造
     6・1・3 朝鮮の位置の上昇
     6・1・4 日本の位置
     6・1・5 〈民族ハン〉
     6・1・6 道徳志向性の花咲き乱れる舞台
     6・1・7 道徳志向性の化身としての北朝鮮
     6・1・8 主体と事大
    6・2 文化という〈理〉と世界化 218
     6・2・1 「世界化」と文化戦争
     6・2・2 〈力〉と〈正統〉の認識の歴史
     6・2・3 工業化・産業化に対するふたつの立場
     6・2・4 工業化の成功と亀裂
     6・2・5 産業化から情報化へ
     6・2・6 歴史の再解釈
     6・2・7 文化という戦略伝統再評価
     6・2・8 二〇〇二年文化ワールドカップ
     6・2・9 オリジン伝説の再創造
     6・2・10 日本の〈プリ〉は韓国
     6・2・11 〈プリ〉コンプレックス
    6・3 日韓関係の困難と未来 229
     6・3・1 日本・日本人認識の誤謬
     6・3・2 誤謬の内容
     6・3・3 日本は「本」ではない
     6・3・4 日本文化開放の〈理気〉論
     6・3・5 「反日感情」は〈理〉でもある
     6・3・6 多様な言語の欠如
     6・3・7 日本に依存する韓国の〈理〉
     6・3・8 日本なしに成立しえない韓国をつくるのが韓国知識人の役割
     6・3・9 「妄言」と規定するトートロジー
     6・3・10 日本の歴史観と韓国の歴史観
     6・3・11 〈気〉の合う相手か、相互〈理〉解か
     6・3・12 過去の清算は可能か――〈理気〉の立場から
     6・3・13 〈理のありがとう〉と〈気のありがとう〉
     6・3・14 日韓関係の未来へ

    謝辞(一九九八年十一月 小倉紀蔵) [243]
    文庫版あとがき(二〇一一年三月 京都 深草にて 小倉紀蔵) [244-255]
    解説 (上垣外憲一 大手前大学教授) [256-261]

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著者プロフィール

小倉 紀蔵(おぐら・きぞう):1959年生まれ。京都大学教授。専門は東アジア哲学。東京大学文学部ドイツ文学科卒業、韓国ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得退学。著書に『心で知る、韓国』(岩波現代文庫)、『韓国は一個の哲学である』(講談社学術文庫)、『朝鮮思想全史』『新しい論語』『京都思想逍遥』(以上、ちくま新書)、『弱いニーチェ』(筑摩選書)などがある。

「2023年 『韓くに文化ノオト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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