殺人出産 (講談社文庫)

  • 851人登録
  • 3.42評価
    • (22)
    • (98)
    • (88)
    • (27)
    • (7)
  • 118レビュー
著者 : 村田沙耶香
  • 講談社 (2016年8月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934770

殺人出産 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 芥川賞の「コンビニ人間」が面白かったので、文庫化した「殺人出産」を読んでみた。ずっと気にはなっていた本。だって殺人出産だよ…! 殺人出産。すごい言葉。
    舞台は、産み人になって10人子どもを産むと、1人、誰でも殺すことができる制度がある、未来。産み人は、男の人でもなれる。人工子宮なるものを埋め込んで産む。
    産み人を崇める人、崇めるほどじゃないけど、すごいよねと肯定する人、自然じゃないと批判する人、昔の正しい倫理に戻るべきだと嫌悪する人。立場はそれぞれで、一体「普通」とか「正義」ってなんだろう、と考えさせられた。それから、出産てなんだろう、とも。
    さっさっと読めてしまうんだけど、常に次の一行を読むのが怖かった。わたしを傷つける言葉が待っているような気がした。

  • 10人産んだら1人殺せる社会という設定の表題作は、SF、ディストピア小説と割り切って読んだのでとても面白かった。もしそういうルールのある世界に自分がいたなら、どうするだろうかと考えさせられてしまう。

    瞬間的に人を殺したいと思うことは誰にでもあるだろうし、もちろん私もあります。電車でぶつかられただけでも「死ね」って思うし、夜中にドスドス騒音たてるマンションの上階の住人にもいつも「死ね」って思ってるし、私より無能なのに男で年上だというだけで私より高い給料もらってる上司にも日々「死ね」って思ってるし、社員はボーナスも出ないのに出張と称して会社のお金で海外旅行に毎年でかける社長夫婦のことも「100回くらい死ね。そして地獄に堕ちろ」って思ってる。

    ただ「こんなやつ死んじゃえ」って頭の中だけで思うことと「だから私が手をくだす」と実際に実行に移すことには深くて長い川があってですね、冷静に考えて、そんなどうでもいい相手を殺して刑務所入るくらいなら、引っ越す、転職する、などの選択肢はいくらもあるわけだし。だからそういう殺意って長続きしない。10人産んだら一人殺していいよ、って言われても、かかる時間は最低でも10年、その10年のうちにもうどうでもよくなるかもしれないし、自分が手をくだすまでもなく相手が勝手に死ぬなり不幸になるなりするかもしれないし、何十年もかけて10人も生む大変さ味わってまで殺したい相手は流石にいない。だから一番共感できたのは主人公の年下の同僚チカちゃんでした。

    しかしこのルール、つまり自分も誰かの強烈な恨みをどこかで買っていれば、自分が殺される対象になる可能性もあるわけで、そうなると結構、いつも良い人ぶっちゃうかもなあ。作中で、主人公をねちねち苛める職場の上司が出てきますが、こういう人はそういうことばかりしてるといつか自分が殺されるかもという危機感は持たないのだろうか。

    良いなと思ったのは人工子宮を移植すれば男性も出産を出来るようになっている点。女性だけの特権じゃなく、男性も平等。産みの苦しみも平等なのはいい。ディストピアものの常として、このまま少子高齢化が進めば、ありえない未来じゃないと思えるところが恐ろしい。殺人は別としても生むことだけに特化した層というのは作られてもおかしくない気はする。そしてそう思う自分が正しいかどうかわからないけど、こういう世界もけして悪いばかりじゃないって思ってしまう自分もいたりして、早紀子という女性のふりかざす正義に、なぜか不快感を覚えてしまう。主人公も言っていたけれど、極端な信念は、方向性は違ってもやはり狂気の一種だと感じます。


    ※収録作品
    「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」「余命」

  • 今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。

  • 10人産んだら、1人殺せる。「産み人」としての「正しい」手続きをとらずに殺人を犯せば、女は埋め込んだ避妊器具を外され、男は人工子宮を埋め込まれ、一生牢獄の中で命を生み続ける、「産刑」という最も重い罰が下される。命を奪うものが命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。
    これだけでもうひぃ…ってなる。
    表題作他3篇。どれも世界の変化のなかで自分だけが異物になった気分。
    目が離せない作家さん。

  • 読了日2016/11

  • ちょっと無理やりなとこもあるけど、すごい世界。どうなるのか、どんどん次を読みたくなる。

    殺人出産
     10人産んだら1人殺せる世界。男性も人工子宮を着ければ産むことができる。

    トリプル
     三人で付き合う。カップルだけでなくトリプルも若者の中で広がった世界。

    清潔な結婚
    「性」を可能な限り排除した結婚。子供が欲しくなり、クリーン・ブリードに申し込む。

    余命
     蘇生が可能となり、死は自分で選ぶ世界。

  • 面白かったです。今の世の中では到底受け入れられないだろう倫理観の世界の短編集でしたが、わたしは好きでした。物語の中で、この世の中は間違ってる、と正常を押し付ける考え方の人物たちの方が、わたしは気持ち悪く感じました。今の正常も、昔からしたら異常なことなのかもしれなくて、正常って何だろう?ということを考えさせられます。でも、村田さんの想像はいつも斜め上を行っていて、興味深いです。きっと彼女の作品の世界を受け入れられない人も多いだろうなとは思いますが。どのお話も、わたしの狭い価値観が揺さぶられて好きなのですが、「余命」のような世界は救いのような気がする、と感じました。

  • 「コンビニ人間」がおもしろかったので、村田さやかさん2作目。
    殺人はダメだとか、セックスと妊娠はセットとか、付き合うのは2人じゃないといけないとか、世の中の当たり前の正義が、当たり前じゃなくなった未来の世界を描いていて、「普通ってなんだ」「正義ってなんだ」と、固定概念を疑わせる内容でとてもおもしろかった。
    設定としてはぶっ飛んでても、題材が身近なのでとてもリアル。確かにこんな世の中になるかも、とちょっと思わせるのがすごい。村田さん読んでいこう。

  • いのちをこの世に送り出す行為である「出産」と
    いのちをこの世から消し去る行為である「殺人」
    相反する言葉がくっついたタイトルに惹かれて購入。
    先が気になりすぎて、ページをめくる手が早まったのはこの作品が初めてではないけれど、
    何とも言えぬハラハラ感、不安と後味の悪さはこれまで読んで来た作品の中でダントツのトップ。

  • 斬新な視点で正しいは間違いかもしれないんじゃないかと考えさせられた。理屈が通っていて読みつつ確かにこれでもいいかもしれないと作者の考えに引っ張られそうになった。生きていて、私にはとても思いつかない考えだった。ミステリーでもなく何ていう本と呼べばいいのだろう。2017.2.19

全118件中 1 - 10件を表示

村田沙耶香の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
朝井 リョウ
宮下 奈都
ピエール ルメー...
塩田 武士
有効な右矢印 無効な右矢印

殺人出産 (講談社文庫)に関連する談話室の質問

殺人出産 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

殺人出産 (講談社文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

殺人出産 (講談社文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

殺人出産 (講談社文庫)の作品紹介

祝!芥川賞受賞
村田沙耶香 最大の衝撃作はコレだ!
10人産んだら、1人殺せる。「殺意」が命を産み出す衝動となる。

今から100年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」によって人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日突然変化する。表題作、他三篇。

殺人出産 (講談社文庫)の単行本

殺人出産 (講談社文庫)のKindle版

ツイートする