最果てアーケード (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1820
感想 : 141
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062931021

作品紹介・あらすじ

ここは、世界でいちばん小さなアーケード。 愛するものを失った人々が想い出を買いにくる。 小川洋子が贈る、切なくも美しい物語。

感想・レビュー・書評

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  • とあるアーケードを軸にした短編集。それぞれの話が絡み合って短編集全体として一つの作品となっている。何かをテーマにした短編集は小川洋子さんのよくあるパターンだが、それぞれの話が関連し合うというのは意外と珍しいかも。こういう個別の話はそれぞれで完結するものの全体として大きな話が流れてる、というのは連続もののTVドラマとかでよくある手法と思うが、1話ずつの長さがちょっと読むのにちょうどいい分量なのもあり、TVドラマを見ているような趣もある。

    内容は小川洋子さん特有の現代のファンタジー。レースの切れ端、使われた絵葉書、義眼など、何だか美しくて儚い雰囲気がいい。特に以前読んだ『猫を抱いて象と泳ぐ』の空気感と似たイメージ、好きな人には堪らないと思う。また最後のエピソードもとても素敵。全体の儚さをまとめ上げるような役割で、これがこの作品全体の読後感を決定付けていると思う。

    意味だけではなく、文章そのものが生み出す空気感を堪能できる小川洋子さん好きなら必ず満足のいく作品だと思います。

  • 小川洋子はいつ読んでも小川洋子を感じられて安心する
    会いに行った先で幸せに過ごしていることを願います

  • 【なぜだかわからんがずっと鞄に入れておきたい本】

    なんだかわからない
    特別感動したわけでもない
    大好きな本になりました!てわけでもない。

    可笑しさとかさみしさとか嬉しさとか
    いろんなものがしっくりきて心が落ち着く。
    現実とひと続きの中にアーケードがあって
    でも絶対に存在しない感もある。

    どんなに悲しくたって本はどっかへ行ったりしないから
    そっと鞄の中身のレギュラーになったっていいじゃない。
    いつだって自分が求めればそこにいてくれる安心感を本に求めたっていいじゃない。

    読み終わって次の日とか次の次の日とか
    すぐじゃないいつか
    急にアーケードのことを思い出して泣きそう

  • 特殊で個性的な店が集まる世界で一番小さなアーケード。
    配達係の女の子の視点でアーケードの出来事が語られる。
    お客さんも個性的で面白く引き込まれる。
    微笑ましさと物哀しさが同居した著者ならではの世界を堪能する。

  • 『薬指の標本』っぽい感じがする。
    ある人にとってはどうでもいい、またある人にとっては大切なものたちを扱うお店が立ち並ぶアーケードのお話。
    2023/02/03 22:22

  • アーケード街大家の父親を亡くしたわたしが、お店を訪れるお客様と織り成す小さな物語。
    どこかもの悲しい雰囲気のなかに灯る小さな光、お店それぞれの味わいがありました。

    小川洋子さんの作品に漂う雰囲気は本当に独特。
    穏やかで静謐な世界観。

    レース屋、義眼屋、ドアノブ店、勲章店など、
    「一体こんなもの、誰が買うの?」
    という品を扱う店ばかりが集まってるアーケード。
    買いに来る人は少ないけど必要とする人がいて、そんな人のためにお店がある。

    お気に入りは、
    *衣装係さん
    *百貨辞典少女
    *紙店シスター

    小川さんの作品は、個人的にやっぱり静かな環境でゆったり落ち着いて読みたい。
    小川さんの文章表現がとても好き。
    やっぱり良いなぁ。

    アーケードの突き当たりの中庭で愛犬ベベと過ごす時間が愛おしい。
    店主だけじゃなく、配達屋さんの思いも胸に響くものがありました。
    小川ワールド堪能しました。

  • 『寡黙な死骸 みだらな弔い』以来に読む小川さんの短編集。
    レース、使用済みのはがき、勲章、義眼等一見役に立たなそうな品物を扱う店が連なるアーケードと、そこに住む住人達と買い物客のエピソードを一つずつ丁寧に拾い上げた連作は寂しく、ときに静かな狂気を孕んで紡がれている。
    どのお話も死や別れを絡むせいか、全体的な雰囲気が物悲しい。しかし、この連作の語り部である「私」はアーケードの大家の娘としてそこまで悲観的ではない。アーケードの配達係としてアルバイトをする彼女と、彼女の助手である犬のベベがかわいらしいエッセンスを仄暗い小説に加えている。
    個人的なお気に入りは最初の「衣装係さん」と「遺髪レース」だった。

  • (これを漫画原作にってのは無理があるでしょ…)(こなみ)

    こんなにも酒井駒子女史の装丁画が似合う小説もないな…
    小川先生お得意のリアルさと非現実のバランス感覚を保った幻想小説
    お父さんに会いに行って…しまったのかな…あの終わり方は…
    まさに小川洋子でござい、という連作短編みたいな長編小説だったな…。

  • 常に死が身近にありながらも、悲壮感はありません。もう一度丁寧に読み返したい作品です。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/682293

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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