最果てアーケード (講談社文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 講談社 (2015年5月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062931021

最果てアーケード (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。

    そこは誰にも気づかれないまま、何かの拍子にできた世界の窪みのようなアーケード。
    自分を必要としてくれる人に巡りあう事を店主と一緒にずっと待ち続ける商品たち。そんな彼らの元に、愛するものを失った人々が色んな思いを抱えて訪れる。
    それを見守る配達係の「私」と犬のべべ。「私」にも色々ありそうで目が離せない。

    私も毎日30分だけその不思議な商店街を訪れた。静かで優しくて幸せだけど、迷子になったようにどこか不安で寂しい、どう説明すればいいのかわからないこの世界。起きているのに深い眠りの中にいるような毎日だった。

    本当にこの世界はあるのか?「私」のラストをどう捉えればいいの?誰かと語りたいような、自分の心にそっとしまっておきたいような、小川洋子さんの世界には毎回悶々とさせられる。

  • 誰にも見つけられることがない自分だけの秘めた約束.それらの想いに寄り添い丁寧に紡いでいる.決して汚されてはいけない,そんな宝物のような作品でした.
    以下あらすじ(背表紙より)
    使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石…。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。それを必要としているのが、たとえたった一人だとしても、その一人がたどり着くまで辛抱強く待ち続ける―。

  • レース屋さん、義眼屋さん、輪っか屋さん…
    最果てアーケードの店主たちと、そこに訪れるわけありのお客さんたち。
    主人公の生まれ育ったアーケードのひっそりとした懐かしい空気にひき込まれ、最終章で涙が出そうになった。

    どんなに時が流れても、悲しみを癒すことのできる静かな場所がここにはある。

  • ものがなしい。

    小川洋子の扱うモチーフらしく、義眼・勲章・レース・遺髪・ドアノブ……。
    これらが語ってくれる物語を予想するだけでも、ドキドキする。アーケードを舞台にした連作短編集。

    中でもお気に入りは、「百科事典少女」と「輪っか屋」、「ノブさん」かな。
    ライオンが守るドアノブの向こうの、密やかな窪み。
    すっぽりと包み込む心地良い闇に、泣き疲れて眠ってしまう情景がとても良い。

    うそのおはなしより、ほんとのおはなしが好きなRちゃんが出てくる百科事典少女も、上手く言葉では言えないのだけど百科事典のリアリティーに没頭する女の子という光景がチグハグで好きなのだ。

    けれど、連作短編集であるこの一冊は単なるモチーフ語りでは終わらない凄みがある。
    「最果て」を冠する、光と闇、生と死のあやふやが全編を通して側に迫ってくるのである。

    物語を行ったり来たりしながら、彼女の歩んだ時間軸を追い直してしまう。ものがなしい、けれど楽しみ方の豊富な一冊。

  • 世界でいちばん小さく、目立たないアーケード。
    誰が一体買うのだろう?という品物が、それをまさに必要としている人と出会うまでひそやかに静かにじっとたたずんでいる様子や、プライドをもって丁寧に大切に仕事をしている店主たちの姿が、つつましくも確かに描かれていてひきこまれる。
    そして、アーケードの配達係である「私」。いろいろな年代のときの「私」、「私」が経験するエピソード、それらはときにあたたかいけれど、ときに狂気も感じられてひゅっと背中が寒くなることも。
    小川洋子さんの作品は、舞台が外国なのか日本なのかが明らかにならず、なんとなく異国情緒を感じながらも懐かしいような不思議な感覚がする。

  • この本を読んで「ジャワマメジカ」に興味を持ち
    上野動物園に見に行きました。
    まっくらやみの中で暮らしていました。

  • 小川洋子作品の中で、『薬指の標本』をよく覚えている。本作も、そういう系統の本かと思い、手に取った。

    一言でいうと"喪失"の物語、だろうか。
    使用済みの絵葉書、義眼…誰が買うの?という品を扱う店ばかりが集まるアーケード。品を必要とする人以外には、忘れ去られてしまったかのような場所で、誰かの思い出を慈しみ、静かに生活する人々。

    品物に秘められた物語だけを各章で綴っていくような、そんな単純な作りではなくて、各章を重ねる中で、そのアーケードに暮らす人の息遣いが静かに聞こえてくるような作りになっているのがよい。

    "私"の飼い犬、べべがとても可愛らしい。
    そんなべべも、"私"が成長するにつれて年をとり、アーケードにならぶ品物と同じように、そこを訪れる人々、流れる時間をゆっくりと見守っている。

  • アーケードの店主たち。訪れる客。
    誰かの思いや誰かの気配がずっと
    この世界の片隅の窪みには満ちている。

    読み始めてなかばで
    誰も触れていないものの気配が濃くなり
    少しずつ私の心に
    哀切といったようなものが忍び込んできた。

    死と、それを受け止める生者の思い。
    生と、その世界を充たす死者の気配。

    分かち難いもの。別れ難いもの。
    たくさんの人たちの濃密な思いに
    私の心もまたこの世界を去り難かった。

    だが私は読み終えた。
    二度とあそこには戻れない。

    人さらいの時計はもう動かないのだから。

    胸をきゅーっと締め付けられるような
    そんな気配に満ちた
    ぼやけた輪郭の世界でした。

    小川洋子さん、さすがです。
    さらりとした狂気が
    人の世界にとけこんでいました。

  • 義眼屋、古着のレースだけを扱うお店、ドアノブだけを売るお店、、気付かれないような小さなアーケードに育った少女の目線で、不思議なお店、不思議なお客さんの物語が描かれている。ゆったりと暖かな空気感の中に、死の気配が濃厚に漂っている静かなお話たちは、とろりとした液体みたいに読み手を充たしてくれる、読んでいてとても幸せな小説だった。

    20〜30ページのお話が10個、続いて行くこの小説の
    なかでも「紙店シスター」が好き。

    「手紙」のもつ特別感や送り手の思い
    療養所の雑用係を続けるおじいさんに届く手紙
    「さあ、目を開けて。何も怖くないよ」

    ===以下気に入った部分、一部引用


    百冊ほどの本と魔法瓶に入ったホットレモネードが用意され、アーケードのお店の人レシートを見せれば誰でも好きなだけ利用できる仕組みになっていた。p39

    私はRちゃんの声が好きだった。それはこぬか雨のようにひっそりとして、落ち着きがあり、路面電車の音にも店主たちの「いらっしゃいませ」の声にも乱されず、ひたひたとアーケードの中を満たしてゆく。p47

    「大変?」
    「いや、そうでもない。もう四十年近くやってる仕事だから」
    「ずっとここで?」
    「そう、ずっと、ここで」
    「飽きない?」
    「今のところ、大丈夫みたいだ」p119

  • 心の奥に、誰にも見えないようにしまっていたものを引きずり出される感覚。

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最果てアーケード (講談社文庫)の作品紹介

ここは、世界でいちばん小さなアーケード。 愛するものを失った人々が想い出を買いにくる。 小川洋子が贈る、切なくも美しい物語。

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