かわいい結婚 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936736

作品紹介・あらすじ

「かわいい結婚」…「結婚ってなんなんだ?」という疑問から生まれた作品。結婚して仕事をやめ、専業主婦になった29歳のひかり。しかし、家事能力はゼロ。当然、部屋は散らかり放題。もちろん食事も作れない。夫とは仲良しだけど、こんなに家事が延々と続くなんて……。 騙された!わたし騙された!騙されてた! 結婚生活のリアルをコミカル&ブラックに描く。ほか「悪夢じゃなかった?」「お嬢さんたち気をつけて」二篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作をふくむ全3篇収録の短篇集。どの作品もとってもおもしろいです。どちらかといえば、女性向けなのかもしれませんが、オトコの僕が読んでもすごく楽しめました(まあ、僕はオトコとしてのマジョリティであろう「性欲原理で女性を見てばかりのタイプ」や「男尊女卑タイプ」では、どちらかといえばないからかもしれません)。

    頭にも胸にも特に響いたのが『悪夢じゃなかった?』という作品。カフカの『変身』のパロディから始まります。ある朝目覚めると、主人公の男が若くグラマラスな女に変身している。
    この主人公は、たとえば「女性専用車両に乗るのは本当の女じゃない、ブスとババアだけで、彼女らは女ではない」というような考え方をしている。そればかりか平然と、恋人にもそう言ってしまう。性欲でしか女性を見れていないような次元にいるのでした。そんな、女性を蔑視している主人公が、多くの男からの性欲の的になる若くグラマラスな女性に変身するのは皮肉が効いています。そして、主人公はだんだん女性が感じている不快さを、身をもって感じていくようになる。

    読みながら、これだけ女性の生きる世界について「はー! そうなのか! 考えてみればそうだよね!」と本質的なところを知ったり考えたりしたことはなかったです。僕と言う男が、なんとなくわかった気でいたり、知ろうとしてさえいなかったり、こっちが介入するものでもないしと遠ざけていたり、瞬間的に放っておいたり、誤解していたりした、女性が生きているその世界が描かれている。つまり、女性はこの世界をどう感じているのか、女性からこの世界がどう見えているのかが描かれている。

    まだまだ誤解があり、予期しにくい間違いをこれからもしでかす危険性を持っていることをふまえつつ言いますが、女性といくら話をしてもきっとわかることができなさそうなことを、この作品から肌感覚レベルでわかることができる、というか。

    なんて優しくて、なんて大変で、そして楽しくて哀しい生のなかを生きているのだろうか。強めの抑圧に境界を定められながら、その内を手一杯走りまわるかのよう。「生きがい」と「危険」の濃淡のはっきりしたワンダーランドで精いっぱい生きているような感覚でした。例外はいろいろあるでしょうけれども。

    『悪夢じゃなかった?』を読み、個別的に見ればまた違うのだろうけど、女性一般の存在っていうか、人生としての女性性に「あなたがたが好きだわ」と思いました。とはいえ、ここでも描かれている、男性のいやらしさや汚さを僕も持っていて、それは逃れられないサガのようでもあり、残念な気持ちはある。残念な気持ちというか、原罪を抱えているかのような感じがします。そういったところは今後、自分で考えていけばいいのだけど……。
    ともあれ、ラストで腹の底から笑えました。可笑しいのと嬉しいのと驚きと優しさで笑えました(ネタバレになるので詳しくはいいません)。ここは、はっきり言いきっておきます、『悪夢じゃなかった?』は傑作です!!

    最後の『お嬢さんたち気をつけて』も都会と田舎の対比がうまかったですし、もちろん口火を切る『かわいい結婚』もギャップにおどろく作品でおもしろかった。

    アマゾンをちょろちょろしている時に、なんとなしにクリックして手にいれた作品でしたが、そういう出合いもあなどれません。苦味のあるコメディといった感じですが、そういうテイストで突き抜けてくる印象があります。満腹!っていうくらい楽しみました。

  • 女性ならこうした方が良い。こうであってほしいと期待されること。
    またそれに対しての女性の思い。
    がよく書かれていると思いました。
    途中、少し描写が長いと感じましたが、
    ページ数も少なめで、サクッと読めます。
    世間で言うところの「しっかりしている主婦」や、「男性」は
    読むとイライラしてしまうかもしれませんが・・・
    「しっかりしていないバツイチ」の私は楽しめました。

  • 1話目の主人公に全く共感できず、幼稚だなと思ってしまった。
    2話目の「悪夢じゃなかった?」が1番面白かった。

  • ・離婚なんてダメだけど、でも離婚したいときにできるだけのものは、ちゃんと持っておかなきゃね

    かわいい結婚はやすらかな絶望のなかにある

    友だちと話すとき、結婚できるかどうかの話が挙がる機会が多くなった、体感。私たちはなんとなく、結婚=女の人の幸せという強迫観念にかられている。ある程度は憧れていて、ある程度は諦めている。
    そういえば私が、中高かろうじて勉強をしていたのは、一人で生きていかなくてはならない、と思っていたからだった。かわいさは武器にならないから、私のことは私が養わなければならない。
    これを言ったら笑われたけど、当時はとても本気だった。ネットではこういう女の子、何人かみかけた。可愛い顔なのに努力して勉強してる子意味わからんな、と思ってた。(ごめんなさい)

    最近友だちがわたしは結婚できないと思うからいっしょに住もうと、酔って電話をかけてきた。結婚、そんなにいいものかしらという態度をとりつつ、結婚できそうだよねといわれると安心する。

    私は私が幸せにしておきたいから、適度に散財しながら貯金するし、ごはんも作るし、ネイルもするし、嫌なことも必要ならしなけれゃならん。

  • 山内マリコさんの小説初めて読んだけどめちゃくちゃ面白かった。結婚についてコミカルに描く感じすごく好き。登場人物もどの人も濃くて一気読み。

  • 女性の理不尽さや常に沸々とある静かな怒りがユーモラスに描かれていて面白かった。

  • 初めて読む作者 山内マリコ氏の本である。
    単行本で、3話。
    料理も掃除も出来ない女性 ひかりが、主人公。
    主人の正幸ことまーくんと結婚するのだけど……
    家事一つ満足に出来ない主婦。
    勉強も嫌いて、仕事もやる気の無く、ゲーム好きな夫。
    しかし、家の汚れが、酷い事で、一発、発起、家事代行の仕事で、家の事をやり出して、面白さを感じる事が出来たのだけと………
    よくよく考えると、主人のまーくんの世話をすると言う事の意味が、わかる!
    題名の「かわいい結婚」、おままごとのような結婚生活を思っていたのだろうか?と、まだまだ、これから出産育児、と、人生は長いよ、と、言ってあげたい!!!
    「悪夢じゃなかった」カミュの変身ではないが、朝目が覚めると、主人公裕司は、女になっていた!
    母親からも息子の女友達と、思われ飛び出したけど、ハイヒールの履き心地の悪さ、下着売り場でのブラの種類に、ショーツのソングまで、右往左往。
    そして化粧品やコスチュームも……
    女の苦労が、わかってくる。
    お金を遣いすぎたので、神待ちと言う 家出少女に宿を提供すると言うネットを見て、40位の男と、会うのだが………酷い目に、否 酷い目を合わして飛び出す。
    どうなって行くのだろうかと、サクサク読んでいく。
    年上で付き合っていたけど、別れ話が出た彼女のアロマサロンへ!!!
    そこで、彼女の本音も!
    一夜一緒に過ごしたら、元の男性になっていた!
    そして2人は意気投合!!!の幸せな終わりになっていた!
    「お嬢さんたち気をつけて」は、2人仲の良い女性が、都会と、田舎!
    そしてその後、キャリアウーマン、出産間近の主婦との相違が、……

    女性の事が細やかに書かれているが、この小説に登場する女性の誰もが、好きな人物であった。
    話はとても面白かったけど、共感出来そうな感じが、思い当たらないのは、昭和女だからかも知れない。

  • 個人的には『悪夢じゃなかった?』が1番好き!

  • 柔らかい絶望と安心感。
    昔に戻りたいかと言われると戻りたくない。大人ってつまんないよね、でも自由だよねという気持ちになる。

  • 山内マリコさん作品9

    山内マリコさん、こういうテイストの作品も
    書かれるんだ〜!と新鮮な気持ち。

    『かわいい結婚』のひかりのように
    一生この家事が続くのか〜と思う瞬間、
    専業主婦じゃない今でもあるから
    わたしは働いていたほうが良いなと思ったり
    自分の境遇と重ね合わせながら読んでいました。

    『悪夢じゃなかった?』は
    コミカルながらもどこかじーんときてしまうから
    不思議。

    『お嬢さんたち気をつけて』は
    登場人物の口調などから
    少し昔のお話かと思いきや現代のお話で驚き。
    1.2作目とは違ったテイストで面白かった。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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