天山の巫女ソニン 5 大地の翼 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062933445

作品紹介・あらすじ

半島を形作る三国の平和がついに崩れ去る……。ソニンとイウォルが暮らす<沙維>は<巨山>に狙われ、<江南>も争いに巻き込まれる。平和を望む王女・王子たちは、密かに行動を起こし、平和を取り戻そうと動く。少女・ソニンが最終的に選んだ道は? ついに物語が完結する!

感想・レビュー・書評

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  • これで一応本編は終わり。外伝も楽しみだなぁー。
    相変わらずイェラがイケメンすぎて、他の空気感!!←
    でも、最初の頃に比べて、イウォル王子、かっこ良くなりましたね。
    手も足も大事にしてください。そこに恋心はないのか!!←
    解説読んでて気づいたんですが、この本はファンタジーとしては、毛色が変わってるんですね。
    なにせ、ソニンは「落ちこぼれ」として、天山から…きつい言い方すれば、放逐されてるわけですから、よくあるファンタジーの…あなたは伝説の魔法使いなのです!生き残った男○子万歳!…とかではないですよね。
    ま、元気出せよ、人生天山ばかりじゃねぇよ、世界でたった12人しかなれない、エリート中のエリートな巫女さんじゃなかったとしても、君を必要としてくれる人はいるさ…家族とか、隣の家の男の子とか…嫁に欲しがってくれるかもじゃん?
    みたいな、肩叩いて語りかけたくなるような始まり方でしたよね。
    でも、最後は、彼女しかなしえなかったことがあった、巫女になるために、天の導きで、野に降りさせられた巫女なのかもしれない、なんて養母は語っています。
    いや、まて、私が見つけた居場所だからね!!運命なんか、冗談じゃないよ、これ以上翻弄されてたまるか、くそくらえだよ!!おこ、とソニンは言っていいと思いますが笑。
    でも、ソニンはそう思ってないんですよね。巫女であったことが、無駄だとは思わない。全て必要なことだった、全てがあって今の私があると言い切れる彼女は、ほんとに一本筋が通っていて、ハッとするほど美しい。だから、読者の心を打つ。
    この現実の世界では、選ばれた12人の巫女じゃなければ、もちろん王子でも姫でもない、ふつーの人たちが溢れてて、読者もその多くがそんな人なはず。
    かつては神童とか言われて、もてはやされたけど、それも今は昔…なんて人も腐るほどいるでしょう。
    でも、彼女みたいに胸を張って生きていけるだけの何かを、その失敗が失敗じゃなくなるくらい、あたしの人生大正解!と言えるだけものを見出せる人は、どれくらいいるでしょう。
    例えば国を救わなくても、街角の友人との交流の中でも、ソニンはそれをちゃんと見つけているのです。
    そんな姿にとても勇気付けられるし、尊敬します。元気をもらって、また現実に戻っていける。これはそんな本です。

  • さて、いよいよ最終巻に入る。
    この間、イェラ王女は江南へ3度目の訪問を果たし、巨山と江南は急速に接近。沙維だけが蚊帳の外という状況の中、遂にイェラ王女が沙維へ訪れることになるという発端。
    そして巨山の侵攻から収束までスピーディーで怒涛の展開は、あっという間に読み終えた(こんなに面白いのに、勿体な~い)

    うぁ~、もぉ~、イェラ王女、かっこいい!!!


    蛇足ながら…。
    こういうことを語られるのは作者として本意ではないかもしれないが、2巻のミナ王妃への忖度の話やら3巻の北天に存在した星<朱烏>を無かったものにした話などには、どうしてもどこかの国の宰相を思わずにいられなかった。
    4巻では教育について『この国には貧しい子どもを拾い上げる制度がほとんどない』とあり、こうしたことも含めて、2020年の今を予見して書いたわけではないだろうから、逆に作者の為政者に対する普遍的な見方について唸らされるところであった。

  • 半島を形作る三国の平和がついに崩れ去る……。ソニンとイウォルが暮らす<沙維>は<巨山>に狙われ、<江南>も争いに巻き込まれる。平和を望む王女・王子たちは、密かに行動を起こし、平和を取り戻そうと動く。少女・ソニンが最終的に選んだ道は? ついに物語が完結する!

  • まず、夢見の力というのが限定的な力なのがちょうどいいものでした。未来を見通すのではなく、夢で魂を飛ばしてある場所のことを視る。ただそれだけなのです。でも、それはどういう状態だったのか、何がおこっていたのか、場所はどこなのか。というのを知識でもって判断し伝えるということを巫女は行っているというとこです。
    超越した力ではありますが、己の知識がなければただ無意味な力であり、賢くあるための教育と欲を抑えるためのルールが課されているがよかった。
    そして、その夢見そのものができないことでただ人に戻るのですが、ソニンは賢かった。そして欲がないソニンがだんだんと人の世の嫉妬や羨望、悪い心を知りつつも、周りの人に恵まれてまっすぐ成長していくのがさっぱりとしてよかったです。
    わかりやすく対照的なキャラとしてその知識を濫用したり、ふてくされる人がいたのがそれを顕著に感じるエピソードとしてありました。
    はてしない物語と比べてしまって申し訳ないんだけれど、主人公が子供ゆえの傲慢さ愚かさや英雄になったが故の無敵感を得てそれから壁があって、その凝り固まった厚顔無恥な性格が清廉(といわずとも常識的)になっていくという物語が苦手です。大体が読んでて腹立たしく、もっと周りの意見を聞けよと思うので。その点、ソニンでは王子がその役割でしたが、主人公は欲がない子で"くもりなきまなこ"を持ちうる聡い子だったので、好ましい!と思う所以だったかと思います。

  • 第一巻「黄金の燕」から第五巻まで読了。
    児童文学ですが、とても面白く示唆に富んだ内容だと思います。
    落ちこぼれ巫女ソニンの天山からの下山から15歳までの成長物語ですが、三つの国の駆け引きや戦争、為政者の姿勢、人々の動向など様々な問題が巫女として修業したことで得てしまったソニンのちょっとずれた視点をとおして語られます。
    人にない能力があったはずの少女が普通の人として生きなおす過程は、むつかしいはずですが、とても明るく、素直です。その理由や葛藤の少なさも、ある意味この物語のポイントであり面白さだと感じました。
    また、それぞれの国の設定や距離感、人物像、産物や人々の習慣なども児童文学として考え抜かれているように思います。
    もちろん大人の読み物として考えると甘さや粗さはありますし、物足りなさも感じられます。けれどそんなことは些細なこと。人と政治の関係をこれほど児童文学で考えさせる作品は少ないのではと感じますす。「七割」の法則に甘んじるのか、自分の考えで動く三割の道を行くのか、人としての生き方を問うラストまで一気に読みました。文章もわかりやすく読みやすく、図書館の子供の本棚、侮れませんよね。初版の挿絵や装丁も素敵です。ぜひ全巻を最後まで読まれることをお勧めいたします。

  • 2022.2.26
    この最終巻の盛り上がりは凄かった!
    3人の王子、王女の思惑と積み重ねが周りを動かし、変化させて…
    とても良かった!!
    自分の推しはイェラ王女。
    家族に敵がいる過酷な環境でも自分の芯を貫き通す実行力と、
    自分の信頼できる人を信じる力に痺れました!
    読みやすいけど、児童文学には収まらない、
    また今のロシアのウクライナ侵攻の状況で読めた事でたくさん考えさせられました。
    戦争辞めようよ。。

  • 図書館で。シリーズ最終巻なのかな。
    段々とソニンの影が薄くなったなぁと。話が個人のレベルから国家の外交問題や内政問題に発展してきたので、いつまでも侍女が大活躍してお家の一大事をうまく収めるってのも無理あるしな、とそれはそれで納得なのですが。そうすると王子に今後必要なのは国を治めていく上でのアドバイザーやよき相談者だろうからソニンもお役御免となるのかなぁと思ったり。

    民があって国がある、でも国の方向性を決めるのは結局は中枢に居る人間なんだよなぁという辺りで、結局この三国がどうなっていくのかという点にあまり展望が無かったのがちょっと残念だったような。まぁ現実だって志はあれど前に進むには時間がかかるので仕方ない事なんだろうけど。

    個人的には海の王子と山の狼王女が結婚して手を組んだら面白かっただろうなとは思いました。けどそうしたら主人公の国がないがしろになってしまうのか。ううむ。

  • 王や権力や富を持つ老人たちは戦を喜び巨山と沙維は戦を始めた。
    しかし厭戦派だった王女らが世論に与えた影響、思うようにいかない戦況で戦は比較的少ない規模でおさまった。
    三国の王子や王女らが持つ柔軟な思考、挫けない心根に永い平和が現実味を帯びた。
    平和が一番。

  • 『天山の巫女ソニン』シリーズ最終巻。巨山国と江南国の同盟、巨山から沙維国への侵攻、そして三国の和平までが描かれ、未来への仄かな希望を見せて物は閉じる。

    一番大切なのは「夢見であれ現実であれ、自分の目でしっかり観察することと、自分で考えることです。それはどこの国であろうと、いかなる世界であろうと変わりません」と言い切るソニンの姿は眩しく、そしてこの言葉がシリーズの底に流れていたテーマであることを再確認させられた。

    柔らかいながら無駄が削ぎ落とされた文体と、さり気ないながら緻密に書き込まれた社会状況は、一見地味にも見えて、しかし説得力をもって響く。もっとこの世界のことを見ていたい、と思わされるシリーズだった。

  • 本編終わり。面白かったー!
    ファンタジーだけど妙にリアリティもあって子どもから大人まで広く受け入れられている事に納得しました。
    外伝があるようなのでそちらも楽しみです。

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著者プロフィール

1969年、福島県南相馬市生まれ。2002年、「橋の上の少年」で第36回北日本文学賞受賞。2005年、「ソニンと燕になった王子」で第46回講談社児童文学新人賞を受賞し、改題・加筆した『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』でデビュー。同作品で第40回日本児童文学者協会新人賞を受賞した。「天山の巫女ソニン」シリーズ以外の著書に、『チポロ』3部作(講談社)、『羽州ものがたり』(角川書店)、『女王さまがおまちかね』(ポプラ社)、『アトリと五人の王』(中央公論新社)、『星天の兄弟』(東京創元社)がある。ペンネームは、子どものころ好きだった、雪を呼ぶといわれる初冬に飛ぶ虫の名からつけた。


「2023年 『YA!ジェンダーフリーアンソロジー TRUE Colors』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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