天平グレート・ジャーニー 遣唐使・平群広成の数奇な冒険 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062930161

作品紹介・あらすじ

天平五年の遣唐使は苛酷な運命を辿った。朝貢国中最下位扱いされながらも、多くの人士や書物を満載し帰国の途についた四隻の船団。だが嵐に遭い、判官の平群広成率いる第三船は遙か南方の崑崙国へ漂着する。風土病と海賊の襲撃で、百人を越える乗員はほぼ全滅。軟禁されていた広成ら四人だけがふたたび長安へ向かう惨状ぶり。さらには新羅との関係悪化で、北方の渤海国経由での帰国に賭けることに。天平の「外交官」の見たものは?

感想・レビュー・書評

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  • 著者は万葉文化の研究者で遣唐使の物語。史実に近いのではないかな。
    大変な冒険。当時の長安、見てみたい。

  • 万葉文化の研究者が「遣唐使」を小説化。三十八の小編に分けて進行する物語は、研修者が執筆したことを知ると程よい長さの講義のようだ。会話文は現代風で、しかし時代考証に目くじらを立てさせないような、流れるような文章。風と海流に翻弄される当時の航走で命懸けで大陸へ渡り、そして帰ってくる、そのことを史料に肉付けして綴られた素晴らしい歴史小説に仕上がっている。

  • 新書が面白かったので、こちらも読んでみる。
    もっと前からあると思ってたら、割と最近のものだったのか。
    日本史には疎いもんで。しかし史実を膨らませてあってか面白かったです。
    渤海国ってあまり知らなかったので気になりました。

  • 遣唐使の旅を「数奇な冒険」とはうまく表現したものだ。天平の甍のようなミゼラブルな苦労にフォーカスした物語ではない。旅先の出来事、転々とする航路、渤海vs新羅の狭間突破。どれもがエキサイティング。決して不謹慎とは思わない。

  • 語り口は散文調。と思ったら、著者は学者さんだった。小説としては物足りない気もしたけれど、とにかく、あまり知らないこの時代の雰囲気や外国の様子、外交問題を知ることができてそこが楽しい。なにより遣唐使の苦労が目に見えるようで、とても面白かった。
    また、今まで見たドラマなどと違って吉備真備や阿倍仲麻呂が悪役なのが意外と面白かった。
    半ばまで読んで初めて再読だと気づき、ショック。

  • 話の筋は面白いけど、文章が今ひとつで読みにくかった。
    でも、本職が学者だという著者が、ほんの数行の記録から物語を紡ぎ出す試みは楽しい。

  • さすがはスペシャリストという作品。
    史実に基づいているとは言うものの脚色が素晴らしく、小難しいところを軽々と跳躍させる筆技。
    天平ロマンに心が躍る。

  • 天平の時代、国の威信を懸けた船団が海を渡り、大唐の都長安へたどりつくのは、まさに命がけであった。外交の難しさを噛みしめた帰路、平群広成(へぐりのひろなり)は第三船を率いるも、嵐に遭い、はるか崑崙国へ流され、仲間の多くを失う。失意の広成は本朝の地を踏めるのか!? 若き万葉びとの心意気と苦難が胸に迫る歴史小説。

  • 読み始めは堅苦しい歴史考証物かと思ったが、すぐに物語としての作品に引き込まれた。残っている資料をもとにエピソードを並べているのだろうが、どこからどこまでが事実かは重要ではない。奈良時代に唐まで渡ることの困難さ、そこに身を投じ荒波と他国に翻弄される者たちの思いに触れることがこの作品の作品としての価値。

  • 最初は、主人公の平群広成のキャラが薄すぎて入り込めず。率直な物言いが買われて抜擢されたはずなのに、上司の前でいいよどみ、まじめな性格なのか、その後も平板なものいいで、目立たず。大使のしたたかさ、秦朝元の軋轢を生みながらも事を前に進める才気などのほうが目をひく。ただ、物語が進むにつれ、特に、蘇州から出港したあたりから重い責任感を帯び。そこから漂流して、林邑、そこからふたたび蘇州、長安、洛陽、登州、渤海王府から日本に戻るまではまさに切った貼った、考えに考え抜いて、策をめぐらし、要路にわたりをつけ、なんとか帰ってくるまでには、手に汗にぎる。林邑で知らずにおかした誤りの一手が、直接ではないにせよ乗員100名余の命を奪ってしまった苦さをかかえつつも。そして愁眉は阿部仲麻呂の造形。あまのはら・・・のひたすら望郷をのぞむひよわなイメージがあったが、それをくつがえす、傲慢、力がある、そしてあくなき銭への欲求。ちょっと前に墓誌銘の発見で話題になった井真成の登場。吉備真備の冷徹さ、しかし持ち帰った書籍と学識が残した大きな足跡。周囲に登場する人物も魅力的で知りたくなってくる。/病床に伏せながら、土産を問われ、目の覚めるような春画を一巻買い求めてほしいと言う山上憶良/世の中には、話しかけないことのほうが、礼儀にかなっている場合もあるのである。(揚州組と新揚州組の軋轢)/「功も過もわれ一人にあり、我にしたがいたまえ」(平群広成)/ここでも無知は死を意味するのだ(林邑での襲撃を受けて)/あなたは、死んだ百名近い日本の遣唐使たちに対する責任があるとともに、私たちにも応分の責任があるはずだ。それを、勝手に死のうとは、身勝手にもほどがある。(安東)/

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著者プロフィール

奈良大学文学部教授。著書『万葉文化論』(ミネルヴァ書房・2019)、論文「讃酒歌十三首の示す死生観—『荘子』『列子』と分命論—」(『萬葉集研究』第36集・塙書房・2016)など。

「2019年 『万葉をヨム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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