殺人出産 (講談社文庫)

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著者 : 村田沙耶香
  • 講談社 (2016年8月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934770

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殺人出産 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 芥川賞の「コンビニ人間」が面白かったので、文庫化した「殺人出産」を読んでみた。ずっと気にはなっていた本。だって殺人出産だよ…! 殺人出産。すごい言葉。
    舞台は、産み人になって10人子どもを産むと、1人、誰でも殺すことができる制度がある、未来。産み人は、男の人でもなれる。人工子宮なるものを埋め込んで産む。
    産み人を崇める人、崇めるほどじゃないけど、すごいよねと肯定する人、自然じゃないと批判する人、昔の正しい倫理に戻るべきだと嫌悪する人。立場はそれぞれで、一体「普通」とか「正義」ってなんだろう、と考えさせられた。それから、出産てなんだろう、とも。
    さっさっと読めてしまうんだけど、常に次の一行を読むのが怖かった。わたしを傷つける言葉が待っているような気がした。

  • 10人産んだら1人殺せる社会という設定の表題作は、SF、ディストピア小説と割り切って読んだのでとても面白かった。もしそういうルールのある世界に自分がいたなら、どうするだろうかと考えさせられてしまう。

    瞬間的に人を殺したいと思うことは誰にでもあるだろうし、もちろん私もあります。電車でぶつかられただけでも「死ね」って思うし、夜中にドスドス騒音たてるマンションの上階の住人にもいつも「死ね」って思ってるし、私より無能なのに男で年上だというだけで私より高い給料もらってる上司にも日々「死ね」って思ってるし、社員はボーナスも出ないのに出張と称して会社のお金で海外旅行に毎年でかける社長夫婦のことも「100回くらい死ね。そして地獄に堕ちろ」って思ってる。

    ただ「こんなやつ死んじゃえ」って頭の中だけで思うことと「だから私が手をくだす」と実際に実行に移すことには深くて長い川があってですね、冷静に考えて、そんなどうでもいい相手を殺して刑務所入るくらいなら、引っ越す、転職する、などの選択肢はいくらもあるわけだし。だからそういう殺意って長続きしない。10人産んだら一人殺していいよ、って言われても、かかる時間は最低でも10年、その10年のうちにもうどうでもよくなるかもしれないし、自分が手をくだすまでもなく相手が勝手に死ぬなり不幸になるなりするかもしれないし、何十年もかけて10人も生む大変さ味わってまで殺したい相手は流石にいない。だから一番共感できたのは主人公の年下の同僚チカちゃんでした。

    しかしこのルール、つまり自分も誰かの強烈な恨みをどこかで買っていれば、自分が殺される対象になる可能性もあるわけで、そうなると結構、いつも良い人ぶっちゃうかもなあ。作中で、主人公をねちねち苛める職場の上司が出てきますが、こういう人はそういうことばかりしてるといつか自分が殺されるかもという危機感は持たないのだろうか。

    良いなと思ったのは人工子宮を移植すれば男性も出産を出来るようになっている点。女性だけの特権じゃなく、男性も平等。産みの苦しみも平等なのはいい。ディストピアものの常として、このまま少子高齢化が進めば、ありえない未来じゃないと思えるところが恐ろしい。殺人は別としても生むことだけに特化した層というのは作られてもおかしくない気はする。そしてそう思う自分が正しいかどうかわからないけど、こういう世界もけして悪いばかりじゃないって思ってしまう自分もいたりして、早紀子という女性のふりかざす正義に、なぜか不快感を覚えてしまう。主人公も言っていたけれど、極端な信念は、方向性は違ってもやはり狂気の一種だと感じます。


    ※収録作品
    「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」「余命」

  • 今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。

  • 10人産んだら、1人殺せる。「産み人」としての「正しい」手続きをとらずに殺人を犯せば、女は埋め込んだ避妊器具を外され、男は人工子宮を埋め込まれ、一生牢獄の中で命を生み続ける、「産刑」という最も重い罰が下される。命を奪うものが命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。
    これだけでもうひぃ…ってなる。
    表題作他3篇。どれも世界の変化のなかで自分だけが異物になった気分。
    目が離せない作家さん。

  • いのちをこの世に送り出す行為である「出産」と
    いのちをこの世から消し去る行為である「殺人」
    相反する言葉がくっついたタイトルに惹かれて購入。
    先が気になりすぎて、ページをめくる手が早まったのはこの作品が初めてではないけれど、
    何とも言えぬハラハラ感、不安と後味の悪さはこれまで読んで来た作品の中でダントツのトップ。

  • 斬新な視点で正しいは間違いかもしれないんじゃないかと考えさせられた。理屈が通っていて読みつつ確かにこれでもいいかもしれないと作者の考えに引っ張られそうになった。生きていて、私にはとても思いつかない考えだった。ミステリーでもなく何ていう本と呼べばいいのだろう。2017.2.19

  • 奇抜なお話。
    いやいや、違うだろということが
    当たり前と化した社会のお話。

    多数派と少数派。
    多数派の意見で成り立つ社会。
    多数派の意見で価値観が決まる。

    ん?もしかして。

    いま「いいこと」「当たり前」とされている事柄はもしかしたら間違ってるのかもしれない。



    生と死という極端なテーマで書かれているけれど。
    恋愛とか生き方とか、いま「いいこと」「当たり前」とされてること、本当にそうなのか?って考えさせられるお話だった。

  • 星新一の小説をサイエンス・フィクション(空想科学)というなら、この小説はモラル・フィクション(空想倫理)といった感じだろうか。

    共感できるかは別として、とても興味深い世界観だと思う。

    ”清潔な結婚”の「性的な欲求を満たしてくれる相手が、人生における最愛のパートナーになるとは限らないし、その逆もまたしかり」的なフレーズには、なかなか考えさせられた。

  • 世界観がぶっ飛んでる。
    力のある作家さんなんだろうなというのは、分かりましたが…
    正直最後の短編以外、読後感が良い話ではないと思います。

    清潔な結婚のラストは、何を暗示してたのかがよくわからなくてモヤモヤしました。

    母親と子供が会話してるシーンを目撃した旦那は、何で吐いたの?
    何かを象徴してるんだろうと思ったんだけど、あのシーンをきっかけに吐いたことが何故なのかがよくわかりません。
    母と子の姿を見て、不自然な方法で子供を授かろうとしてる行為に対して嫌悪感が出た?
    旦那が赤ちゃんプレイ好きなマザコン男ぽいので、自分が親になることへの拒絶反応?

    うーーん……もやもやする…。

  • やっぱり、村田沙耶香はこれくらいぶっ飛んでる方がいいな。

    全編通して、気づかされることが多い。
    多分普通に過ごしていると持たない疑問を、筆者は持つことができる。それが、村田沙耶香の純粋さだと思う。
    読むまでそんなこと想像すら出来なかった自分の、なんと俗世間に汚染された人物であることか!

    星4つけたけど、正直4.5といったところ。
    でも、もっといけると思う。
    次回作も期待。

  • 「殺人出産」
    人を殺したければ、10人産めば良いという世界。
    読み終わった率直な感想としては「何これ?」という不可解さ。でも何か伝わってくる、命の尊さみたいなもの。
    子どもをつくる行為も、人を殺す行為も、命を操っているという観点においては同じことなのかもしれない。産み人は、それをエゴのためではなく人類のために行っている。
    美しい世界だと思いました。
    「トリプル」
    三人で恋人同士になるという世界。二股とかではなく、本当に三人でキスしたりセックスする場面は、新しいなぁと思って読みました。一対一じゃなくて、三人で付き合うことで、秩序とかが守られるのかもしれない。それはそれで良いと思うけど、セックスだけは二人でしたいなぁと思いました(笑)とにかく新しいですね。あとお母さんとの言い合いで殴りすぎw
    「清潔な結婚」
    タイトル通り清潔な結婚ゆえ性行為のない夫婦が子どもを望んだ場合にどうするか。性的対象の相手と結婚として適した相手が一致するとは限らないという問題を描いた小説。その問題には共感できる…けど、極めすぎていておもしろかったwてゆうかラスト、夫どうした?やっぱ嫌悪感?
    「余命」
    これは…すごいな。
    医療が発達して死がなくなった世界では自分で死ぬ準備をしないといけない。「死」がすごく軽い感じで描かれているけど、世界から「死」がなくなったら、そんなものかもしれません。

  • 10人産んだら1人殺していい、という「殺人出産」ほか3編。

    人口の減少に歯止めをかけるための究極の策として制定されたという、恐ろしいシステム。逆に、それ以外の殺人を犯した者は、男女を問わず一生牢獄の中で子どもを産み続ける(男は人工子宮を埋め込まれて)という「産刑」に処せられる。
    命を奪った者は、命を産み出す刑を受けるというわけ。なんともおぞましい。
    さらに気分が悪くなるのは、主人公の姉が10人の出産を決意するのだが、その理由が殺したいほど憎む相手がいるのではなく、単なる殺人願望であるということ。狂った世界をベースに、命を奪うことに快楽を感じるというさらなる狂気が重なっていく。

    性や出産に対しての極端な設定は、先に読んだ『消滅世界』と似通っているが、そちらは夫婦や親子、家族など、内面的な要素について考えさせられるものだった。が、本作はよりグロテスクで、率直なところ生理的についていけない。
    発想はユニークだが、「トリプル」「清潔な結婚」も似たような設定で、この手のものはもうお腹いっぱい。別の世界を読みたい。

    ラストの短編「余命」はおもしろかった。
    医療技術の発達により、この世から「死」がなくなり、人々はセンスのいい死に方を悩むようになる。星新一のショートショートを思わせる、近未来を皮肉まじりにさらりと描いたところがよかった。

  • 【ネタバレ含】女性版三崎亜記って印象。
    世にも奇妙な物語が好みそうな。
    そして、私も好きな作風だなー。

    携帯電話がなかったあの頃、街中には電話ボックスがあふれていた。
    お見合が主流だったあの頃、妙齢になると自然と結婚していた。

    街の中に電話があるなんて便利ー
    婚活しなくていいなんて羨ましー
    sexで妊娠するなんてナチュラルー
    勝手に死が訪れるなんて楽よねー

    たぶん、同じだ。

    私たちにとっては今が「常識」であり、信じて疑わない。
    こうして少しずつ、世界は変容している。

    殺人が容認される世の中だろうと、
    トリプルで付き合おうと、
    結婚がプラトニックだろうと、
    自ら死ななければならなくなろうと、

    自分の中の正義を見極められる人でありたい。
    自らの決断と他人の決断に寛容になれる人でありたい。

    村田さんは想像していたよりもずっと自分好みの作風で、コンビニ人間への期待が高まるなぁ。

  • 常識や当たり前に対する挑戦だと思う。私も疑う姿勢を大切にしたい。

  • 芥川賞のコンビニ人間が読みたくて、予習として。「授乳」よりは読みやすかった。
    こういう、もしもの世界の話は割と好き。

  • 面白かった。常識を覆すような設定の短編4話。作者は頭が柔らかいなあ。

  • 衝撃的な傑作だ。
    常識が揺さぶられる稀有な体験をした。
    昨日までの常識は、明日の非常識となる。
    これまでも戦時下であれば、今の常識では
    測れない世界があった。
    大量虐殺なんかは、この範疇に当てはまるだろう。
    正義は時代によって変化する。
    よって、この小説の世界もあり得るんだと思う。

    生き物は入れ替わりながら、集団だけが存在するのだから。

  • 殺人出産は、感覚を揺さぶられたのだけど
    他の話の印象はない。

  • コンビニ人間より、こっちのほうがぐんぐん読めた。あっという間に読んだ。
    村田沙耶香がかく世界は、異常かもしれないけど、変なりに筋はちゃんと通っていて、妙に納得させられる。関係ないけどブラマヨの吉田の吉田論に通ずるものがあるなぁと思った。
    そして気持ち悪さも相変わらずで、話は面白くて、先が気になるけど気持ち悪いところを読むのが辛い。

  • 初めての村田沙耶香。昨年芥川賞を受賞した「コンビニ人間」を読みたかったが、古本の値段も高いのでもう少し待つことにした。渋谷のブックオフで彼女の文庫4冊で1000円ほど。コンビニ人間の古本がこんな感じの値段なので、待つ間に村田沙耶香の勉強と思い読み始めた。

    人文系界隈での人間論、社会論をよくとらえた感じの一冊。「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」「余名」の4作品が納められている。表題作だけ中編でそれ以外は短編。4作に共通しているテーマは、「作為の倫理」といったところだろうか。すべての作品が、現代の倫理観の逆転を描いている。殺人、結婚、恋愛、死。大体こんなところに収まると思うが、どれも人の人生と生命に関り、強い倫理観と結びついた概念である。

    まず恋愛と結婚が乖離した社会が根底である。これは現代にもその感覚は強くなっているだろう。作品の中では恋愛と結婚を結びつけるなんてナンセンス、といった常識がある。その結果、出生率が極端に落ち込み人口減少が著しくなった。それの対応として政府が「殺人出産」の制度を作る。10人を産んだ人は願う一人の人を殺す権利が与えられる。この殺人権は厳粛に公的な保証がされているし、道徳観から見ても尊ばれるものとして位置づけられる。それだけの命を生み出した「産み人」と、その産み人になるほどの決意を与える「殺意」は正しいものとして、一種神々しいものとして描かれている。

    他の三作については説明がつかれてしまったが、カップルでの恋愛を異常なものとみるようになった若者たちの三人での恋愛を描いた「トリプル」。「清潔な結婚」は現代とそこまで離れた未来ではないようだが、結婚のあり方が多様になった時代の恋愛と性、結婚を描いている。「余名」は4ページほどの短編だが、医療が発達し死ぬことがなくなった時代において、死を選ぶことを短く描いている。

    読み終わった直後は、倫理観は人間が作ったもので、「本来」とか「伝統」みたいなものはないんだっていうことを著者が言いたいのかと思ったが、ここまで書いていると、行き過ぎた価値観の多元化に対する警鐘の色の方が強いんじゃないかと感じ始めた。もう少し彼女の作品を読んでからでないと判断できないが。


    17.7.3

  • その世界にぐぅっとひきこまれる一冊。価値観とか倫理観とかというのは、いろいろ変わっていくものだってことは知っているつもりでも、恐ろしさを感じずにはいられなかった。それはやはり私も今の社会の中にどっぷり浸かっているからだし、それは幸せなことのように思えてしまうのが不思議。初めて村田作品を読んだが、衝撃的だった。物語の世界観にはちょっとした嫌悪感はあるのだけど、そう思えるのもこの世界に引き込まれたからである。作家としてとても、素晴らしいと思う。

  • 生や死って何だろうかと考えさせられる。価値観が変わってしまった世界を作り、性の在り方、産むこと、死ぬこと、殺すことをこれまでの常識から切り離して考えさせてくれる、良い本でした。

  • 全く予想しなかった話の構成。近未来なのか、仮想なのか。
    でも、もし私が実行するならば誰にするだろうか、とちょっと考えてしまった。

  • いまの現実の世界ではなくて、近未来なのか架空の世界を描いている、そういう所は星新一臭がした。星新一は好きだけど、この本はそれよりちょっと人間味があって怖い。
    そして設定などかなり細部まで掘り込んでいるので読んでいると物語の世界にスッと入って行ける。

  • あぁ、私はここまでは想像できなかった。と思うことで、自分は普通じゃないんじゃないか、という不安を払拭できる本。
    でも普通に、完成された世界観に感動する。
    常識ってなんだ。

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