ハイデガー「存在と時間」入門 (講談社学術文庫)

制作 : 渡邊 二郎 
  • 講談社
3.50
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本棚登録 : 168
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920803

作品紹介・あらすじ

哲学者マルティン・ハイデガーの主著にして、二十世紀の思想界に衝撃と多大な影響を与え、現代哲学の源流として今なおその輝きを増しつづける現代の古典『存在と時間』。その新しさのゆえに難解とされてきた、ハイデガーが企図した哲学の革新性とはなにか?西洋近現代哲学研究の泰斗と気鋭の後進が精緻かつ平易に解説する、ハイデガー哲学入門。

感想・レビュー・書評

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  • 『存在と時間』の要約。前半部の解説については本文をより簡潔にまとめたという感じで、本文を読んだ人には必要がないかもしれない。後半部はおそらく歴史性の議論を理解するうえで読んでおいてよかったかもしれない。そして最後に、執筆者の一人の消息を知っている方がいたら編集部まで連絡してくださいと書かれてあって戦慄した。

  • <ハイデガー ボキャブラリーの楽しさ>
    最初は、何と無味乾燥な解説書かと思ったが、轟の新書(「ハイデガー 存在と時間入門」)を読んだ上で再読すると、かなりコンパクトに「存在と時間」を解説していることが分かり、感心した。
    ただ、難解な「存在と時間」の解説書としては、熱く語る轟のような著作を入門書とする方が良い。
    さもなくば、入門書と言う名の解説書だけで投げ出してしまい、「存在と時間」そのものに辿りつかないことは必定だ。

  • ハイデガーのタームに慣れるために読了.とても優れた入門書だと思います.

  • 『人間は根源的に時間的存在である』
    この言葉を初めて知ったのは、知り合いから紹介された、アニメ『STEINS;GATE』を観た時であり、言葉の提唱者がハイデガーであると知ったのもこの時であった。
    自分はアニメファンではないし、正直この作品に対しても使い古された“タイムリープネタ”だというくらいの感想しかなかった。ただ、これまで「時間」に対する疑問を自分なりに解き明かしたいとの想いがあったことから、作品を観終わった後もこの言葉がしばらく心に残り続けることとなった。
    そんなとりとめのない経緯がきっかけではあったが、20世紀最大の哲学者であり、かつハイデガーの『存在と時間』が現代の実存主義哲学の流れの起点となっていると評されていることから興味をそそり、その入門書と謳っている本書を手に取るに至った。

    結論からいえば、『存在と時間』の内容は“時間そのもの”を扱ったものではない。
    ハイデガーは人間を「現存在」として規定し、現存在が逃れることのできない「死」を自覚することによって初めて「時間性」が芽生えるのだとしている。
    具体的には、時間性を従来の概念のように「過去-現在-未来」ではなく、「到来-現在(現成化)-既在」として規定し、人間(=現存在)の全体性は、いずれ確実に到来する「死」という終わりと「生誕」という始まりを合わせたものであるとしている。そして我々現存在は、死と生誕の間に自らを伸び拡げるという仕方で存在しており、死と生誕を意識することで、生の全体を時間的、歴史的なものとして存在させているとしているのである。分かりやすくいえば、現存在にとって時間とは有限な存在ということである。
    また一方でハイデガーは、人々は公共的な世界での生活に埋没し、気晴らしを楽しみ、時間を潰しながら生きており、このような生き方は本来の人間らしくない生き方であり、これを「頽落(たいらく)」と表現し、このような生き方をしている人々のことをダス・マン(=世人)と表現した。そのうえで、我々現存在は、時間は無限で過ぎ去るものであり、かつ不可逆的であると当然のように考えており、この通俗的な時間解釈(=「今・時間」)は現存在の頽落に基づいているとしている。
    学術的・哲学的に述べるとややこしい表現であるが、要は、今を生きる人間(=多くの世人)にとって「人間はいつか死ぬということは分かっているけれど、死ぬのなんてずっと先なのだから、“今”を思いっきり楽しもう!」ということが頽落的生き方で、「人はいずれ死ぬのだから、“今”を大切に生きよう!」という生き方こそが本来の人間の目指す生き方であるとしている。

    そのような『存在と時間』を、自分は時間をテーマにした哲学書というよりもむしろ“生き方指南の啓蒙書”のように感じたのが正直なところである。しかしながらその一方で、本書は難解といわれる『存在と時間』を編者が可能な限り分かりやすく解説しており、自分のような世人でも全体像を把握することはできた。また本書をきっかけに、哲学界においては「本質主義」と「実存主義」という考え方があることを知ることができたので、ハイデガーだけでなく、“教養としての哲学”の入門書としても有用であるといえる。
    個人的には、本書を読むことで「時間とは何か」というシンプルな問いに対する答えは得られず、かつ原書の訳本を読みたいと思うに至らなかったが、哲学的なものの考え方を知ることができたことは大きな収穫であった。

  • 『存在と時間』の内容を解説している本です。

    ハイデガー自身の議論の運びにかなり忠実にしたがいながら、執筆者自身の観点からていねいな整理がなされており、入門書などを通してハイデガーの思想に興味をもった読者が、じっさいに『存在と時間』を読んでいくための橋渡しの役割を果たしてくれる内容になっているように思います。

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著者プロフィール

哲学者。放送大学名誉教授、東京大学名誉教授。専攻は西洋近現代哲学。著書に『ハイデッガーの実存思想』『ハイデッガーの存在思想』(以上勁草書房)、『ニヒリズム』(東京大学出版会)、『構造と解釈』『英米哲学入門』『芸術の哲学』『はじめて学ぶ哲学』『現代人のための哲学』(以上ちくま学芸文庫)、『歴史の哲学』(講談社学術文庫)、『人生の哲学』(角川ソフィア文庫)などがあり、『渡邊二郎著作集』全12巻(筑摩書房)に集成されている。

「2021年 『増補 自己を見つめる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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