流 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937214

作品紹介・あらすじ

台湾で不死身のはずの祖父が何者かに殺された。 無軌道に生きる17歳の主人公にはわからないことばかり。直木賞受賞の青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 1975年以降の台湾を舞台にした若者の青春小説であり、祖父を殺した犯人を巡るミステリでもある

    以下、公式のあらすじ
    -----------------------
    一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾 に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。選考委員満場一致、「二十年に一度の傑作」(選考委員の北方謙三氏)に言わしめた直木賞受賞作。


    一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。選考委員満場一致、「二十年に一度の傑作」(選考委員の北方謙三氏)と言わしめた直木賞受賞作。
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    冒頭、台湾出身の主人公が中国の山東省で、祖父が村人50人以上を惨殺したという石碑を訪れる場面が描かれる
    昔から父に、その土地を訪れたら殺されると脅されていた
    そんな折、村人から「あいつの息子か?」と尋ねられる
    果たして、じいちゃんは一体何をしたのか?

    時代は遡って、物語のメインは1970年代の台湾を主な舞台にした時代小説

    1975年 蒋介石が亡くなった年
    主人公 葉 秋生(イエ チョウシェン)の祖父が自分のお店 布屋で殺される
    じいちゃんは昔から破天荒な人だった
    日中戦争、中国側では抗日戦争のときには、人を殺しまくり
    日本人のスパイとして動いていた中国人の家族を殺したり
    報復合戦のようになっていた中、義兄弟の家で助かった息子を自分の子として育てたりという義理堅さ 義侠心を持ち合わせていた
    また、孫の自分には優しかった

    そんな、生き方だったので人の恨みを買っている可能性はあるが、それでもこの場所でこのタイミングで殺された謎

    そんな祖父を殺した犯人を見つけようと躍起になる若者の話
    だけど、物語の大部分は無軌道な若者の馬鹿な所業が描かれる

    幼馴染みのチンピラ趙戦雄ととつるんだり、喧嘩したり
    小遣い稼ぎに替え玉受験したらバレて学校を中退したり、軍隊に入ってしごかれたり、また、2個年上の幼馴染の毛毛と恋仲になったり、ヤクザと揉めたり、

    当時の台湾の情景が見えるよう
    政治的な背景など詳しいともっと面白く読めるのかも知れない
    土着の内省人、大陸からやってきた国民党の外省人
    共に、中国共産党の動きに神経を尖らせる社会情勢

    当時の台湾の空気のを知らない自分でもまるでその世界を知っていたように、それほどまでによく書けている

    あと、文章を読んでいて猥雑な匂いを感じる
    食べ物の描写もそうだし、街の描写もゴチャゴチャとした雰囲気が伝わってくる
    その分、暴力的な描写や家に大量発生するあの虫の描写があるので、そっち系が苦手な人は注意

    マジでアレのエピソードは読んでいて気持ち悪い
    でも、一応本筋に関係のあるヒントが隠されていたりするので、読み飛ばしてはいけないジレンマ


    葉秋生視点で語られているけど
    それは未来の自分が過去を振り返っているため、作中の時点より少し未来の事について言及されていたりする
    なので、物語のその後にどうなるのかというのを、読者は途中で知ってしまっているわけで
    あの終わり方、それはそれで面白い味を出している

    著者の東山彰良さん
    台湾に生まれ、9歳で日本に移りむ
    そして日本に帰化せず、中華民国の国籍を保持しているらしい

    祖父は中国山東省出身の抗日戦士
    筆名の「東山」は祖父の出身地である中国山東省からとっている
    父親も作中と同じく教師みたいだし、この作品に自身を重ね合わせている面が多いのではなかろうか?


    あと、小説全般に言える事だけど、外国作品は名前が覚えにくい問題
    漢字だったら大丈夫かというわけではないようだ

    字面だけで読んでいけばそんなに変わらないのかも知れないけど
    脳内でもちゃんと本来の読み方で読もうとしたので、今作も名前は覚えにくかったですねぇ

  • これはおもしろかったですよ!
    今まで中国と台湾と日本のことを知らないで、のほほんと生活してました。
    いろいろな面で勉強になりました。

  • 面白かった。
    中国と台湾、戦争と今、青春、血、
    など色んな物が出てきて飽きなかった。
    大陸の人達の気質はやっぱり違うのかなぁ。

  • たまたま台湾旅行後に台湾が舞台のこの本を父から薦められました

    すっかり台湾ファンになっていたから作品の舞台の台北の街の熱気も、登場人物たちのパワーも鮮明に浮かんできて、また今すぐ台湾行きたくなってしまいました
    生きる力強さ、大好き!

  • 爽やかで面白かった。

  • ローカルというか、自分の育ちや環境に素直に生きることを考えさせられた。首都圏で育つと地元意識って希薄?日本人自体がそう?なのかも知れず、自分に投影して考えることはできなかったが、主人公の彼の人生を追体験して、楽しんで読むことが出来た。特にこれといった学びはなかったが面白い読み物。強いていうなら男として筋を通す、ということのかっこよさみたいなものは感じた。

  • 青春好きには堪らない一冊
    成長していいところと成長しては行けないところ
    歴史要素

  • 面白かった。祖父が殺された謎を追う筋だけでなく、主人公の人生を追う筋が絡むので、やや話がよれる感じが惜しい感じもするが、タイトルに偽りなしというところか。

  • 歴史、家族、個人の生活が流れていく。自分ではどうしようもない流れ、自分で変えられる流れが描かれている。お年寄りたちの個性がイキイキと。台湾もこういう時代があったんだなぁ。

  • 終盤になって主人公が中国に渡り、そこで人の歴史が繋がっていく感動があった。
    大切な人の命を奪われた恨みを忘れられるだろうか。戦争そのものではなく人に恨みが向かってしまうところがつらくて悲しい点だ。人の力で作った因縁をまた人の力で断ち切らなければ、それこそ根絶やしになるまで復讐はいつまでも終わらない。相手が先にやったとお互いに敵意を向け続けてしまうシーンが特に悲しかったが、これが争いの現実なのだろうと思う。
    マオマオと、あれっきり最後になるのがリアルだなと思った。
    過去に何があり、そしてこの先に何があろうとも、現在のこの瞬間は幸せなまま記憶に残るのだと思うと泣きそうだった。その瞬間があるから生きていられるのかもしれない。人の営みは愛おしくて切ない。

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著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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