転落の街(下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935029

作品紹介・あらすじ

当代最高のハードボイルド作品と言われる、ハリー・ボッシュ・シリーズの邦訳最新刊!冷厳冷徹に正義を貫き捜査を進める一方、仲間や恋人、愛娘に見せるボッシュの優しい姿が胸に響く不朽のLAハードボイルド作品です。LAと市警の抱える病巣を抉り出し、未解決連続殺人事件の深い闇に迫る緊迫のサスペンス!
【内容】定年延長選択制度を適応され、ロス市警未解決事件班で現場に居続けるボッシュ。
未解決事件のファイルの中から、DNA再調査で浮上した容疑者は当時8歳の少年だった。高級ホテルの転落事件と並行して捜査を進めていくが、事態は思った以上にタフな展開を見せる。2つの難事件の深まる謎! 許されざる者をとことん追い詰めていく緊迫のサスペンス!
転落した市議の息子は殺害されたのか、自殺だったのか。未解決強姦殺害事件の背後に潜む深い闇とシリアルキラーの影。
”誰もが価値がある、さもなければ誰も価値がない“という信条のもと非情な捜査を進めるボッシュ。
陰惨な様相を呈しはじめた事件には戦慄の結末が待っていた!

感想・レビュー・書評

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  • ボッシュ・シリーズ15作目、後半。
    水準が高く、息の長いシリーズです。
    他のシリーズ・キャラクターとの共演作もあるため、どう数えたらいいのか、何度やっても間違えちゃうんだけど(笑)

    ロス市警の未解決犯罪班で現場の仕事を続けているハリー・ボッシュ。
    勘の鋭い根っからの刑事だが、定年延長がかなったという年齢です。

    2つの事件を抱え、どちらも当初とは様相を変えてくる?
    未解決事件なので、昔のことのようですが、今に続くような大事件を掘り当ててしまうこともある‥
    相棒がデイヴィッド・チューという中国系の刑事なのも今の時代らしい。
    経験の差がありすぎて、一匹狼の癖が出そうなボッシュだけどね。

    今回は、15歳になる娘のマディと同居、という新しい要素も加わっています。
    その存在を途中から知った娘なので、前はやや違和感がありましたが、意外と?上手くやっている様子。
    突然ロスという大都会に引っ越してきた少女のことは、もっと気をつけてやれよとちょっと心配でもありますが(笑)

    前作「ナイン・ドラゴンズ」はつまり、香港の九龍地区に潜入する話で、派手なアクション物。
    シリーズとしては、やや例外的なタイプでした。
    今回はいろいろな要素が書き込まれていて、満足のいく読み応えでした☆

  • ボッシュ・シリーズでは『ナイン・ドラゴンズ』に続く作品。香港を舞台にしたエンタメ重視の前作とは違い、丁寧に捜査過程を追っていく本来の警察小説に回帰したとも言える内容。

    原題の『TheDrop』には複数の意味が込められている。ボッシュが捜査するふたつの事件──ホテルからの転落(drop)事件と、血痕(drop)からDNAが採取された未解決事件。そして刑事としてのキャリアを左右する定年延長制度(drop)のことでもある。宿敵が事件に絡み、ボッシュは否応なくハイ・ジンゴ(政治的意味合いのある事件)に巻き込まれていく。その中で、捜査手続きをキープし、落とし穴に嵌らぬよう行動するボッシュの決断が本作品の大きな見所。この辺りの円熟度はベテラン刑事としてのキャラクターの成せる業であって、謎解き要素は薄いけれども、それを補って余りあるボッシュの静かなる熱情は吸引力抜群だった。

    ふたつの事件はバランスもよく、それぞれがボッシュに教訓を与えるような形で収束する。ひとつは劇的な展開を見せるので、途中で感極まってしまった。ハイ・ジンゴに翻弄され、使命感に燃えて立ち上がるも、結局は苦悩するボッシュに戻るのだなと実感。でもこの実感こそがシリーズ・ファンとしての証だったりするのよね。

    そんなボッシュも還暦(!)。前作では父親としてのボッシュに違和感ありだったが、今回はわりとすんなり受け入れられた。警察官を志す娘の師となる時もあれば、弱さを見せる場面もある。長年の友人関係は変化を見せ始め、定年の時期が設定される。刑事としてのキャリアの終焉に向けて、徐々に動き出したように見えなくもないけど、ブレないボッシュを再確認できて大満足の読書時間だった。初期作品と比肩するシリーズでも屈指の作品。

  • ハラーシリーズにも登場したりしてたからそんなにご無沙汰とは思わなかったけど、ボッシュシリーズとしては「ナインドラゴンズ」の次になるわけだ。「ナイン~」は、第一作からずっと愛読している読者には衝撃の展開で、また、ハリウッド映画的に派手なアクションがあったりして、それまでの作品と比べてぐっとエンタメ色が濃厚であった。私は「暗く聖なる夜」なんかの暗いタッチが好きなんだけど、さあ新作はどう来るか?

    読後の印象としては、今回は比較的地味な「警察小説」に戻ったような感じ。このシリーズは現実の時間と同時に進行していて、ボッシュは六十歳になっている。守るべき娘もいて、以前とは雰囲気が変わっているのは当然かもしれない。ずいぶん長く読んでるなあとなんだかしみじみしてしまう。

    キズミン・ライダーの立場が変わって、それに伴いボッシュとの関係も以前とは違ってしまう。これが切ない。警察組織上層部や政治家の間で立ち回り、だましだまされ、権謀術数もやむを得ないこととし、結果として「悪」の力をそぐことを考えるライダー。ボッシュは「自分自身が、自分の憎む人間と同じものになる」と、そういうやり方はとらない。ライダーにはライダーの、ボッシュにはボッシュの正義がある。二人の葛藤の描き方が見事だと思った。

    たくさんの人を非道に殺害した犯人が逮捕される。その罪は明らかだが、裁判の行方は不透明で、受けるべき報いから逃れるかもしれない。その犯人に報復しようとする行為を察知したとき、どう行動するべきなのか。ボッシュは決断し、いや、本能的に行動し、そのことについて深く苦悩する。ここに一番ボッシュらしさを感じた。


    一つケチをつけると、ボッシュの「ラブアフェア」ってないといかんものですか。そりゃあコナリーなので、安易な「お色気担当」という女性の描き方はしてないけど、なんだか映像化用のサービスみたいで、どうもひっかかるなあ。

  • 他の作品で、ボッシュとキズが疎遠になっている描写があったけど、こういう背景があったのか。

    アービングとボッシュの因縁にもケリがついたかと思ったけど、全然そうでは無かったしね。

    面白かった。

  • なかなかの結末。いろんな人の思惑入り乱れ、ボッシュが独善的になるのも仕方ないか..

  • 未解決事件と現在の事件を解決しながら、警察内部の力関係などと戦っていく。
    老戦士のようにな感じです。

  • ガッカリ…。一気に読み過ぎてしまって(笑)
    やっぱり文句なく面白い!!

  • 刑事ボッシュシリーズ。過去の未解決事件と現在の事件の二つを同時に担当し、自分の信念に従って捜査していくボッシュをテンポよく書いてあると思う。

  • ハリーも定年延長制度の利用なんだ。
    読後に頭に残ったキーワードはパワーバランスと司法制度。
    その他いろいろ(←これ重要)。
    これらを纏める作者の手並みに感心。

  • ほぼ1日で読了。ボッシュ作品として、近作では出色の出来。並行して進む2つの犯罪捜査と政治的駆け引き、過去の因縁とパートナーとのやり取り、さらにロマンスまで入っていて、非常に深みのある作品に仕上がっている。全ての要素が消化され、ラストも文句なし。久しぶりにページをめくる手が止められなかった。

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著者プロフィール

Michael Connelly:1956年生まれ。LAタイムズ元記者。代表作としてはボッシュ・シリーズ、リンカーン弁護士シリーズがあり、当代随一のストーリーテラー。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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