きなりの雲 (講談社文庫)

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著者 : 石田千
  • 講談社 (2017年3月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936200

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きなりの雲 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 深い傷を癒すのは結局、劇的な何かではなくて、日々を正しく生きて自分のすべきことをすることなのだ、とじわじわと染みるように思う物語だった。
    その中でいつの間にか流れている時間とか、当たり前の人とのやり取りだとか。普段なら見逃してしまうことが、自分にとっていかに大事なのかということ。

    大切な恋を失い、生きる気力さえなくしたさみ子。死んだように生きることを続けていたある日、アボカドの種の水栽培をきっかけに彼女の気持ちに変化が生じる。
    そして、古びたアパートの住人たちや編み物教室の仲間との交流により、少しずつさみ子の心の中に光が差し始める。

    花でも動物でも植物でも、命を傍に感じるということは、自分を立て直すにはけっこう重要だったりする。
    小さな命を見守るために自分も元気にならないと。そう思ううちにすくすく育つ命に自分も少しずつ励まされたり。
    この物語に出てくる命の存在はとても優しい。食べ終えたアボカドを水栽培してみることだとか、グリーンカーテンのために屋上で育てたゴーヤをみんなで美味しく頂くことだとか。
    爽やかに、だけど力強く、そこに在る。

    少しずつ力を取り戻したさみ子は仕事(編み物教室の講師)に復帰し、そこであらゆる年代の人たちを交流することで更に自分を取り戻してゆく。
    そんな中で、失ってしまったはずの元恋人から不意に連絡が来て…
    嬉しい気持ちもある反面、複雑な想いも当然ある。そのとても微妙な心模様が伝わってくる。

    失った人や物、時間は、取り戻したように見えても、けして同じかたちではない。
    それは一度心が変わってしまい、傷から立ち直った自分自身が変化しているから。
    とても正しい人の変化や在り方。人間の、前に進んでゆく力というものは凄い。

    とても優しい物語だった。少しの残酷さも孕んで。
    アボカドの水栽培、やってみたくなった。

  • 人との出会い。温かさ。静かだが力強い物語。
    あらすじ(背表紙より)
    大切な恋を失い、生きる気力さえ失くしたさみ子。だがある日、アボカドの水栽培をきっかけに彼女の気持ちに変化が生じる。古びたアパートの住人たちや編みもの教室の仲間との交流により、少しずつ心の中に射し込み始める光―。傷ついたからこそ見えたこと、失ったからこそ得たもの。第146回芥川賞候補作。

  • 再読。前も思ったけれど、読後に当然の様に編み物がしたくなる。(でも編み物をする季節に合わなくて結局しないのだけれど)手に職のある人は堅実だなぁ。失恋で身体を壊す様な生活を経ても立ち直るのに自分の技術を使って身を立て直す事が出来る。仕事も生活も編み物を軸にして堅実に生きる主人公が羨ましく思える。

  • 静かに生きる力を取り戻していく蘇生の物語。芥川賞候補作 失恋し、生きる気力さえ失くしたさみ子。だが、アボカドの水栽培をきっかけに気持ちに変化が生じる。アパートの住人や編み物教室の仲間との交流により、心の中に射し込み始める光。傷ついたからこそ見えたこと。

  • 本屋でふと目に止まって、特に理由があった訳ではないけれどなんとなく手を離し難かったので買ってしまいましたが、素敵なお話でした。

    ていねいに、でも悩みながら等身大に暮らしている人たちが多く出てきて、こういう生活をしたいなぁと思いました。主人公と同じアパートの、おしゃれなおばあさん、松本さんがお気に入りです。

    もうちょっと涼しくなったらまた編み物始めたいなぁ。

  • モチーフになっている編み物の糸と失恋の心の動きがラップしている。
    編み目が綺麗に積み重なったかと思えば、編み間違いに気付き、その多くを解いてみたり。

    進んでは後戻りしてみたりするのも、行動しているからこそ。

    あっちこっち行ったとしても、とてもゆっくりだったとしても、それでも光射す方に進んでいる。

  • とてもとても丁寧に時間が流れる本。恋を失ったときの心の揺れが、丁寧。

  • 著者の文体が本当にすき。台詞が「」書きじゃないこともあって、流れるように歌うようにするすると心の中に言葉がたまっていくのが快感。
    恋の喪失と再生といえばありきたりなんだけど、そこにある痛みと葛藤が押し付けがましくないのにリアリティがあって泣ける。
    ハードカバーを買い逃していたので文庫化してくれてとても嬉しいです。

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きなりの雲 (講談社文庫)の作品紹介

大切な恋を失い、生きる気力さえなくしていたさみこ。ある時、アボカドの種の水栽培を始める。白い根が伸び、葉が出て……ここから、彼女の“蘇生の物語”が始まる。古びたアパートの個性的な住人たちや編み物教室の仲間たちとの交流。そして、仕事の編み物にうち込んでいくうちに、彼女の心の中に光が射し込み始める。静謐で美しい文章が、日常の中のかけがえのないものを描き出す。著者初の長編小説。第146回芥川賞候補作。

きなりの雲 (講談社文庫)はこんな本です

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