スペードの3 (講談社文庫)

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著者 : 朝井リョウ
  • 講談社 (2017年4月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936132

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スペードの3 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 個人的に好きな朝井リョウさんの本。
    ずっと気になっていたため、文庫になっているのを見つけて即買いした。

    元スター女優、そのファンクラブのまとめ役、ファンクラブの新メンバー、3人それぞれから成り立つストーリー。
    距離が近い3人の視点から構成されている物語ではあるのだが、それぞれの主観から見ることで世界の見え方、感じ方がまったく異なるところがとても面白い。

    朝井リョウさんは、こういう小さなコミュニティーの中の対人関係に生じる感情(特に嫉妬、妬み、蔑み等の負の感情)を描くのが本当に上手い作家だと思う。
    「何者」では就活生というコミュニティー、「桐島、部活辞めるってよ」では学校というコミュニティー、また今回はファンクラブというコミュニティー、実に多彩なジャンルで描かれている。
    作品を読みながら「意地悪だなぁ…」、「えぐいなぁ…」と感じる一方で、それを理解できる、つまり同じような感情を持っている自分に毎回気付かされてしまう。
    何となく他人に朝井リョウ作品を勧められないのは、自分の黒い感情がバレて、人間性を疑われるのが怖いのかもしれない…(笑)

    個人的に一番印象に残ったのは、「スペードの3」。

    自分も「失敗を犯さないように確実に待ちながら進める」タイプであり、何となく美知代と近いものがあるなぁと感じながら読み進めた。
    もちろん、ここまで意地が悪くはないけれど…(笑)

    自分が気持ちの良く過ごせるフィールドで生きることの心地良さは理解できる部分もあった。
    この本では、それがとても悪いコトのように書かれていたが、一方でそのフィールドを守ろうとすることは誰しもがあるのではないだろうか。
    もちろん、その意思をドコまで他人に迷惑をかけながら押し通すかというサジ加減は必要だと思うけれど…

    最後のシーン、待っているだけでは何も起きないことに気付く美知代。
    「在庫数、また、直接聞きに来ます」、とても爽やかで素敵なセリフだった。
    唐木田さんと、上手く行けばいいなあ…

    <印象に残った言葉>
    ・家に帰るためではなく、どこかへ向かうために乗る終電だなんて、一体、いつが最後だったのだろう。大学を卒業して、もう七年が経つ 。(P28、美知代)

    ・美知代ちゃんは、この世界で、また学級委員になったつもりでいるの? (P103、むつ美)

    ・ どれだけ待ってても、革命なんて起きない。(P150、むつ美)

    ・ 在庫数、また、直接聞きに来ます(P158・美知代)

    ・ 自分のためでいいのだと、むつ美は思った。こんな自分をごまかすことができるだけの理由や言い訳を探すことに時間がかかってしまったけれど、そうでなくていいのだと思った。私は、私のために、よりよくなりたい。そう思うことでこんなにも呼吸がしやすくなるのならば、きっとそれは醜い欲望ではないのだ。(P244)

    ・ 謙虚さを大切にしよう、と思ってしまった時点で、もう後戻りはできない。意識して大切にしている謙虚さなど、本当の謙虚さではない。(P261・つかさ)

    ・ ごめんね。ずっと、私のほうがずるくて。(P323・円)

    ・ その人の背景や、余白や、物語は、それ以上のものにはなり得ない。それ以上のものになり得るように見えるときもあるけれど、決して、なり得てはいない。そのときそのときに出会ったものを積み重ね、吐き出して生きている私たちにとって、そのときそのときに想像されたかもしれない物語なんてどうでもいいのだ。そこにあるのは、そのときのその人自身、それだけだ。(P343・つかさ)

  • 分かる!
    分かる分かる!

    小学校時代の学級委員気質から抜けきれずに、妙齢になってもなお自分を取り巻いてくれる人がいる環境に身を置きたがる美知代の気持ち。

    みんなが憧れていたり畏れていたりする存在に一歩でも近づいて、それを何とも思ってないように絶妙にひけらかしながら自分の特別感を強調しようとするんだよね!

    それから、自分の背景に、特別な理由や物語が何もないことにコンプレックスを持って、後付けを創ってしまおうとするつかさの気持ち。

    死ぬほどじゃないけど憐れんでもらえる持病だったり、二度と会えない訳じゃないけど身内との別れだったり、絶望的に呆れられるほどじゃない問題行動だったり、そういうものを持っていて注目される人を「ズルい」って思っちゃったりね!


    だけど、本当は分かっていたりして。
    どんなに特別感を示そうとしても、
    どんなに背景にドラマを演出しようと、
    勝負できるのはここにいる私という人間ひとり。
    この人間ひとりで向かっていくしかないんだって。

  • 朝井リョウさんの作品は全て読んでます。

    第1章 スペードの3
    ファンクラブのまとめ役をこなす学級委員タイプの女性とそれを乱す存在との関わりを小学校時代と重ねながら物語が進んでいく。
    相変わらず、ドキッとさせられる。それも、何気ない日常をホラーに変えてくる。特に、美知代が小さな優越感を大切にする描写。これって、やっぱダメなんですか?汗 僕はそこだけではないにしてもそこにはこだわりがあって、常に自分が”上”の存在でありたいと思って努力する節があるんです…。周りからしたら、やっぱ痛いんかなぁ。
    アッキーのミスリードは騙されたけど、そこまで驚きはなかったです。

    第2章 ハートの2
    スクールカーストの中でも特に下の人を主人公にした話。
    朝井さんってこの辺の人の気持ちまで掬えるのかと驚き。休憩時間に友達がいないときの時間経過の長さとかリアル。なんか、村田沙耶香さんに近いものを感じなくもない。

    第3章 ダイヤのエース
    たまにある優しいメッセージ回。
    どんな物語があろうとなかろうと表現活動をやってはいけないなんてことはない。ましてそれを辞めたところで得られる反響なんて知れている。
    木皿泉の脚本に通ずる優しさを感じることが最近増えてきたと感じます。

    総じて、今作も変わらず朝井リョウ成分を補給できて充実感です。
    一つ思うのは、もしかしたらパターン化しつつあるかもしれない。物語の構成が論理に塗り固められているというか。またこの構造かとは思ってしまう。
    朝井リョウさんのことだから、その辺は色々考えているんでしょうけど。

  • 隣の芝生は、青いです。
    3人の女性の気持ちの揺れが面白かったです。誰もがどこかに共感して、反発するお話なんだろうなと。
    なれなかった自分も、なりたい自分も、人の所為ではなく、自分の中に全てあるってことですね。気持ちも、行動も、自分次第だ。

  • 文章は読みやすく、ボリュームは少なめ。
    一気に読める。

    舞台女優のファンの世界。
    メインの登場人物はすべて女性。
    自分にとってまったくの未知の世界ということもあり、次の展開が気になり、どんどん読む。

    そして、9割ほど進んだところで、気づく。
    あ、もう終わりだ。

    各章の主体になっている3人以外の人物のことも、もっと知りたかった。
    特に、2章に出てくる志津香とか。あ、飯島ちゃんとかも。
    もっと言えば、美知代とつかさは人物像が見えたけど、アキ(メインキャラの方の)に関しては、もう少し続きも読んでみたかった。
    まぁ、でも、はじめの一歩を踏み出すまでを描くという意味では、三者とも共通だからいいのか。

  • 朝井リョウさすがです!
    何者を見たときこの人は年齢も近いし、若者の繊細な気持ちを表現するのが上手い程度だと勝手に思っていました。
    ですがこのスペードの3で覆りました。同じ物語ですが、3人の全く違うようで根底が同じストーリー。
    本当はどうしたいんだ!何がしたいのか!何が出来ないのか!人間の奥底にある感情、欲望。意地?プライド?嫉妬、妬み、ごくごく細かい描写が描かれていてあっという間に読み終わってしまいました。そしてそれぞれの主人公のラストシーン、そしてどんでん返しの展開、すごく引き込まれました。面白かった!!!
    他の作品も読んでみたい!!!

  • わかるんだけどわかりたくない、女のわたしとしてはそんな気持ちだった。
    ファンクラブとかそういうのは入ったことないし少し非日常だったんだけど、日常も透けて見えるようだった。

    わたしは自分がそんなにしっかりした人間じゃないし、ドロドロした醜い部分もあると思うから読後感はため息1つ。という感じだった。

    朝井リョウさんのお話は見たくない現実を突きつけられるような感じがする。すごい。

  • 待ってたって、革命なんて起きないから

    朝井リョウ、なぜこんなにも女の人のドロドロ感をうまく描けるんだろう

    嫉妬とか、コンプレックスとか、そういう「嫌な感情」は実は誰でも持ってるんだよなって思わされる。

  • 朝井リョウって何でこんなに色んな人の奥底がわかるんだろうっていっつも思う。
    思ったことがあっても決して人には言わないような…。
    自分に物語がなくてもいいというつかさの決心に共感。

  • 優越感とか嫉妬とか、ドロドロした感情が描かれているのに、読後に嫌な感じがしない。むしろ、前向きな気持ちになれる。

  • 3人主人公が出てくるのだが、その全員に自分の過去がフラッシュバックする瞬間があるくらい入り込んでしまった。女子独特の感情の表現がとても上手い!

  • ほんとに良いー。なんてことない人でも良いんやって思う。人の駄目なところ、羨んだり妬んだりそういう気持ちもあっていいんやって浅井リョウは思わせてくれる

  • 3人の女性が今までの自分とは違う新たな一歩を踏み出す様が描かれた中編小説から構成されていた。
    1章ではクラスの中のみんなが気軽に会話できないような問題児に話しかけたり、誰からも避けられるような子に手を差し伸べたりと学級委員として行動することで、優越感を感じていた。そんな中、美人な転校生がやってきて、上べだけ優しくしていた自分他は異なり、誰に対しても分け隔てなくいろんな人と接する態度からクラスの指示を得て、転校してきたばかりにも関わらず次の学級員の座を取られてしまい、そのまま卒業となった。
    大人になった今、最近落ち目になってきてはいるものの元歌劇団男役の女優のファンクラブの中のヒエラルキーで上に上り詰め、小学校時代の学級員のようにそのファンクラブを取りまとめ、細かい規則を作って会員をコントロールすることで優越感を感じていた。そんな中、小学校自分が手を差し伸べて優しくしてあげていたと思っていた同級生が同じファンクラブに入会してきた。学年一ブサイクだった彼女が、今ではファンの女優に少し雰囲気が似ていると会員の中での噂になるほどの美人になっており、そこに所属するうちに次第にファンクラブのメンバーの信頼を得て、小学校時代のようにヒエラルキーからひきづり降ろされることになる。
    ファンクラブの中のヒエラルキーを登り、人に指示する立場になることで小さい優越感を得ていたが、小学校時代と同じまま成長できていない自分を同級生に見透かされ、ショックを受けるものの、帰るには自分から踏み出すしかないと言われ、一歩踏み出し始めるところで終わった。

    「何者」でも同じようであったが、自分が気づいていなかった、無意識に向き合おうとしていなかった自分自身を浮き彫りにされる瞬間を描くのが非常に上手で衝撃が走った。
    もちろん読む人によって、どう感じるかは異なるだろうが、2章3章ではここまでの衝撃ではないものの、三者三様の心の内面の変化が面白かった。

  • クラスで目立たない子にも優しく接する自分を見せつけることで 自尊心を保っていた美智子。
    変わりたいと思い続けて それを成し遂げたむつみ。
    自分の恵まれない境遇を最大限に活かして 周りに涙ぐましいストーリーを想像させる円のズルさ。
    円のズルさに気付きながらも 実力を認めざるを得ないつかさ。

    「私は、私のためによりよくなりたい」
    いつスペードの3を使うか?
    大事に持ったまま終わってしまわないように

  • 3本の中編から成る連作集です。
    物語として一番面白かったのは第1章で、トランプゲーム「大富豪」に見立てた展開も、ミスリードもほぼ完璧に決まっていたように思います。ただ、その反動で第2章以降はやや凡庸になった感があります。つかさを主人公に据えた第3章はちょっと浮いた感じがして、この連作の中で本当に必要だったのか疑問が残りました。全体のレベルは高いところにあると思いつつ、『何者』と比べるとやや落ちるというのが率直な感想です。

    それにしても朝井リョウ。
    男のくせに主人公を含めほとんどの登場人物を女性にするという大胆な設定で挑んだ本作ですが、彼女たちが抱く屈託、悪意、見栄、嫉妬などがすごく細かく描かれており、女性同士が醸し出すドロドロ感がまるで女性作家が描いたようなリアリティをもって伝わってきました。
    さすがプロというと失礼にあたるかもですが、本当にうまい書き手だと思います。もっとも自分は男性なので、女性の視点、また宝塚ファンの視点で読むとまた違った印象になるのかもしれませんが。

  • 人は誰も現状を劇的に変えてくれる革命を待っているんだろうなと思った。周りは持っているのに自分には無いもの。それを手に入れるのには、もっと真っ直ぐな道があるかもしれないのに虚栄心がじゃまをしてしまう。

    第1章
    つかさのファンクラブのトップを務める美知代。小学生の同級生だった明元むつ美(アキ)がファンクラブの新入メンバーとして入ってくる。どれだけ待ってても、革命なんて起きない。
    第2章
    演劇部の大道具で絵を描くむつ美。公演のポスターに描いた絵で弟の嘘がバレてしまう。
    第3章
    舞踏学校から同期だった円が女優業を引退した。円とは性格が反対で、昔からリーダー的な存在で優等生だったつかさ。少しずつ書き進めていた引退報告のブログ下書き。

  • 朝井リョウ、やはり心理描写に長けている。女の子の複雑な、悪意の入り混じった心境が見事に描かれていた。物語がなくても、親友がいなくても、良い子じゃなくても、自分のために生きれば良いんだ。

  • 現在、過去、関連者でストーリーが並行して進んでいたようだが、結局全体がからまずに終わってしまったような感じ。あまりピントこなかった。

  • 三人三様の人生が過ぎていく。時折並行はするけれども、決して重なる事はない。ただ確かな事はそれぞれがそれぞれで一生懸命であること…。傷つきながら…傷つけながら…。

  • 自分がいつから大人になったかわからないのに、いつのまにか周りから大人扱いされて自分が大人になったことに気づく。とゆうか受け入れなければと思う。きっと人がは大人になったから変わるのではなく、変わろうと思った時に変わるんだなぁ。そうゆうことに気づくのは自分の黒い部分をぐりぐりえぐられた時。恥ずかしい、でもそう思う自分はなかなか嫌いじゃない。

  • 文章は読みやすいんだけど、これまで読んだ作者の作品の中では評価としてはイマイチ。
    衝撃とか、読後感として残るものはなかった。

  • さくさく読めるが心に残るものはない。何者ほどの衝撃はなかった。

  • 浅井リョウ。
    クラスの中心にいられなかった人物を描くのほんと得意ね。
    桐島読んだ時は結構衝撃的だったけど、
    これだけ似たような作品を連発されると、
    ちょっとワンパターンかなという感じも。

  • ひとつのお話のようで、各章は3人それぞれのお話。一冊を通して筋が通っていながらも、3人のお話を読んで思い 考えることは別々のテーマであるところが興味深い。
    また、特に一章と三章の叙述トリックというと大袈裟だけど、ちょっとしたどんでん返しにはまんまとやられた!!

  • トランプの大富豪がタイトルになっている作品。

    3部の構成から成っており、それぞれが微妙に関わっている。

    相変わらず人間のエゴというか見栄というか弱いところを描かせたら上手いって感じ。
    逆に読んでいてその部分が痛かった。

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スペードの3 (講談社文庫)の作品紹介

ミュージカル女優、つかさのファンクラブを束ねる美知代。小学校の同級生の出現によって美知代の立場は危うくなっていく。美知代を脅かす彼女には、ある目的があった。つかさにあこがれを抱く、地味で冴えないむつ美。かつて人気を誇っていたが、最近ではオファーが減る一方のつかさ。それぞれに不満を抱えた三人の人生が交差し、動き出す。私の人生は私だけのもの。直木賞作家朝井リョウが、初めて社会人を主人公に描く野心作!

スペードの3 (講談社文庫)はこんな本です

スペードの3 (講談社文庫)のKindle版

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