神曲 煉獄篇 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (648ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062922432

作品紹介・あらすじ

イタリアの生んだ最高の詩人ダンテが14世紀初めに著した『神曲』は「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の3篇からなり、さらに各篇は33歌からなりますが、「地獄篇」冒頭に置かれた三篇の全体の序歌を加えれば、合計100歌となります。詩型は三行一連で全体では1万4233行におよび、文学、美術、現実の政治等に多大な影響を与えた、キリスト教文学の最高峰とされる叙事詩です。
主題は生身の存在であるダンテが、地獄、煉獄、天国の三界、すなわち彼岸の世界を遍歴した末に、ついには神との出会いを果たすというところにあり、歴史的事実を死後の世界に投影した詩を通じて、人類に正しい道を指し示そうとした作品です。
『神曲』には主だったものだけを挙げても、すでに山川丙三郎(岩波書店)、平川祐弘(河出書房)、寿岳文章(集英社)らによる邦訳がありますが、あるものは翻訳の底本が不分明であったり、訳文が現代の読者には難解すぎたり、文章の流れに重きを置きすぎるがために原典に忠実でなかったり、キリスト教世界を描くのに仏教用語を多用して違和感を与えたりと、それぞれに難点がある。これらを克服するために、本訳ではテクストの安定性や信頼性で評価の高いペトロツキ版(1968年刊)を訳出の軸として、原典に忠実でありながら、平明な表現を心がけました。加えて読者の便宜を考慮し、訳注は可能な限り、当該の見開き内に収めました。訳注、各歌解説には、世界的ダンテ学者として名高い故ジョルジョ・パドアンに師事した訳者、『神曲』研究の最先端の成果を盛り込んでいます。
ダンテ『神曲』の訳本の決定版です。

感想・レビュー・書評

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  • 地獄篇と比べると罪人とそうでない人の違いがより晦渋になってきた。
    天国と地獄で対のイメージを持っていて煉獄がどう位置付けられているのか最後まで釈然としなかった。
    ベアトリーチェと念願の再会を果たしたダンテだが同時にウェルギリウスが姿を消した。
    その場面の描写が端的ではなく納得が行かなかった。
    天国に昇天する直前で完結しているがその先に困難が待ち構えているのは想像に難くない。
    ダンテが悔悛しても無事人間界に戻って来られるのだろうか。
     

  • 『地獄篇』は難しいなりにおもしろくも読めたのだけれど、この『煉獄篇』にかんしてはどうも最後まで馴染めなかった。その理由として、そもそも「煉獄」というもののわかりにくさが挙げられると思う。「地獄」や「天国」は学術的にはともかく、一般的な概念としては小学生でも知っているし、キリスト教ではなく仏教の世界にもあるなど、日本にとっては非常に馴染み深い。しかし、煉獄についてはどうか。まず、名称じたいがあまり人口に膾炙していないし、その内容もよくわからない。われわれの根っこにある智識の量にそもそも差があるため、当然理解についても差が出てしまうのである。もちろん、いちおう作中ではちゃんと解説というか言及があって、それを読めばある程度わかる構成にはなっているが、べつに「煉獄」という概念はダンテがオリジナルに創り出したわけでもない。当時キリスト教信者のあいだであたりまえのように共有されていた事柄を、そこまで懇切叮嚀に説明する必要もダンテには本来ないわけであって、その点からも読者にとってはこの『煉獄篇』の理解をいっそう難しいものにしてしまう。だから、『地獄篇』と同様に、つぎつぎと死者が登場してはその罪状などを告白してゆくのだが、なぜ地獄ではなく煉獄なのであろうという疑問はつねに頭のなかに浮かび続ける。誰しもがまったくの清廉潔白のまま命を落とすということはないわけであり、またいっぽうで、どんなに罪深い犯罪者であっても、多少は反省をする。天国や地獄のわかりやすさと比べて、いったいどこまでが煉獄であってどこまでが煉獄ではないのか。こういった点は、すくなくともたんに『煉獄篇』を読むだけではじゅうぶんに摑めなかった。作品としてレヴェルが高いことはたしかであろうが、このように理解が及ばない部分が多くあり、作品を満足に堪能できなかったことは残念であった。

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著者プロフィール

1265~1321。フィレンツェ出身の詩人、哲学者。ウェルギリウスと並ぶイタリア最大の詩人。本作以外に詩集『新生(La nouva vita)』がある。

「2014年 『神曲 煉獄篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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