テレヴィジオン (講談社学術文庫)

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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924023

作品紹介・あらすじ

1973年、フランス放送協会の要請を受けて、フランスの精神分析家ジャック・ラカン(1901-81年)は、テレヴィ番組に出演した。
「フロイトへの回帰」を唱え、パリの地で精神分析の中興の祖となったラカンは、当時すでに世界的に知られる存在だった。しかし、「想像界」、「象徴界」、「現実界」など、魅力的でありつつも理解するのが困難な用語の数々に示されているとおり、その思想は難解を極めるものであることもまたよく知られている。博士論文を除けば唯一の著作である『エクリ』(1966年)は、そう簡単に近づくことのできない巨峰である。そして、1953年から1980年まで行われた『セミネール』もまた、講義で語られた言葉の記録ではあるものの、容易な理解を許すものではない。
そんなラカンが、テレヴィ番組に出演し、愛弟子ジャック=アラン・ミレールの質問に答える。多岐にわたる質問がなされ、明晰で厳密な回答が返される。しかし、ラカンが語りかけているのは、あくまで一般の視聴者であり、その言葉は他では見られない平明さを帯びている。
工夫を凝らされた訳文を全面的に再検討した決定版である本書は、まさに最良の入門書である。ラカン思想の真髄をポケットに!

感想・レビュー・書評

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  • よくわからなくてもひと通り読んだ。
    ラカンを読むのは「二人であることの病い」以来。入門書は途中で脱落したりしている。

    でもラカンは、理解できなくても「ラカンを欲望する」かぎりそこにあるから、また読みなおすと思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/67364

  • 本書はジャック・ラカンがテレビでジャック=アラン・ミレールのインタビューに答えるという番組の書籍化である。
    裏表紙には「後年まで続く『セミネール』にも見られない比類なき明晰さをそなえている。唯一にして最良のラカン入門!」とあるが、この短い書を正確に理解するにはそれなりの予備知識が必要であるのと同時にやはり難解であった!
    何が難解かと言えば、ラカンの理論体系というよりは、これでもかと附してあるフランス語のルビと、インタビューへの回答としてラカン自身がわざと文脈のすれ違いをいれているのに加え、思いがけない言葉の組み合わせを選択しているせいであろう。
    しかしこれは、言語活動におけるシニフィアンを重視するラカンならではの語り口と言ってよく、あえて訳としてもラカン理論の雰囲気をよく伝える記録になっていると言っても良いであろう。
    出だしからラカンはこう語る。
    「わたしはつねに真理を語ります。すべてではありません。なぜなら、真理をすべて語ること、それはできないことだからです。真理をすべて語ること、それは、素材的に、不可能です。つまり、そのためには、言葉が不足しているのです。真理が現実界に由来するのも、まさにこの不可能によっています。」とのっけからラカン節がさく裂する!

    ラカンへのお題はおおよそ次のようなものである。
    ・「無意識」とは?
    ・「精神分析」とは?
    ・『無意識はひとつランガージュとして構造化されている』というが、言葉には関わらない心的エネルギー、情動、欲動についてはどうか?
    ・性に対する抑制は、家庭、社会、資本主義からきているのか?
    ・カントの提示した三つの問題について。すなわち、「わたしはなにを知り得るか」「わたしはなにをなすべきか」「わたしはなにを希望することを許されているか」
    ・「よく理解されたことは明晰に表現される」という詩文の真理について

    これらに対してラカンの回答は、「現実界・象徴界・想像界」「ディスクール」「ランガージュ」などに加え、フロイト愛(!)、数式愛などの議論となっており、ラカン・ワールドが展開されているという点においてはある意味自身を総じた「入門書」となっていると言えるかもしれない。
    議論の合い間合い間にフロイト派団体への嫌味や自分の派閥への自負、そしてわかりにくいがおそらくは脱線したりしているところなどは、難解な書ながらもほっこりとちょっとした息抜きを与えてくれていて、こういうところはテレビインタビューのよいところなのかもしれない。

    短い書ながらも自分も正確にすべて理解したとは言い難い状態だが、予備知識としてネットで調べたりするという掘り下げへの動機づけも含めて、あえて言わせてもらえれば格好のラカン入門書であったといえる。

  • ここまで何も分からない読書も珍しい。

  • これを入門だと思うと間違い。かなりラカンの前提を知ってないと殆どピンとこない。

  • この本はハードカバー版をずっと前に図書館で読んだ。講談社学術文庫はジャック・ラカン文庫本2冊目だ。頑張ってどんどん出して欲しい。
    しかし改めて読んでみると、これは訳本としてはひどいところがある。「最良の入門書」(帯)と出版社側は言っているのに、訳者たちは真逆の姿勢で、無意味な衒学趣味にふけりきっている。
    なぜ、本文の中にいちいち編著の頁数を挿入しなければならないのか。それは原著に当たってみようという研究者でなければ、何の意味も無い。そして、常識外れの、「何でもかんでも仏語カタカナ表記によるルビ振りの嵐」。ラカン独特のキーワードをルビを多少振るくらいならわかるが、この訳本はなんでもかんでも付けているのだ。「それ」という語にもいちいち「サ」だのとルビを付けて、一体何の意味があるのか。ルビだらけで読みにくくて仕方がない。
    ラカンの薄っぺらい入門書だと思ってこれを手に取ったラカン学習者は、この壮絶で意味不明なルビの奔流に完全に混乱させられるだろう。
    この本をまともに読むなら、すべてのルビを完全に無視して、それに気を取られないよう、ルビ以外の文字を必死に追いかけるしかない。どうしてこんな苦行を読者に強いるのか。
    さてルビを無視して読むという風変わりな苦行を経て、内容を吟味してみると、訳本として以外は、なかなか良い本なのだ。
    『セミネール』シリーズの編集者であるジャック=アラン・ミレールがインタビュアーとなり、TVカメラの前でラカンにインタビューしている。
    ラカン思想の核心部分がストレートに語られており、確かに入門書として使える。とはいえ、やはりラカン、曲がりくねった変な言い回しや、どんどん話がわき道に逸れていく癖は健在であり、一筋縄ではいかない。
    ところどころ意味が取れないまわりくどすぎる文も出てくるが、これは訳者のせいではないかもしれない。
    それでも、「情動」一般について語っているところや、男女間に関する奇妙な言説など、とても興味深い部分がある。
    非常に薄い本なので、ルビを無視する苦労に集中力をさえぎられなければ、あっという間に読み終わることができる。
    なので、2回続けて読んだ。
    魂と思考、抑圧、ディスクール、カント批判などなど、確かにここから興味深いラカン・ワールドが見えてくる。短すぎるので、さらに奥深く進むことはできないけれども。
    とにかく無意味なルビの多すぎる本書が文庫になったことで、逆にラカンに対する日本の読者の拒絶反応が出てしまわないか心配ではあるが、講談社には是非、『エクリ』の新訳に取り組んでいただきたい。

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著者プロフィール

1901-81年。フランスの精神分析家。パリ大学医学部などで学び、サン=タンヌ病院などで臨床に専念。1964年にはパリ・フロイト派を創設した。1953年から始められたセミネールは多くの聴衆を集めるとともに、大きな影響を与え続けている。著書に、『エクリ』(全3巻、弘文堂)。

「2019年 『アンコール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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