火山列島の思想 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062923286

作品紹介・あらすじ

『火山列島の思想』は、美しく、たしかなことばで、日本の昔の人たちの心の情景を伝える書物だ。歴史は、その中に沈んだ、小さな点ひとつをとらえてみても、おおきくて広いものなのだと感じた。――荒川洋治(本書「解説」より)

     *

「日本」になる遥か前から、この列島には火山があった。
祭の日々に訪れ、日常を拘束しない〈非常在〉の神。著者はその祖型として〈火の山〉の流動的な生き方をとらえる。生きる土地の風土は、思想や生活態度全般の形成に根深く関わっているはずだ。こうした視点から「日本固有の神」をみなおせば、出雲神話でオオクニヌシとも呼ばれるオオナモチの神も、列島の各地に存在する火山神の共有名であったのだと気づく。そういえば、火山の国ゆえに湧き出る温泉も〈神の湯〉であった。「神の出生も、その名の由来も忘れることができる」。しかし、「マグマの教えた思想、マグマの教えた生き方は、驚くほど鞏固にこの列島に残っていったらしいのである」。
いにしえよりこの土地に培われ息づいてきた想像力のあり方から、私たちの精神は何を受け取り、何を忘却しているのか。忘れてなお、何に縛られ、何から自由になりたいのか。
画期的視点をひらいた表題作「火山列島の思想」のほか、夜と朝のはざま、すべてが一変して神が退場する夜明けの時刻から時間構造を論じる「黎明」。呪術がはらむ実用性と、実用からの逸脱として紡がれた〈ことば〉にこそ文学の起源を発見する「幻視」。生涯を童子の姿で通した人物の心の内を、数少ない資料を繋ぎあわせて見出そうと試みる「心の極北」……。
本書に収められた11篇すべてにおいて、著者は徹底してことばに寄り添い、残された文字をたよりに、かつて生きていた人々の心の断片に肉薄してゆく。その思考のうねりのなかで、古代中世の誰かのうちに、自らの断片を感じとることすらできる。日本古代文学研究史上の記念碑的作品にして、無二の名著である。

感想・レビュー・書評

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  • 気になっていた「心の極北」を読み終えた。
    白髪の皇子の謎。
    老いて尚、成人の儀を拒否し、童形であり続けた彼の、社会に対する思いとはいかなるものか。
    そこから『源氏物語』の薫が、元服を嫌がったことへの違和感に繋げていくのも、すごい。

    成人という、誰もが当然通過するものである〝社会的儀礼〟を忌避することなどあるのか。

    その視点は現代の私たちであっても、何か生きた問いかけになりそうである。

    他に「日知りの裔の物語」「偽悪の伝統」「飢えたる戦士」も面白かった。

    「日知りの裔の物語」では、『源氏物語』の帝が、桐壺の元へ行けなかった理由が語られる。
    三種の神器、特に、宝剣と共に在らねばならぬという帝の持つ性質に縛られた結果であり、院政以降は見られなくなることだと言う。

    「偽悪の伝統」では、聖が敢えて「俗悪な嘘」をついて往生することの意味を探る。
    善い行いや、僧という地位、また尊さにまとわりつく〝うさんくささ〟から脱する方法として、偽悪は機能する。

    「飢えたる戦士」は『平家物語』を取り上げ、食に満たされていたであろう作者は、この時の武士たちが味わったであろう飢えの苦しみに言及出来なかったと進める。
    生活には密着し得なかった眼差しだけれど、個人としての魅力を、史実を離して掴み取ったことに、『史記』との類似を見る。

  • 初めての国文学の分野。
    すごく興味深いところもあるけど、全体的に読むのが大変だった。
    たくさんの資料に当たって、寄り道して、得られる成果はひと握りのような、なんとも言えなさがある。また懲りずに戻ってきたい。

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著者プロフィール

益田勝実(ますだ・かつみ)
1923~2010年。山口県生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。元・法政大学文学部教授。国文学のみならず民俗学や歴史学の方法を駆使し、卓越した想像力をもってこの列島に息づく精神的古層を明らかにした、類まれなる研究者。著書に『益田勝実の仕事』(毎日出版文化賞受賞)『説話文学と絵巻』『秘儀の島』『記紀歌謡』『古事記』など。

「2015年 『火山列島の思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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