八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • / ISBN・EAN: 9784062937443

作品紹介・あらすじ

1943年、北の最果て・キスカ島―忘れられた救出劇。

迫真の筆致! 窮地において人道を貫き、歴史を変えた人々の信念に心震わされる。
―冲方丁(作家)

本書のテーマは、戦時下における命の尊さに他ならない。毎年、八月十五日が来るたびに新しい読者によって読み継がれていってもらいたい。
―縄田一男(文芸評論家)

太平洋戦争の戦記を読む。日本人にとっては辛いことだ。だがこの作品には、まさに爽やかな「風」を感じた。さらに、意外な「あの人」がからむ終戦時の秘史まで明かされるとは! 驚愕と感動が融合した稀有な一冊だ。
―内田俊明(八重洲ブックセンター)

多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書。そこには、命を軽視し玉砕に向かうという野蛮な日本人観を変え、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が示されていた。1943年、北の最果て・キスカ島に残された軍人五千人の救出劇を知力・軍力を結集して決行した日本軍将兵と、日本人の英知を身で知った米軍諜報員。不可能と思われた大規模撤退作戦を圧倒的筆致で描く感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • なぜあまり知られていないのだろう?
    八月十五日と聞くと、日本人なら誰もが終戦記念日を思い浮かべる(最近は終戦記念日もピンとこない人たちが増えてる様子、怖すぎる)。
    でもその2年前、同じく八月十五日に起こった出来事がある。
    戦争があった時代に、こんなに人間味溢れる人たちが命を懸けて行った、日本人が日本人を救済する物語のような史実があることを私も知らなかった。

    実在する彼らの写真をググりながら、あなたは何を見てきたのですか?と問いかけながら読み進めた。
    あの時代に、仲間の命を最優先する軍人たちがいた。
    今までの、私の中の常識が覆された本だった。

    最後の解説にもある。
    「八月十五日が近づくにつれ、毎年多くの人がこの小説を読むことを願う」と。

    彼らのおかげで、今の私たちがある。
    それを目の当たりにした。

  • 1943年5月、アメリカ領のアッツ島(熱田島)で、物量で圧倒するアメリカ軍の上陸を前にして、3千名近い日本軍守備隊が玉砕。 その2か月後、木村昌福海軍少将らが、キスカ島(鳴神島)の5千名の日本兵の撤退作戦を成功に導いた奇跡の救出劇を、史実に基づき描かれている。 “生きて虜囚の辱しめを受けず” ・・・集団自決も厭わず徹底抗戦する日本人を野蛮な民族と見做し、原爆投下の無慈悲さを示したアメリカ軍、その戦後の占領政策に大きな影響を与えた、日米双方の人物像を浮き彫りにした、著者渾身の筆裁きに落涙す!

  • キスカ島無血撤退。確かに奇跡だ。だけど奇跡の一言ですませたくない。そこには人の強い意志があるから。戦争を描いたものを読むとき、いつも“その日”を待つように読む。でも当時の人たちは、当然、その日がいつなのかを知らない。このタイトルの八月十五日は、“その日”の二年前の八月十五日だ。キスカ島から生還した彼らのうちには、また“次”の戦場に送られた人もいただろう。そして“次”は帰れると限らないのだ。奪う命・奪われた命に “次”はない。玉砕が尊いと思わなければ生きていけない矛盾に心底冷えた。アッツ島に向かい敬礼する甲板上の人々の姿に、ラスト近くの木村が妻子と海水を撒く姿に、言いようのない想いが湧きあがり胸が締めつけられた。

  • 今の自分が置かれた環境から当時の苦境を実感することは難しいが、当時の人たちも、今の自分達と何ら変わらない心を持っていて、それぞれの思いを持って戦場に立ってたんだろうなと感じた。それで無事に帰還した人たちの内、何人の人が終戦を迎えられたのだろうと考えると胸が痛くなった。

  • こんなに清涼感に溢れる戦争小説は産まれた初めて読みました。
    凄惨な場面もあるのに、なんて清々しいお話なんだろう! と本当にびっくりです。もう後が無く自決しか無いような人生の終点とも思える場面において、見え隠れする家族や自分が率いる部下などへの思いやりがたくさん詰まった一冊だと思います。

    島で窮地に追い込まれた全員が自決してしまいそうで、読んでいてはらはらしましたが、部隊を率いた隊長も隊員も付随してきた記者の気持ち全ての連携が上手くいったと思います。悲しい思いも背負うことになりますが、上に立つ人がとても立派だと思いました。

    戦争小説といえば、酷い有様や玉砕、特攻隊など無慈悲で悲しいお話が全部と言っても過言ではありませんが、そんな戦争小説のジャンルを1つ増やしてくれたまさに明るい希望が見えるお話で、とても感動しました。

    有名な戦艦や駆逐艦、作戦名などの名前も随所にでてくるので、歴史の時間軸的にもとてもわかりやすい作りだと思います。

    戦争のあらゆることは次の世代に伝えていかなければならないと思いますが、そんな中、こんなお話もあるんだよとぜひ多くの人に読んで欲しいと思いました。

  • 奇蹟のキスカ島撤退作戦!
    恥ずかしながら、本書を読んで初めてその史実を知りました。
    そして、心震えました。
    Wikipediaの解説よりわかりやすい(笑)

    ストーリとしては、1943年のキスカ島での救出劇
    5200人を超える兵員を戦闘を行うことなく、救出するというモノ。
    読み進めると、まさに奇蹟
    暗号解読されている中、どうやって救出日を伝えるのか?
    その救出を信じて待つキスカ島の兵員たち
    そして、救う側の想い。信念を持った指揮官。
    「その日」はぐっと来ました。

    命の尊さ。人道を貫き、歴史を変えた人々の信念・行動が戦後の占領政策に大きく影響を与えていたこと。

    大満足のエンターテイメントストーリで、日本人として誇りが持てる物語でした。多くの日本人に読んでもらいたい物語です。

    しかし、一点だけ気に入らないのが、「解説」
    憲法改正に対するコメント
    このストーリから、なぜ、このコメント?
    これが無ければほんとよかったのに...

    ということで、解説以外はとてもお勧め

  • キスカ島撤退作戦を題材にした松岡圭祐にしては珍しい作品。
    敗戦の色が濃厚な第二次大戦の末期に、人命を尊重する上級士官が何人もいた事にまずは驚いた。

    それ以上に感じたのは、やはりチームというのはリーダー次第だなぁということ。
    軍隊に限らず、スポーツ、会社などでもリーダーがボンクラだとメンバーは大変な目に遭うし、優れたリーダーに率いられると奇跡も起こる。

    今のうちの会社は…
    暗澹たる気持ちになるから止めておこう。

  • 発売されてからずっと読みたいと思っていた本書を、「戦争」という悲しき歴史を感じるこの季節に手にしてみました。

    無知な私は知識としてミッドウェー海戦は知っていましたが、同じ頃におこった、私が知らなかった北の果てでの史実。

    本作では、太平洋戦争の敗色が濃くなった昭和18年、アリューシャン列島の西にある鳴神島=キスカ島にある日本兵5,200名を奇跡的に無血撤収した史実に依って書かれていました。

    ミッドウェー海戦の敗北から敗戦の色が濃くなってきたと言われる先の大戦。

    そんな中で「本土決戦」が叫ばれるようになり、「一億玉砕」「一億総特攻」など、最後まで己の命を賭してでも皇軍として国を守ることが当たり前と考えられていた時代に、「玉砕」ではなく「撤退」、命を守る事を選び、困難を乗り越えた奇跡の実話。

    本作には敢えて主人公はいないのだと感じた。

    それぞれの立場からの視点で描かれた鳴神島の悲劇と奇跡。

    読んで良かったと思える作品でした。



    説明
    内容紹介
    多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書。そこには、命を軽視し玉砕に向かうという野蛮な日本人観を変え、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が示されていた。1943年、北の最果て・キスカ島に残された軍人五千人の救出劇を知力・軍力を結集して決行した日本軍将兵と、日本人の英知を身で知った米軍諜報員。不可能と思われた大規模撤退作戦を圧倒的筆致で描く。


    1943年、北の最果て・キスカ島―忘れられた救出劇。

    迫真の筆致! 窮地において人道を貫き、歴史を変えた人々の信念に心震わされる。
    ―冲方丁(作家)

    本書のテーマは、戦時下における命の尊さに他ならない。毎年、八月十五日が来るたびに新しい読者によって読み継がれていってもらいたい。
    ―縄田一男(文芸評論家)

    太平洋戦争の戦記を読む。日本人にとっては辛いことだ。だがこの作品には、まさに爽やかな「風」を感じた。さらに、意外な「あの人」がからむ終戦時の秘史まで明かされるとは! 驚愕と感動が融合した稀有な一冊だ。
    ―内田俊明(八重洲ブックセンター)

    多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書。そこには、命を軽視し玉砕に向かうという野蛮な日本人観を変え、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が示されていた。1943年、北の最果て・キスカ島に残された軍人五千人の救出劇を知力・軍力を結集して決行した日本軍将兵と、日本人の英知を身で知った米軍諜報員。不可能と思われた大規模撤退作戦を圧倒的筆致で描く感動の物語。
    内容(「BOOK」データベースより)
    アメリカが敵視した、人命を軽んじ易々と玉砕するという野蛮な日本人観が、一人の米軍諜報部員の報告で覆った。戦後占領政策転換の決め手となった一九四三年、北の最果てキスカ島での救出劇。日本は人道を貫き五千人の兵員を助けた。戦史に残る大規模撤退作戦を、日米双方の視点で描く感動の物語。
    著者について
    松岡 圭祐
    まつおか・けいすけ
    1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーになる。代表作の『千里眼』シリーズ(大藪春彦賞候補作)と『万能鑑定士Q』シリーズを合わせると累計1000万部を超える人気作家。『万能鑑定士Q』シリーズは2014年に綾瀬はるか主演で映画化され、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞し、2017年には第2回吉川英治文庫賞候補作となる。累計100万部を超える『探偵の探偵』シリーズは、北川景子主演によりテレビドラマ化された。著書には他に、『水鏡推理』シリーズ『黄砂の籠城(上・下)』『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』『ジェームズ・ボンドは来ない』『ミッキーマウスの憂鬱』などがある。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    松岡/圭祐
    1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーになる。代表作の『千里眼』シリーズ(大藪春彦賞候補作)と『万能鑑定士Q』シリーズを合わせると累計1000万部を超える人気作家。『万能鑑定士Q』シリーズは2014年に綾瀬はるか主演で映画化され、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 松岡圭祐さんの本は2冊目です。
    初めて読んだのが『特等添乗員αの難事件』でした。
    この本は☆3つを付けました。
    シリーズ化されていますが、それ以上手を出そうとは思わず…

    【八月十五日の風に吹かれて】はブクログでも評判が良く、読んでみたいと思っていました。
    文庫初版は2017年8月なのに、先日、紀伊国屋の新刊コーナーで見つけました。
    エムクォーティエの紀伊国屋さんは、新刊コーナーに置かれている本以外は、かなり探しにくいです。
    なので、新刊コーナーに並べられている本を購入することが多いです。

    八月十五日というタイトルから想像できるように、太平洋戦争に関するものです。
    本を開いてまず目に飛び込んでくるのは

    この小説は史実に基づく
    登場人物は全員実在する(一部仮名を含む)

    読む前から、覚悟して読め!
    そう言われているようでした。

    太平洋戦争終結は1945年。
    私が生まれた頃は、まだ戦後20年ぐらいなのに、私は一度たりとも戦争を自分自身のこととして実感したことはありません。
    戦争は歴史の中の出来事でした。
    その歴史でさえも、私の知ることは何とも薄っぺらなことばかりで。
    この年になっても、知らない(と言うよりも知る努力をしてこなかった)ことの多いこと…

    この本に書かれている「キスカ島撤退作戦」のことも全く知りませんでした。

    キスカ島撤退作戦は、1943年7月27日~29日にアリューシャン列島にある鳴神島(キスカ島)から守備隊5千2百名全員を無傷で撤収させた作戦。
    キスカ島に上陸しようとするアメリカ軍の攻撃が激化している中でのことで、「奇跡の作戦」と言われています。

    太平洋戦争における日本人の戦い方、非戦闘員である民間人ですら自死を厭わない姿。
    それは、諸外国に人命を軽んじる野蛮な日本人として映っていました。
    その日本人観を変えたのがこの「キスカ島撤退作戦」であると、この本には書かれています。

    随所で胸が詰まる…
    そんな本でした。

    8月15日は終戦記念日。
    ですが…
    1945年8月15日に戦争が終わったわけではないのです。
    それ以降も、北の島では侵攻してきたソ連軍と闘っていた人々がいるのです。

    浅田次郎さんの『終わらざる夏』を思い出しました。

    普段、考えることもない戦争のこと。
    でも、日本人として知っておかねばならないことがまだまだある…
    しみじみとそう思いました。

  • 終戦から2年前の1943年。北太平洋にあるキスカ島からの救出劇を描いた作品。
    すでに敗戦色が濃厚になりつつあり、特攻精神などが崇められていた時代にこのような史実があったとは…
    太平洋戦争については、南方での戦いが描かれる作品が多い中で、この北の大地の戦いは全く知らなかった。
    冒頭のアッツ島の全滅は悲しい限りだが、その犠牲を無駄にすることなく、指揮をとった樋口、最後まで一人の犠牲者を出すこともなく5,200人の命を救った木村。戦時中にも命を大事にする軍司令部がいたことに、私は心が救われた。
    そして、この人道を貫いた行動が戦後の日本に影響を与えたこと。こういう話こそ、もっと現代の人たちに知ってもらいたい。
    「千里眼」シリーズ以降、作者の作品はライトノベル感覚で読んできたが、この作品で作者に対する印象もかなり変わった。読んで良かった。

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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