- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062922210
作品紹介・あらすじ
薩摩、長州を中心とする反幕府勢力が、武力で倒幕を果たしたという「常識」は本当か。第二次長州戦争は、なぜ幕府の敗北に終わったのか。王政復古というクー
デタ方式が採られた理由とは。
強烈な攘夷意思をもつ孝明天皇、京都の朝廷を支配した一橋慶喜、会津藩の
松平容保、桑名藩の松平定敬。
敗者の側から、江戸幕府体制がいかに、そしてなぜ崩壊したかを描き出す。
感想・レビュー・書評
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幕末を、薩長史観ではなく、孝明天皇、敗者である幕府の側からも考察した。学術的には、龍馬や西郷、高杉などの志士や新選組は枝葉末節なものらしい。外国に対する知見を持てなかった孝明天皇が、力を失いつつある幕府と相まって、自国と外国の力の差を実感できずに攘夷路線を突き進んだことが、結局は幕府の崩壊に繋がった。大政奉還後、薩長の武力討幕という野望を止める者は誰もいなかった。本当に日本国民を震撼させる王政復古クーデターが必要だったかは疑問だ。
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倒された幕府ではなく、自壊したというのが
読み取れます
そういう時に慶喜の姿がチラチラと見えると
舞台に悪役が登場したような存在感がある -
[もう1つの主役]対外的な危機を背景として薩長を筆頭とする雄藩が倒幕に乗り出すという、巷間に溢れる幕末史の見方に新たな視点をもたらす意欲作。これまであまり注目を集めてこなかった、強硬な攘夷論者の孝明天皇、そしてその背後に控えた「一会桑(一橋慶喜(注:後の徳川慶喜)、会津・桑名両藩)」の動きとその役割に光を当て、知られざる歴史の一面を明らかにしていきます。著者は、中学・高校の先生を勤めながら歴史を学んだという家近良樹。
取り上げられた対象が素晴らしければ、その時点で本の面白さが一定程度は保証されるといっても過言ではないと思っているのですが、孝明天皇という対象はまさにそのような一例なのではないかと本書を読んで痛感しました。図らずも能動的な役割を担わざるを得なくなった天皇が、どのように朝廷と幕府の関係、ひいては日本と諸外国の関係に影響を及ぼしていくかという点は非常に読み応えがありました。
また、「一会桑」の動きから、幕末のいわゆる「回天」は本当に思わぬ形で成就したものなんだと感じました。英雄潭的な幕末史も面白いのですが、魅力溢れる人物がそれぞれの大義や感情を世界史的流れの中で切り結び、その結果として思いがけないほど「見事」に近代日本が成立したという面白さもあるのではないかと思います。
〜なぜ幕府政治が終わりを告げたのかという問題を考えた場合、薩長両藩がはたした役割よりも、もっと大きな功績をあげた何物かが他にあったとみざるをえない。それが何かといえば、いままでの政治体制では駄目だという多くの人々の思いであった。〜
自分はやっぱり徳川慶喜と大久保利通が好きです☆5つ -
幕末明治史に対する新鮮な視点を提供してくれる。討幕派というものがこれまでいわれていたようにすんなりと結成されたものではなく,紆余曲折の末,処々の要素が絡み合う中で産み落とされた,といっていいものであるということ。
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幕末の歴史解釈は志士の英雄的な活動による革命賛美のイデオロギーにとらわれたものになりがちであるが、一橋、会津、桑名三藩のクーデター失敗に過ぎないという、冷静に幕府瓦解をとらえた政治史としての解釈が新鮮だった。
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明治維新時の日本国内状況を事実をもとに推察。
一会桑の動きと他勢力の動きから明治維新への流れがわかりやすい。 -
元々は12年以上前に新書で出た本の文庫版なので、
すごく目新しい、というわけではないのでしょうが、
それでも新鮮な視点がいくつかありました。
孝明天皇に触れる際に、
祖父である光格天皇が登場するあたり、
12年前の本としては画期的だったのかもしれません。
幕末は薩長や土佐の志士たちや会津、新撰組にどうしてもスポットがあたりがちで、
若い力が前面に出てきてしまいますが、
鷹司や二条といった調停の重鎮も様々な場面で重要な役割を果たしてきたはずで、
それがしっかり描かれていたのもよかったです。