真夏の航海 (講談社文庫)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062930512

作品紹介・あらすじ

かくも危うく、みずみずしい。安西水丸が熱烈に惚れ込み、自ら翻訳した若きカポーティ、まぼろしの傑作。まだ女ではなく、もう少女でもない。上流階級の娘グレディが、心をかき乱された初めての恋。華々しい’40年代のN.Y.社交界と、その陰りの中に生きる人々のコントラストをくっきり描く長編を初文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 一瞬で、気だるい昔のニューヨークにトリップする。安西水丸さんは、イラストレーターだと認識していたのだけれど、翻訳はとても鮮やかでわたしの知っているカポーティーそのもので、なんだかとても驚いた。とても多才な方だったのだなあ。
    一瞬で引き込まれて、どこか欠けた人物が心配で心配で、最後ははっと息をのむ。風景は美しく迫り、空気すら感じる。これこそが私のカポーティーであり、とても好きだ。

  • それにしても、刺激的でした。中盤からどんどんカポーティらしい言い回しや描写がほとばしりだして、読んでいると、ぐらぐら揺さぶられるんですよ。「そうくるのか……!!」というように感じる言葉たちを、浴びるように毎行毎行受け取る読書になっていって、強烈でした。でも、すべてが繊細なんですよねえ。内容は、17歳のセレブの少女グレディを主人公とするひと夏の人間模様です。メインは恋ですが、相手役や脇役たちのキャラクターに深みがあり、特に相手役のクライドの家庭事情が明かされる段になると、急に物語の陰影が濃くなります。カポーティは最初、いろいろためしつつ書き、中盤以降は物語を本気で、そして夢中になって深めていって横にも流れさせながら、そして文章自体での高級な遊戯も忘れずに没頭したのではないかなと思えました。

  • 思春期の若さと苦さ。セレブゴシップが好きな人には楽しいのかも。

  • 誰に焦点を当てるのか。大人でもなく子どもでもない、最も素晴らしくて危うい年齢の彼女たちは、身分や人々の中で着実に埋もれてゆく気がします。誰もが何かに苦悩しながら生きていて、疑問や問題を抱えている。何かを得るには犠牲が不可欠で、よくわからない感情に苛まれながら、時間だけが迫ってくる。本当の自由がわからないまま、グレディは若いままで、何も失いたくないのにそうはさせてくれない。悲しくはない終わりでした、この結末だからこそ。

  • カポーティの幻の長編。生前お蔵入りになっていた原稿を取っておいたカポーティが住んでいたマンションの管理人えらい。
    この物語はグレディとクライドという2人の男女の恋物語。
    カポーティらしくさりげない描写で身分の差が出ている。
    しかしまあ、一体終わりはどこだろう。どこへ向かったんだみんな。
    謎の疾走感を伴って小説が終結する。
    だけど妙な心地よさが残る不思議な話。

  • 2016年12月1日読了。富豪の娘グレディの恋と周囲の人々の刹那的な生活を描く。名前はよく聞く「トルーマン・カポーティ」の、これは長く未発表だった長編とのこと。1940年代の空気感、アメリカの若者たちが感じていたであろう自由な気分と閉塞感、などの一端は味わえた気もするが、自分にははまらなかった…読むべき年齢、というものもあるのかな?村上春樹がオススメするような、他の著作を読んでからトライすればまた感想も変わるのだろうか…。

  • カポーティが自ら葬っていた、若き日の作品。
    どうして発表しなかったのかてカポーティ贔屓の色眼鏡もあるかもだけど、充分な魅力のある小説だった。
    若者の愚かさと美しさ。
    ページから埃と雨の匂いが立ちのぼって来るようだった。
    叩き斬るようなラストも好み。
    是非また読み返したい。
    ただ…翻訳があまり私には合わなかった…。
    単語一語一語の選択はすごくいいのだけど(タイトルからしてね。ここは真夏だよね。ただ夏じゃないよね)、文になるとどうにもすっきり読めなくて、繰り返して読んだ箇所が幾つもあった。
    原文は未読だけども、後年の美文から考えて、多分未熟でもカポーティはそんな読みづらい文章じゃないと思うんだ…きっと…。
    表紙も、文庫で読んだけれども単行本の写真の方が、私は好みかな。

  • 舞台は1940年代のNY。
    上流階級育ちのグレディのひと夏の恋物語。
    恋人のクライドは、ブルックリンに住むユダヤ系の男性。
    身分違いの2人を阻むものが、この時代にはあったのか。

    1940年代といえば、日本は戦中戦後の混乱期だったのに、この作品にはそんな暗い影はない。
    これがアメリカ…

    洋物だから、登場人物の名前をなかなか覚えられないし、心の揺らぎもイマイチ理解できず、読み進めるのに苦労しました。
    でも、愛する人の住んでいる周辺の様子を知りたい気持ち、寝顔を見て心穏やかになるところは、いつの時代でもどこの国でも変わらないのだなと思いました。

  • かくも危うく、みずみずしい。安西水丸が熱烈に惚れ込み、自ら翻訳した若きカポーティ、まぼろしの傑作。まだ女ではなく、もう少女でもない、上流階級の娘グレディが、心をかき乱された初めての恋。華々しい'40年代のN.Y.社交界と、その陰りの中に生きる人々のコントラストをくっきり描く長編を初文庫化!

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