殺人出産 (講談社文庫)

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著者 : 村田沙耶香
  • 講談社 (2016年8月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934770

殺人出産 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 純文学と呼ばれるものを読むときは、「常識を疑う」「新しい価値観の提示」ということを漠然と念頭に置いて読んでいる。
    その点で、村田さんの作品はいつも、予想の上を行ってくれる。
    10人生んだら一人殺せるシステムによって人口を保つ世界。異常、と言ってしまいそうになるが、この世界の人々は昔の状態を「異常」という。この世界ではこの世界なりの倫理や生命に対する畏敬があり、秩序を持って成り立っている。それに比べたら、綻びを隠しきれなくなった今の世界の方が、異常なのかもしれない。
    正常とは、常識とは、生命とは。読後も考えさせられた。

  • バイト仲間の子に勧められて読みました。タイトルからしてどうなんだろうと嫌煙していたのですが、読んでみたら現代のタブーとされる生死、倫理観について面白い切り口で書いてあって興味深かったです。
    とてもわかりやすく倫理的なことが書いてあるので、表面上は毒が強く感じられますが、すぐに作者が伝えたい本質が読み取れるのが素晴らしいです。表題作の殺人出産や次に収録されているトリプルなんかは道徳の教材として若い人達と討論してみたいなと思いました。

  • 『コンビニ人間』に出てくる「ズレた人」がおかしくてこちらも読んでみた。

    四編とも「ズレ」を通り越して「異常」が「正常」になった世界がテーマのようです。

    時折可笑しみも感じるのだけど、優しさが無くて不快感とグロテスクさの後味が嫌だ。

    『清潔な結婚』はユーモアを感じたのでこれだけ好きです。

  • 覆られた生、 数の穴、潔癖すぎた愛、手間のかかる死

  • 10人産んだら1人殺せる世界を描く『殺人出産』。
    常識にとらわれない世界の設定だからこそ、今の常識とされる世界で感じる価値観や感情を客観視できるなあと思う。
    ほかに、カップルじゃなくて3人で付き合うのがマジョリティとされる世界を描く『トリプル』、性を切り離した結婚生活が描かれる『清潔な結婚』、人間が不死を手に入れた結果自ら死を選択する『余命』が収録されている。

  • 斬新な視点で正しいは間違いかもしれないんじゃないかと考えさせられた。理屈が通っていて読みつつ確かにこれでもいいかもしれないと作者の考えに引っ張られそうになった。生きていて、私にはとても思いつかない考えだった。ミステリーでもなく何ていう本と呼べばいいのだろう。2017.2.19

  • すごい世界観。
    狂った世界だとは思いつつ、もしかしたら時代が違えば今の方が狂っていいるのかも…なんて思いつつ読んだ。
    日本もそう遠くない昔、国のために死ぬ事が名誉だった訳だし。怖いなぁ

  • 奇抜なお話。
    いやいや、違うだろということが
    当たり前と化した社会のお話。

    多数派と少数派。
    多数派の意見で成り立つ社会。
    多数派の意見で価値観が決まる。

    ん?もしかして。

    いま「いいこと」「当たり前」とされている事柄はもしかしたら間違ってるのかもしれない。



    生と死という極端なテーマで書かれているけれど。
    恋愛とか生き方とか、いま「いいこと」「当たり前」とされてること、本当にそうなのか?って考えさせられるお話だった。

  • いろいろな家族のあり方を、恋人のあり方を、グロテスクに思考実験した書。面白かった!

  • コンビニ人間に、入る前に薄かったこちらを入門書にしてみた。同世代の作家には思えない、若い感覚な気がした。

  • あたらしい常識を見た。この世は既成観念が何なのか次第なのか。

  • 『コンビニ人間』がめっぽう面白かったのでこちらも読んだ。極端な設定で世界を相対化する作品は苦手なのだが、村田作品は登場人物の感情が切実なのと、自身の作品内の価値観からも距離を取っているので気にならず読めた。『トリプル」の母親が「3P」を連呼する謎のユーモア感覚も良い。

  • 読んでる途中で世界がひっくり返ってしまって、いざそのシーンになって違う、こっちじゃないって思った。常識って一種の宗教っていうか、そもそも信じるとか信じないとかじゃなく身体の一部になってるものっていうか。だからこそ他の身体を持った人では、どうしても受け入れられない箇所も存在するだろうし。100%の常識ってありえないんだよなーと。でも一瞬そっちの常識の側に踏み入れてしまう場面があった。恐るべし村田沙耶香。

  •  表題作『殺人出産』の他3篇の短編を収録する。
    ⑴「殺人出産」
     10人産んだら1人殺せる「殺人出産システム」により人口を安定させる日本。人々はセックスと妊娠を切り離し、人を殺すために人工授精を繰り返し出産に専念する者を「産み人」として崇める。「産み人」制度に疑問を持つ会社員の育子のもとに、姉の10人目の出産が迫っているという連絡が入る。姉が殺人の権利を得たとき、育子の中で何かが変わる……。
    ⑵「トリプル」
     若者の間で流行する新しい男女交際の形「トリプル」。3人1組の恋愛は、その性行為も新しい。拒絶する母親に隠れて誠・圭太とトリプルを楽しむ真弓にとって、それ以外の恋愛の形は在り得なかった……。
    ⑶「清潔な結婚」
     ミズキと信宏が求めるもの、それは「性別のない清潔な結婚」だった。夫婦間での性を排除した生活を楽しむ二人は、やがて子どもを作るために「クリーン・ブリード」と呼ばれる「清潔な繁殖」に取り組む……。
    ⑷「余命」(超短編)
     医療の発達により「死」がなくなった世界。人々は「理想の死に方」を求めるようになる……。


     まず「殺人出産システム」という設定がすごい。よくこんな究極合理的グロテスクが思いつくものだ…。恐ろしいのはこの世界の住人達にとって、「殺人」が生きる光になっているという点。誰かに腹が立った時、万人に「合理的殺人」の権利が与えられている世界では報復はただの夢想ではない。現実的な手段として「殺す」ことが可能なのだ。実際にそれを実行するためには大変な労力と時間を要するためやらないが、「現実的な報復手段を持っているんだ」という意識はストレスを軽減させるのだろう。
     また、ラストは衝撃。『消滅世界』でもそうだったが、主人公が異常な世界で「正しい狂い方」をしてしまう。正しいってなんだ。結局人間が人間にとって都合の良い価値基準を「正しい」と規定しているだけなのではないか。狂った世界での正しさは狂っているのだ。

     本書は『消滅世界』とほぼ同じような世界観を持つのだが、2作品を通して私には、村田沙耶香は人体実験ならぬ「世界実験」をしているように感じた。人体実験とは、完成された人体の秩序に手を加え、それが及ぼす影響を観察していくものだ。著者はそれを世界で試している。現実世界の「秩序」「常識」の一部を欠落させたり過剰にしたりした「実験世界」を作り出す。そしてその手を加えた事物がどのような波紋を描き世界や人間を歪めていくのかの経過を描いている。村田沙耶香が残酷なのは、その異常な世界に「正常な人間」を落とし込むこと。『消滅世界』では主人公の母が、そして本書では「ルドベキア会」の佐藤早紀子がその役を担う。そして彼女たちは皆悲惨な末路をたどってしまう…なんて悪趣味な作家……。しかしこれらがコントラストとなり、私たちは現実世界の常識を再確認させられる。そして、常識とは何か、正しさとは何かという深淵へと続く問いに読者を誘うのだ。
     悪趣味なんだけど、やめられないんだよなぁ……

  • 清潔、性的行為、命、死

  • 「殺人出産」
    10人産んだら1人殺してもいい、という殺人出産システムが採用された世界。
    何が正常、正義であるかは時代により変わる、というお話。

    「トリプル」「清潔な結婚」も、設定的には、時代が変われば…、な話なんだけど、内容的にはいささか閉口気味。

    最後の「余命」は、本当に短いんだけど、なかなか印象的。
    医療が発達した事により、死がなくなった世界で、いかにして死ぬか、というお話。

    村田さんの作品は初めて読みましたが、ちょっと新井素子さんを彷彿させるような…?
    芥川賞受賞作の『コンビニ人間』もその内読みたいな、と。

  • 新しい視点で描かれた話ばかりでとにかく斬新だった。

  • 星新一の小説をサイエンス・フィクション(空想科学)というなら、この小説はモラル・フィクション(空想倫理)といった感じだろうか。

    共感できるかは別として、とても興味深い世界観だと思う。

    ”清潔な結婚”の「性的な欲求を満たしてくれる相手が、人生における最愛のパートナーになるとは限らないし、その逆もまたしかり」的なフレーズには、なかなか考えさせられた。

  • 非現実的で気になってスラスラ読める。

  • 世界観がぶっ飛んでる。
    力のある作家さんなんだろうなというのは、分かりましたが…
    正直最後の短編以外、読後感が良い話ではないと思います。

    清潔な結婚のラストは、何を暗示してたのかがよくわからなくてモヤモヤしました。

    母親と子供が会話してるシーンを目撃した旦那は、何で吐いたの?
    何かを象徴してるんだろうと思ったんだけど、あのシーンをきっかけに吐いたことが何故なのかがよくわかりません。
    母と子の姿を見て、不自然な方法で子供を授かろうとしてる行為に対して嫌悪感が出た?
    旦那が赤ちゃんプレイ好きなマザコン男ぽいので、自分が親になることへの拒絶反応?

    うーーん……もやもやする…。

  • やっぱり、村田沙耶香はこれくらいぶっ飛んでる方がいいな。

    全編通して、気づかされることが多い。
    多分普通に過ごしていると持たない疑問を、筆者は持つことができる。それが、村田沙耶香の純粋さだと思う。
    読むまでそんなこと想像すら出来なかった自分の、なんと俗世間に汚染された人物であることか!

    星4つけたけど、正直4.5といったところ。
    でも、もっといけると思う。
    次回作も期待。

  • 「殺人出産」
    人を殺したければ、10人産めば良いという世界。
    読み終わった率直な感想としては「何これ?」という不可解さ。でも何か伝わってくる、命の尊さみたいなもの。
    子どもをつくる行為も、人を殺す行為も、命を操っているという観点においては同じことなのかもしれない。産み人は、それをエゴのためではなく人類のために行っている。
    美しい世界だと思いました。
    「トリプル」
    三人で恋人同士になるという世界。二股とかではなく、本当に三人でキスしたりセックスする場面は、新しいなぁと思って読みました。一対一じゃなくて、三人で付き合うことで、秩序とかが守られるのかもしれない。それはそれで良いと思うけど、セックスだけは二人でしたいなぁと思いました(笑)とにかく新しいですね。あとお母さんとの言い合いで殴りすぎw
    「清潔な結婚」
    タイトル通り清潔な結婚ゆえ性行為のない夫婦が子どもを望んだ場合にどうするか。性的対象の相手と結婚として適した相手が一致するとは限らないという問題を描いた小説。その問題には共感できる…けど、極めすぎていておもしろかったwてゆうかラスト、夫どうした?やっぱ嫌悪感?
    「余命」
    これは…すごいな。
    医療が発達して死がなくなった世界では自分で死ぬ準備をしないといけない。「死」がすごく軽い感じで描かれているけど、世界から「死」がなくなったら、そんなものかもしれません。

  • 生と死もしくは
    性(sexではなくgender)と私

  • 病みつきになる視点
    「トリプル」3p 当たり前の恋愛
    「清潔な結婚」結婚にセックスを持ち込まない
    「余命」自分で死の時期、場所が選べる

  • いろんな人がいるんですね...。

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