ハンナ・アレント (講談社学術文庫)

  • 78人登録
  • 4.00評価
    • (3)
    • (10)
    • (3)
    • (0)
    • (0)
  • 7レビュー
著者 : 川崎修
  • 講談社 (2014年5月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062922364

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

  • 政治哲学者 ハンナアレント 「全体主要の起原」「革命について」など主要著作の思想、難しい用語を わかりやすく 説明した本。末尾の索引とキーワード解説は 原著を読む際に とても 良さそう

    「全体主義の起原」
    *20世紀の政治秩序論=全体主義
    *19世紀の政治秩序の解体論=第一次世界大戦により国民国家体制と社会(階級社会)が解体→大衆社会へ

    アーレントの国民国家観
    *ネーション(歴史的、文化的な一体性を持つ人間集団)
    *市民(国家の法的な市民権を持つ)

    全体主義の持続策
    *プロバガンダ→一貫性のある偽り→大衆が判断力失う
    *組織→国家(意図的なヒエラルヒーの不明確さ)、秘密警察、強制収容所

    強制収容所=人間の完全な変革→人間の非人間化、人格の破壊

  • 「敗北よりも、敗北を認めることが恐れられる」


    どきっとするような警句。
    羽根のように触れただけで、血潮が噴き出すようなシビアでハードボイルドな分析。

    この本の(特に前半は)興奮モノでした。
    あまりに密度が濃すぎて、サクサク読めない…読んではちょっと戻って、噛み直しての繰り返しでした。

    久々に何だか、こう、歯ごたえのあるものが読みたくなり。
    長年気になっていたハンナ・アーレントさんの本を読み始めました。
    読み始めるとなかなか歯ごたえがありすぎて(笑)、促進剤として手に取ったのが、この解説本(電子書籍ですが)。
    そうしたらよくある話ですが、こっちの方を先に読み終えてしまいました。

    20世紀の巨大な政治学者?哲学者?ジャーナリスト?文筆家?であるところの、ハンナ・アーレントさん(1906-1975)。
    ドイツで生まれたユダヤ人で、ナチスを裂けてアメリカに渡り、主にアメリカでその後文筆活動しました。
    一般的にはかなり馴染の薄いムツカシイ学問だけにとどまらず、
    「ナチス、スターリンのソ連のような全体主義とはなんなのか」
    「どうしてアウシュビッツのようなことが起こり得たのか」
    「どういう政治が、社会がよろしいのか」
    という、割と具体的ななまなましいことについても言論活動をして、賛否両論、それなりの注目と知名度を持っています。
    通常で言うと、(かなりひねくれていますが)いわゆるリベラル系、みたいな枠組みで位置づけられると思います。
    解説本一冊読んだ限りでは、それ自体に大きな間違いは無いと思います。

    内容は

    第1章 十九世紀秩序の解体ー「全体主義の起原」を読む(前篇)
    第2章 破局の二十世紀ー「全体主義の起原」を読む(後編)

    ※この2章は、「全体主義っていったいなんなのか、どうしてそうなっちゃうのか?」
    というお話だ、と言えます。
    これは実にドキドキしました。
    正直に言うと、戦前の日本の軍部独裁的政権の分析のようでもあり、2015年現在の「安倍政権・反知性主義・右傾化嫌韓憎中」の三点セットの精神的解説のようでもあります。
    また、平場で言うと、一部の人にはストレスなだけのな、「体育会系的な飲み会の空気感」の解剖とも言えます(笑)。

    第3章 アメリカという夢・アメリカという悪夢
    第4章 政治の復権をめざして

    ※この2章は、第1章と第2章に比べると、難解とも言えるし、面白くないとも言えます。
    ただ、第3章は一部大変に面白かった。
    具体的には、リンカーン高校の人種差別問題(黒人を排斥する高校を州知事が指示、それに対して政府が介入した事件)をどう解釈すべきか、というくだり。
    「平等というのは、政治的に守らなくてはならないけど、社会に対して平等を強制してはいけない」などというのは、ナルホド、と思いました。
    それから、ベトナム戦争の解釈については、完膚なきまでに十五年戦争時期の日本軍と日本政府と酷似しているな、と。
    第4章は正直に言うと、非常に観念論過ぎる気がしました。
    まあ、この手の本の場合、それはどこまでがアーレントさんの著作がそうなのか、解説書の著者の語り口の問題なのか、難しいところですが。

    #########

    全体主義はイデオロギーとテロルが特徴である。
    イデオロギーは偶然や多様性を認めない。
    過去からの連続性を認めない。
    全体主義のイデオロギーは一切の経験に依存しない。経験的な反証によっては容易に覆されない。
    しかし現実は、我々の前と我々の後に続いている世界は、常に歴史と言う物語の連続性と反復性の流れの中にいます。
    そして、現在と呼ばれる時間の出来事は常に、偶然性と多様性に溢れているんですね。


    「過去は決して死なない、それは... 続きを読む

  • 映画『ハンナ・アーレント』をWOWOWで観たので、手っ取り早くその人なりと思想を学ぼうとKindleで購入した。読後のあとがきを見て気が付いたことだが、本書は元々『現代思想の冒険者たち』という現代思想の代表的な思想家を選定して、その道の専門家がまとめたシリーズものの第17巻『アレント 公共性の復権』だとのこと。このシリーズは、自分が学生時代に講談社から出版されたもので、途中まではすべて購入して読んでいた。もしかしたら読んだことあるのに気が付かなかった...と思ったのだが、『アレント』の巻は刊行が遅かったのか、書棚にはなかったので、読み終わるまでそのことに気が付かなかったのは当然だと安心した。とはいうものの、20年以上も前にこの本を読んだとして、タイトルも変わっていると、そのことに気付けたかどうか心もとない。それほど、分かりにくさがある思想家のようだ。

    アレントについては、『イェルサレムのアイヒマン』で、アイヒマンを平凡な小役人と描き、あのような残虐なことをなしえたのは、強烈な意志があったわけではなく、その官僚制における自律的な判断の不在にあるとした。社会的な騒ぎになったこの件は、映画『ハンナ・アーレント』でも主要なエピソードとして取り上げられている。この「悪の凡庸さ」については、自分が愛読する高橋源一郎や森達也も何度も取り上げているが、アイヒマンを自分とは違う悪魔に仕立て上げて批判するよりもよほど現代含めて非歴史的に通用する批判となっている。ひとつは、あなたがその立場に立つこともあったことにまずは畏れるべきだという点にある。激しい論争が起きたのは、同胞でもあるユダヤ人に対して強制収容所でのユダヤ人協力者の存在とその批判を行ったことにもあったようだが、今となれば彼女の心の強さも合わせて正当に評価をされていると思う。

    アレント自身がユダヤ人であり、フランスの収容所も経験した(戦時中にアメリカに亡命して絶滅収容所行きの難は逃れた)こともあり、全体主義に対する分析と批判は代表的な仕事となっている。全体主義を20世紀西欧における必然的帰結とし、歴史的な必然性を語る。そこに至る道として、帝国主義とそこから導かれた人種主義と官僚制が、全体主義(ナチズムとスターリニズム)を産んだというのだ。その本質にテロルを見たり、階級なき大衆について分析するなど、今の世界の問題にもそのまま当てはまるところもあるのではないだろうか。

    著者は、思想家の概説書の任務について、「その思想家の作品を、読む気にさせる、読まずに済ませてくれる、そして読むときに助けになる」の三つがあるという。そして、この本を第二と第三の任務を両立させようとしたという。『全体主義の起源』や『人間の条件』という魅力的なタイトルの著作があるが、Kindle化されていないこともあり、ちょっと読むのは先かなと思う。『人間の条件』の方の解説は残念ながら自分の琴線には触れなかった。『アイヒマン』はKindle化されれば読みたい。そのときにはまた助けになってくれるだろうか。

  • Hannah Arendtについての解説書。

    原著……
     川崎修(1998)『アレント ――公共性の復権』講談社
    これは『現代思想の冒険者たち』シリーズ(全31巻)の、第17巻で絶版だったらしい。

  • 難易度はかなり高い(と思う)。
    第一章、第二章の『「全体主義の起源」を読む』が素晴らしい。
    かなり骨は折れるが、しばらくしたらもう一度読み返してみよう。

  • 『全体主義の起原』の読解に前半の2章を割き、第3章でアレントの革命論・アメリカ論、最後の第4章でアレントの政治論を概観する。

    工業の発展による過剰な資本の生産が帝国主義を生み、「国民国家」と「階級社会」に特徴づけられる19世紀的秩序を破壊し、市場の世界的拡大を狙うブルジョワジーが政治に口を出すようになり、植民地の原住民との「遭遇」が古来の「人類」思想を崩壊させ、「人種的ナショナリズム」が植民地支配を正当化、すなわち「民族」を人種のみによって定義し、一つの民族が他の民族を支配することを正当化したことによって「人種主義」の素地が出来上がる。
    「海外帝国主義」の潮流に乗り遅れたドイツやロシアは、ヨーロッパ大陸内部に資本・労働力・警察・軍隊を輸出する「大陸帝国主義」に走り、大陸帝国主義はグローバリズム的展開を正当化するため、「人種的ナショナリズム」の代わりに「汎民族運動」と結びついた。自民族と他民族の差異を絶対化することにより、自民族の成員個人間の差異はぼやけていく……。

    このように、アレントの全体主義解釈は、いわばとーっても長い「風が吹けば桶屋が儲かる」式のロジックであり、しかもそのストーリーは必ずしも連続性・必然性のあるものではないので、論を追いかけるのでいっぱいいっぱいになるときがあっていささか骨が折れた。

    個人的には、共和政・評議会制への期待、代議制・政党制への懐疑、異なる意見の存在を大前提とした複眼的態度、個人の自由な言論活動(政治参加)の重視などなど、アレントの政治観には強い共感を覚える部分が多い。
    第4章の終わりの方に、ハーバーマスによる至極真っ当なアレント批判(実際の政治の場の議論の難しさを軽視しているという主旨)が紹介されているが、それを差し引いても、アレントの諸々の主張は尊重するに値する。

    アレントが夢見た自由な言論空間の実現は、現代人をアパシーやニヒリズムから救い出すための最も効果的な手段の一つであるように思う。

  • 川崎修『ハンナ・アレント』講談社学術文庫、読了。入門として嚆矢といえる「シリーズ 現代思想の冒険者たち」『アレント 公共性の復権』待望の文庫化。資料・データのアップデートのほかは、『全体主義の起原』『革命について』『人間の条件』に焦点を当てた構成は同じだが、今なお色あせない。

    「政治的な問題とは、人間の意識的な活動・相互行為によって『別様でもありえること』である。その意味で、政治的にものを考えるということは、宿命論や因果的決定論を排することでもある」。アーレントが政治理論を歴史哲学と峻別し擁護する意義は今こそ大きい。

    19世紀的秩序の解体から破局の20世紀へ--アーレントの課題を「人間の複数性の徹底的な擁護と『世界への愛』」と捉え、その消息を紹介する。『イェルサレムのアイヒマン』が注視される近年、彼女の基本的構えを丁寧に明かす本書は座右に置きたい一冊。

全7件中 1 - 7件を表示

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)の作品紹介

二十世紀思想の十字路と呼ばれたハンナ・アレント。
 全体主義の起原をたどることで、その「新しい政体」を近代精神の所産として位置づけ、国民国家秩序の破綻と難民の世紀到来を明らかにした政治哲学者。彼女は、帰るべき家郷を失った時代の保守主義者として、あるいは進歩を信じ得ない時代の革命的理論家として常に〈時代〉と対決することで現代の苦境を可視化し、政治の再定義を通じてこの現代に公共性を可能にする条件を構想した。
 その思想の全体像を、第一人者が平易に描き出す。
 「現代思想の冒険者たち」シリーズの一冊として発刊され、日本で初めてアレント思想の全体像を描いた解説書として驚きをもって迎えられた名著の復刊。

ハンナ・アレント (講談社学術文庫)のKindle版

ツイートする