鉄炮伝来――兵器が語る近世の誕生 (講談社学術文庫)

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著者 : 宇田川武久
  • 講談社 (2013年5月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921732

鉄炮伝来――兵器が語る近世の誕生 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

  • 日本の戦国大名の中で、財力や硝石を入手する力などで鉄砲の軍事利用の重要性が決まっていき、決して、織田信長以外の武将が鉄砲を等閑視していたからではない、というのは分かる。
    また、種子島にポルトガル人というのはいささか出来すぎで、倭寇だろうというのは分かる。
    だとすると、ではなぜ倭寇や明や朝鮮は鉄砲を実用化しなかったのだろうか。今度はそれが知りたい。

  • 宇田川武久氏による日本における鉄炮の歴史についての一冊です。単行本初版は1989年です。

    本書において宇田川氏は日本の火縄銃に関する歴史についての様々な通説について、安土桃山時代の史料を改めて検討を行うことによって批判を行い同時代における火縄銃の実態を解き明かそうとします。
    本書における第一のトピックは題名にもなっている通り「鉄炮伝来」をめぐる通説です。現在の鉄砲伝来をめぐる通説は『鉄炮記』に依拠したものです。「天文十二年、種子島に漂着したポルトガル人により火縄銃が伝えられた。この火縄銃が国産化され堺から日本各地に普及した。」というのが『鉄炮記』の記述です。宇田川氏は火縄銃の構造が東南アジアに特有のものであることや、同時に漂着した中国人の号が東シナ海に勢力を持っていた倭寇の頭目王直と同じ号であることから、実態は倭寇によって東南アジアから種子島へ輸入されたものではないかと提唱しています。
    更に同時代の九州や幕府の文献をもとに西日本の鉄炮普及は堺によってもたらされたものではなく、倭寇との直接取引によってもたらされたのではないかとしています。

    本書第2章以降は、戦国時代における火縄銃の普及について史料を元に追っていきます。西国・東国の大名による鉄炮による軍備の普及や『信長公記』にみる織田信長軍における鉄炮導入。さらには文禄・慶長の役における豊臣方と朝鮮軍の火器装備の比較と朝鮮における日本式鉄炮の導入など主に軍事面から見た鉄炮の普及について語られます。また、武芸としての砲術の隆盛についても触れられています。

    本書では『鉄炮記』などの鉄炮に関するまとまった史料だけではなく、当時の幅広い文献をカバーすることによって戦国時代における鉄炮の全体像がよく把握できるようになっています。「鉄炮伝来」や「長篠の戦い」といったエポックメイキングな題材の中でしか語られなかった日本の火縄銃について、日本全体での急速な鉄炮の普及-各地への鉄炮鍛冶の導入が行われ、大名の軍勢に配備される鉄炮の数量が急速に進んでいく様子-や東アジア史のなかでの鉄炮などのより幅広い視点から総合的に考えることができる書物であると思います。また「鉄炮伝来」から「大阪夏の陣」まで一般にも知られている事件をトピックに技術的に難しい内容も平易に語られていて、また引用された文献の内容についても逐次現代語で説明されているので、日本中世から近世初期にかけての大名や為政者の軍備の変遷について通時的に把握するための一般書として申し分ないかと思います。

    しかし、「長篠の戦い」や「文禄・慶長の役」「大阪冬の陣」などの評価について火器の配備の差について強調しすぎているとも思います。宇田川氏は鉄炮の配備状況が戦いの趨勢を決したかのような記述をされていますが、安土桃山時代の軍備の中で鉄炮がどの程度の役割を果たしたものなのかについて、より広い観点から考える必要はあるのではないかとも感じました。さすがに1989年の出版なので長篠の合戦における三段打ちの評価など、現代の通説からは少し外れた部分などもありますのでそこは注意が必要かも知れません。
    また、本書とあわせて『生類をめぐる政治――元禄のフォークロア』を読むとその後の鉄炮がどうなったのかを知ることができ、日本社会における鉄炮の位置づけについてより深い観点を得られるのではないかなと思います。

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鉄炮伝来――兵器が語る近世の誕生 (講談社学術文庫)の作品紹介

新たな兵器は、いかに伝わり、普及したのか。「種子島に漂着したポルトガル人が伝えた」という常識を覆し、武器から戦国史を見直す。

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